2022/12/08 のログ
レナード > 今夜の向かう先を決めれば、男は夜の街に消えていった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からレナードさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にテンドンさんが現れました。
テンドン > 王都マグメールの平民地区をばたばたと走る。
石床で舗装された街道を縦横無尽。

「ふっふっふっ!」

呼吸を短く繰り返す、長距離走のペース維持。
忙しなく行き交っている街人達の密度の少ない通り道の選別。
腿をきちんと持ち上げて疾走するその後ろに、煙突からの煙みたいに冷たくなってきた気温の温度差に触れた息遣いが白くけぶった。

テンドン > 「さっぶ…!!」

ぴゅー!と吹き付けて来る向かい風に少し目線を下向きに下げる。
冬の到来を報せる木枯らしは小さな針が一杯混ざってるみたいで肌にちくちくした。
帽子についているバイザーであるツバ部分を指先でちょいと下向きに引っ張ってささやかな風除け。
冷気に撫でられっぱなしの耳や鼻先はほんのりと赤くなる。

テンドン > 「わわわっっっ!!?」

急停止!静止をかけた爪先がつんのめるようになった。
大きく前にへと転がり出そうになる元々余りバランスの良くない体に引っ張られ。
ばたばたと両腕を風車みたいに回して安定を取り戻しつつ、すとんと辛うじて踵で床面を踏み付け留まった。
目の前の十字路の横合いから通りを駆け抜けて行く馬と、それの牽引する馬車、危うく轢かれかけ。

テンドン > 「……おつかれさまでーす」

多分荷運びや、人そのものを運送しているであろうある意味の同期の後ろ姿にぺこんと頭を下げる。
肩掛けにしている一杯の小さな配達物が詰まっている袋の中身をちらっと指先で開いて確認、安堵の一息。
そして荷物全体をがさっと揺すって肩に荷物を担い直す。見上げた空はまだ十分明るい。お天道様の光の眩しさに目を細める。

「ううん、ボクが順調な御蔭でまだ余り時間は経ってなさそう!もう少しゆっくり目で回っても大丈夫かな?」

優秀優秀!自画自賛スマイルを満面にして忙しない足幅ペースは少し緩めの歩みとなった、一歩前。
震動が減っても、十分に支持していても牛人のミレー種めいている胸元のボリュームは歩く都度にたっぷりと重たく揺れる。
でも、天然の錘にも大分慣れた、何せ長い付き合いであるのだから。

テンドン > 徒歩になって視野が広がり、周辺にも目がきょろきょろする。
人通りに雑踏は多い。その通り道に面する店なども。

「…一年の終わりになっても忙しいのはかわんないね。皆モーすこしゆっくりすればいいのに。牛さんには人類のハイペースについていくのはすこーしひとくろーだよね」

何度もズリ落ちそうになる荷物鞄を何度も何度も背負い直し。
人々の勤労の忙しさからズレて辺りの店の様相にへと視界の中心を定める。

「この鞄も使い古して愛着はあるけど、そろそろ買い替えた方がいいかな…紐部分が擦れて何時千切れちゃうか不安だし。あーでも寒くなってきたから新しい防寒着も欲しい~、マフラーとか。出費がかさんで困っちゃうなぁ…!」

ぶつぶつ呟く声の後には吐き出す溜息のような呼気に混ざった熱と水分が湯気のように尾を引く。

テンドン > 「ボクも一年中ずーーっと頑張ってるんだし、何かご褒美があってもいいよね。アッと言わせてくれるような。こう、ふと見下ろしたら足元に大金がどさっと落ちてて、お嬢さん、どうか貴方の思うように私をお使い下さい、みたいなシチュ!!!」

緩やかな悠然闊歩。妄想に浸ってにやにやと目を細めて首を傾げている後ろでは。
天然の羽箒みたいな、ホットパンツから食み出した尻尾の房部分が土埃だらけの街道の床面を右に左に掃っている。

テンドン > 「…ま、実際にそんな事があったら怖すぎてきっと拾わないだろうけど。美味しい話にはウラ…危うきには君主チカヅカズ…だっけ?くわばらくわばら…っとっ!」

不意にぴょんっと足場を蹴り付けて跳躍!膝のバネを使って高々と胸元の錘もモノともせずに高度を稼ぐ。
通り道の横に面した石塀の向こうから垂れ下がって来ているカキの枝を目敏く見付け、そこに実り下がっているよく熟したカキの実をその手に掴んで毟った。
ぶち、と、千切れる手応えを得ながらそのまま着地。

「実際はあるとしてもこの程度だよね…最後の秋の味覚、イタダキマース」

ごしごしと汚れを上着の表面で軽く拭ったその後に、熟し切っている果実をその皮ごと頬張って齧った。
とろりとした天然の甘さにぴんっと牛の耳が跳ねるように起き上がり、その後にだらしなく下がる。

「あんま…幸せ…」

テンドン > 「……ってヤバ!気付けば結構時間経ってるジャン!ノルマ果たさないと雷が落ちちゃうよ!!ひええ…!」

ぎょっと周囲の影の濃さの変化や、天体の位置に慌てふためき。
かたくその手に鞄の紐を握り直すと、前のめりがちに走り出した。
長閑な空気も束の間ばかり、疾走する配達員の駆け足は瞬く間にトップスピードに到達し、突っ切るように街中を抜けて行く。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からテンドンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/市場通り」にヴァンさんが現れました。
ヴァン > 「気付けば冬、か。やー、寒いな」

そんな言葉は、独り言ではない。目の前にいるコーヒー売りに向けた言葉。
商人は愛想よく、当たり障りのない言葉を返す。男は鞄からコップを取り出すと、ゴルドと共に商人に渡した。
いわゆるマイカップ・マイボトルというやつだ。商人は手慣れた様子で一人前のコーヒーを保温樽から注ぐと、男へとコップを返した。

「まだ結構屋台は空いてるんだな。焼きポテト、フィッシュ&チップス……ここはサンドイッチがメインか。
あぁ、すまない。食事はとってきたんだ。ただ家に帰るまで、あまりにも寒くて飲み物だけでも……ってね」

食べ物も必要かという商人に、丁寧に辞退する。湯気のたつコーヒーを啜り、長く息をついた。
他の屋台では数人の客がたむろしている。食事が終わるまで他愛もない世間話をしているのだろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/市場通り」からヴァンさんが去りました。