2022/05/14 のログ
ミンティ > 視線を感じながら、給仕服まで貸されなくてよかったと心底思っていた。
例え視線を向けられていなくても、慣れない服装で働く事になっていたら、きっと満足に動けなくなっていただろう。
そんな事を、短いスカートを翻しながら笑顔をふりまく、大人の女性を眺めながら考えて。

「お待たせしました…、……えと、…その、……わたしは、どうしたら…」

戻ってくるように言われたから戻ってきたけれど、付き合うといってもどうしたらいいだろうと、そばに立ち尽くしたまま。
なんとなく、おいしそうに果物を食べている様子を眺めて。あらためて表情を観察しても、不満そうな顔はしていない事に安堵する。

「あ……、すみません…」

ぼーっと立ったままでいたから、マスターにも気をつかわせたのかもしれない。
サービスだからと、少年に提供したものと同じハーブティーのグラスを差し出されると、申し訳なさそうに受け取って。
しばらく迷ったものの、このまま立っていても仕方がないだろうと考え、隣の席に腰を下ろし。

「……お口に、あいますか?」

フルーツはともかく、お茶の方はどうだろうと小首をかしげた。
自分の好みで頼んでみたけれど、もしかしたら人によって好みがわかれる味かもしれない。
心配そうに視線を送りながらも、いつもに比べて声を出して疲れていた喉を、ほんのり爽やかな風味のお茶で潤して、ふは、と吐息をこぼす。

ユーリィ > 仕事が終われば、彼女が戻ってくる。ならばと少年は笑顔で迎え、隣を促そう。
前と同じ様に、彼女の分を――そう思っていた矢先に、店主がお茶を出してくれる。
気遣いには感謝しつつ、今度また使うことでお礼をしようと心に決めた。

「ん、ボクとしては、今より仲を深めたいなぁって思うんだけど。
 例えば、お互いをもう少しよく知ったり、遊んでみたりとか、ね」

という訳で、と彼女を手招きして隣の席を勧めてみよう。
彼女が隣に腰掛けるなら、満足そうに自分のお茶を一口。
初夏に相応しい、さっぱりとした呑み口のそれを堪能しつつ。

「ん、新鮮なフルーツをたっぷり味わえてよかったよ。
 それに、ミンティの前と違った姿もしっかり見られたし。
 エプロン姿、今日だけじゃなくてまた見せてよ。似合ってたし」

少年も喫茶の心得はあるし、ハーブティーも好みの内だ。
味や香りもさることながら、効能という点で薬にも悪戯の種にもなる。
例えばローズマリーやラベンダー、ペパーミント等の香草は、媚薬にも鳴る代物だ。
警戒されずに忍ばせるにはもってこいなんだよねぇ――と、舌の上でお茶を転がして。

「おや、中々いい飲みっぷりじゃない。喉乾いてたんだ。
 結構緊張していたみたいだし、この手の仕事は声を張るもんねぇ」

経験あるよー、と苦笑しながら、彼女の疲れを労わんとする。

ミンティ > 本業でも接客の機会はあるけれど、短い時間に何人も相手にするような事は稀だった。
その緊張もあってか、すこし熱を持っていた手のひらを冷たいグラスに押し当てて、心地よさに小さく息を吐く。


「……ええと、それは、いいのですけど…、…退屈、するかと…思います。
 遊び、…と言われても、その、……わたし、どう遊んだらいいのかも、あまり知らなくて…」

普段どうやって過ごしているだろうと考えると、一人で本を読んだり、散歩をしたり、そのくらいの暇潰ししか浮かんでこない。
同年代は遊び盛りだろうと考えると、娯楽に触れていない事がすこし恥ずかしく思えて、声は尻すぼみになって。

「よかった。…お酒とかの方が、よかったかな……って、心配だったから…
 っ、……そんな、見て、楽しいものじゃ…ないです。
 エプロンなんて、家で料理、する時くらいしか……しませんし……」

