2022/08/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にルエリさんが現れました。
■ルエリ > 平民地区にある至って平凡な酒場
その店の奥の席で一人、酒を飲んでいるのは大柄な体躯を持つ女。
一人、ゆっくりと酒を飲んでいるのは自分が今日休みであるから。
家にいながらの読書も悪くはないものの、こうして外に出て飲むのも気分がいい。
昼間なために、人が少ないのが尚良かった。
蟒蛇、とまでは行かないが、酒に強い自分は小一時間飲んでも顔を赤くするだけで思考も明瞭のまま。
ただ、一人の酒もつまらないなとは、つまみの豆を食べながら思う。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にカルムさんが現れました。
■カルム > 冒険者と言う物は、様々な依頼を受けてそれを熟すことで金を貰う職業。
その為に、時間などに関しては基本冒険者の自由であり、昼日中に酒場でくだを巻く冒険者も少なくはない。
久しぶりに、大きな依頼を受けて戻ってきた冒険者は、腹が減っていたから、懐かしいマグメールの飯を求めた。
ぐう、ぐう、と腹が鳴るから、そろそろ我慢が出来ない、何か食いたいと、目についた酒場に入る事にした。
カラン、と入り口のベルの音が鳴り、新たな来客の事を、店内の客やマスターに知らせる。
入り口に立った冒険者は、何処にでも良そうな冒険者の姿だ。
ぼさぼさの金髪は、長く伸びていて、眠そうに欠伸を零している様子で、どことなく昼行燈のような雰囲気を持つ男。
身に纏っているのは、複合鎧と言われるコンポジットアーマーは、冒険の直後だから、どことなく草臥れていて、汚れも目立つ。
眠そうな目は、キョロりキョロりと視線を動かしていた。
店は然程繁盛しているとは言えない様子だ、空いている場所が多く見える。
客は……女性が一人、酒と豆を食べているのが見えた。
「―――――。」
そして、この国の男であれば、基本はするりと、彼女の方に近寄って、軽い言葉と共に隣になり、向かいになり座るのだろうけれど。
田舎から来た男は、単なる冒険者で、田舎者であるカルムは違った。
興味は在れども、そんな、街のイケメンのようには動けないので。
近くはあるが別のテーブルに腰を掛けるのだ。
チキンとも言える。
「マスター、エールと、お勧めの食事、がっつりで。」
この店のおすすめを頼めば、基本マスターの得意料理が来るものだ、だから、外れが少ないだろうと注文し。
テーブルの隣に、盾、武器である、バトルアクス、サブウエポンのソード。バックパックを降ろしていく。
どれも使い込まれ、修繕されている、年期物の装備だった。
■ルエリ > からり、入り口のベルが鳴る。
なんともなしに視線を上げてみればそこにいたのは冒険者。
依頼終わりであるのだろう、着用している鎧が草臥れている。
自分もたまにそういう状態があるので、疲れているのだろうなと安易に想像できる。
欠伸を零しているのも見れば、一目瞭然ではあるのだが。
兎にも角にも、彼と視線があったように見えたので、これは自分の方に来るのではとも考えたが違った様子。
近くのテーブルへと腰を下ろしたのを確認し、頬杖を付きニンマリ。
隣に下ろしていく荷物も見るに、長い時間冒険者をやっていると見た。
楽しい話でも聞けそうだと、その姿をニマニマ眺め、ゴブレットを手に
空いていれば、彼の横へと座ろう。空いていなければ立ったまま口を開くはず。
「よう、あんちゃん。美女を前にして別の席に座るたぁどういう了見だ」
自分を美女、何ていうのは冗談であるのだが。
なんだかチキンそうな青年に構いたくなってしまい、面倒に絡む酒飲み。
身体に目を向ければ、豊満すぎるやもしれない身体が目に入るだろう。
■カルム > 腰を下ろし、荷物を置いて一息が付ける、ぐう、ぐう、と腹が鳴り、早く飯が食いたいという思いが強くなっていく。
マスターに注文して、マスターが厨房で料理をしている音が心地よく、匂いがいい具合に腹を刺激してくれる。
ウエイトレスが先んじてエールを持ってきてくれて、トン、と置いてくれる。
まずは酒で、腹を……と、思った矢先に、先程の女性が動くのを感じた。
帰るのだろうか、と思ったがそうでは無さそうで近くに寄ってくるのが見えていた。
視線を向けてみれば、ニマニマした笑顔を見せる彼女が立っていた―――と言うか、隣に腰を下ろしてきた。
自分を見ている彼女は、こう、見たことがある。
玩具を見つけた子猫のような、そんな雰囲気だ、蒼い瞳は座った彼女を見下ろしていた。
プロポーションも良く、可愛らしい顔は愛嬌もあり、美人と言える人物だとおもう。
「美人には、既に男がいるっていうのが世の通例だと思ってね?
迂闊に自分から美女に声を掛けたら、怖ーいお兄さんが俺の女に何しとんじゃわれぇと、来る確率が80%は固いので。
それに、この国のイケてるナイスガイのように、口説きの言葉が出てこない片田舎の男なんでご容赦を。
美女に声を掛けて貰える事自体は、とても、光栄と思ってますぞ?」
気安い声のかけ方は、冒険者によくある口調と雰囲気であるから、男も返答がしやすかった。
美人と言うのは認識しつつ、冗談を交えた返答は、同じ冒険者同士でのやり取りに近い。
視線は、確かに彼女の豊満な肉体には映るものの、直ぐに顔に戻る。
無論、じろじろ見るのは失礼だと思うからだが、やはり、女性のナイスバディに視線が吸い寄せられるのは男の本能だ。
眠そうに細い眼でも、ちゃんと、彼女の胸に視線は吸着したのは間違いはなくて。
「因みに、こんなうだつの上がらないあんちゃんに、どのようなご用件で?
