2022/07/06 のログ
ウェンシア > 先程の指摘され慌てて恥かしがる彼女を思い返しながら、楽しげにジュースを飲み始める少女。二口、三口、ジュースが喉を通って行った後、ふと視界が暗くなっていることに気付いた。視線をジュースから上に向ければ、小麦色の肌が間近に見える…同時に硬直。ゆっくりとだがジュースが減っていっているのは、彼女がそれを飲んでいるからであろう。だって少女は以降全く飲めていないのだから。

「いや、ちょっと!え、え?なんで?なんで飲んでんの?!」

硬直が解けたのはジュースが半分まで減った時。なんで飲んでると言われても困るだろうが、第一声はそれだった。少女は言葉と共に思わず体を翻しストローから口を離してしまう少女…ストローを噛んで居たのだろう、離す勢いで少女側のストローが跳ね飛び、床に落ちてしまった。――殆ど飲めていない事に気付くと同時に恥かしさが一気に襲ってきてしまい、耳までも真っ赤に染めながら床に落ちたストローを眺めている少女。

フリージア > 「なんでって、半分ずつ飲む話してたから?」

アタシはこの時、何を言っているんだろう?と目が言っていたと思う。
順番を決める話がどこかに飛んでいたのと、アタシ自身は普段こういうことにあまり抵抗がなかったこともあり、
うっかりしていた。 もう少し気を使ってあげるべきだったと後悔。

咄嗟のことに驚いているウェンシアは、口に咥えていたストローを落としてしまったようだ。
あ~、なんだか可哀そうなことをしちゃった。

アタシは直ぐに店員さんを呼ぶと、替えのストローを持ってきてもらった。
ついでにアタシのを抜き取ってから、カップを差し出す。

「ほら、新しいストロー持ってきてもらったよ。」

首から上が茹で上がったみたいに赤くなっている。
面白いなと思ったけど、それを言ったら可哀そうなので心の中で留めて置く。

ウェンシア > 「いや…そうなんだけど…」

まさか同時に飲むなんて、という言葉を飲み込む少女。恥かしさもあったけれど、まるで恋人同士が行うような事を自分とやってしまって嫌じゃなかったのかな、とか、汚いと思われなかったのかな、なんて考えが上回っていた様子だ。言葉の後少し間を置いて、小さな声で『ごめん』と付け加えたのは、そんな思いがあったから。
それでもスマートに替えのストローを頼んでくれ、彼女のストローを抜いてまでジュースを差し出してくれる彼女。

「…ごめん…ありがと…」

もう一度の謝罪と、感謝の言葉。少女は差し出されたカップ、新しく刺されたストローに口を付け、ゆっくりとジュースを飲み始める。ある程度喉が潤ったのなら、今度は彼女の番。少女はほんの少し減ったジュースをどうぞと言わんばかりにぐい、と押し出した。…が、少女が口つけたストローは刺さったまま。彼女がしてくれたような気遣いが出来ないほどまでに緊張している少女だった。

フリージア > 「いや~、でもこれはアタシのミスだわ。
ちょっと気が抜けすぎてるかも。」

謝意を伝えてくれるけど、アタシも謝らないといけない。
気楽に接することができる相手だけに注意不足だった。

「お礼言われる程のレベルじゃないよ?
それと、アタシはこういうの気にしない方だから。」

カップを手に取ると、かなり減っていた。
もう一口でぐいっと飲み干してしまっても問題なさそう。
なのでアタシは差し出されたまま、ストローに口を付けて一気に飲み干す。
当然、ウェンシアとの間接キスになるのだろうけど。
そもそもそういうことに頓着しないタイプなので。
空になってからテーブルに置いて。

「おいしかったね。」

ウェンシア > 事実お互い様なのだが、ミスをミスと言える事はとても大事なこと。加えて気にしない方、と言ってくれる優しさに助けられた少女。少なくとも少女にとって嫌な奴では無くなった事は確かだ。

