2022/11/06 のログ
マーシュ > 己の発言は、近いようでもずれているらしい、ということは相手の反応で窺い知れる。

ややあってから語られる言葉に、なるほど、と頷いた。
ついで焔に照り映えた相手の表情におちた陰の理由もまた同時に。

「───一度帰郷してもよいのではないでしょうか?とは事情を知らぬが故の軽口と思っていただければ」

生家との仲が芳しくないことは理解しているが。その土地を踏むだけならば難しくもない気はする。
それを良しとするかどうかは、彼次第なのだろうが。

「故郷、というのは、目の前のことがうまくいっているときはなかなか思い出すことがないのかもしれませんね」

己の故郷は聖都になるのだろうが、生まれ故郷かと問われると多少怪しい。それ故に、そういった思い入れには少し憧れを感じるのかもしれない。

ヴァン > 熱が溜まってきたのか、人形も全体が火に包まれてきた。神殿やその付属建物からこの炎は目立つだろう。
己が説明した内容から刑罰としての残酷さを想像し、眉を顰めた。
今ではただの娯楽だが、刑罰を娯楽とする風潮は今この街でも残っている。軽く鼻を鳴らす。

「そうだな、親父にさえ会わなければいいことだ。それもいいかもしれない。
……ただ、この街に戻ってきた時、神殿に俺の籍があるかどうか」

友人からの提案に、素直に頷いてみせる。その後、ふっと思いついたのか冗談なのか本気なのかわからぬ言葉を吐いた。
顔は笑っているが、男自身ありえなくはない話だと考えているのだろう。

「どうかな……故郷のことはうまくいってる時もそうでない時も忘れたことはなかった。
あ……そうそう。暗殺の動機は主教絡みなんだ。異端というか、異なる派閥の信者が起こした――謀反に近いかな。
主教が正しく受け継がれたことを記念する意味合いもあるから、ここでやっても大丈夫、という訳さ」

何かひっかかることがあったのか、男は自分で言っていて首を傾げた。

マーシュ > 近い距離の熱に少し焙られて眩しそうに目を細める。
火の勢いは計算されたもののようだが、それでも近くにいると熱は確かに感じた。

かつての処刑は、今はこうしてヒトガタに形を変えて、催し物となっている。
その是非を女は口にすることはないが。

男の懸念については小さく笑った。

「その時は街の酒場の主になればよろしいんじゃないですか?」

そのためのものじゃなかったのか、などと言って揶揄いじみた言葉を紡ぐ。
実際がどうあれ、その席を奪われることはなさそうではあるのだが───。

「────、そうなのですね。図書館のそばで火の催しですから、あまりいい顔はされないのかと思っておりました」

それから相手の、不意の沈黙に視線を向けて。

「どうかなさいました?」

彼が一体どの部分に引っかかりを覚えたのかは知る由もない。
ただ不自然な沈黙と仕草に伺いを立てる声

ヴァン > 火は強くなるが、人の形は保ったまま。
夜は寒さを感じる季節になってきたが、炎のおかげか暖かさを感じる。女の微笑には肩を竦めた。

「あれは資産運用の一種だよ。昔稼いだ分があるから大人しく生きていくだけならできるが。
人生、生きる目的ってのが必要だろう?まだまだここにいる」

男の生きる目的が復讐に近い点さえ目を瞑ればいい言葉として響いただろう。
沈黙について問われると、言葉を探すように訥々と語る。

「あぁ、館長にも許可をもらってるし、見ての通り図書館は石造りだ。俺も水系魔法は使えるし、大丈夫。
いや……当時は派閥争いで殺し合いが起きるほどだったのかな、と。その原因が気になったんだ。時期も時期だし」

200年ほど前、主教に何かがあった。この行事が始まったのはその前なのか後なのか。
暗殺未遂事件の真の原因は何なのか。伝統行事としか思っていなかったものが俄かに不穏な気配を帯びる。

マーシュ > 「───ヴァン様のそれが、………そうですね、それでも生きる目的になりうるのでしたら、必要なのでしょうね」

その理由を知らないとは言わない女は、焔に目を細めながら笑みを浮かべたまま応じる。
それの是非もまた、女が手前勝手な言葉を向けるべきではないことを自覚しつつ。

「───時期、ですか。………大規模な改革の起きていた時期であれば、政治的なやり取りがあったのかもしれません。それが主教にとって真実益になったかどうかまではわかりませんが」

200年という区切りは、彼からも聞いたし、その後自分でも多少調べていきついた。
当時は相当混乱していたことは想像に難くはない。

こうして見せしめとして残さなければならなかった事件、というのは誰に向けて、という出発点もあるはずだ。

ヴァン > 炎は少しづつ収まり、安定してきている。やがて消えていくだろう。
会話している間も人が来る気配を感じ取れなかったのか、男は火に向き直った。

「そうだな……必要、なのだろうな」

炎に視線を向けて、目を細める。目の前のような燃え盛る炎とは違い、復讐は胸の内で燻っている。
それを捨てればもっと穏やかに過ごせるだろう、そんな事を思いながらも捨てきれない。