お酒は、一杯くらいなら、奢らせてもらうよ。」
依頼が終わって、良いお金が入ったので、その位なら、問題なく、と。
眠そうな男は、にへ、と彼女の方に向いて、笑って見せた。
■ルエリ > 自分よりも背の高い男に見下されるのは好きだ。
蒼い瞳もきれいなもので、見ていて飽きが来ない。
黒い瞳で見つめ返しながら、彼の容姿を眺めるが、中々格好いいと自分は思う。
だからこそお近づきになりたいと思って、隣の席に腰掛けた。
エールおかわりぃ、と陽気な口調でマスターに告げれば、呆れたような声で返事が帰ってくる。
まだ飲むのか、と言いたげな様子のマスターを無視し頬杖を付き彼へと視線を向けよう。
「はっはっは! そりゃ道理かもしれんね!
もしかしたら陰で怖いお兄さんが見てるかもだぜ? なんてな。
あんちゃんも口が上手いねぇ、私のことを美女だなんてまぁ」
美女とおだてられてご機嫌だ、届いたエールの半分を一気に飲み
酒臭い息を吐き出し再び彼へと顔を向けよう。
すれば、視線が胸に向いたのは丸分かり。慣れているので気にした様子もないが。
胸から顔へと視線を上げたら、意味ありげな笑みで彼を見据えているだろう。
「一人で寂しかったから絡んだんだよ。悪いかー?
んじゃあ、遠慮なく奢ってもらおう。マスター、もう一杯」
眠そうな顔に、少しだらしなく見えた笑みはとても良く似合っている。
双眸を細めたら、眼福眼福、と満足そうだ。
マスターは、こいつに本当に奢るのか?と少し呆れ気味である。
「まぁ、腹減ってるだろうから、飯食ってる最中は黙ってるさ」
料理が来たら、彼の食事ぶりを存分に拝見するつもり。
■カルム > ネコのような、そんなイメージを抱かせる彼女は、自分の事を見上げているが、その姿は本当に猫を連想させる。
可愛らしく小首をあげて、じっと見つめるその黒瞳は、大理石のように吸い込まれるような落ち着きのある色。
自分からくる前から飲んでいたのだろう彼女の周りには、お酒の匂いがほんのりと香る。
しかし、顔色などが変わっていないので、酒には強いのだろうと言う事が判る。
それと同時に、マスターの呆れた声に関して言えば、其れだけ飲んでいるというのだろう、常連なのかもしれない。
自分を見やる彼女は自分の事を、見定めているのだろうか、と。
「うわぁ、それは大変だ、逃げないと。
はは、貴女が気安い感じで、喋りやすいからね。
だからこそ、冗談も言いやすいんだよ。
口が旨いというわけでもないと思うけど、美人だと思うよ。」
おだてたわけではないつもりだ、冒険者は色々な女性を見て回る。
同じ冒険者もそうだし、様々な所に行って、女性を見ることができる。
その経験から言えば、彼女は美人なのは、間違いない。
しかし、酒臭い吐息を身に纏う彼女の魅力は……人の好み次第だと言うしかない。
意味ありげな笑みを浮かべる彼女は、小悪魔的な魅力を持っているようだ。
「あー……、いや、悪くはないな。
じゃあ、酒が来たら、乾杯でもしようか。
この出会いに。」
呆れている様子のマスターに対して、まあまあ、と。
彼女は美人なのは間違いはないし、お酒の一杯くらいは良いだろう、と。
「ありがたいな。」
そんな風に笑いながら、待っていてくれる彼女。
マスターもそんな様子を見ていてくれたからか、手早く食べられて、腹が膨れやすい物をチョイスしてくれた。
旨いな、旨い、と、がつがつもしゃもしゃ、と手早く食事をする。
食事の時間は然程かかることなく、終わるのだろう。
「ふう、ごちそう様。」
腹もしっかり膨れた男は、待っていてくれた彼女に声をかける。
之から、酒宴が始まると思うから。
■ルエリ > たんまりと飲んでいるから、酒精は香るだろう。
それと、女特有の少し甘い匂いも混ざっている。
見定めているというよりかは、彼の顔を観察し目の保養としているところではあるが
どんな男なのか、というのも勿論興味がある。
「ははは! 棒読みだねぇ。もう少し迫力がほしいところだ。
冗談はどんどん言いな? お姉さんが返してやるから。
そんなアンタは、容姿が整ってると思うけどね。私の好みさ」
どうやら、おだてたつもりではないのは見てわかった。
だからこそ嬉しくご機嫌にゴブレットの中身を減らしていくのだ。
くはぁ、とか酒臭い吐息を存分に零しながら、触らせてみようかとも思ってしまう。
「悪くないだろぉ? 美人のお姉さんに絡まれて悪いはずがないのさぁ。
ひひ、了解。この出会いに、乾杯でもしようか」
マスターをなだめてくれる彼に好感度が上がる。
溜め息を吐くマスターへもう一杯エールを貰い満足気で
アンタはいい男だと背中を軽く叩こう。
更には、やってきた料理を手早く、豪快に食べる様子を肴にエールを飲み
無言で彼の様子を見守る。美味しそうに食べる様子は見ていて飽きないし
彼の食べっぷりは好みだ。
「お粗末様」
そんな冗談を吐いたらマスターから睨まれたので肩を竦めゴブレットを軽く掲げよう。
彼の酒も来たら、盃を重ね合わせるだろうか。
■カルム > 気が付かない様にしていた、気が付いてしまった。
彼女の甘い匂いは、とても、とても良い匂いだ、酒精に紛れてもなお香る、女性の匂い。
彼女のそれは、きっと―――普通の女性ではなくて、良い身分の人間かも知れない。
立ち居振る舞いも、身につけているものも、とても整っているのも、判ったから。
「ムウバレた。
何と言うか、貴女は道化師志望なのだろうかと思ってしまいそうだ。
綺麗な女性の道化師と言うのもありと云えばありなのかも。
はは、好みと言ってくれて、ありがとう。
美人に言ってもらえると舞い上がってしまいそうだ。
―――と、俺は、カルムと言うんだ?