「全然考えて無かった…ビックリした…――あっ…――ぁ…」

最初の『あ』は自身のストローを抜き忘れてしまったから。その後の漏れるような声は…そのストローに口を付け、ジュースを飲み干す彼女を見たから。おいしかったね、と言葉をかけてくれる彼女に対して、恥かしそうに『うん』と言葉を返す。

「…あのさ、ヤじゃないの?その…私が口つけたのだしさ…その…」

気にしないと伝えられてもやはり気になる様子の少女は、未だ紅い顔をそのままに彼女に問うた。

フリージア > 「ほんとだね、びっくりしちゃったね。」

こんなやりとりもとっても楽しい。
今この時だけでも学院に入ってみて良かったような気がする。

「全く嫌じゃないけど?
ウェンシアみたいに可愛い子なら特に。」

なんだか湯気が出そうな程赤くなっているので言うかどうか迷ったけど、
結局口にしてしまった。
実際可愛いんだし、アタシがそう思っていることを伝えるのは悪くないだろう。

ウェンシア > 「…そもそもなんで二つ来なかったの…」

今となっては何故かは全くわからない。店員が間違えたのかはたまた間違った方向に気を利かせたのか…それとも彼女がからかう心算でこっそり頼んだのか…今となっては過去。それも思い出になりつつある事に気付くと、言葉の後に少女は思わず、ぶふっと噴出した。

「…へ?私が…?――え、あ…お…」

言葉に詰まる少女。なにせ可愛いだなんて初めて言われたのだ。反応もできない、返答もできない、出来るのは言葉にならない奇妙な声を、視線を逸らしながら発することだけ。上手く話を誤魔化すかのように

「…フリージアさんだって可愛いじゃん?さっきの…コレとか…」

人差し指同士をつんつんとつき合わせてみせて反撃を。彼女の困った顔を見れば、少女は屈託の無い笑顔を晒すことになるだろう。

フリージア > 「そりゃあ、そういう組み合わせに見えたんじゃない?」

じっくりと観察するまでもなく、そんなペアは複数居た。
と言うか、そういう人たちにも人気のお店なんだろう。
言っておくが、初めて飲んだアタシがわざわざ頼んだなんてことはない。

「あれ、言われたことない?」

なんて反応が返ってくるかと思いきや、どうやら戸惑っているみたい。
でも次の返しには思わず言い負かされた気がした。

「もう~、その話掘り返すのやめてよ。」

アタシは眉尻を下げ、ぐったりと肩を落としていただろう。
それに対してウェンシアは随分と良い笑顔を見せている。
どうやら、だいぶ解れてきたみたい。

ウェンシア > 「そういうって何…そもそも初めて会って、初めて一緒してるのに見えるわけないじゃん?」

そう言えば初めて会って、初めて一緒にジュースを飲んで…そういう風に見えるとしたら、自分は一体どんな風に彼女に接していたのだろう。そう見えるような事をしていたのだろうか…少女はほんの少し、自身の軽さに後悔した。しかしそれも僅かな時間。

「うん、10年位前とかには言われてた気がするけど…そういうフリージアさんは言われまくってるっぽいよね?うん、絶対言われてる。」

両手をずい、と彼女に近づけ、彼女の目の前で人差し指をつんつんして見せる少女。話はしていないから良いよね?といわんばかりの意地悪な笑顔を向け、つんつん、つんつんを繰り返して見せている。

フリージア > 「会って初めてって…店員さんはその辺わからなかったんじゃない?」

いや、ひょっとしたら分かってて逆に気を使ってきたのかも知れないけど。
今更それを聞くのも少し違う気がして、まあやめておいた。
実際、今のアタシたちは仲が良さそうに見えるだろうし。

「10年前って…ウェンシア、まだ10代だよね?

