2022/05/23 のログ
ヴェルソート > (そのまま、真夜中の演奏会はしっとりと、公園の空気を震わせ、熱を帯びさせて……。)
ご案内:「王都マグメール平民地区・公園」からヴェルソートさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアリアティカさんが現れました。
アリアティカ >  
「魔物退治、商隊の護衛、盗賊退治、逃げた奴隷探し、魔物退治……」

壁面に掲示された依頼書を順繰りに指差しながら、ひとり呟く。
奇妙な意匠の杖を手にした小柄な姿。
周囲には、魔術士の少女という印象を与えるだろうか。

「ううん……オレだけで退治なんていうのは無理だし、
 逃げた奴隷の人を捕まえるなんて、なんだか嫌だし……」

杖を抱きながら漏らした言葉は、いささか外見に似合わない男っぽいものだった。
王都の数ある冒険者ギルドの中でも、取り分け小さなこのギルド。
穴場だからと活動の中心にしていたものの、今日は良い依頼が見つからない。
なにか見落としはないかと何度も掲示を見直す。
夢中になって、掲示の前を随分と長い時間専有していることに気付いていなかった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にミシェリさんが現れました。
ミシェリ > 遊び相手を求めて街をさまよう魔女装束の女。いつもならば人の多い大通りなり、餌で釣りやすい子の多い貧民街辺りを散策していたけれど、今日目をつけたのは小さな冒険者ギルドだった。仕事の取り合いとなるような大きなギルドに比べて、こういったところには駆け出しの若い冒険者が立ち寄る事も多い。それを目当てに、併設の小さな酒場にて盃を傾けて時間を潰し。ふとした時に掲示物のある方に視線を向けると、小さな姿が目についた。その様子を暫し眺めてから、くすりと笑う。

「……お仕事、お探しですか?」

飲んでいたグラスの代金を支払ってから席を立ち、静かな歩みで小柄な後姿へと歩み寄っていく。手を伸ばせば届きそうな距離までやってくると、耳元に口を寄せるような近さで問いかけて。

アリアティカ >  
「賞金首、魔物退治、ゴブリンの殲滅……
 わあ、こんなの絶対ダメ――ひゃっ!?」

背伸びをして上の方の掲示にまで指差し確認をしていたところ――。
耳元を撫でる微風と共に女性の声にくすぐられて、首をすくめて飛び上がってしまった。

思わず小兎のように肩を縮めながら振り向くと、そこには魔女のような帽子を被った女性。
そういえば、ギルド内の酒場に目を向けたときに見掛けた気がする。
たっぷりと驚きの間を置いてから――ようやく、その女性へ言葉を返すことができた。

「は、はい。今日はなんだか荒っぽい仕事ばっかりで……。
 あの、もしかしてお姉さんも、冒険者をされてるんです……よね?」

少年が目を合わせるには少し勇気の必要な、整った顔立ちの女性だった。
そのせいかどこか作り物のような、人形のような印象を受ける。
それがまた少年の緊張を高めさせた。
緊張をごまかすように杖を強く抱き、おずおずと彼女を見上げて。

ミシェリ > 途中から聞こえてきた呟きが語る仕事の内容は、目の前の小さな子には不向きだろうと思えるものばかり。それを加味して頭の中で誘いかける算段をしながら一声かけてみたあと、思った以上の反応ぶりに思わず笑ってしまう。くすりと声を忍ばせながら、跳び上がる身体にそっと手を添えて、うっかりバランスを崩さないよう支えとし。こちらに向き直るのを待って、その手を下ろし、作ったような微笑みとともに会釈をした。

「私は…厳密には違うかもしれません…が、好きな時に働いて、好きな時に遊ぶ…という意味では似たようなものかもしれませんね」

気侭に遊び歩く日々を冒険と言ってよいのか首を傾げながら、杖を抱く姿を観察し、ぴくりと眉が跳ねた。少女とばかり思って声をかけたけれど、どうやら勘を外したらしい。この部分はあまり間違えた事がなく、意外に思いながら、それでも少女と見紛うような可愛らしい様子に笑みを崩す事はなかった。恐らく駆け出しの魔術師だろうか、予想をしてから傾けていた頭を起こし。

