2020/06/24 のログ
エレイ > そうして歩いているうちに、やがて小さな公園に辿り着く。
男はふむ、と少し思案してから、おもむろに公園の敷地内に足を踏み入れ、周囲を見渡しながら
のんびりと歩く。
当然ながら、この公園の中にも人の姿も見えなければ気配も感じられない。

やがて男は公園の片隅の東屋に近づき、その屋根の下に入り込む。
屋根の下には木製のテーブルとベンチが一組。
傘を閉じながら、ベンチに腰掛けふぅ、と一息つき。

「ちょいっとココで休憩していくとしますかねぇ……」

そう呟いて頬杖を突き。雨模様の周囲の景色を、ボーッとした表情で眺めてゆく。
この位置からだと、貧民地区も割と近かっただろうか。何ならそちらまで足を向けてみるのも
いいかもしれない──なんてことを考えつつ。

エレイ > しばらくして、男はベンチから立ち再び傘を広げ、雨の中へ。
その後何処へ向かったかは、また別の話──。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/商店街」にリズ・リナさんが現れました。
リズ・リナ > 裏通りから黒頭巾がひょっこり顔を覗かせる。
だいぶ辺りも暗くなり、商店街と言えども人の通りは少ない。

右から左、左から右。
首を回して周囲を見渡して。

「いないな」

まぁいいんだケド、と口の中で語尾を添えた。
周囲に仲間は居ない。
さて、どうしようか。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/商店街」にヴァレリー=D=ツインテイルさんが現れました。
ヴァレリー=D=ツインテイル > 「ふふふ……今日もお仕事、がんばりましたわぁ」

平民地区の商店街にて、にやにやと笑う一人の少女。
背筋を伸ばしつつ、歩く姿は。
見ようによっては、貴族のそれと見ることができるかもしれないが。

「とはいえ、あまり貴族のパーティでばかりも活動できませんわね。
 目立ちすぎては、邪魔が入りやすくなるでしょうし。
 ……ここは、次の活動の場について考えるべきかもしれません」

ぴた、と止まり。うーん、と考え込む様子。
そう。この少女こそ、いわば悪の組織の女幹部。
表向きはちょっとした貴族の令嬢だが。
その実、悪事を働くことに熱心な、まさに外道なのである。
……一応。外道、なのである。

「……あら?」

そうして、考え事をしていた少女は。
視界の端に、黒い頭巾を見つける。
もしや……? と思うも。声をかけるのを一瞬ためらい。
確認の意味をこめて、一度大きく咳払い。
黒頭巾の人影が自分を見るのであれば、ちら、と。
手袋の甲、銀の十字の刺繍を、こっそりと見せてみるであろう。

リズ・リナ > 咳払いをするような声に、そちらを見れば。
課違いではあるものの、同じ組織に所属する『同志』の姿がそこにはあった。

少女は黒頭巾をずらして顔と髪を見せれば手を振り振りのにたにた笑いで相手へ歩み寄る。

「はろーはろードリーちゃん。
 上長からお手紙をぉ、預かってきたよぉ」

幹部と平構成員の格の差など感じていないかのような言葉選びで話し掛ける。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 咳払いで注目を集め。相手に対し、シンボルを見せれば。
やはり、お仲間、つまり同志だったようで。
相手が頭巾をずらし、近づいてくるのを確認し。
少女は、通りの隅のほうへと移動し。

「ちょっとアナタ。声が大きくてよ。
 それに、ドリーちゃん、とは……。
 いいこと? 私は三課所属の幹部ですわよ。
 もう少し……いえ、まぁ、いいでしょう」

あまりにも気さくな言葉に、少々、カチン、と来た少女。
だが、どこか、のんびりとしたその言葉に。
毒気を抜かれたようで、少女はため息を吐き、微笑を見せる。
そう。余裕ある貴族、というポーズである。

「お手紙、頂戴いたしますわ。
 ……いったい、どんなことが書いてあるのやら」

やれやれ、と言いつつ。手紙を受け取ろうと手を差し出す少女。
と、同時に。目の前の相手に、少しばかり、金貨を渡す。
どうやら、お使いご苦労、という意味でのお駄賃らしい。

リズ・リナ > ヒラの少女はぺとっと舌を出し、けれど幹部である少女へ向ける親し気な様子には変わりがない。

「そうでしたそうでした。
 ドリーちゃん偉いんだよね。
 でも、どうしたらいいかわかんないや」

ゆるっと首を傾げたから、ローブのポッケから封筒を取り出す。
表書きには”ケイリー・カーデス”の署名が見える。
相手へ封筒を渡さずその場で封を切り、端に蛍光石の取り付けられた便箋を開く。