アタシ? え~、そう見える?」

それにしても、随分と悪乗りしてくれるものだ。
仕方がない。 アタシも悪乗りでお返ししてやるか。

アタシはカップを空いてる椅子の上に置くと、テーブルの上に身を乗り出した。
でもって、意地悪な表情のウェンシアの顎に手を伸ばし、こちらに近づけようと。
別に唇を奪うつもりはなく、あくまでフリだけど。

ウェンシア > 「そかな…だって私がジュース買った後雨宿りしてるのわかってただろうし、フリージアさんが店の中居たの知ってただろうし…でもなんか、不思議な気分。」

数分前まではぐいぐい来る変な人。今はこうして冗談を言える人。鬱陶しく振り続ける雨がとても有難く感じる少女だった。

「子供の頃はみんな『可愛いねー』って言ってくれるじゃん。――うん、見えるよ?髪、綺麗だし、綺麗な顔立ちし…?」

すぅっと伸びてくる彼女の手。その手が自分の顎に重なれば、少女は言葉を失った。再び顔を紅くして戸惑うも、きっと先程までの意地悪のお返しだと察した少女は、悪戯っぽく唇を突き出し、誘われるまま顎を軽く上げて見せる。まさか口付けてくる訳が無いと思っているが故だ。

フリージア > 「アタシとしてはラッキーだったけどね。
校内だと声掛けるタイミング出来なかったかもしれないし。」

雨も嫌なことばかりじゃないのは分かっているけど、
今日は格別に良いことを持ってきてくれた。
まだ降ってるけど。

「ウェンシアも可愛いよ。 アタシのことばっか褒めてくれてありがとね。」

とある時期から、アタシは自分でも言うのなんだけど結構な女好きで。
言葉通り、ウェンシアの事も可愛い女の子と思っている。
だから最初は冗談のつもりだったんだけど。
ウェンシアが唇を突き出してくるので……その場の勢いで唇を重ねてしまった。

リップ音を響かせ、啄む様な口づけを堪能する。
そのままだと、今度は唇を開き、舌を入れちゃうだろう。

ウェンシア > 確かに校内であれば声を掛けるタイミングなんて無かっただろう。常に近寄り難い雰囲気を出している少女に人前で声をかければ、声をかけた方まで変な噂が立ってしまうかもしれないし。
偶然であってもこうして仲良くなれたのは、彼女の言葉通りラッキーだったのかもしれない。

そんな事を考えていると、唇に柔らかい感触が感じられた。気付けば彼女の顔が物凄く近い位置にあり、その顔が小さく動いている。――キスされている、その事に気付いたのは、数回ノイズが鳴った後。

「…え…?!」

まさか口付けてくるとは思っていなかった少女は暫しの硬直。初めて会って初めて一緒にジュースを飲んで初めてキスして…?そこで少女は現状を把握し、慌てて顔を背けた。

「…ほんとにシてくるとは…思ってなかった…ごめん…」

彼女に横顔を向けたまま呟く少女。

フリージア > 当たり前だけど、お互い同じ飲み物を飲んだ直後だったので同じ味が広がる。
甘い甘いジュースの香りがするキスはなんとも甘美だ。
ウェンシアからすると予想外の状況だったみたい。

だけども流石に舌を入れるまでの隙はなかったようで。

「なんで謝るの。
別に友達同士でキスなんて普通でしょ。」

これはまあ、アタシの持論だけど。
でもこの国の人ってそんな感じの人が多い気がするし。

ウェンシア > あっけらかんと当たり前と口にする彼女。邪な感情なんて全く見えない口調でそう告げられると、なんだか拒否したこちらが悪いような、そんな気さえしてくる。

「え、あ、と、友達同士のキスだもんね、うん、そか、そうだよね…びっくりしたから、うん…」

その友達同士のキスに思わず胸を弾ませてしまった少女は、しどろもどろの口調でそう告げる。しかし顔は横を向いたまま、目は泳いでおり、彼女の顔をまともに見れなくなってしまっていた。それでも『友達』と言ってくれる事が嬉しくて、顔が小さく綻んでいる。

