2021/04/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/廃教会裏庭」にビョルンさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/廃教会裏庭」にアイリースさんが現れました。
ビョルン > ランタンを手にして古い教会を奥の方へと回る。
広くもない庭、見上げれば空一面を覆うような桜花。

「どうだ」

と、連れへと振り返り得意そうに手を広げる。
何年も前にここを教区として赴任していた聖職者がオリエンタル趣味であったようだ。
そうしてその趣味は教会の戸が閉じられた今もひっそりと受け継がれ、手入れされ続けている。

どこか得意げに胸を張るのであった。

アイリース > 「……わぁ……!」

ある日、主に話を持ちかけられ。
準備をして誘われるがままに主に着いていくことになり。
たどり着いた場所で、私は声を上げてしまう。

「……この国で、こんなに見事な花が見れるなんて」

目の前に広がる、綺麗な桜。
それは、私にとっては馴染みのあるものだが。
国から出て、海を渡った先で盛大に咲いているのを見るのは。
正直、驚きと喜びがすごかった。

「すばらしい場所ですね……」

正直、そう言うのがやっとであった。
なんというか、ここでありふれた言葉による形容など。
逆に、陳腐な気がしてしまったのだ。

ビョルン > 夜風が当たれば、舞い落ちんばかりの今は満開と言うべきか。

「そうか。
 じゃあ連れて来てよかった」

話に聞くには、富裕地区に行けば東国の植生で造園している好事家もいるようだ。
だが、この地区ではこの裏庭の桜しか己は知らない。

あとは昼間、近所の者が眺めていたりしたのだろうか。
辛うじて座れそうなベンチを見つければ腰を下ろす。

「帰りたくなっちゃった、とか──…?」

花に見とれる相手へと視線を転じて、ふと野暮天が口を吐く。

アイリース > 「本当に……。
 これは、えぇ」

感動、というのはこういう状況、こういう精神状態のときに使う言葉なのだろう。
私はしばし花を見て立ち尽くすが。
相手が、ベンチへと座るのを見て、あわてて追いかける。

「……う、~ん……。
 そういう気持ちも、無いでもないですけどね。
 ただ、基本的に忍は、やはり仕える主人に忠を尽くすものなので。
 里の先達には、数十年故郷に帰らない者もいたそうですし」

帰りたい、という気持ちに関しては。
まぁ、正直に言えばいつだって心の片隅にはある。
ただ、まだ何者でもなく、成し遂げたものもない私としては。
今国に帰るのは、なんだか恥ずかしいという思いもあるので。

「まぁ、そうですね。
 逆に、いつか貴方を国にご招待、とか。
 そういう機会があれば、帰ってもいいかもしれないですけど」

今は帰るつもりはありませんよ~、と。
そう笑いながら言い、相手に向かって手を振る。

ビョルン > 「ふーん、まぁそうだろなぁ」

己の為に祖国を含めた全てを捨てられると言われれば逆に疑っただろう。
相手が隣に並んで掛けるのならばその座面にハンカチを広げた。

「ご招待、応じられるのはいつだろ──」

当面は王国どころか、王都を長期間離れることも叶わない。
いずれにせよ、だいぶ待たせてしまうことになりそうだ。

さて。
暫く眺めれば花より団子。
急ごしらえながら、何か用意はしていてくれる筈。相手の持っていた荷の中身に期待向ける。

アイリース > 「あ、すみません」

相手がハンカチを敷いてくれたのを確認して、頭を下げる。
……というか、私は従者なのだから。
そこまで気を使わなくてもいいのだが……。
それを言っても、この人は知らん顔をするだろう。

「さて……。
 それはちょっとわからないですけれども。
 でも、いつか故郷の風景を見ていただきたい、とは思っていますよ」

私としても、今すぐに故郷へ、というのが難しい状況ではある。
なんというか、この国でやることが増えてきている。
なので、いつか、ということにしておく。

「さて、せっかく満開なんですから。
 見るだけじゃあ寂しいですし」

そこで私は一度話を切り、持ってきていた荷物を広げていく。
まず取り出すは、暖かいお茶と、握り飯。
なんといっても、この二つは準備も楽だし。
私は、お茶を注いだ器を相手に差し出し。

「さ、召し上がれ」

と、笑顔を向けよう。

ビョルン > どの女にも時には気遣いというものは必要だ。
そんな原理原則の行動に謝辞が向けられれば緩く首が傾ぐ。

「この国の外の風景は知らないんだが──…、
 そうだ、夏に招かれた島があったろう。あんな風景ともまた違うのか?」

歳月と季節は移り変われど、己はほぼ都の風景しか知らない。
故に馴染みの薄かった風景を思い出しながら問い掛ける。

今日は此処で夕食だ。
竹皮の包みから握り飯が出れば胃の腑がぐうと鳴ったよな気配。
茶を受け取りながら

「では頂きます」

と一言。
湯気立つ茶を一口啜ると細くため息が唇を割る。

アイリース > 「さすがに、あそこまでは……。
 ……いや、でも。ある意味この国と同じで。
 土地土地で風景が大きく変わるんですよね」

私の故郷の忍の里と、都ではやはり趣が違う。
なので、もしかしたら、思い出の島のような風景の場所もあるかもしれず。
あり得ません、とも言い切れず。私はうんうんと首を傾げてしまう。