「読むねぇ。
 えっと──前略 銀十字社三課長ヴァレリー=D=ツインテル様。
 三課の活躍の目覚ましさを聞き及んでは志を新たとする日々が続いております。
 時に、そちらの課では活動資金が潤沢になられたご様子。もしや、最近ぐっと雰囲気が女性らしくなられたこととはご関係がお在りでしょうか。
 さて、本日お手紙を差し上げたのは──…」

このまま黒頭巾の少女に全て読み上げさせるなり、取り上げて読むなりすれば「お金は大事」「予算が賄えても目立ちすぎるな」「余ったら他の課へ回せ」等、お小言の類であった。

差し出される金貨にはふるふると首を振って。

「うちの上長にあげれば喜ぶよー」

と笑う。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「ですから、ちゃん、はお止めなさいと……。
 まぁいいですわ。そもそも、私とアナタは、課が違うわけですし。
 私はアナタへの直接の命令権を持ちませんから」

課を超えての指揮系統など、存在し得ない。
それは即ち、越権行為というものである。
なので、少女は相手の態度を、必要以上には咎めない。

「……くぉぉぉぉ、相ッ変わらず。
 あの女、おっかねぇですわぁ……。
 まだ報告書も上げてねぇのに、耳の早いこって……」

手紙の内容に、思わず頭を抱える少女であったが。
そもそも、少女の悪事は個人的趣味ではない。
組織に属するが故の行為なのだ。
なので、手紙の内容は把握し、ため息吐くものの。
それに従うことを心に決めるのであった。

「……何を言ってますの。
 これは、あくまでもアナタの仕事への報酬のようなものですわ。
 心配なさらずとも、一課にはちゃんと予算を回します。
 ですから、お受け取りなさい。……えっと……。
 アナタ、お名前は?」

相手の笑顔と言葉に、少女は毅然とした態度で言う。
それはそれ。これはこれ。労働には報酬、対価を。
それが、この少女の貴族としてのあり方。
いや、もっというなら。もともとは貧乏商人だった。
ツインテイル家の家訓のようなものであった。

リズ・リナ > 「じゃあドリちん。
 んー? ってことはドリーちゃんのままでいいんだよね、ありがとねえ」

へらりへらりとマイペースな黒頭巾の少女は読み上げた手紙を相手へと渡して頷く。

「おっかねえ?
 偉い人同士は色々あるんだねぇ」

毅然とした相手にもへらっと笑う。
課長同士の確執には敢えてこれ以上触れず。

「あたしはリズ。覚えといて欲しいな。
 あ、お腹空いてない?
 あれ一緒に食べようよ、ドリちゃんのおごーり!」

金貨を持ってそのまますぐ傍の店の窓から見えるチュロスやサンドイッチを買いに走る。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「ちんはお止めなさい! 勘違いされますことよ!?
 ……えぇ、それでいいです。
 考えれば、まだ私は本当の意味で敬われる人間でもありませんから」

その呼び方だけはやめろ、と言いつつ。
元の呼び方は認める少女。なにせ、ぶっちゃければ……。
少女は、ただの成り上がりの成金貴族。
少女自身に、カリスマ性とそのカリスマ性を支えるだけの実績はないのだ。

「えぇ、色々あるんですのよ。
 ……まぁ、まだ私たちの組織の中は。
 派閥争いまではないから、いいのでしょうけれども」

社交界で動く少女だからこそわかる。
貴族間の、醜い権力争い。
それに比べれば、それぞれの課の幹部同士のちょっとしたゴタゴタなど。
気楽なものなのである。

「リズ、ですわね。えぇ、覚えましたわ。
 ……ちょ、ちょっとちょっと! 待ちなさい!
 食事なら、ちゃんと私がご馳走しますわ。
 ですから、そのお金は、ちゃんと自分のために使いなさい。
 いいですわね?」

相手の名を聞き、それを記憶する少女だが。
相手がいきなり買い食いをしようとするのを、全力でとめる。
貴族たるもの、奢りくらい余裕ですわ、と振舞いつつ。
少女は、相手の隣に立ち。

「好きなものを買いなさい。食事くらい、幾らでもご馳走できますわ。
 なぜなら、私。ツインテイル家の娘ですから」

ふふん、と胸を張りつつ。相手に好きなものを買え、という少女。
一応、割とお金持ち。なので、心配は要らぬ、ということらしい。

リズ・リナ > 呼び方についての問答に、うふふと笑う。

「はばつ? はばつってなんだっけ?」

平の構成員、なおかつまだ歳若い己には少し遠い言葉のようだ。
故にくりっと首を傾けて聞いて。

「ご馳走、するの?
 もしかしてドリーちゃん座って食べるご飯のお店に入ったことあるの?」

生まれや育ちの違いに、憧れの視線を向けて見詰める。
それから続けられた言葉には暫く考え込んで。

「ん──でも、欲しいもの、売ってないから。
 買いたい物見つけるまで預かっておいてくれないかな、リズのお金」

言ってから、ふふっと含み笑う。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「ん……簡単に言うと。
 組織などの中で、とある人物を中心に、勢力が作られてること、でしょうか。
 説明しようと思うと難しいですわね……」