フリージア > 「そーそー。
この辺りでは友達同士でのキスなんて普通だし、
友達同士でのホテルとかも普通だから。」

アタシは笑みを見せつつ、片手を伸ばしてウェンシアの横顔や髪を触れようとしていた。
動揺しているのか視線は泳いでいるけど、表情からまんざらでもなさそうに見える。

で、アタシなりのプッシュをしているんだけど。
ここで言っていることも嘘じゃあない。
学院の中でもそんな空気を出しているペアはたまに見かける。

ウェンシア > 「え、え、友達同士でホテルって…ホテルで何すんの…っていうかそもそも女同士だし…」

彼女の言葉に簡単に狼狽えてしまう少女に再び彼女の手が伸びた。少女は顔を背けたまま、視線だけを気になるその手に向けている。その手が自分の顔に触れれば、髪に触れれば逆上せたような深い吐息を吐き出し、くすぐったさに耐えるように身を小さく震えさせる。

「…ふぁ…っ…く、くすぐったいから…」

続けられる筈の『止めて』の言葉が出てこない。少女はそれでも理性を総動員し、

「や、止めよう…よ…」

とても弱弱しい声を甘い吐息と共に吐き出した。

フリージア > 「え、それ聞いちゃうの?
何する……って言わなくてもだいたい分かるんじゃない?
教えてあげてもいいけど。」

見た目や仕草からな~~んとなく予想はついてたけど。
こういうの全く経験ないんだろう。
でも別に嫌悪感とかじゃないし、何なら興味はあるんだろうね。

その証拠に体は震えているけど、視線はばっちりこっちに向けられているし。

「くすぐったい? ほんとうに?」

アタシは髪や頬を触れながら、少しずつ顔を近づける。
そのまま、邪魔されなければ耳元で囁いたり、息を吹きかけたり。

「これされると気持ちいいと思うんだけど?」

ウェンシア > 彼女の意地悪な言葉に誘導されるのは、年齢相応に読み漁った恋愛小説の内容だった。だから彼女の言葉通り、教えて貰わなくてもある程度の事は解る。しかしそれは男女のそれであり、少女の想像を超えたものだ。

「…ほんとに…くすぐったい…から…ぁ…ダメだって、ほら…人、見てるし…」

近づいてくる顔は耳元に、彼女の指は自分の髪や顔に。そんな官能を与えられたら、少女の体は熱を帯びるばかりだ。少女の視線は彼女を見据えたまま、その顔がゆっくりと彼女の方へと向いていく。既に女同士の背徳溢れる口付けを体験している体が、勝手に動いていくのだ。そして彼女の問いかけには

「……――♡」

無言ではあるが大きくぶるりと体を震わせてしまった。

フリージア > 「大丈夫と言いたいけどあまり派手な事すると通い辛いか…。」

正直、店の雰囲気的に多分怒られそうにないけど。
それと注目を集めてしまうことは別だ。
アタシはいいんだけど、ウェンシアが来れなくなったら可哀そうだし。

「ね、これからホテル行きましょう。
ここから先をたっぷりと教えてあげる。」

アタシはウェンシアの頭に手を載せ、ポンポンと撫でている。
最初の時にしたら相当拒絶されてそうだけど、今なら大丈夫だろうと。

ウェンシア > 頭を撫でてくる行為も嫌悪感は無い。寧ろ心地良さまで感じてしまう始末。そんな状態でホテルに誘われ、先をたっぷりと教えてくれる…少女は小さく甘い声を漏らしていた。きっと想像しているのだろう、男女の営みではない、女同士の爛れた営みを。
少女は官能の渦に飲まれてしまっており、横を向いていた顔はすっかり彼女の方を向いていて、先程口付けた状態にまで戻ってしまっている。少女は無意識にも近い状態で頷く…が、雨があがっている事に気がついた。

「…ぁ…わ、私、寮だから…もう帰らないと…ほ、ほら、雨、あがったし…」

流石にこれ以上はマズい事になる、そう感じた理性がブレーキをかけた。それでも彼女の顔を目の前に、暑く甘い溜息と小さな声を吹きかけ続けている。

フリージア > ん~~~…。
手ごたえは悪くないんだけどな。
ウェンシアもどこで知ったのか知識はありそうな反応だし。
今なんてもうアタシの顔を見て来てるし。
どうしようかな。 
本当に嫌がってる感じでもなさそうだし。