「政治的にも、主教的にも、混乱していたのだろう。これまで宗教関係でしか過去にアプローチしてなかったからな……。
故郷に帰ってみるのも手かもしれない。口伝や民俗学といった本を読むのも……」

後半は自分に言い聞かせているのか、ぶつぶつと呟いている。
しばらくすると考えが纏まったのか、魔法を唱えた。男の掌から水が湧きだし、噴水のように流れ出す。すぐに火は消えた。

マーシュ > 揺らめく焔は、その始まりがどうであれ温かみを感じる色と、熱が心に残る情景だった。

───きっと彼の心の中の焔もこうして、いまだ熾火を保ったままなのだろうな、と予測だけしかできないが。

そうして、一念を持って行動しているうちは生きているのだというのならば───きっと無意味ではないのだろう。

「形に残るのは書籍だけではありませんし、古い建物の様式なども見てみるとよろしいかもしれませんね?」

あるいは形として目に見える形ではない風習……この、磔刑の催しも。
里帰りが現実味を帯びてきた様子を穏やかに見守っていたが。
やがて弱まった火に浴びせられる水によって、白煙が立ち上る。
焼け焦げた木材の焦げた匂いもまた。

相手の言葉通り消火は瞬く間に終わってしまったが、燃え残ったそれらに視線を向けて。

「片づけるのであればお手伝いいたしましょうか…?」

長く跡を残しておくわけにもいかないだろうから、と言葉を向けた

ヴァン > 助言には同意するように一度、首を傾けた。

「建物や風習、伝承……故郷にいた時には気に留めていなかったものも多い。
故郷はこの王都や聖都からも遠いし……中央政治に興味を持たない家風もある。何か掴めるかもな……」

盲点だったとばかりに呟いた。
念入りに人形と十字架、その下の藁や枝に水を被せる。

「いや……大丈夫。これが終わる時間は他の部署にも伝えてるから、何かあったら警備がかけつけてくるよ。
念の為俺も宿直室に泊まるし、明日の朝に片づけるさ。そういえば……マーシュさんは今日はなぜここに?」

今日は念話で居場所を伝えてはいない。約束も確か、していなかったはずだ。
今は閉館時間ではあるが、時々残って仕事をしていることもある時間帯だ。態々会いにきたのだろうかと。

マーシュ > 「里帰りの理由ができましたね?」

折に触れて、故郷に思いをはせているようだったから。
その背を推すような情報に行き着いたのは良かったな、と素直に思う。

家族間の問題までをどうにかすることはできはしないが、何か変わればいいな、ということも。

その間も続けられる消火の行く末を見守っていると、思い至ったように向けられた言葉。

おや、と軽く眉を上げて。

「……約束がなければ来てはいけませんか?」

戯れのような言葉を返して面白がるような表情を浮かべ。

たしかな方法として言葉を届ける手段もあるが───こうして自然な縁を辿るのも女にとっては自然なことだった。

「あとは、まあ、火の匂いがしたので、何をされているのかなあ、と?」

そんな悪戯な言葉を届けた。

ヴァン > 「あぁ。マーシュさんのおかげだな、ありがとう」

とはいえ、課題は多い。休みがとれるか、その間面倒ごとが起こらないか。考えることは多そうだ。
戯れのような言葉には苦笑いを。

「いや?そんなことはない。それに、本を返却しにくるなど、ここに用事ということもある。
……図書館の敷地内で焚火は、確かに驚かせてしまったかもな」

この神殿に数年以上詰めている者ならば炎にも慣れるだろうが、若手にとっては驚くだろう。
神殿の掲示板にも張り紙をしたとはいえ、誰もが誰も読むわけではない。

「折角だ。大したもてなしはできないが、お茶でも飲んでいくかい?」

図書館の玄関へと歩き出しながら、扉を指さす。果たして、お茶だけで終わるかどうか――。

マーシュ > 「答えは、ヴァン様の中にあったように感じますけれど?」

それでも己がその一助になったのならば幸いなことだと、聖職らしい言葉を紡いで返したが。

「そうですね、いささか不思議で。張り紙があったのには気づいてなかったですが───、ええ、よろしければ」

お茶の誘いにゆるりと頷いて。
歩き出す相手について図書館の中に足を踏み入れることになるのだろう──。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/神殿図書館」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/神殿図書館」からマーシュさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にランバルディアさんが現れました。
ランバルディア > 某ギルド内、テーブルの一角を借りて閉め出されるまでのひとり酒。

具合の良さそうな冒険者でもいれば、酒と飯を奢ってやるのも吝かではない。
勿論対価はいただこうというのだけれど。

昼間はまだ陽もあたたかいが、夜も更け始めれば外はもうだいぶ寒い。
幾らか歩いて宿か家かまで行かなければならないが、独り歩きをするのはもう面倒でしかなかった。

目も覚めるような美女とは言わないにしても、
からかいたくなるような可愛い娘でも姿を見せないものかとぼんやり。

ランバルディア > 受付の彼女でも引っ掛けてしまえれば話も早いのだが、今日はどうも忙しなさそうだ。
なんなら小脇か肩にでも抱えて、担いで連れ込み宿にでも持ち込んでしまいたい気分。

欠伸混じりに仕事ぶりを眺め、酒のグラスを傾ける。