2022/09/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にフィーアさんが現れました。
フィーア > 「……」

平民地区の路地裏、さして治安もよくないその中。
ローブ姿の少女が足音小さく歩いていた。

その特異な耳を隠す為に深くフードを被り、見えるのはかすかに覗く空色の瞳のみ。

――――迷った。

鈴の鳴るような小さな声音で、少女は呟いた。
もう、長い事ここにいるのに、迷ったのである。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にクチナシさんが現れました。
クチナシ > 其処に足を伸ばしたのは――本当に偶然。と言ってもよいだろう。
酒場での夕食を終え、酒を飲んだこともあり、火照った身体を冷ますために、路地裏を歩く。
そこらには酔い潰れた冒険者。もともと路地裏を住処にしているだろう浮浪者。様々な存在がいる中――。獣人らしいその耳が、ふと音を捉えた。

「ん――?」

そう、人間なら聞き取れないほどの鈴の鳴るようなボリュームの呟き。そう遠くはない。
確かに路地裏は薄暗く、迷い易いところもある。ならば、と……そちらへと足を向け。

……ローブを纏った一人の存在を見つけた。

「―――あぁ。んー。もしもし。
 其処の子。……今、自分の聞き間違いじゃあなければ、迷った。なんて声が聞こえた気がしたんだが。」

――ファーストコンタクトは怯えさせぬよう。わずかに酒気含ませた吐息と共に、彼女へと声を掛けようと。

フィーア > 「……」

声をかけられれば、フードを目深く被り直して。
その空色の瞳すらフードの影に消えるほど。

そして声をかけられれば、その目深く被ったフードの影から空色が微かに覗く程度に顔を向けて。

「……えっと……。……その……はい……」

消え入るような声で細々と喋り。
酒気含みの吐息に少し、眉根を潜めては返す。

クチナシ > ――フードを深く被り直す。それは自身の姿を他人に見せたくないということと推測。

そして、声的にも少女であることが理解できた。
実際、着ぶくれかと思うほどの丸み。それによって、一瞬性別はわからなかったのだが。

「ん、あぁ。すまない。ちょっと、酒を――な。
 ……自分は、此処のギルドに所属する冒険者だ。……良ければ、案内の一つでもしたいと思うんだが、どうだろう?」

――酒を。の辺りで、懐のサラシの隙間から取り出す一枚の札。それを喉に貼り、ニオイ消し。
これで含んでた酒気は少しだけ収まるだろう。
そして、提案はそう。――道に迷った少女の案内。一見、少年にしか見えない存在からの。

フィーア > 「……」

物言い的には、青年かそれ以上か。大人のような口ぶり。
されど、実際には少年のように見える存在。

空色が下から上を訝しむように見た。
……まぁ、よくあること、と飲み下した。
この界隈、外見と年齢が一致しないことなんてざらにある。
実際自分とて年齢相応の発育ではない、とわかっている。主に背のことだが。
着ぶくれかと思うほどの丸みを帯びたフォルムからでも、その些か育ちすぎた胸は目立つほどである。

「……。…………」

一瞬の間を開けて。

「……お願い……します」

きっと大丈夫だろう、と踏んで。

クチナシ > 「…………。」
身長としては、彼女とほぼ同等。
しかし、ミレー族を思わせる獣耳。納刀された太刀。異国を思わせる和装。しかも胸元や腰回りはサラシ。
――訝しげに見るには十分すぎる要素満載であり。

が、此処に長く住んでいる彼女だからこそ"よくあること"と――思ってくれた。
それが、きっと大丈夫だろう。という思考回路に繋がり、彼女の唇から小さな言葉が、零された。

「――ああ。もちろん。……自己紹介が遅れたな。自分はクチナシ。まぁ、……獣人だよ。
 ……と、ちなみに宿は取ってたり、自宅があったりはするのか?
 取っているなら其処まで送るし、取ってないなら、空いていそうな宿のところまででも、案内しようと思うが――。」

ならば、次に決めるのは目的地。

フィーア > 「……」

もう一度よく眺めてみる。
ミレー族のようにも見えるが、違うのだろうか。
異国の衣服を纏っていると言う事は異国の出だろうか。
……けれど巻かれたサラシはなんだろうか。隠したいのだろうか。
だとすれば実は少年ではなくて少女? いや、それはないと思いたい。
そもそも人への審美眼があるわけでもないのでとりあえずはおいておいた。