もし、良ければ、名前を聞いても?」
お酒の席だから、冗談の言い合いの延長だと思うからこそ、口説くことも考える。
まずは、名前を聞いてみようと。
彼女と仲良くなるためには、名前を知るところから、と。
彼女の飲みっぷりも又、好ましいと思えるから、だ。
「美人に絡まれて嬉しいのは、下心が最初に立つと思うんだけどな、男としては。
じゃあ、乾杯、しようぜ。」
食事も終わり、お粗末様と言う彼女に軽く笑う。
マスターと彼女のやり取りもまた、楽しく見て居られる。
アットホームでいいな、とそんなこの酒場の雰囲気を、思う。
改めて、盃が届く。
自分の盃、と、彼女の盃。
新しい酒が注がれて、とても冷たくて美味しそうなお酒。
「ああ。マスター、摘まみを二人分ね。
一つはウインナーで、もう一つは、彼女の好みで。」
酒を飲むなら摘まみは必要だ。
自分だけで飲むわけではないので、彼女の、と思うが、彼女の好みを知らないので、マスターに丸投げ。
お酒一杯だけじゃないのか、と言うマスターの視線に、大丈夫、と。
下心ありますよ、と、マスターに言って、呆れられてる模様。
■ルエリ > この甘い匂いは、自分が贔屓にしている店で購入しているもの
それなりに高いが、気に入ってしまっているのでつけている。
彼は、よくいる冒険者なのだろうけれど、眠たげな目も、ぼさっとしている金髪も好きな部類。
「道化師志望ではないさ。私は教師をやっているもんだ。
どちらかといえば真面目な職業なのさ。
舞い上がって頭をぶつけても面白そうだがね?
カルム、よろしくな。私はルエリ、ルエ、とでも呼んでくれや」
こうして少し話しただけでも、彼のことを気に入ってしまっている。
だからこそ自分の名前を告げたら愛称で呼んでいいと気安く告げるのだ。
酒も入っているから上機嫌。軽口を叩き会える彼を変わらぬ、ニマニマとした笑みで眺め続けよう。
「下心あるのかい? 私に下心とはまた酔狂だ。はっはっは。
おうさ、乾杯」
笑う彼の表情は魅力的であるので、また見たいと思ってしまう。
この酒場は何度も来ているし馴染みの店、だからマスターともこんな気軽に話せる。
やってきた盃をぶつけ合わせ、ゆっくりと飲み干していく。
「ぷはぁ……じゃあ、私もウィンナーでお願いしようかね。
ここのウィンナーはパリッとして最高だぜ?」
マスターへ自分も注文を投げたら、しばらくして出てくるのはぷっくりとしたウィンナー
噛めば、肉汁が溢れ出し、香辛料も効いている良いものである。
彼とマスターのやり取りは見ていなかったが、どうやら彼は自分に気がある酔狂な輩らしい。
だから、酒で少し潤んだ瞳を彼へと向け、誘うように太腿へと手を載せた。
■カルム > 香水と言う物を使う事態、其れなりに身分の高い者。
基本的な町娘、村娘では、香水などは手に入れられない筈だ。
自分を見やる彼女、凄く値踏みされている様子。唯、唯、男はにっこりと笑って見せる。
「教師……成程、だから、こんなに会話を楽しくできるんだね。
何方かと言わずに真面目な職業でしかないじゃないか、とても素晴らしい。」
彼女の職業に目を丸くする。並み以上に頭が良く無ければ、教師になれないと思う。
実は冒険者だと思っただけあって、彼女の職業には素直な賞賛が漏れる。
先生なのか、と細い目が少し大きく見開けていた。
「ああ、翼が授かれば、屹度できるなー。
此処は天井が高いし、飛び上がっただけでは、無理かなぁ。
ルエリ、ルエ。ああ、判ったよ。
田舎じゃ、略称の習慣はなかったけど、カルに、なるのか?」
三文字しかない名前、家名もない、一般の農民に、愛称などは無かった。
愛称に対してはこう言う物なのか、と首を傾いで、ニマニマする彼女の顔に、こんなもんか?と問いかける。
何と言うか、美しい女性のそんな表情はとても、卑怯だ、美しくて可愛らしい。
「そりゃ、有るでしょうさ。
ルエのような美人に下心の湧かない男はないと思うけどな?
下心ってのは、そう言うもんだからさ。
真心は、愛は、此処からお互いの事を知って、育むもんだろ?
