2020/05/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 市場街」にエリアさんが現れました。
■エリア > 「まあぁ……こんなに、沢山……持ちきれませんわねぇぇ」
どっさりと紙袋ぱんぱんに詰まった焼き菓子を抱えて、見た目よりもずっと無邪気な様子で目を輝かせながら代金を支払った。
普段富裕地区で支払う分と同じだけ購入してみたら。その数倍の量の買い物ができた。
嬉しい発見に驚いた声を出して、他にもドライフルーツや食べたことのない動物の干し肉を買って、大きな袋を三つも抱え込んでしまい、少しばかりよろよろと重たそうにしながらも、初めて訪れた市場に興味津々で。
「あぁ……一人で来るのではありませんでしたわ……。あれもこれも、見ていたら全部欲しくなってしまって……」
凄い荷物だな、と笑う露店主に微苦笑しながら持ちきれません、と小首を傾けて。荷物持ちの必要性を実感していた。
「もう持てそうもありませんのに……買いたい物はまだまだあるなんて……」
困った様な楽しいような。複雑な笑みを浮かべながらきょろきょろと食品や雑貨や様々な物が雑多に並ぶ市場を歩きながら、興味を惹かれた物にはいちいち脚を止めて、これは何か問うたりしているので、さっきから数メートル進むのにもやたらに時間がかかっていて、訪れたのは昼過ぎなのだが気が付けば夕闇がひたひたと迫る様な時間になってきていた。
■エリア > そして、あっちに気を取られこっちを見て、そっちを振り向いて……そんな風に落ち着きなく見て回っていたものだから、道行く買い物客にぶつかることは予見できたことである。
「きゃ……あ……すみません、大変失礼いたしました―――あっ…、あぁ……」
よそ見をしていて、どん、と通りかかる人と肩がぶつかってしまい、よろけつつ、すぐに謝罪の言葉を口にするが――手にしていた袋から一杯に詰まっていた、菓子やドライフルーツやらの包みが路上に散らばってしまい、思わず緊張感のない声を発してしまい。
ここで即座に拾い集めに掛かる、ではなく、頬に手を当てて「あら、まあ……」と呑気に目を瞬く辺り――世間ずれした感覚が垣間見える。
■エリア > 拾わなくていいのか……そう、誰かに声を掛けられてようやくそこに思い至ったというように、ぱた、と目を閉じ開きして。
「あ、そうですわね……拾わなくてはいけませんわね」
物を落として自分で拾い集める。そんな当たり前のことだが、普段は誰かが代わりにやってくれることの方が多い。むしろ自分で拾おうとすると止められることもある。そんな訳で、拾い集めていくのもとろとろとやたら遅い。一つ一つ拾ってはその度丁寧に埃を払って紙袋に収め直し――のんびりおっとりとやっているものだから、途中で誰かに踏まれてしまったりもして。
「あら……」
しかしそうなったとて、立腹する訳でもなし変わらずにおっとりとした所作で口元に手を当てて少しだけ困った様な顔をしてから、靴跡のついてしまった袋を拾い上げて埃を払い。
「さすがにもう、食べられませんわねぇ……」
そのくらいのことは判るらしい。中身は干し肉。犬のご飯…ならば許されるだろうか、と考えながら屈みこんで袋を見つめ。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 市場街」に番号215642さんが現れました。
■番号215642 > 平民街は逃亡中の奴隷には治安が良すぎる。それでも空腹感に耐えかねて、それこそ落ちている食べ物でも探して徘徊していたとき。たくさんの食料が地面に散乱するのを視界の端に捉えた。
「うまそう…」
即座に駆け寄らなかったのは、誰かが彼女を助けるかもしれないから。注目されているところに出くわすのは避けたい逃亡中の奴隷。
しばらく見ていても誰も近寄らないばかりか、袋が踏まれていくばかりだ。獣の耳が目立つ子どもが、道の真ん中で屈み込んで、なにやら考えている女性のもとに走り寄って、干し肉の入った袋に手をのばす。
「よこせよ」
不躾な言葉と空腹感から切羽詰まった琥珀色の獣の目が平民街には似つかわしくない、上品な女性に向けられて。