「……フィーア、です。……宿は、ない、です」

その日暮らしの彼女に宿を取るような手持ちはなくて。
故に今日もどこか横になれるところを探していたところで。
それはつまる所に野宿であった。

故に目的地を問われたらこう返すしかないのだ。
ありません、と。

クチナシ > 「……?」

そもそも一般人はミレー族と、東にある異国に居る獣人の違いなんてわかるわけがない。
異国の出。というのは大当たり。――サラシに関しては単純に、脱ぐ時に楽という簡単な理由。
そんな理由というには簡単過ぎるものだからこそ、彼女は気付けないわけで。

「……ふむ。フィーアか。いい名前だな。
 ……なるほど、なぁ。」

再び、彼女へと視線を向けた。
全身をすっぽりと覆い隠すローブ。一見すれば浮浪者と勘違いされてもしょうがない格好だ。
――野宿に関しても、場所は大事だ。こんなところで寝れば、浮浪者の餌食になるのは想像に難くない。
そして、そんな少女を「宿がない?そうか!なら安全なところまで連れて行こう!」――なんて言うのも憚れる。

「――よぉし。
 ならば、フィーア。良ければ自分がチェックインしている宿屋に来るか?
 ……此処で会ったのも何かの縁だ。」

――それはある意味、そういった誘いにも聞こえる。
一見、無害のようにも見える獣人の少年(外見)からの提案。彼女がどう応えるか。

フィーア > 「……」

良い名と言われては小さく首を傾げる。
自分はそう思った事は特にないからであるが。
そういうものだ、と思ったから考えた事もない、と言うのが真実である。

「…………」

まるで吟味されるかのように、品定めされているのか、とまた首を傾げ。
そして出てきた自分の宿へのお誘い。
これは――――。

「……体が、目的……です……?」

こんな所で野宿を考える少女である。
そんな経験もある程度は積んでるので親切なお誘いであってもそう勘違いしてしまった。
ましてや品定めするような視線(誤解)を受けてからのそれであった為に。

クチナシ > 「うん、響きが良い。――いや、そんな反応をするな。
 言った自分が地味に恥ずかしくなる。」

思いっきり滑った感じがして、薄く瞼を開き、視線を彷徨わせた。
くしゃり。と頭をかき、にじみ出た羞恥を誤魔化すように。

そうしつつ、彼女からの返答を待っていたところ―――。

「…………あー。うん、そう聞こえるなぁ!このタイミングだと!
 ……いや、普通に此処で会った娘子に野宿はさせたくない。という親切心だったが。
 ……そもそも、だ。自分はフィーアのその口元と声しか見えておらん。
 ――身体を買うとしてはリスキーだと思わぬか?……それこそ、そのローブを剥がして、せめてその顔を覗いてから誘うさ。」

――そう。確かにその肢体を見ていたが、あくまでもその浮かび上がるラインと口元。そして、時折見える目元に、声。
これぐらいしか判断材料がないのである。
もちろん、その後。「だからって、襲うわけじゃあないぞ?」と言葉を付け加え、両手を広げて見せる。――がおー。

フィーア > 「……喜べば、いいのか、わからなくて」

多分褒められたのだから喜べばいいのだろう。
けれどあまりそういうのにも慣れてないせいで反応の仕方も鈍く。
……嗚呼、今から助けてもらうと言うのに、こんな有様では、失礼にも程があろう。
フードをそっと脱げば、雪のような白い、けれど微かに黄金に輝く白金色の髪、空のように蒼い瞳。
整った顔立ち、なれどその耳があるところから突き出たのは鳥の、あるいは天使の翼のような白い羽型の器官がついており。

「……フードで顔を隠すのは、失礼、でした……」

深々、と頭を下げて。
そうしてようやく見えた少女の顔も、あるいは着ぶくれのように見えた肢体もわかるようになって。

「……疑ったのも、失礼、でした……ごめん、なさい」

重ねて謝罪をして。

クチナシ > 「んー……そうさな。
 まぁ、そういう時は社交辞令でも良いからありがとうございます。ぐらいで良い――と思う。」

実際にはどう思っていなくても、言葉だけでも送れば相手は満足したりするのだから。
こういった反応――。そもそも宿無しというところから、そういった人付き合いを避けているということ位、容易に想像は出来る。
だから、強くは言わず――。に居たが、どうやら自分の言葉は彼女のローブに関して"そういう風"に思っているように聞こえてしまったようで。

