2022/05/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にセルウィさんが現れました。
セルウィ >  
冒険者ギルドの依頼書が張り出されたボードの前で、一人の少女がたたずんでいた。
指先でくるりくるりと蒼銀の髪を弄びながら、ううぅんと唸る。

「……中々、いいのはなさそうかな。」

何てことはない、よくある冒険者の依頼の吟味の光景だ。
ひとつだけ目につくことがあるとすれば、少女は冒険者としては小柄かつ冒険者らしからぬ衣装であること。
ふわりとした可憐な衣装は、冒険者と言うよりもどこかの令嬢と言った方が納得できる。

しかして、そんな少女がここで依頼書を前に頭を悩ませているのだから、
少女もまた冒険者であることは確かなことは、見ているだけでも容易に想像はつくだろう。
無論、ともすれば少々、無防備な姿にも映るだろうが。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」に肉檻さんが現れました。
肉檻 > 依頼書の前に佇む小柄な少女の無防備な背中へと不意に、ドン、と衝突する何か。
「おっと、悪い」と簡素な謝罪と一瞥をくれただけですぐさま歩み去って行くのは、
彼女とはまるで対象のように、革鎧に身を包んだ見るかに冒険者といった風貌の大柄な男。

其れから少し遅れて、コツン、と床に衝突する音と共に少女の足元へと転がり込んだのは、
成人男性の拳程度の大きさをした透き通る真球の水晶玉。
市中で取引されている細工品というよりは、遺跡辺りで発見された誰かの戦利品であろうか。
其れは周囲の明かりを受けながら、キラリと何処か妖しげな煌めきを放っていた。

セルウィ >  
「うぁ…っ!
…とと…流石に長居しすぎたかな…」

小柄な体がドンと、衝撃で前に倒れ込む。
そのまま倒れ切る前に何とか体勢を調えて、自身にぶつかった男の背を一瞥する。

よくある事故と言えば事故であるし、ぶつかるのに気が付かないほど没頭していた自分も悪い。
そう考えて、流石に一度場所を移すか…と思考を回した頃に、聞こえた物音。

視線を地面に下ろせば、不可思議な水晶玉。

「……これって…。」

先ほどの冒険者が落としてしまったモノだろうか、と拾い上げる。
どこかしらの遺跡で拾った戦利品なのだろうか。

魔力視のできる瞳で、それをじぃっと覗き込む。
何かしらのマジックアイテムの類なら、少しだけ拝借するのも悪くないかと考えながら。

肉檻 > 少女へとぶつかった冒険者は其の侭奥の方へと消えて行き、それ以上彼女の方へ意識を向ける事は無い。
冒険者ギルドの中では決して珍しくも何とも無い光景。
周囲の冒険者達も、ボードに貼られた依頼書の検分に夢中で倒れ掛かった小柄な少女の姿に注意を向けた様子は無く。

その少女の、眼前へコロコロと転がり込んだ水晶玉。
遺跡の中で見つかったにしてはしかし、風化した様子はおろか傷や汚れのひとつも無く透き通っていて。
しかしじっと覗き込めば垣間見る事が出来たであろうか。
その中に映るのはまるで生き物の体内か何かのように、蠕動するピンク色の肉に覆われたグロテスクな空間で。

次の瞬間、真球の形をしていた筈の其れがぐにゃりと輪郭を歪めたように見えたかと思うと、
大きく広がった膜が小柄な少女の身体を飲み込むように包み込んでしまおうと――

セルウィ >  
「へ――?」

紅の瞳が覗き込んだ視線の先。
其処に映る、うねりと揺らぐグロテスクな桃色の肉の壁。

それだけならば、少しだけ生理的拒否感で呻くだけだっただろう。
しかして、少女を襲ったのはそれだけではなかった。
突如、大きく広がった膜が少女の体を包み込む。

このギルドの中で、それをただ偶然、少し気になって拾い上げたそれを見つめただけ。
あまりに不意で、突然の事態に、歴戦の冒険者ならばともかく、少女に対応できるはずもない。

少女は誰にも気が付かれない一瞬で、それに呑み込まれて――

肉檻 > 一瞬にして少女の身体を飲み込んだ其れはすぐさま元の水晶玉の姿へと戻ると、
再びコツン、と床に衝突する音を立てた後、建物の隅の方へと転がって行く。

次にその水晶玉の中を覗き込んだ者が居たならば、肉の壁に囲まれた空間の中に捕らえられた少女の姿が垣間見えたであろうが、
不運にも賑わいを見せ始めた冒険者ギルドの雑踏の中、その様に気を留めた者の姿は何処にも無く――

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」から肉檻さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からセルウィさんが去りました。