お茶の方も問題なかったと知って安心したのも束の間、エプロン姿を褒められ、軽く咽てしまう。
そんなに特別な格好をしていたとも思えないけれど、照れくささを抑えられず。ほのかに色づいた頬を隠すよう、俯きがちになる。
その間に、隣では不穏な事を考えられているとは露にも思わず。
羞恥心から居心地悪そうにはしているものの、慣れない人に対する警戒心は薄めのままで。

「はい。普段は、こんなに人と話さないから……」

労いの言葉には、ぺこ、と素直に頭を下げた。

ユーリィ > 彼女と会話する。ただそれだけでも満足なのだが、生憎少年は意地悪だ。
ただのんびりするよりも、からかうなどして色んな表情を見たくなる。
今も、どうしたものかと頭の中をこねくり回してから、笑顔とともに。

「ん、ボクは退屈じゃないけどなぁ、ミンティ可愛いし、好きだし。
 お出かけして一緒に買い物したり、眺めの良い場所でのんびりするのも良いものだよ。
 前も言った様に、ボクはミンティみたいな素敵な子とは、色々楽しんでみたいわけで」

知らないなら教えると言ったしねぇ。そっと右手を伸ばして、彼女の頬へ。
指先で軽くツンツンと、避けられなければそのまま、少しばかり感触を楽しむつもりで。
逃げられたら逃げられたで、嫌だった?と首を傾げつつ、さらりと手を引っ込める。
身体的接触はコミュニケーションとして普通な手段。そう心得た少年は、遠慮などない。

「お酒だったら、ミンティが酔っ払ってる所も見れたのかな?
 なんでさ。凄く良かったよ?こう、慣れてない雰囲気がむしろグッとくる感じで。
 素材が良いから、何着せても映えそうだよねぇ。うん、色々着てみて欲しいけどなぁ」

素直な感想故に、ど直球で飾り気など一切なしである。
彼女が俯いたり頬を赤らめたり居心地悪そうにしているのも楽しみつつ。

「ところで、酒場は酔っ払った人も大勢居る訳だけど、大丈夫だった?
 こう、お尻触られたりとか、エッチな目にあったりしてない?」

によによ。意地悪な性格がこれでもかと笑顔に滲み出ているような気がする。
何せ、心配している様でその実は、彼女が恥ずかしがる素振りを美味しく頂いているのだから。

ミンティ > 食事のペースと同じく、お茶を飲むのものんびりとしたものだった。
ちびちびと飲んでは、ゆっくりと息を吐いて。すっかり喉が潤うころには、手のひらに生じていた火照りも冷やされていた。
普通のお喋りという自分にとっての難題には四苦八苦しているものの、気恥ずかしさを除いて、表情も比較的穏やかに保たれていて。


「……っ、…可愛くは、ない…と、思います。……地味、ですし。
 ……えと、お買い物とか、のんびりするようなの、でしたら…、できるかと思いますけど…
 っ、……っ、……あ、あまり、からかわないでください……」

目立つのは髪の色くらいで、愛嬌はないし、眼鏡に地味な服装ばかりと人目を惹くような機会はすくない。
あるとすれば、押しに弱そうなところに目をつけてきた人ばかりだから、ただ純粋に褒められると、目を泳がせながら、口ごもるような返答しかできなくなる。
ぼそぼそと受け答えしながら、恥ずかしさを誤魔化すようにお茶を飲み。
そうしていたら急に頬をつつかれて、びくっと震えて肩をすくめた。
反射的に逃げたりする事はなかったものの、身体を強張らせ。どうしたらいいのか迷って、眉を寄せる顔。

「…そう、ですね。お酒、…付き合いで、飲むくらい…なので。
 っ、……そういうのは、よくわかりません。…服、こういう、同じものばかり…なので。
 似合えばいいな……と、思う事は、ありますけど…」

称賛続きの会話に、居心地悪そうに、竦めた肩の形も戻らなくなっていた。
白いブラウスに紺色のスカート、今の服装と同じものばかり安い時に買いこんでいるせいで、他の服装を見た事のある人は相当限られるだろう。
着飾る事へのあこがれは年相応になったから、小さな声で、ぽつりと呟いて。

