2022/05/13 のログ
イグナス > どうやら大丈夫だった様子、たっと走り去る姿を見て、まあ、それならばいいかと。散策を再開して――
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にミンティさんが現れました。
ミンティ > 夜になって賑わいが増してくる酒場の中を、慣れない足運びながら、ぱたぱたと忙しなく動きまわる。
付き合いのあるマスターから、今日は早い時間の給仕が休みを取っているから、開店からしばらくの間は手伝ってほしいと頼まれて今に至るのだけれど、なかなか大変な仕事だった。
注文をおぼえたり、会計の計算くらいなら問題なかったけれど、酒場の給仕ともなると、それだけではやっていられない。
酔って絡んでくるお客さんをあしらうのにも一苦労。なるべくにこやかに振る舞おうと考えていても、ぎこちない笑顔を浮かべるのがやっと。

「お…、お待たせ、いたし…ましたっ…」

両手に持ったジョッキを置いて一息。夜から働きにくる給仕の人たちもやってきて、仕事をあがれる予定。もうすこし頑張れば仕事をあがれると思うと、気のゆるみも生じて。

「……ぁ」

すぐにカウンターへ戻るつもりだったけれど、足を止めて、小さく声をこぼしてしまう。
今お酒を届けたテーブルに広げられている、裏面に複雑な模様が描かれたカード。その何枚かだけ、違うデザインになっているのに気がついた。
眼鏡で力を抑えていても、よすぎる目が見つけてしまった、いかさまの証拠。それに反応してしまったからか、テーブルについていた一人から睨みつけられて、あわてて顔を背け。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にユーリィさんが現れました。
ユーリィ > 今日も今日とて気分のままに振る舞う少年は、ふらりとギルドに赴くと、依頼を数枚受け取った。
それから王都の外へと出かけていって、日が沈むまで駆けずり回って受けた全てを片付けて。
斜陽の沈む最中に戻って、報告を一頻り終えると、外はとっぷり夜の闇に暮れている。

そんな忙しない一日の終りに、ぱぁっと何か食べて帰ろうと思った少年は、歓楽街を彷徨。
いつもの馴染みの店にするか、新規開拓に勤しむか。どちらにするか悩んでいると、くぅと腹が鳴る。
丁度、目の前には一件の酒場。成る程、切っ掛けにするならば丁度よいか、と戸を押し開き。

「よいしょ。こんばんはー、一人なんだけどー……?」

席あるかしら?と中を見回すが、書き入れ時の酒場だ。従業員たちも忙しかろう。
じぃ、と店の内装やら雰囲気やらを眺めながら、行儀よくのんびりと入り口に立つのみ。
ちらりと見覚えのある桜色の影が見えた気もするが――ともあれ、給仕を待ってみよう。

ミンティ > なにか言った方がいいんだろうかと悩んだけれど、よけいなお世話だろう。なにより、トラブルを起こして酒場に迷惑をかけてしまっては、手伝いどころの話ではない。
こちらを睨む視線にすごすごと後ずさりをして、今度こそ踵を返す。カウンターまで移動する最中にも、あちこちから呼ぶ声がかかって、そのたびに進路を変更。
注文を受けたら、あまり待たせないよう、ぱたぱたと小走りに移動して。

「…あ、はい。…お待たせしまし…た――――」

入り口に席を探しているお客さんがいると伝えられて、注文だけ告げたあとは、そちらへ向かう。
人手不足なのだから仕方ないとはいえ、ぺこぺこと頭を下げながら席に案内しようとして、きょと、と目を丸くした。
以前に同席した事のある、少年を自称する少女みたいな姿をした人物。あ、と声をこぼすと、ぺこりと頭を下げて。
どう声をかけようか考えてから、あらためて口を開く。

「……え、と、…カウンター席で、よろしいですか…?」

ユーリィ > 自分が当事者でなければ、酒場の喧騒は中々に楽しいもの。
喧嘩の怒号に相乗りして野次を飛ばしたり、飲み比べのトトカルチョに参加したり。
静けさより賑やかさを好む少年としては、多少待ってでもこの位の時間が好ましい。
さて、給仕の子はいつ頃来るかしら。どんな子が来るのか楽しむのも良いよねぇ。
とは言え、お腹も空いたしなぁ。何食べようかしら。等と浮かぶ考えを転がしていると。