…と、アタシはウェンシアの顔を覗きながら色々と考えていた。
ウェンシアの事を傷つけたくはないんだけど。
でも心底嫌がってる訳でもないか。

「そうだね、だからこそ近くのホテル行きましょ。
大丈夫、遅くなったら泊まっていけばいいんだし。」

アタシは財布を取り出すと、二人分の食事代をテーブルに置いた。
ウェンシアの手や腕を半ば無理に取ると、そのままホテルへ向かおうと。
と言っても、力ずくで連れて行くわけではないので振り払われるかもしれない。

ウェンシア > 彼女が自分の腕を無理に取ると、急激に恐怖が沸いて来た。きっとあんな事やこんな事を…それ以上の事をされてしまう。期待もあるが不安が勝ってしまった様子の少女。

――店の外に出れば少女は慌てて手を振りほどき、

「…ご、ごめん…その…フリージアさんの事、嫌いじゃないけど…その…」

流石に会ったばかりの人物に許す気は無い様子。

「あ、あの、ジュースありがと、後、雨止むの付き合ってくれてありがと!」

水溜りの広がる平民地区の石畳。その水溜りに大きな波紋を描かせながら、少女は彼女の元から逃げるように去っていった。それでも彼女に与えられた官能は少女の心と体にこびりついており、学園内で彼女を見かける度に頬を染める事になるだろう。

フリージア > 「うん、じゃあ、学校で会った時はよろしくね。」

どうやら、急ぎ過ぎた見たい。
店を出た瞬間に腕を振り払われてしまった。
アタシもまあ、そう出来るように強く掴んではいなかったんだけど。

「今度会う時が楽しみ~~。」

多分だけど、見かけたら分かりやすく反応してくれそうな気がする。
アタシは一人で鼻歌を歌いながら自宅の方へと向かっていった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からウェンシアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からフリージアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にブレイドさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にカティアさんが現れました。
カティア >  
 この日、曇り空によって日差しが弱く。
 強い日差しが苦手なカティアは、機嫌よく、平民地区の通りを歩いていた。
 特にこれと云った目的があるわけでもなく。
 強いて言えば、姉弟子の様子でも見に行こうか、と言ったくらい。

「――少し遅いけど、お昼にしてもいっか」

 そんな事を考えながら、どこへともなく、足を運んでいた。
 

ブレイド > 今日は曇天…日差しは弱く
心なしか、あまり気温も高くないような。
とは言え、フードの中は蒸し暑い。
少しぐったりとした様子で通りを歩いていると、前に見た人影。

小さな体に長い銃…見間違いではないだろう。

「ん…えーっと…よお」

なんか前に話したときはさんざん転がされたのでなんと声をかけていいものか…。
むしろ声をかけてよかったのかわからないが、不器用に挨拶してみた。

カティア >  
 
「――ん、あら」

 かけられた声に振り向けば、暑苦しそうなフードの青年。
 呼びかけられた声が、ぎこちない色と、いまいち温度が低かったのは気のせいじゃないだろう。

「どうしたの、ブレイド『くん』。
 元気がないじゃない」

 腕を組んで、くす、と笑う。
 きっと声の掛け方に迷ったのだと思うと、また揶揄ってしまいたくなるが。
 

ブレイド > 声をかければ以前とはすっかり様子が違う。
前にあったときは威嚇するような返事だったが…今回返されたのは意外にも笑顔。
『くん』付けなあたり、なんとなくどう思われてるのかわかってしまうような。

「元気ねーって…そりゃ、万年元気とはいかねーよ。
ってか、カティアは今日は元気なんだな」

前は暑さでやられていたが…今日は体感的にはマシ。
こんな格好をしている自分に比べれば元気なのは当然だろう。

「えーと…アンタは…散歩か?」

カティア >  
 
「まあ、ここ最近ではマシかしら。
 日差しが強いのは苦手なのよね」

 暑さだけなら耐えられるが、日差しはどうにもならない。
 だからこの間は、この青年を連れまわして帽子と塗り薬を買ったのだ。
 今日も、帽子こそ被っていないが、肌にはしっかり先日の塗り薬を塗っている。