「へ?…ぇ、と、はい。今までも、何度かお手伝いは、させていただいたので…、~~~っ。
 も、もう…遅いので、わたしは帰ります、……っ」

給仕の仕事の話には、慣れないなりにきちんとできただろうと、こくこく頷いていたけれど。セクハラを受けたかどうかの問いには、ますます顔が赤くなった。
経験だけでいえば、おしりを触れられるより恥ずかしい事もたくさんあったけれど、素面の状態で語れるような性格でもない。
恥ずかしさに負けて、お茶を一気に飲み干し、腰を上げた。

そのままいそいそと帰り支度をはじめるものの、黙って去る事はせず。少年が一緒に帰るつもりなら、また適当なところまで送ってもらう事になったかもしれない…。

ユーリィ > 褒める度に恥ずかしそうにしてくれるのは、中々新鮮味があって良い。
好みな相手ほど困らせたくなる難儀な性分の少年は、努めて冷静に。

「いやいや、からかってないよ。少なくとも、ボクは心からそう思ってる。
 髪だって春に咲く花を思わせる可憐な色だし、瞳は翡翠のように綺麗だし。
 ……それに、お肌もふわふわのすべすべで、肌触りも最高じゃん」

ふにふに、ぷにぷに。これ以上は今の関係性だと難しそうだからここまで。
無理やり手籠にしようとすれば出来そうだが、そうしないのも楽しいものだ。
お茶が加速度的になくなっていくのを目の当たりにしながら、手を引っ込める。

「もし今度お酒飲む機会あるなら、言ってよ。迎えに行ってあげるからさ。
 ――装飾少ない系が好きな感じ?うん、それならそれで、良いんじゃない?
 ほら、好みの範囲で着飾ったり、ワンポイントでアクセサリー入れたりも楽しいし。
 他にも、結構髪の毛長めだし、巻いたりウェーブさせたり、アレンジするのも良いよね」

自分の見せ方にも一家言ある少年は、彼女の様々な姿をイメージで楽しんでいた。
ふわりと軽くウェーブを効かせて、学院の制服とか着せたら、とかなんとか。
次いで、ほんの少しばかり踏み込んだ問いに、彼女が悶えるのを確認。
帰ると言い始めたならば、少年は苦笑しながらもわたわたと。

「あぁ、待ってったら。ほら、夜道は危ないんだから!
 ボクが悪かったからさ、機嫌直してってば!あ、お会計は――」

店主に問うと、あの子が払ったよ、という答えが帰ってくる。
対する少年は無理に払うかも考えたが、ここで立ち往生すれば彼女が帰ってしまうかも。
結果として、少年はご馳走様と店主に言いおき、彼女を追って外へと向かう。
彼女が待っていてくれたなら、嬉しそうに笑いながら、謝りつつ一緒に帰っていくだろう。
今回も、手を出すつもりのない送り狼。我ながら随分と拙速だ、と帰り道に自分へと問う。
とは言え、居心地が良いのも事実。今夜はなんとなく、良い夢が見られそうだ――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からユーリィさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にキールさんが現れました。
キール > 平民地区の大通り。
冬の空気からいつのまにやら春を越え、湿度が若干上がりどこかぬめる様な風になってきた。
空を見上げれば流れる薄い靄のような雲により浮かぶ月のシルエットと見えるはずの隠された星。
どこか退屈そうに舌打ちしてから片手に盛った酒瓶を持ち上げ煽る洋に流し込み喧騒の中をぶらぶらと進んでいる大男。
短く切り込んだ髪を後ろに撫でつけ、がっちりとした顎に太い首から広すぎる肩幅。
人通りでにぎわう大通りの中央を肩で風を切るように進んでいる。

キール > 夜の賑やかな街を進む男。
犬も歩けばなんとやら、面白いハプニングやら血沸き肉躍るハプニングやらでかいトラブルにでもぶち当たらないものかと、酒精の強い酒を煽りながら通りを進み、何と無しに見回したり、路地裏に視線をやったりする。