「…荒っぽいお仕事は、苦手そうです。…そこで、相談なのですが…私の手伝いをしていただけませんか?ちょうど、魔術師の方を探していたところで…」

そう尋ねるとともに、懐に忍ばせていた紙の中から一枚を選び、差し出す。依頼書めいた体裁の紙面に書かれていたのは、自身が仕事をする間の魔力をサポートしてほしいという簡単な内容のもの。いかがでしょうかと、少年の反応を待ち。

アリアティカ >  
跳ねたこちらの身体をなだめるように、ごく自然に手を添えられて。
子どもにそうするように、柔らかい笑みを向けられていたことに気付き。
一人前の冒険者とはいえない自身の有様に頬を染めてしまいつつ。

「好きなときに働いて、ですか?
 報酬のいい仕事ができると、そういう生活もできるんでしょうか?」

目の前の女性には一見すると、それほど強そうな印象は受けない。
ただ、報酬のいい仕事も難なくこなせそうな雰囲気はなんとなくあるように思えた。
身長以上に大人を感じさせる物腰を彼女に感じるからだろうか。
専業冒険者ではないものの、熟練の魔術士。そんなところだろうと。

「あ、あはは……荷物運びくらいならできるんですけどね。
 お姉さんの手伝い、ですか? でもオレ、魔術はちょっとしか使えなくて。
 治癒術っていうか、治療ならわりと得意なんですけど……」

自虐を含んだ苦笑いを返しつつ、差し出された紙面を受け取る。
役に立てるかどうか弱音を零しながら目を通した内容は、けれど自分でもできそうで。

「魔力のサポートくらいなら、きっと大丈夫……ううん、やってみせます」

これも声を掛けられての指名依頼。
困っている人の役に立てそうだと思えばやる気も湧いてきて。
報酬を確かめもせずに頷いていた。

ミシェリ > オレという一人称からイメージする性格よりも随分大人しそうな印象を受ける。緊張して杖を抱き締めたり、頬を染めたりする様子は本当に愛らしい少女のようだ。今日はこのギルドに足を運んできて正解だったと、ほくそ笑みたい気持ちは胸の中だけに留めておく。あとは彼が依頼を引き受けてくれるかどうか。

「何人か、お得意様がいるので…ありがたい事に、お金にはあまり困らないのです。おかげで、さぼり癖がついてしまうのは困りものですが」

冗談めかした風に言いながら、肩を竦めてみせる。少年が依頼書の内容を読み終えるのを待ち、快い返事を受けると、薄い微笑を浮かべていた口角を機嫌よさそうに持ち上げる。

「よかった。大丈夫…荷運びみたいに道をおぼえる必要もない、簡単なお仕事ですよ。さすがに、魔力を持たない子には難しいかもしれませんが…その点は、問題なさそうです」

快諾に対して、ぽんと嬉しそうに手を合わせる。自信を持たせるためにそう告げながら、それならば早速とばかり、足をギルドの出口へと向けた。目配せ一つで、ついてくるように促して、少年があとから続くのを確かめて、この場をあとにするだろう。そして、外へと出た途端、手にしたハンカチで唐突に彼の口と鼻を覆うとする。染み込ませておいた意識を遠のかせる薬はしっかりと作用したかどうか、いずれにしても二人の姿が見えなくなるまで、そう時間は要さなかったはずで――。

アリアティカ >  
サポートが主になる治癒術士にとって大事なものは人との縁だ。
そう先輩冒険者は言っていた。
今日は良い仕事がなかったおかげで良い縁に恵まれたのではないだろうか。
今日もこのギルドへ来て良かった、と改めて幸運を噛み締めつつ。
ついでに、綺麗な女性と知り合えたことも単純に少年として嬉しかったり。

「はい、魔力ならちょっと自信はあります。
 お役に立てるように頑張りますね」

嬉しそうな女性を見るとこちらも嬉しくなり、自然と微笑みを返せていた。
彼女の髪が自分と似ているから、親近感も抱けたのだろうか。
気付けば初対面の緊張も緩み、彼女の目配せも見逃さずにあとに続くことができて。
屋外の日の光に目を細めた――それがそのときの最後の記憶だった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からミシェリさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアリアティカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアリアティカさんが現れました。
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