はは、乾杯。」
高身長で、美女で、豊満な肉体。
そんなエロスの塊のような肉体に、まずは、牡として、男として欲情する。
それは仕方がない事だと。
彼女の事を知って、話をして、お互いの事を知って、愛し合う関係になるのは、この後の事だろう?
黒い瞳を見て、乾杯しながら、問いかける。
「おお、それは、とても楽しみ。」
ウインナーが名物だったらしい、好きで頼んだので、それがおいしいのはとても―――。
ふと、太腿に触れる手のひら。
視線を向ければ、矢張り、自分の太もも部分に触れている、彼女の掌。
暖かく、柔らかな掌と、見上げれば、少しばかり潤んだ瞳。
「ルエ、宿を取るから、どうだ?
初めて出会う君を、誘うのは、はしたないかもしれないけど、な。」
盃を呷り、笑みを浮かべる男。
耳元に顔を寄せてから、君が欲しい、と囁いた。
■ルエリ > 容姿も、とても好み、内面も、好みだ。
そんな彼がにっこりと笑うから、つい見惚れてしまう。
けれど、すぐに照れくさくなって目を逸らしたのだが。
「教師だからってわけでもないが……楽しいのは私だからじゃないか?
素晴らしいって言ってもらえうのは有り難いな……ま、冒険者もひっそりやってるんだが」
だからこそ必死に勉強し、今の教師という職業についた。
誇りがあるのだろう、素晴らしいと言ってもらえて満足そうに
副業である冒険者のことも話そう。少し、大きく見開いている彼に喉を鳴らして笑う。
「なぁんだ、一発芸でできないのか? 私がご機嫌になるんんだが?
良いじゃないか、カル、これから頼むぜ?」
問いかけられたら、勿論だと頷いておこう。
愛称で呼ばれるのはとても好ましいものだから。
続いて、耳に聞こえてきた言の葉にはニマニマとした表情は崩れ
真顔になって照れくさそうに視線を外してしまう。
「変人だぁね。私のどこが良いのやら…わからん。
それは、告白に聞こえるな」
彼は、自分よりも身長が高くて、男前だ。
だから、そんな言葉を言ってもらえたらつい、興奮してしまうのだ。
顔の赤みを酒のせいにしながら、碧い瞳でまっすぐに問いかけられる言葉は卑怯だ。
胸が、跳ね回ってしまうではないか。
ウィンナーを頼んだ彼と、用意してくれたマスターには申し訳ないが
今日はもう、彼と一夜を過ごすと決めた。
太腿を柔くなで上げながら、返される言葉は嬉しいもので。
「別にいいさ……はしたないとか上品とか、私には無縁だから……」
耳元にささやかれる言葉に、やられてしまったようだ。
顔を赤くさせながら席を立ち、マスターへと代金を支払ったら彼の準備を待って宿へと赴こう。
そこでどうなるのかは、未だ分からないが――。
■カルム > 彼女は、とても感情が、表情がクルクル動いて可愛らしく思える。
大人の女性に言うべきではないとは思うのだけれども、感情が一つ一つ、よく判るような気もする。
笑い、驚き、楽しそうにする、悪戯っ子のような笑みも又魅力なのだとおもうのだ。
照れている表情も又、可愛らしく見えて、その視線が逸れるのを眺めて、可愛いな、と口の中でつぶやいた。
「ルエだから、楽しい、それは間違いないな。教師だと知る前から楽しかったし。
素晴らしいじゃないか、自分の知識を、経験を他に教えられる。
ひっそりなんだ、冒険者は。」
ある意味御同業なのだろう、そして、二つの仕事を両立するのは、並以上の努力が必要だ。
努力家なのだろう、と彼女の事を想い、一つ知った。もっと、色々と知りたいと思うのは、我が儘か。
屹度、冒険家としても一流なのだろう、凄いと素直な感情を見せて。
「そうだなぁ、一発芸としてできる事と云えば……。綺麗に木を切り倒せる、とか?
ああ、よろしく頼むな、ルエ。」
一発芸と言うよりも、そもそも農家であり、開墾などもしていたりするし、木こりも農業だ。
家を放逐される前の経験を思い出しながら、それを一発芸とするかと首を傾ぐ。
まあ、一応木を切り倒して道を作ったり、簡素的なログハウス的な家を作る程度には熟練しているのだけども。
大工などには敵わないし、一応の宿、的な物であるのは否めないが、出来る事は出来る、と。
お互い愛称で呼び合うと、相棒と言う感じがして、なんだか心地よく感じられた。
「そうか?でも、変人でも良いさ。
変人と言うレッテル一つで、美人を口説けるなら、安い代償だ。
おっと。
告白するにはまだ早いな?もっと、お互いを良く知ってから、だ。
性急すぎると、お互いが不幸になる。
好ましく思いあっていても、な。」
とは言え、ルエリと話していてとても楽しいし、面白い。
彼女ならば彼女を想う男性と言うライバルは沢山いるものだのだろうし、自分等不意に出会った一人でしかないのだと思う。
放したくはないが、彼女の想いも、感情をも考えて、急ぎ過ぎは良く無い、と自省。
「そんないい方は良く無い。
ルエは、美人だ、自分が冗談でネタにする以上に、さ。
正直、出会えた俺は、運が良かった、そう思うレベルだから。」
彼女が、どんな相手なのか、それはこれから知ればいい。
上品とか、下品とか。自分も又、そう言うのは胸を張って言えない田舎者だから。
マスターに代金を支払い、荷物を持って、無い知識を総動員して、エスコートするように手を伸ばして。
そして、二人は去って行く。
その後どうなったのかは、二人のみが共有する、秘密―――
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からルエリさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からカルムさんが去りました。
ご案内:「夏祭り会場 平民地区2」にエルビーさんが現れました。
ご案内:「夏祭り会場 平民地区2」にジーゴさんが現れました。
■エルビー > マグメールは王都だけあって色々な催し物が行われることがある。
今、余は平民地区内に設けられた夏祭りの会場にやってきた。
異国風の祭りらしく、提灯と言う灯が多数吊るされ、屋台と言われる出店が並ぶ。
もっと奥では踊りや歌などが披露されておるが、生憎初めて存在を知った余が立ち入ることはできそうにない。
飛び入り参加オーケーと言うが、実際気軽に入れるものなのか?