「んー、そうね。
 散歩と言えば散歩。
 特に予定もなかったし、どうしようかと思ってたところ」

 と、あえて予定が無いという事を強調して言って。
 青年がどうするのかを楽しむように、見上げる。
 

ブレイド > 「肌が焼けるんだったか。
まぁ、買い物のかいが無い日だと思っちまうと複雑だけど…
くそあちー晴れの日に比べりゃマシか」

一日晴れてなかったくらいで帽子や薬が無駄になるわけではない。
とはいえ、引っ張り回されたからにはできれば使われていた方がいい。
薬は目に見えないので、判断できるのは帽子くらいなのだが。

「ん、ふーん…あー…」

様子をうかがうような視線。
そういえば、気の利いた台詞を考えるように言われていた。
しかし、いつ顔を合わせるかわからないのだから、日頃言わないセリフがとっさに出るわけもなく…

「なんつーか…
メシ、とか、もうくってたりするか?」

でてきた言葉はやはり不器用。

カティア >  
 
「あら、薬は今日も塗ってるわよ。
 ほら、嗅いで見る?」

 なんて自分の鎖骨の辺りを指でなぞって、試すような視線を向ける。
 近づけば、薬に混ぜられたほのかな香料の匂いが分かるだろう。

「――ふー、ん?」

 不器用な言葉が出てくると、猫のように目を細めて顔を覗きこむ。

「――それ、誘ってくれてるの?」

 と、にやにやとした口元を隠さずに問い返した。
 

ブレイド > 「…嗅ぐって…
嗅いでもわかんねぇって…」

視線を誘導されたその先、白い肌に映える鎖骨のライン。
正直薬やら化粧の臭いはよくわからない。連れ回されたときも、そこらじゅうで似たような匂いがしていたし。
カティアがこちらを見れば、頬を染めているのがわかるだろう。
こちらも鎖骨から視線を彼女の顔へと戻すと…バッチリ目があった。

「うぉ…
え、ああ、まぁ、一応…
そのまま宿に連れ込むってのも風情ってやつがねーだろうし…」

言い繕っているが、気の利いたセリフなど全く思いつかなかっただけだ。

カティア >  
 
「風情、ねー?」

 くすくす、と笑いながら青年を見上げる。

「顔、赤くなってるわよ?」

 なんて指摘しながら、どうしようかと考えるように、手を顎に当てて。

「そう、ねえ。
 そういうの、考えてくれるのはいいけど。
 結局、抱きたいんでしょ?」

 なんて言いながら、とんとん、と歩を近づけて、青年の胸に手を添えながらつま先立ちになる。

「――私、初めてなの」

 と、青年にだけ聞こえるように囁いた。
 

ブレイド > 「うぐ」

指摘されると目を丸くして呻いてしまう。
こういう…あからさまなナンパと言うのはなれてないのだから仕方のないところもある。
だが、それにしたって我ながら下手すぎだ。

顔が赤くなっていることを指摘されるだけならまだしも、まるでダメ出しのような言葉を投げられる始末。
フードの上からガリガリと頭をかきながら目をそらし。

「……そりゃ、そーだけどな…。
だからって、お前…抱かせろーとかそんなふうには言えねーだろ。
だいいち…」

考えろと言われて何かをするというのはけっこうな無茶振り。
相手はそれなりに心構えがあるのだから。
それに対して、カティアが囁いた言葉はこちらの虚を突くもので、思わず言葉が途切れてしまった。

