2022/11/15 のログ
マーシュ > 「ヴァン様の上司の?」

たまっていた仕事の内訳についてを零される。
戻ってくる歩哨がないのは、彼の抱えている事情か、それとも、職場的な事情なのかは分からないのだが、それを素直に片づけているのに彼らの力関係を覗き見る気がして少し面白い。

背もたれに深く背を預けるあたりは疲れているのだな、と思うのだが、いかんせんここでは己にできることはさほどないため、話しに耳を傾け。

「そうですね、……読み終えた書籍をお借りしてもよろしいですか?もちろん問題のないものだけでいいのですけれど。………たまには禁酒されてもいいと思います」

いない間、書籍の管理はだれがするのだろう、と素朴な疑問ついでに、埃をかぶることになるのならば、暫しの間借りてもいいだろうかと個人的趣味を兼ねて打診しつつ。

空を仰ぐ相手に映る星座は、そろそろ冬のそれへと位置を変えつつあるのだろうか。
しばしの沈黙を挟んだのちの言葉に、視線を男へと改めて転じ。

「……私の、ですか?───でも、もともとヴァン様の中にあった欲求もあったのではないかと思いますよ?───それに、私にはあまり縁のないものですから」

己がしたのはその背を押した程度のことだろう、と応じる。
普段よりはよほど真面目な態度だし声音なのだが、疲労しきった面差しが、少々追いついてないのに小さく笑って。

「……お茶に、ゴジベリー等を入れると、眼に良いですよ。お試しになられては?」

酒精もそうだが、茶を嗜むことも知っているので、何とはなしに言葉を向ける。もう知っていることかもしれないが、と淡い笑みとともに。

ヴァン > 「図書館で俺以外の男性職員さ」

愚痴を零してはいるが、言葉の端々から信頼している様子が伺えるのは珍しいかもしれない。
本について言及されると、いいことを思いついたとばかりにぽんと手をうった。

「そうか……。俺がいない時でも部屋に入れるように店主に言っておくよ。それなら本が無駄になることもない。
もちろん、物によっては持って帰って読んでもいいし。大丈夫なものは選別しておくよ」

故郷に戻る間、部屋の管理までは頭が回らなかったらしい。定期的に人が入ればよいだろう、と思ったか。

「確かに、故郷に戻りたいという想いはあった。手紙でやりとりはしているが、もう長い事家族と会ってない。
マーシュさんにとっては……孤児院の仲間や、院長先生は違うのかい?」

家族ではないが、近しい存在ではないかと問いかける。
お茶については素直に頷くも、その後に目の現状は睡眠不足からではと思い至り、首を傾げる。どこか子供っぽい。
姿勢が崩れ、相手の肩の上に頭が載り、もたれかかるようになる。離れようとするがベンチに座って気が緩んだか、身体に力が入らない。
視界内にあまり人がいないことを確認してから、そっと声に出す。

「……ごめん。ちょっと、このままでいいかな?」

マーシュ > 愚痴の様で愚痴でなく。
それは彼が本来所属していたはずの騎士団より、現状の職場との関係の方がよいことを知らせるような言葉。

「……あら、よろしいのですか?」

不在時に部屋への入室を許すのは、信頼されていると取るべきなのだろうか、と問うた。
勿論不埒なことをするつもりは毛頭ないが、書籍の選別をしてもらえるのならば、どれを借りていいのかわかりやすい、と頷いた。

「育った場所であり、大事な方々ではありますが、血縁とは違いますから。………ああでもこの前、手紙を出しましたね」

家族的な愛情、というにはその結びつきは余人から見るとどうなのだろうかとは思う。どちらかというと、師弟めいた繋がりの方がしっくりくるのは、現状己が修道者としての道を進んでいるからだろう。

彼等は己が歩む道の先にいる存在であると認識している。
孤児院からの同じような境遇の者たちとはもう少し熱のある関係性であるとは思うが───。
皆それぞれに己の道を選んでいるからこそ、やや遠い。

「───皆が元気でいれば、それでいい、……、……?」

言葉を紡ぐその肩に重みが加わったのに不自然に言葉が途絶えて。
頬のあたりを擽った、髪の感触に視線を向ける。

謝罪の言葉、そのまま動かない姿勢に視線を相手から正面に戻して少し肩に入った力を抜いた。

「……かまいませんよ、お疲れ様です」

ヴァン > 「あぁ。お茶とか、部屋にある物も使ってもらって構わないよ」

彼女が目にして困るものはない、と判断したのだろう。とはいえ、書物によっては危険に巻き込みかねない物もある。
血縁とは違う、という言葉には口を噤む。家族がいる中で疎遠を選んでいる現状は、贅沢に映っているかもしれない。

「便りがないのが……とは言うが、定期的に出しているとそれが無事を知らせることにもなる。
特にこんな街ではな。異変があったからといってどうにかできるとは限らないが……」

凭れかかり、目を閉じる。ゆっくりと呼吸を何度かすると、小さく唸って元の姿勢へと戻った。頭を掻く。
大きく伸びをして、身体を動かすとゆっくりと立ち上がった。

「さて……今日は大人しく休んだ方がよさそうだ。引き留めて悪かった」

周囲を一瞥し、そこまで人通りが多くないのを確認してから。
座っている女へと顔の高さを同じくすると、軽く唇を重ね、すぐ離れた。

マーシュ > 「悪くなりそうなものは適宜処分させていただきますが、そこまで勝手は致しませんよ…?」

そもそもが、部屋の清掃などは、彼が雇い入れている店長などがこなしてくれ………ると思いたい。

元々が縁遠いものだからか、家族に対する感情や、思い。それから懊悩なんかは修道女にとっては微笑ましいものを見ている思いの方が強かったりする。

贅沢というよりは、そうできることを穏やかに見守っているといった様子。

「はい、さすがに私事ですのであまり頻繁に、というわけにはいきませんが……、少し手が空きましたので」

その重みは暫し己の肩の上にとどまり、とは言え数呼吸分の休息ののちに軽くなる。
そのまま体を伸ばして立ち上がる姿を見上げ、言葉を返そうとする己にかかった影に少し双眸を瞠った。

「─────、……悪いとお思いでしたら、今宵は送らせてくださいね」

触れて離れた熱に一度目を伏せてから、軽口じみた言葉を返す。
実際今にも寝そうな体で歩いていたのは事実だったと言行をあげつらい、男に遅れて立ち上がる。

「それに、一緒に店主の方にお話ししておいた方が確実ですから」

実利を上げながら、男の住んでいる宿に向けて歩き出すことだろう──

ヴァン > 「悪くなりそうなもの……は、ないかな」

雇っている店長が仕事をしてくれるとは露ほども思ってないようだった。

「じゃあ、お言葉に甘えて。……そうだな。あいつ、最近マーシュさんへの対応が良くなってるんだよな……」

不思議そうな顔をしつつ、宿へと向かう。
広場からすぐに二人の姿は消えた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からマーシュさんが去りました。