なので、それらを遠目に見つつ、屋台の食い物を買っておいた。
まずはお腹が空いているのでイカ焼きなるものを所望する。
名前通り、烏賊と言う名の生き物を串に刺して焼いた食べ物だ。
タレが塗ってあるので店の前を通るだけで良い匂いがした。
余はたまらず一本購入し、人に当たらぬよう少し離れた所で静かに食す。
おぉぉぉ、これはこれは美味いぞ。
■ジーゴ > 仕事を終えて家路を辿っていただけだったのに、そこの風景はいつもと全く違った。
人が多くていつもよりも大きな音もしているし、街全体が浮かれている雰囲気だ。おそらく、お祭りの一種なんだろうけれど、この町で何回か見たことがあるお祭りとも様子が異なっているようだ。
人が多い場所は種族がら苦手だが、好奇心の方が勝ってしまったようで
明らかにきょろきょろと周囲の様子を伺いながら歩く少年は、ふと一つの屋台から漂う良い香りに気を取られ、獣の耳をぴこぴこと動かしながら立ち止まった。
「うまそ…」
嗅いだことのない匂いだけれど、香ばしくて美味しそうな匂いだ。
ピコピコと左右に動いてる耳だけではなく、鼻もふんふんと匂いを嗅いで。
ポケットから出した小銭の合計を指折り数えて、露天に貼られた値札と思しき数字と指を何度も見比べている。
■エルビー > 好奇心旺盛な余は、食している間も観察を怠らない。
家族連れ、カップル、友人同士、とかく一人では浮いてしまいやすい集まりな気がしてきた。
家人を連れてくるべきだったとかと思っている所で、どうやら露店の前で小銭と見比べている者を見つける。
獣耳…どうやらミレー族の様だ。
先日の神職による説教ではとかく悪し様に言われている種族だったが、こうして実物を見るとそうは見えない。
それに余としては興味が湧いた。
だから食い終わった串を捨てにいく序で、獣耳の人物に声を掛ける。
「お主、一人でやってきたのか。
余も一人で退屈しておったのだ。
丁度よい、余の話相手になるがいい。
早速だが、何か食べるか?
余はさきほどまでイカ焼きを食しておった。
なかなかに美味だぞ。
他にも焼きトウモロコシも上手そうだな。
どれがいい?」
■ジーゴ > 自分の計算があっていれば、ほんの少し小銭が足りない。銅貨2枚くらい。
でも、もしかしたら計算が間違っているかもしれないし…なとど考えながら、何度も指折り小銭を数えていたから反応がいつもよりは遅れた。
「え…お前…だれ?」
目の前に現れた人物に突然話しかけられたから、驚いて獣の耳がピーンと立った。同じくらいか少し自分よりも背が高い相手をジロジロと眺める。
即座に逃げなかったのは、なぜか突然ご飯をご馳走してもらえそうになっているとわかったからだ。それでも、突然の善意なんかに慣れていないから即座に信用はできない。
「んん…」
しばらく押し黙ったまま、時間をかけて話しかけられた内容を咀嚼する。
獣の耳はその間もずっと上に伸びたままだ。
どうやら、話し相手になれば、ご飯がもらえるらしい。
「あれ!」
相手がなぜ、話し相手になっただけでご飯をくれようとしているのかは結局理解できなかったが、すぐに襲われるとか痛い目に遭わされるようでもなかったから、
食べたいものを指差した。
さっきから少年が見つめていた焼きとうもろこしの露天だ。
■エルビー > 「余を知らんか。
余はエルビー・カルネテル。
この国の王族であるぞ。
恐れ入れ!」
余は胸を張り、自らの偉さをこれでもかと誇示した。
しかし、余にお前と言ってくる奴は久しぶりだな。
恐れを知らんのか。
余が胸を張っている間、こやつはずっと考えている。
この素晴らしい余の提案に即決しないとは。
「おお、お主眼が良いの。
余もあれを食いたいと思っていたのだ。
ほれ、早速喰らおうぞ。」
余は手早く焼きトウモロコシを二本購入する。
そして獣耳の人物と少し離れた所へ移った。
丁度よく、ベンチが置いてある。
「ほれ座れ。
そして名を名乗るが良い。」
余はベンチに座りつつ、一本を差し出した。
これまた焼けたトウモロコシの臭いと、タレが食欲をそそる。
祭りと言うのは最高だな。
■ジーゴ > 「おうぞくッ!」
ミレーの特徴がある獣の目が見開かれる。
その言葉を聞いた時点で、もう逃げたい、と思ったけれど
時すでに遅しだった。
今から逃げたらかえって不興を買うかもしれない。
「え…あ、」
焼きとうもろこしを買って、ベンチに座り、とうもろこしを受け取るまで、
完全に相手のペースだった。同じくらいの背格好できっと同じくらいの年齢だと思ったのに、王族と言われると緊張して萎縮してしまう。
それでも、とうもろこしを受け取ったのはそれがとてもいい香りを放っていたからだ。普段嗅ぎ慣れていない知らない調味料のようだ。
「オレ…?ジーゴだよ…じゃなくって、ジーゴです」
食べてもいいかなぁ、と思ったけれど、王族の手前。許可が出るまで食べないことにした。とうもろこしを見つめているミレー。
■エルビー > 「そうだぞ?