■エリア > 靴跡がくっきりついてしまっているが、袋だけなので中身は無事だろう。
まだ、二つばかり落としたものが路上にそのまんまになっているが。踏まれたこれをどうしようか、などとのんびり考え込んでいるもので、それを拾うのをすっかり忘れて。手にした袋の靴跡を見つめていたその時のこと。
「え? あら……?」
突然駆け寄って来る足音と、手にしていた袋に伸びて来た手。驚いたように眸を丸めて、その手の先にある少年の方を振り向き。
「どうしてですの?」
いきなり寄こせと言われた意味が分からない、と言うように不思議そうな顔をしてそちらを見つめて首を傾けた。
■番号215642 > 地面に未だ落ちている他の袋にも手をのばして。相手が止めなければ、その袋の中身を外に出してしまうだろう。
「は?はらへってんだよ。よこせよ」
他人から何かを奪い取ろうとしたときに、理由を聞かれたのは初めてだったから、拍子抜けしてしまい。相手に向けられていた視線の強さは少し弱まった。それでも空腹が満たされたわけではないから、相手の持っている干し肉の袋にも手をかける。多少の抵抗であれば、力尽くで我が物にしてしまおうとして。
■エリア > 「お断りいたしますわ」
短くはっきりと言い返しては勝手に他の袋も取って中身を出してしまおうとする手から袋を取り返しながら、まとめて抱えた袋に詰め直すと、裾を払ってゆったりと立ち上がり。靴跡付きの袋を狙うその手から逃れるようにして。身を引き。
「わたくし、あなたに差し上げる理由はありませんもの。恵まれない方への施しは毎週日曜に行っております。義務は果たしておりますわ」
ほんのりと透明な笑みを浮かべながらも毅然とした口調と態度で言い切れば自分より小柄な体躯の少年を見下ろす視線を差し向けつつ。
「あなたはわたくしが空腹だとして、食べるものを分けて下さいますか? これを差し上げてわたくしに何か理がございますか?」
泰然と穏やかな風を保ち優し気な笑みと口調ながらどこか攻めるように問いを掛けた。
■番号215642 > 貴族令嬢と思しき女性と、素足のミレー族が話しているのを見て、周囲の人は関わり合いになりたくないとばかりに避けて通る。
「喰わせろよ」
苛立った声色。
目の前に食べ物があるにも関わらず、それが手に入らないから腹が立って。余りに自分勝手だが、少年の願いは空腹を満たすことばかり。殴りかかってでも手に入れたいと思っても、周囲の人が多すぎる。
「うるさい…理由なんかしるか」
ギム…?リ…?
言葉が難しすぎて、目の前の女性が言っていることの詳細まではわからなかったが、食べ物が手に入らないこととだけはわかった。相手からあふれ出る余裕に腹が立つ。
おなかへった…おなかへった…おなかへった…
頭の中で繰り返す言葉は同じ。
険しい顔をしていた少年はあることを思いついて、口角を上げた。
「オレのこと、一晩自由にしていいから、それよこせよ。な、それならいいだろ」
貴族相手に放つ言葉にしては、ずいぶん雑なそれは何も持たない奴隷が考えついた対価。干し肉代に見合うものだろうか。
■エリア > 貴族の娘にしては平民貴族と分け隔てなく接し、奴隷に対しても大きく差別の目は向ける性質ではないという極めて珍しい部類だったが、それにしてもいきなり無礼な振る舞いをされてにこにこ笑って応じるという訳ではない。
苛立ちを滲ませる彼の声に無言で、しかしきっぱりを首を左右に振って拒否を示し。
さりげなく周囲を探る。自分にもしも危害が及ぶようならば、近くの人間に衛兵を呼ぶように言いつけてしまうつもりだ。関わりたくはないが、身分を考えれば見過ごすのはそれはそれで面倒ごとであるし、それに女に手を貸せば利益になるのは明らかだ。味方に付く者はこちらにはいるだろう。故に例え少しばかり手を挙げたところで、そうなると悲惨なのはあなたですよ、と眸で含んで静かに笑みを湛えていた。
そして、しまいに彼から出された条件に。一瞬瞠目して。それからややあって意味を飲み込むと。ころころと笑い声を弾かせ。
「っふふふ。可笑しなことを仰います……。あなたを一晩、ですか……?