「はい。店の子たちと作ったので。
 味は保障できますよ」

相手に向かって頭を下げつつ。
私も、握り飯をつかみ。はむはむと食す。
この国で入手できる材料だけに限定されるが。
中身は一応、色々と用意してある。
ちなみに今私が食べたのは、魚のほぐし身だった。

「……」

そうして、お茶をゆったり飲んで、花を見る。
なんというか、なかなか贅沢な時間で。
思わず、笑みがこぼれてしまう。

ビョルン > 「ん、そういうもんか」

ダイラスへ駿馬を駆けさせていれば目の端に写る里山や山道の風景。
そういった変化が、その国にもあるというのだろう。

己が手にしていた握り飯を食べ進めれば中身に行きつく。
小ぶりのプラムを塩と蜂蜜で漬け込んだものだ。丁寧に種は除かれ、果肉だけになっている。

「最初は妙な食べ物だと思ったが」

それはこの女に対してもそうだったかも知れない。
湯呑を膝頭で挟んで片手を空けると笑顔を浮かべている女の頭を一度撫でた。
今はそれが手一杯で。

アイリース > 「ですねぇ。
 まぁ、私としては。この国の風景もなかなか興味深いですが」

特に顕著なのは、建物の造りの違いなのだが。
なんというか……見ていて飽きない、というのが一番。
おそらくは、相手を故郷に連れて行ったのなら。
同じような感想を抱くことであろう。

「まぁ、食べなれなければそうですよね。
 でも私としては、こっちの国の……。
 パン? 食? っていう文化の方が慣れないですねぇ」

やはり、食事には米とかのほうが、なんて思ってしまうのだけれども。
食文化は、これまた個性の出やすい部分なので。
そういうものだ、と受け入れていくことにする。
相手に頭を撫でられれば、少し驚いて相手を見てしまうが。
別段、悪い気はしないので。微笑を返しておきつつ。

「……いいですね。この時間の花見、というのも」

そう、感想を口にしておこう。

ビョルン > 「そういうものか」

古い家や安普請の住宅が並ぶこの区画の暮らしに慣れれば、己が頻繁に足を運ぶ本家のある富裕地区はまた大層趣が異なって感じるだろう。
塀に囲まれた石造りの建物、そして馬車の行き交う大通り。賑わう時間の喧騒の質もまた異なっている。

「プラムを干して塩漬けにするなんて正気を疑った」

かといって相手は己の食の好みも重要視してくれていたし東国にない食生活、たとえば狩りに拠らない畜肉食をタブーとした訳でもなかった。

握り飯を一つ食べ終えれば次へと手を伸ばす。

「昼間や夕暮れなんかは、子供や年寄りに譲るのが筋だ。
 もっとも、夜更かしも得意ではないのだけど」

相手の頭から手を伸ばせば少し冷めた茶を啜り、次のおにぎりにかぶりつく。

アイリース > 「えぇ。そういうものです。
 この国に来てから結構経ちますけど。
 まだまだ、面白いものだらけで」

本当に退屈しない、と。相手に伝えておく。
まぁ、その退屈しない理由は、相手がいるから、というのもあるのだが。
そこに関しては言わないでおく。

「あ~……いや、否定できないですけどねぇ。
 でもそれを言い始めたら、干し肉を最初に作った人、とか。
 山羊の乳を最初に飲んだ人、とかも。
 きっと周りの人間には笑われたと思いますよ」

相手の言葉も、わからないでもない。
なにせ、こっちの国に来てわかったのだが。
本当に、食文化。ものすごい差があるのだ。
食べ物自体から、調理方法、保存方法まで。

「なるほど、そういう……。
 ふふっ、貴方らしいですね」

色々と、考えているのだろう。
相手のそんな気配りに、笑顔を強めてしまう。
そうして、相手が握り飯を食べるのを見つつ。

「一応、甘い物も持ってきてますので。
 食べたくなったら言ってくださいね?」

さすがに握り飯だけではちょっと寂しいと思ったので。
用意しておいた甘味についても伝えておきつつ。
私も二つ目の握り飯に口をつける。

ビョルン > 「俺も外国で暮らせばそう思うのかな」

毎日が目新しく面白いような、そんな日々を過ごすことになるんだろうか。
近くそんなことになりそうな予感はまだなく、感慨深げに唸り声がひとつ上がるばかりであった。

「いや、でも──…
 牛の赤子の上前を撥ねて、なおかつ人が飲んでも腹を下さないような処理をし始めた人間には敬意しかないな」

それも今となって言えることだろうか。
目的を知れば協力した人間も居たはず、なんて思う。
そうして次の握り飯の具は以外にも、肉の大和煮であった。
王国の食材を東国風に味付けをしたものだ。米との相性はなかなかどうして悪くはなく、頬が緩む。