恐れおののくがいい。
フハハハハハ!」
眼を見開き、分かりやすく驚かれると余は気分が良い。
高笑いを浮かべ、口元はにやついてしまう。
しかし、ミレー族と言うのは余程不遇をかこっているようだな。
せっかく買ってやったのに委縮しているように見える。
「何をしている。
余が食っていいと言っているのだ。
遠慮せずに食べるといい。
お主が食わんと余も食べられんぞ。」
余は座ったまま、更にトウモロコシを突き出す。
風に載って、独特の香りが鼻孔を擽るだろう。
■ジーゴ > 「エルビーさま、ほんとに王族?」
高笑いしている王族を見るとなんだか、想像していた王族とは違うようで
きょとんとして、少年は首を傾げた。
ちょっと少年の緊張も解けてきたようだ。
「いただきます」
思っていたほど怖くはなさそうは王族に促されて、とうもろこしを受け取ると、すごい勢いで食べ始める。
お腹が減っていたのもあるし、香ばしいような香りが食欲をそそってたまらなかったのだ。
とうもろこしにかぶりつくと獣特有の尖った歯が除き、すぐに一粒残らず全て食べてしまうと、他の露天もベンチから眺め始めた。
■エルビー > 「別にエルビーでいいし、
無理して敬語も使わなくていいぞ。
余は使わんからな。」
余が召し抱えているならともかく、ただ出会っただけの相手にそこまで求めはしない。
ただ、相手の表情が少し解れてきた気がする。
「はっや。
もう食べ終わっているのか。」
余が半分も食べ終わらないうちに平らげているではないか。
それにしても鋭い牙だ。
余の部下の獣人たちにも似たような歯がついているが。
しかし、このトウモロコシと言うのは上手いが食べにくいな。
さっきの烏賊や着のようにはいかんな。
「何か他に食べたいのがあるのか?
買ってきても構わんぞ。」
余は財布をジーゴへと預けた。
この財布の中はこういった店で使いやすいよう、銅貨でいっぱいだ。
余は銅、銀、金、全て集めておる。気配りができるからな。
「余はまだ食べておるから、好きなだけ買ってきていいぞ。
その代わり、戻ってくるときにりんご飴を買ってくるのだ。」
■ジーゴ > 「エルビー?」
いいと言われているのに様をつけるのもいけないというのをわかってるから
少し躊躇しながら様づけも敬語もやめてみた。
その方が楽でもあるし。
「腹、へってた」
相手の倍以上のペースで食べ終わったが、いまだに空腹は解消していない。
とうもろこし1本くらいでは、まだまだだ。
「え…」
財布を渡されるとまた明らかに戸惑った。
中身が銅貨ばかりなことはまだ知らないが、受け取ったそれがずっしりと思いからだ。
ポケットに数枚の銅貨しか入っていないミレーとは金銭感覚が違いすぎる。
しかも、見ず知らずの相手に財布を簡単に渡してしまう警戒心のなさに、驚いてしまうも
空腹には勝てない。
「わかりま…わかった…」
りんごあめ?彼の頭の中には実ははてなマークが浮かんでいるけれど、
りんごあめが何かを尋ねる勇気は出なかった。
ベンチから人混みの方に再度歩いて行った少年は、目をつけていた露店に直行して、肉串、さっきのとうもろこしと同じ匂いがする白い粒を一緒に丸めて焼いているもの、それと約束のりんご飴を2セット買ってきた。
りんごのことは知っているから、りんご飴は見たらわかったようだ。
「肉となんかうまそうなやつ。あと、りんごあめ」
もしかしたらまだトウモロコシを食べていてもおかしくない相手に差し出した。
財布もちゃんと返すのを忘れない。
■エルビー > うむうむと、余は頷いて見せた。
この国の王族は恐ろしいのもいるが、余は違うぞ。
「なるほど、この国は餓えた奴が多いのだな。
なら今日は思う存分食べておくがいい。」
余とは事情が違う様だ。
なんだかもっと食べさせてやりたくなる。
「どうした?