「んな…?」

カティア >  
 
「ん、なに?」

 言葉が途切れた青年を、至近からじっと見上げる。

「――あら、もしかして意外だったかしら。
 私が経験豊富だとでも思った?」

 青年の胸に、以前のように手を触れて。
 くすり、と意味深長な笑みを向ける。

「それで――ご飯の後、どうするの?」

 そう、ゆっくりと目を細めながら質問する。
 

ブレイド > 「ん、だって…そりゃ…
あんな感じだったらそう思ってもしかたねーだろ」

言動やらなにやらで判断できるものではないが、意外だったのは確か。
だからこそ、言葉を失ってしまったし、見据える瞳には驚きの色を見せている。
しかも、初めてといいながら全く調子を崩さない。

それこそ、このままどうなってもいいとでも言うような…
そんな表情を見せつけてくる。
少しばかり困惑したまま、彼女の視線を受け止め

「えー、あー…せっかくだから、その…
オレ、今夜の宿が決まってなくて、いいところがあったら…
ん、む…えーっと、抱かせてくれ」

彼女の視線は、まるで『正直に抱かせてくださいと言ったら?』とでもいってるかのようで。
結局は繕うこともできずにカクリと項垂れた。

カティア >  
「――ふふ、正直になった」

 『抱かせてくれ』という言葉に、表情が和らぐ。

「まずはご飯にしましょうか。
 良い食堂と、いい宿を知ってるわ」

 そっと踵を下ろして、一歩離れる。
 そのまま、右手を差し出す。

「それじゃ、行きましょ?
 案内はしてあげるから――そこからはちゃんとリードしてよね」

 そう言葉にして、少し挑戦的な笑みを向ける。
 

ブレイド > 「それでいいのかよ…」

初めてと言ってた割には肝が座りすぎているような。
笑顔になったカティアにこちらは困惑の色を深くする一方。
手のひらで転がされている感は否めない。

差し出された手を取れば、むしろ手引されているのはこちらのようで。
いや、実際宿には案内されているのだが…。

引かれる手の先、その表情を見れば、彼女が言っていることが本当なのか嘘なのか
冗談なのか本気なのか…どうにもわからず、食べた食事の味もなんだかぼやけた感じで。

………
……


「ほんとに宿に連れてくるのか」

引っ張られてきてしまった。

カティア >  
 
「――良いかどうかは、キミ次第だけど。
 ね?」

 笑みを向けながら、繋いだ手を引いていく。
 別に特別ななにかを期待しているわけじゃない。
 ただ――手を繋いだ青年には少しだけ。

 ――――
 ――
 ―

「――そりゃあ、来るでしょ?」

 と、宿の部屋の鍵を青年に渡す。

「それじゃ――リード、期待してるから」

 自分の唇に指先を当てて、片目を閉じて見せた。
 

ブレイド > 結局真意が見えないまま、宿にたどり着いてしまった。
それでも態度を変えないどころか、期待してるとなどというのだから…。

「ここまで来て冗談とか言うなよ?
いや、言うなら今のうちだけどな……」

彼女がいい女であると以前言ったことに偽りはなく
抱かせてくれと言ってしまった。

「部屋まで連れて行ってお預けは無しにしてくれよ?」

鍵を手にして、今度は彼女の手を引くように歩き出す。
たどり着いた部屋にはベッドが一つ。

「オレは気にしねーけど、汗くらいは流したほうがいいかもな」

ここに来て、ようやくフードを下ろす。
ミレーの耳を立ててパタタと動かし、コート掛けに外套を投げれば彼女の体を引き寄せてみる。

カティア >  
 
「冗談のつもりで、こんなことすると思う?」

 部屋に入れば、自室のように気安く、ベッドの前まで歩いていく。

「私も汗くらい別に気にしないけど?
 あなたの汗、嫌な味もしないし」

 そう言いながら、ベッドの横にマスケットを立てかけて下ろすと、フードから現れた耳に、『ふぅん』と鼻を鳴らした。

「ああ、それでこんなに暑いのにフードなんかしてたんだ。
 ん――」

 引き寄せられれば、そのまま腕の中に納まるだろう。
 それだけ小さな体というのが改めて実感できるはずだ。

「――うん、悪くないわね」

 腕に抱かれれば、青年の匂いが心地よい音になって頭に響いた。