なお、ちゃんと説明するのであれば。
『組織内において、結びついた人々によって形成された集団』というあたりが適切であろうか。
それを説明できるほど、少女も口は上手くないようだ。

「……はい? もしかして、アナタ。
 そういうお店、入ったことないんですの!?」

少女にしてみれば、驚愕すべき話だ。
いくら少女でも、まだ貴族になる前でも。
ちょっとした店での食事くらいは経験があるというのに。

「……えぇ、いいですわよ。
 リズ。アナタ、お腹は空いていませんの?
 欲しい服とか……なんでもいいですわよ。
 この際ですわ。なんでもおっしゃいなさい」

こうして会話するのも縁ですわ、などと言いつつ。
やたらに相手を気にかける少女。
どうやら、言葉を交わしたがゆえに、少し情が湧いたらしい。

リズ・リナ > 「マッシュルームチョコレート派か、バンブークッキー派かみたいなやつ?」

身近な派閥割れに喩えてみて、そんなものだろうと己の中で消化した。

「えっ、お高いものでしょう?
 こう、大通りからテラスが見えるような、その……おしゃ、おしゃ、オシャンティー? なお店」

以前は裕福ではないながら慶全な家庭で家族の手料理を食べていた。
今では一課のまかない飯以外では、買い食いや貰い物が多い故に。

「お腹? 空いてるよー?
 ドリーちゃんと食べたいな。もう少し一緒に居ようよ」

なつっこい笑顔で笑みかけながら、ね? って念を押して。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「……えぇ、まぁ。そんな感じですわ。
 その二つの勢力が、仲が良かったり。
 切磋琢磨するならいいのですが。時に、ケンカしたりもするのです」

なぜそんな、食物で例えた? と思いつつも。
少女は、理解の早い相手に、うなずき、ほほ笑んでみせる。

「……見た目と価格設定は決して比例関係にあるわけではないですわ。
 もちろん、きれいで、おいしいお店は高価な傾向にありますが」

その定義なら、平民地区の大衆食堂などだって。
通りに面している店ではあるだろう、と指摘する少女。

「えぇ、いいですわよ。
 なら、どこかで食事にしましょう。
 アナタも、我が組織の一員なのですから。
 そういったお店での食事も、経験しておいて損はないでしょう」

相手の言葉に、少女はうなずき。
相手の頭を撫で、適当な店を選ぼうとする。
どうやら、妹分ができた、という感じに思っているらしい。

リズ・リナ > 「切磋琢磨……難しい言葉知ってるね」

己は知ってはいるが会話ではまだ使えそうにない。
そうして相手の微笑みに、自分も目を細くする。

「うーん、そうなんだ。なんだか憧れちゃうよね。
 うちは家族が多かったから、みんな一遍にお外でなんて無理。
 ピクニックはよくしたんだけどねえ」

外で食べるとは言っても意味はまるで違う。
そうして一緒の食事の了解が得られたら、満面の笑みを浮かべる。

「やった! ドリーちゃんと一緒に座ってご飯!
 ドリーちゃんにご馳走してもらうの! リズが!!」

その場でぴょんぴょん飛び跳ねて嬉しさを表す。
黒ローブの下は簡素ではあるが、それなりに清潔な衣服に身を包んでいるらしい。
相手が行先を選ぶなら、はしゃぐ声を上げながらもついていくだろう。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「当然ですわ。貴族たるもの、学はあるべし。
 いえ、学あるのは当然。それを使えてこそ、ですから」

ふんっ、と鼻息を強める少女だが。
相手の言葉には、怒りなどは持たない。
貴族たるもの、寛大であれ、ということか。

「……そうですか。うらやましいですわね。
 ……私は。最近は、家族とピクニックなど。
 行っていませんから」

昔は、よく家族でピクニックに行っていた。
だが、商売が奇跡的に軌道に乗り。
金で爵位を買った後。ツインテイル家の人間は。
見事に。心通わぬ家族と変じてしまったのだ。

「はしゃがないんですの。
 いいですこと、リズ。淑女たるもの。
 慎みあってこそ、ですわよ」

はしゃぐ相手をたしなめつつ。
少女は、相手と一緒に適当な店に入る。
そうして。相手にマナーを口うるさく教えつつも。
楽しい楽しい。妹分との食事を堪能したことだろう……。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/商店街」からリズ・リナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/商店街」からヴァレリー=D=ツインテイルさんが去りました。