余はジーゴは信用できる男だと思っておるぞ。」
余はこう見えて人を見る目に自信がある。
財布を渡して悪さをする相手とは思えない。
「良し、いい返事だ。
りんご飴は文字通り、林檎が入った飴だぞー。」
これは分かってないなと思った余は、ジーゴの背中に向けて語る。
「おお、よく出来たなジーゴ。
余は満足だぞ。」
財布を受け取り、りんご飴も受け取る。
早速一口齧りつく。
甘い飴の中にちょっとすっぱいリンゴが入っていてこれは美味い。
「ジーゴは普段どんなことをしているのだ?」
飴を齧りながら語る。
少なくともあまりいい暮らしをしてるわけではなさそうに見えるが。
■ジーゴ > 「んー、オレは腹減ってただけ」
とうもろこしをがっつきすぎていただろうか、と少し反省した。
最も、王族から見れば全ての庶民が飢えているように見えるのかもしれないけれど。
「え…そっか」
どうやら信頼されているらしい、王族の不興を買うのが嫌だから財布を持って逃げなかっただけ、とは言えない。
「りんごあめ、正解。よかった」
露店から食べ物を買い集めて戻ってくると、早速
いい香りと湯気をあげている肉串にかぶりつく。
片手には自分の分のりんご飴、もう片手には肉串と忙しい。
「オレ?オレは、うーんと、酒場で働いたり、冒険者ギルドの薬草あつめとか。あとは、洗濯と掃除と買い出し」
最後の方はご主人様と暮らしている宿屋での家事だ。
「えっと…おうぞくは何のしごとしてるの?」
王族が何か、あまり理解していない少年は肉を貪る合間に尋ねた。
■エルビー > 「いやいや、知り合いにも腹をすかしていたのがいてな。
単によく食べるだけだったかもしれんが。」
ああ、これは言い方が悪かっただろうか。
余は少し眉尻が下がってしまった。
信用しているといった時の反応が少し気になったが、追及しない。
概ね良くしてくれているのならそれでいいだろう。
「間違ってたら余が自ら買いに行く所であったな。
よく働くな。 ジーゴにはご主人様が居るのか。
引き留めてしまって大丈夫か?」
なんと、既に主が居るとは。
これは悪い事をしたかも知れんな。
余は肉を食っている最中のジーゴの顔を見上げた。
「うむ。王族と言っても仕事は色々なのだが。
余に限って言うと、今の余は学生だ。
コクマー・ラジエル学院に通い、勉強をしているな。
それと元々余は遠方から来ておるので、この国のことや
この街のことを学んでいる最中だ。
ジーゴのようなミレー族とも初めて話すから驚きがいっぱいだ。
ちなみに王族と言うのは、王の一族のことだぞ。
だから余もたま~~~にだが、王城に呼ばれることがある。
あまり進んで行こうとは思わんがな。」
これで良かっただろうか?
余はジーゴが納得したか、ちらと視線を送った。
■ジーゴ > 「うん!オレご主人様いるよ!」
そう答えた少年の目はキラキラと輝いていただろう。
ご主人様がいる、ということ自体が嬉しくて仕方がないという顔だ。
肉串の次、焼きおにぎりに手を伸ばしながら答えているから少し格好がつかないけれど。
「別に、ご主人様今日も帰りおそいと思うし、だいじょうぶ」
主人の帰りが早かったところで、特に晩御飯を必ず作らないといけない、みたいな仕事はないから問題はない。
「えんぽー?」
どこか違う場所からきて、学生をしているということはわかったのだが、
遠方がどこかはわからなかった。
食べていた焼きおにぎりを口から離して、問いかけた。
えんぽー、ってどこなんだろうと思いながら、またおにぎりを口にして。
元々マグメールの中でもこの街の中のことしか知らないミレーである。
説明されたところで、大陸などの概念は理解しないかもしれない。
しばらく、無言で焼きおにぎりを頬張っていたが、最後にリンゴ飴に到達すると、
鋭い歯でバキバキと飴を砕きながら食べ進める。
■エルビー > 「ほうほう、ジーゴにそんな顔をさせるとは。
さぞやいいご主人様なのだろうな。
仲がいい様で良かったぞ。」
ジーゴの瞳が輝き、嬉しさが顔に張り付いている。
余はジーゴを家人として招き入れることも少し考えておったが、諦めた。
これ程好かれている主ならば余が入る隙間はないだろう。
「まあ、マグメールではないことは確かだ。」
危ない、危ない。
そこに食いついてくるとは。
余はりんご飴を食べながらも、一瞬冷や汗が流れた。
余の正体については基本的に言及しておらん。
「りんご飴も上手かっただろう。
…おい、ジーゴ。
あれを見ろ!!」
余は突然、空を指さした。
光が打ちあがり、上空で破裂する。
異国から入ってきた花火という文化だとか。
この国の場合、途中魔法の手が入っているそうだが。
なんにせよ、見ていて面白いことは間違いない。
■ジーゴ > 「ご主人様はね!オレを買ってくれたの!」
彼からするとそれだけで満点のご主人様である。
王族が家に迎えようと思っていることなど気がつきもせずに、にかにか笑っている。
「ふーん?そこにはミレーっているの?」
マグメールでさえここ以外の場所はほとんど知らないから。
マグメールじゃない、と言われるとそれ以上の詮索はしない。
それでも一つだけ気になったことを問うた。
ミレーが奴隷じゃない場所ってあるのだろうか、というのが彼が常に気にしていることだ。
「これ、美味かった」
すっかり、買ってもらった食べ物を食べ終えると、特にりんご飴が美味しかった、
と食べた後の棒を示した。
「ッ!!!!」
突然の爆音にミレーの獣耳は大きく緊張して、反射的に立ち上がった、膝に置いていた食べ物の包装が地面に落ちる。