わたくしはそれほど男性に困ってはおりませんの。――ですが、そうですね……。あなたは……奴隷……のようですね?」
一度笑い飛ばそうかと思ったが、余りに切迫した様子に少々憐れみを覚えたか、いつもしつけの行き届いた奴隷しか目の当たりにしていない目には変わり種のミレーの少年が面白く映ったのか、双眸を楽し気に細めて。
抱えていた紙袋を総てその手に持たせるように差し出すと、
「それでは、これをお持ちになって。落としてはいけませんよ。それに勝手に口にしてもいけません。ちゃんとわたくしの屋敷までそれを持ってついてくれば、あなたに望むものを差し上げますわ」
それでいかが?と再びおっとりと屈託ないように笑みを投げかけた。
■番号215642 > 少年だって、周囲の人間が自分に味方するとは思っていない。もし、目の前の女性が助けを呼べば、脱兎のごとく走り出すだろう。狼は体躯の割に、足は速い。ともかく、今は周囲の人も、往来の真ん中に立つ2人を避けて通るだけだけれども、一度女性が声を上げれば、通行人達も自分の敵になることは、彼も認識していて、そう簡単に手を上げるつもりはないが。
「なにがおかしい!」
一晩の提案は軽くあしらわれて、笑われるとなお、腹を立てて獣の牙をむいた。質の悪い奴隷から生まれた子どもである彼は、奴隷としての教育もまともに受けてはいない。
「え?」
差し出された紙袋はなんとか両手で抱える。自分よりも背の高い女性でも落としてしまった量の食材やらが入った紙袋を抱えた少年は、紙袋が歩いているようになってしまうが。
「お前、家どこ」
このまま、この袋を抱えて逃げたら、何日間食うに困らないだろうか。強い誘惑にかられながらも、とりあえず相手の家まで運ぶ意思はみせて。
■エリア > 簡単に暴力には訴えない様子に、突然ものを寄こせという割にその辺の分別はつくらしい、と認識してゆったりと双眸を瞬かせて。それから、もっとも近くでこちらの発言に耳を傾けそうな人物を見繕ったが。まあ、その必要な今の所ないらしい。
「まあ、だって……。わたくし、それなりに身分はありますの。そして身分のある女は一夜を共にする相手を選ぶことくらいは自由にできますのよ?」
遠回しに笑った理由を律儀に説明して、お分かりかしら?と言い聞かせるようにゆっくりとした口調で囁き。そして、どうにか抱えさせることに成功した荷はその細い腕では持って歩くのがやっとだろう。しかし取り落とすことも持ち逃げすることも取り敢えずはしない様子に微笑みかけて。
「ついていらして。後、お前、と呼ぶのは許しませんわ。そうですわね――姉さま、と呼んで下されば返事はしやすいかしら。弟にはそう呼ばれております。あなたは弟には全く似てはいませんが――年下の子には優しく接して差し上げるべきですもの、ね…?」
悠然とした振る舞いや笑みは崩さないまま、そう柔らかな声で案外ぺらぺらと喋りかければ、先立って歩を進めついてくるように促してやがて富裕地区の屋敷へと彼を伴って戻るだろう――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 市場街」からエリアさんが去りました。
■番号215642 > 「ふうん…」
命じられるままに躯を開く奴隷は、小首を傾げた。どうやら、身分や金があれば相手を選ぶことができるらしい。
抱え込んだ荷物から見え隠れする干し肉にどうしても視線は行きがちになるけれど。なんとか相手に後れを取らないように歩みを進める。
「ねえさま?おま…じゃなかった、ねえさまには、弟がいるんだ」
これを運びさえすれば、何かを口にできると確信した少年も安心から徐々に口数が増えて。富裕層の住む屋敷の大きさに驚くが、無事に運びきることができれば、おそらく無事に食べ物を手にできるだろうか。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 市場街」から番号215642さんが去りました。