「――あはは、待った待った……って、あれ、ミンティだ。やっほー」

やってきた給仕――先程ふと見えた覚えのある髪色の女性はやはり彼女だったらしい。
一礼する彼女に、にこやかに小さく手を振って。質問には素直に頷くと。

「ん、カウンターで大丈夫。連れが居る訳じゃないからね。
 あ、お腹ペコペコだから、ミンティのおすすめをよろしく」

しれっと無茶振りしながら、彼女の案内をさぞ楽しそうに満喫して。
後を付いていきながら、どことなく上機嫌。当たりを引いた、そんな気分で。

ミンティ > 軽い挨拶に、こちらも片手を挙げかけてから、またお辞儀。正式に雇われた身ではないから、知った人相手くらい態度を変えても注意をされたりはしないだろうけれど、今の自分は給仕なのだからと意識をし直して。
それでも初対面のお客さんを迎えるより、すこしは表情も柔らかいものになっていたかもしれない。

「…先日は、ありがとうございました…」

プライベートでの感謝は、まわりに聞こえないよう、小さい声をさらに細いものにして。
カウンター席でも構わないと答えを受けて振り返る。どこが空いているか改めて確認し、一番端の方に空席を見つける。
賑やかに飲みたい人が多い客層の店。照明も届きづらい、なんだかすこし薄暗い印象のある席はあまり人気がなく、案内するのに気がひけた。
それでも相席よりはましだろうと考え直して向き直り。

「……ええと、じゃあ、こちらに…
 ……え、と……おすす、め?……わたしの、おすすめ…」

今日だけの手伝いだから、おすすめするメニューと言われると悩んだ。
自分も客として利用している酒場だから、よく頼むものくらいはあるけれど、本当にそれでいいのかと小首を傾げつつ、席へと案内し。
考えた末、マスターにはフルーツの盛り合わせと、冷たいお茶を注文した。しっかり食べたい気分だったらどうしようと悩んだものの、それならそれで、しっかり伝えてくれるだろう。
ついでにこっそりと、料金は自分の手伝い賃から引いてくれるようにお願いし。

ユーリィ > 腹の虫に誘われた先で、知り合いが給仕をしている。中々素敵な偶然だ。
少年としても、彼女とは仲良くしたいのだ。仕事に勤しんだご褒美と思っておく。

「いやぁ、偶然だねぇ――あれ、ミンティって給仕さんだったっけ?
 あはは、あれはボクがしたかったことをしただけだから気にしないでよ」

彼女に着いていくと、その先にあったのはカウンターの端の隅っこ。
多少喧騒が遠くに聞こえる雰囲気のそこは、照明の光も届きにくく、薄暗い。
とは言え、少年としては興味が彼女に移ったからか、特に文句もない様子で。

「これは……中々のんびり寛げそうな席だね。
 そう、おすすめ。ミンティの好きなものを教えて欲しいんだ」

この間は、ボクのおすすめ紹介したからねぇ、とにこやかに。
席についたなら、後は彼女の働きぶりを目で追いながら、品が来るのを待つばかり。
なお、まさかご馳走される等とは全く思っていなかった。

ミンティ > 慣れない仕事の最中に知り合いと顔をあわせると、なんとなく緊張する。家でしかしないようなエプロン姿と普段着は、あまり変わるものでもないけれど、なんとなくそわそわして。
当然の疑問には、ふるふると首を振った。

「いえ。今日は、人が足りないというので…お手伝いで」

そんな説明をしつつも、呼ぶ声がかかれば、そちらのテーブルに駆け寄って注文を受ける。
頼んでおいたものは、用意にそう時間がかかるものでもない。カウンターとテーブル席を二往復したくらいで、旬の果物を盛り合わせた皿と、グラスに入ったお茶を渡されて。

「…お待たせいたしました。
 えと、フルーツの盛り合わせと、ハーブティー…ですけど、…こういうもので、よかったですか…?

気にしなくていいと言われても、奢られただけの立場はどうしても意識してしまう。
本来は注文されたものと一緒に渡すはずの伝票を、エプロンのポケットに忍ばせ。
こんなデザートみたいなものでも満足できるだろうかと、不安そうに小首をかしげて。

ユーリィ > ふと気になった疑問への返しは、臨時の手伝いとのこと。
それには、ふむふむと打ち頷くと、ふと思い立ったかの様に手をぽんと叩いて。

「なるほど、お手伝いかぁ。だとしたら、これって結構レアな光景って感じだね?」

うぅん、エプロン姿の美少女って素敵だよねぇ、眼福眼福。
基本的に可愛い子は大好物故、心の映写機にしっかり保存しておく。
それからのんびり待っていると、料理を運んでくる彼女の姿。
やってきたのはフルーツをたっぷりと盛ったお皿と芳しいお茶のセットで。