銃撃か爆発か、何かそういうものだと勘違いした少年はそのまま走って逃げようかと一瞬身構えたものの、
見えたのはなんだか綺麗な光だった。
もし、爆発だったらもう死んでるな…と内心胸を撫で下ろすも
何度も響く大きな音が描く光の花に釘付けになって直立のまま空を見上げた。
■エルビー > 「ほほう、それは良いご主人様だな。」
おぉぉ~~う、聴いてた通りだ。
この国では奴隷売買が横行していると聞くが、ジーゴも奴隷か。
今は嬉しそうだし、良い主人なのだろう。
「ミレー族はおらんな。
似たような種族の獣人はいるが。
それと余の出生地は人が住む様な場所じゃないからな。
粗っぽい連中だらけの土地だぞ。」
少し余計なことを話しすぎたかもしれんが。
これ位ならいいだろう。
ミレー族、どうやらいい暮らしをしておらんようだな。
だからと言って余に何かできるわけでもないが。
「余もそう思う。
どれも上手かったが、林檎飴が特に上手いな。
足りないなら…。」
爆音は別の危険を想像したらしく、警戒心をあらわにしている。
なるほど、事前に聴いてないとこういう反応になるのか。
余は落ちた包装を魔法で浮かせ、ベンチの隅に置いた。
花火はその間も次々と打ち上げられ、花の形になったり、
どこぞの出資者と思われる貴族の紋章になったりと変化する。
「余も出資して、王家の紋章を打ち上げるべきだったかな。」
■ジーゴ > 「字も数字もおしえてくれるし、帽子もかってくれる!」
彼の語彙力ではご主人様の優しさが伝わりきらないかもしれないけれど、
奴隷を奴隷扱いしないこの国では珍しい主人に仕えている運がいい奴隷である。
「そっか…ミレーってどこにでもいるわけじゃないのか…」
魔界のことなんて知らない彼は、荒っぽい連中だらけの土地と聞いても
治安が悪いのかな…だとしたらここと一緒だけどな、なんてそれ以上深く考えることはしなかった。
「あれ、なに?おはな?ひかり?」
最初は光の粒がたくさん夜空に光っているようにしか見えなかったのに、
だんだん花火自体に慣れてくると、何かの模様に見え始める。
紋章などの細かいものまで表現されている大きな光と
腹まで振動するような大きな音が繰り返されるのをまだまだ眺めている。
落とした包装をエルビーが魔法で浮かせていることなんて気がつきもしないままに
■エルビー > 「良い話だな。
ジーゴは運が良いのじゃないか?」
奴隷には学ばせない主も多いと聞くからな、心温まる話だ。
余も奴隷を買う時が来れば大事にしてやろう。
「まあ、余の居た環境が特殊だからな。
ああ、あれは花火と言ってな。
火薬などを詰めて、打ちあげた時に材料の組み合わせで爆発の仕方が変わるらしいぞ。
異国の文化らしいし、ここでは一部魔法を使っていると聞くがな。
なんにせよ普段なかなか見れる品物ではないからな。
今日見れて良かったぞ。」
感心が花火に移った。
正直、生地のことを話すのは気が引けていたので助かった。
余は花火の構造を語りつつ、ベンチに座ったまま見上げている。
ジーゴは余以上に花火に夢中だ。
声を掛けて良かった。
■ジーゴ > 「はなび!どーん!ぴかぴか!ぴかぴかー!どーん!」
詳しい説明がわかったとは言い難い。
光と音、振動が順番に来るだけで楽しい。
大きく、文字通り空に開いた花のようになるもの
細かい紋章を描いたもの
低いけれど横に長く光のシャワーのように広がるもの
いろいろな種類の光が順番に現れて、すぐに儚く消えていく。
彼がその儚さをどこまで理解しているかはわからないが、
夜の空が明るくなっている。それだけで、楽しいといった様子だ。
「どーん…?あれ、おわっちゃった?」
最大の盛り上がりを迎えた花火は、ひときわ大きな丸く花火を最後に終わってしまったようで、空に残った煙が見えるだけになった。
「ね、エルビーの生まれた場所にも夏のお祭りあった?」
ベンチに座り直して、エルビーの隣に腰をかける。
ここ以外の話を聞きたいとばかりにまた、エルビーの国の話を始める。
■エルビー > 「喜んでおるの。
また今度見に行こうな。」
夏はまだ続く。
ひょっとしたら、祭りも別のがあるだろう。
見つけて都合がつけば誘ってもいいだろう。
一人で祭りはお互いきついと思うからな。
「終わりの様だな。
準備も大変らしいから、仕方がないな。」
詳しくは知らないが、大層な人が準備に動くらしい。
分かっていても楽しすぎて、終わりはいつも物足りなくなってしまうが。
「ないない、そんな良い物ないぞ。
そもそもここほど文明的な物はないんだ。
もっとこう、暴れ者だらけの場所だからな。」
マズイ、また余の出生地に興味が向いておる。
うむむむむ…。
ここはそろそろ退散するとしようか。
「うむ、そろそろ余も家に戻らねばな。
またなジーゴよ。
困った事があれば余の屋敷に相談に来てもいいぞ。
フハハハハハ!」
余はゴミ箱にゴミを入れてから、高笑いを浮かべて去って行った。
■ジーゴ > 「また、こんど!あそぼ」
王族を友達か何かだと勘違いした少年はもちろんと喜んだ。
花火が終わってしまったのは悲しいけれど、エルビーと友達になれたのは嬉しいことだ。
「え…屋敷どこ…」
高笑いを残して去っていく王族を見送ってつぶやいたのは素直な疑問。
仕方がないから自分も普段よりは少し遅くなった家路を辿って。
ご案内:「夏祭り会場 平民地区2」からエルビーさんが去りました。
ご案内:「夏祭り会場 平民地区2」からジーゴさんが去りました。