「お陰で、射干玉の闇夜の桜は独り占めってわけだ」

食後の甘味についてはうんうんと頷いて残りの握り飯を頬張っている。

アイリース > 「と、思いますよ」

相手の言葉にそう返答するのだが。
相手にも色々と事情があるのはわかるので。
なかなか、国の外で暮らす、なんて。気軽には行かないのだろうと思う。

「あぁ、それはありますねぇ……。
 いつだって、先駆者の勇気には感服します」

食だけでなく。様々な物事において、その道を切り開いていった人たち。
その人たちがいるからこそ、今の生活があるのだと思う。
……少なくとも、私は、自分がその位置の人間でない、ということもわかるので。

「ふふっ。満足いただけているのなら。
 作った甲斐があるというものです。
 後で、店の子たちも労ってあげてくださいね?」

店を任され、見えてきたものがある。
たとえば、この相手が、店の子達に信頼されていることとか、だ。

ビョルン > 「あとなんだ?
 毒のある食べ物の毒抜き処理とか?」

どうも話が食に寄りがちなのは食事中のせいだろうか。
2つめの握り飯を食べ終わって残りの茶を飲む。
残りは甘味だっただろうか。

「ああ、店のことにはあまり口を出せないで申し訳ないが──…、
 口も手も出さないのは危なっかしさがないからだ、信用してる」

娼館の女たちと直接接点を持つのは、それこそ緊縛して女を供せよという客が現れたときくらいだろうか。
売り物であろうとそれが人である限り、適切な距離感は存在する。

「おかわり」

と、湯呑差し出し。

アイリース > 「そうですね。そういう部分もありますか」

相手の言葉に、うなずきつつ。
私も、茶を飲んでいく。
次第に、暖かさが失われているが。それはそれで、味がある。

「いえいえ。お忙しいのは知っていますし。
 ただまぁ、店の子たちが少~し寂しがってましたので」

口元を隠しつつ、ニヤニヤと笑ってしまう。
案外に、というか。あるいは順当というべきか。
この人は、従業員の信頼を勝ち得ているわけで。
それが、ちょっと微笑ましい。

「はいはい。
 では、これもどうぞ」

相手にお茶のお代わりを差し出しつつ。
同時に、甘味……作っておいたおはぎを渡す。
……何気に、材料調達に苦労した一品だ。

ビョルン > 「じゃァ、ま、休みの日に全員で飯を食うか」

特にトラブルもないなら特別な催し事など不要だろう。
全員で食卓を囲むだけでいい。
そう提案してお茶と甘味を受け取る。
菓子の方は見覚えがあるような、ないような。

「この、黒いのは甘い豆のジャムだよな。
 ──けど、初めて食べるかもしれない。餅?」

手にした感じはずっしりとしている。
試しに小さく噛みつけば、予想が外れた。
粗く潰した、これは。

「──また米だ」

苦笑いするが甘いのも悪くはない。
二口三口と食べ進める。

アイリース > 「いいですね。じゃあ、声かけておきますよ」

それはきっと、店の子たちの気分転換にもなるだろう。
私は、相手の提案にうなずき、次の休みについて考える。
相手の予定を合わせれば、きっとみんな楽しめることだろう。

「まぁまぁ。まずは一口」

困惑する相手に、私はニヤニヤ笑いのまま促し。
私自身も、おはぎを一口。
うん。悪くない出来だ。だが……。

「む……そういわれると」

たしかに、そうであった。
なんというか、ちょっとメニューに偏りがあるのは事実だが。
相手が食べてくれているので、問題なし、としておく。

「また、こういうことをしたいですね」

のんびりとした時間に満足しつつ。
そう、相手にねだっておく。

ビョルン > 「甘い、けれど隠し味──岩塩かな」

甘味一辺倒でなく、そこを引き立てる何かを感じて呟く。
そうして己からの言葉に返す言葉なしとする相手にはちらりと笑いかける。

「王国の食事だってそもそも隙あらば肉とメリケン粉みたいな所あるから」

結局は食文化色々ということに、この歳で理解できたのは幸いだろうと。
甘味まで食べ終わると、ごちそうさまと手を合わせて茶を飲み干した。

「次は何がいいかな──雨の花の前に、アイリスの季節か。
 お前の名だな、」

アヤメ、と相手の名を呼んでコートの襟を掻き合わせて立ち上がる。
今宵の戯れは此れ迄か、寝所で密やかに続くのだろう。

アイリース > 「ん、さすがですね」

隠し味にまで気づくとは。
こうなると、本当に作った甲斐があるという話になる。

「あはは、それは確かにそうですね」

きっと、その国の食文化というのは。
その国に住む人間から見ると、そういう評価になっていくのだろう。
相手と同時に食事を終えたので、手早く片づけをしていると。

「……いいですね。
 ふふ、楽しみにしておきますよ。
 約束ですからね?」

ずいぶんと洒落たお誘いである。
当然、そういうのはうれしいので。
私は、念を押しておき、相手とともに立ち上がるのであった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/廃教会裏庭」からビョルンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/廃教会裏庭」からアイリースさんが去りました。