「――おぉ、これは中々、綺麗で素敵なものがやってきたね。
 うん、フルーツは好きだから嬉しいよ。甘いものは素敵だもんねぇ」

空腹をフルーツだけで埋めた経験はなかったが、ならばいっそ今日試してみるのも悪くない。
どの辺りから崩していくか。オレンジ辺りが良さげかなぁ、としげしげ眺めつつ。

「そう言えば、臨時のお手伝いって言ってたけど、終わるのいつ頃なの?
 遅くなるなら、この前みたいに送ってくよ。或いは、すぐならちょっと、付き合って欲しいなって」

どうかな、と自然体で彼女を口説きながら、さっそくオレンジを一切れ摘んでぱくり。
口内に広がるみずみずしい甘酸っぱさを堪能しながら、皮だけを器用に剥がして見せた。

ミンティ > 気のせいかもしれないけれど、じっと見られている気がする。
普段着にエプロンを足しただけの姿だから、恥ずかしがる理由もないけれど。やっぱり視線というものへの意識が強く、落ち着かないように眉を下げて。

「…え、と、そうですね。……普段は、利用させていただく側、なので…
 本当に、ときどき…だけ、お手伝いさせて、いただいています…」

同じ商人の組合に属していると、よく面倒事が回ってくる。中でも一番若い自分には。
レア、というほど希少性があるのかは自分では判断しかねたけれど、迷った末に、こくこくと頷き。
お皿とグラスを提供し終えてからは、またそわそわしていた。
これでは物足りないと叱られるような事はないだろうと思っていても、自分のチョイスだけに、満足してもらえるかが不安で。

「……っ、…よかった。あの、…もし、足りないようでしたら…
 この時間だから、どこかで、……ご飯、食べてきたあと、かなって…」

空腹だったと聞かされたら、とたんに申し訳なさそうに頭を下げただろう。
そういう部分を秘されていたから、ほっとした様子で、強張りかけていた表情を和らげて。

「……?あ、ええと、もうそろそろ…このくらいの時間から、出てくる給仕さんがいるので…」

そんな話をしていたら、またテーブル席から声がかかり、忙しなく動きまわる。
そうしているうちに、どうやら交代の給仕らしき女性がやってきた様子で。マスターに呼ばれて今日の賃金を手渡され。
女性が可憐な給仕服に着替えて出てきたあと、借り物だったエプロンを返却し、どうしようかと迷った末、とろとろとした歩みで端の席へと戻っていく。

ユーリィ > 少年からすると、そこいらの某よりは知り合いの彼女だ。
それにしても、エプロンとは素敵な衣装だと思う。家庭的な雰囲気が好ましい。
他にも色々着せてみたい衣装とかあるんだけどねぇ、とは思えど、心に仕舞っておく。

「常連客ってやつかぁ。まぁ、仲良くなると無茶も頼みやすいからねぇ。
 ボクとしては、ミンティの素敵な様子が見られて、気分上々って感じだけど」

オレンジの次は、カットされたバナナ、もうすぐ時期が終わるだろう名残の苺へ。
これからの時期に美味くなるだろうパイン等も盛られている辺り、豪勢だ。
これ結構するんじゃないの?とは思えど、金に困ってるわけでもないしと果実をつまむ。

「んー、そうだねぇ、確かに少々物足りなくはある様なない様な」

ご飯食べてきた後だよぅ、お昼ご飯だけどねぇ、と内心で独りごちる。
それを正直に述べれば、恐縮しきりの彼女が見えるから、そこはしれっとごまかすつもり。
とは言え、果物だけを食べ進めていくと、なんとなく満たされない、物足りないのも確かで。
続く彼女の言葉――もう少しで仕事が終わる、とのことならば、少年はにこやかに。

「あら、呼ばれてるみたいだね。それじゃ、終わったら席まで来て。絶対だよ?」

そうして彼女を見送ったなら、フルーツを手早く腹の中へと収めていこう。
手早くナイフとフォークで皮を剥き、果実だけを口に放り込んで噛み締めて。
木莓などの小粒な品は、ひょいぱくといくつか纏めて、口いっぱいに詰め込んで。
洗練された所作に子供っぽさを混ぜたような、そんな仕草で食べ進め、お茶でさっぱり口直し。
彼女が戻ってくる頃には、山ほどあった筈の果物が綺麗に無くなっていることだろう。