「ん?――ああ、別に失礼じゃあない。隠したいものは誰にでもあるだろう?
 寧ろ、急かすような口調になってしまって、こっちこそ――。」

すまぬ。と告げようとしたところで、ふわりと、白金色の髪の毛が視界で揺れた。
まずは――。

「綺麗だな……。」

第一声、その言葉が溢れた。幻想的と称しても良い。
それを助長させるのは耳がある箇所から伸びる白い羽。ハーピーに近しいものだろうか。
更に、ローブを脱いだ事であらわになる肢体。豊満という言葉では言い表せないほど、過剰に発達気味な其処。
隠してなければ、こんな場所なら押し倒されても仕方がない程の。
確かに、これは目を引く。彼女が自身の身体を隠そうとするのも無理はない。

「――いやいや。こっちこそな。目を引く程だ。ローブを羽織っていたいのもしょうがないだろうさ。
 ……それに。自分は言ったぞ? ……その顔を覗いたら誘うかもしれない、とな? 誘うどうこうは間違いじゃないかもしれんぞ?」

――見入っていた表情を緩め、くつくつ。と笑って見せる。

フィーア > 「……ありがとう、ございます」

なら、そう言われたとおりに返してから。
その羽耳をぴこぴこと揺らして。
無意識下の喜びなのか、本人は気づいていないようで。

「……あまり、見せたくない、耳、なので……」

変わった種族だから追われたり、あるいは迫害されたり。
様々な苦労を背負ったが故に耳を隠すようにしていたのだと。
綺麗、と言われ、そうなのかな、と小さく首を傾げたけれど。
そう言われたのならば、

「……ありがとう、ございます……?」

首を傾げたまま、返せば。
誘うかもしれない、と言われても。
こういう所で野宿したり、あるいは宿の代金代わりに、と何度か経験がある以上は彼女はこう返してしまうのだ。

「……代金になるよう、なら……?」

クチナシ > 「うむ。――そうやって感謝の言葉があるのは、自分としても嬉しい。
 まぁ、思いっきり言わせた感が強いのだが……。」

――ふわふわぴこぴこと視界で揺れる耳。
思わず凝視した。また可愛らしいものを見れた気がする。

「 ……そうか。――深くは聞かぬよ。
 頑なに隠しているというのには、相応の理由がある。自分も此処に来て、ミレー族と勘違いされて、割と面倒くさいことになったからなぁ。」

その言葉で、彼女には眼の前の存在がミレー族とは違う、どこかの獣人だということがわかるだろう。
そして、彼女程ではなくとも、何かしらを受けてきた事も。
――そして、帰ってきた言葉。

「――思った事を言ったまでだよ。
 まぁ、アレだな。自分の前では隠さないで良い。――見せたくないもの。とは言うが、その耳も、髪の毛も、顔立ちも、綺麗故な。もう少し見ていたい。」

――そんな言葉の後に溢れたのは、代金という言葉。
先程も言ったが、もともと奢るつもりだった。然し、こう言われると逆に……据え膳という言葉が脳裏を過る。故に。

「……なるさ。それだけ、フィーアの身体には価値がある。
 ――ということで、だ。案内するよ、自分の宿屋に、な?」

――そう告げ、改めて手を差し出した。

フィーア > 「……ん……はい」

小さくうなずいてから。
凝視されてからまた小さく首を傾げて。
なんだろう、と疑問そうにした。

「……はい。……えっと……」

据え膳は食べられるもの。
ならば差し出された手をとってから。

「……美味しければ、いいのです、けど……」

微かに頬を染めながら、自分の身体を代金にすることを告げて。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からクチナシさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からフィーアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にユキさんが現れました。
ユキ > 平民地区の最中。
異国の装いを纏った少女が立っている。

その姿は通りの中では浮いていて。
ただ黙りでぼうっと立っているのでひそひそ話も聞こえている。

本人にもその囁きは聞こえているが、顔色一つ変えず。
ずっとそこで誰かを待つかのように立っていた。