2020/04/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にゾーイさんが現れました。
■ゾーイ > 「グッドイブニーング!」
唐突に露天に響く、鈴を転がしたような声。
もし男が暇なあまり緩み切っていたなら、いつ中に入っていたのかすらわからないかもしれない。
それは右目が青く、左目が黄色いミレー族の少女。
黒猫のような少女は何も言わずに金貨を一枚、人差し指と中指に挟み、男へと突き出してきた。
■シュバルト > 百戦錬磨の冒険者でも常勝無敗の剣闘士でも何でもない。
ちょっと魔導調律と言う分野が得意なだけの一般人には不意打ちに対処など出来ようも無く……。
ガッ、ゴッ……ゴツ
と、鈴を凛と鳴らしたような、そんな耳心地の良い声色に椅子の後ろ足が滑り倒れる音、倒れる途中でテーブルの角に頭をぶつける音、最後に地面に後頭部を打つ音を奏でるのが先で、気まずそうにはにかみ笑顔。
「いらっしゃい、その、なんだ……いや、お客様が悪いわけじゃないんだけども、もうちょっと手加減して欲しいなって……。」
ははは、と乾いた笑いをセットに紡ぐと片手で木製のテーブルを掴むみそっと身体を起こしてから、お客様に「いらっしゃい、何かご入用かな?」何て後で反省物の有り触れた言葉をお客様に向けてしまうのだった。
■ゾーイ > 「あはは、ごめんねー。ボク、気配を殺して歩くの癖になっちゃっててさ」
まさかここまで驚かれるとは思わなかった。
何しろ今の少女は盗みに来た訳ではなく、立派な客。
正々堂々と真正面から入ったつもりではあったのだが。
「いや、入用なのは入用だけど……はい、チップ。要らないの?」
金貨を突き出したまま、少女は首を傾げた。
大抵の商売人は、ミレー族との取引を不吉がり、嫌がる。
故に、最初にチップを渡して黙らせるのが、半ばルーチンと化していた。
■シュバルト > 残念ながら心は上の空。
ぼーっと意識を夜空に飛ばす前に人通りがほとんど無い状態なのをは薄灰色の眼で確認したし、誰も来ないと思い込んでいたから本気で驚いたし、正面から来た客にさえ不意打ちにしか感じれず、今現在に至るのだ。
「……いやいやいや流石にお店に入るときくらいはね?っと……。」
言葉を途中で一旦区切り、理由は初対面の客相手に妙な説教をするところであって、それを辛うじてストップだ。
パタパタと次なる言葉を向ける前に白衣の裾とズボンの砂埃と最後に自分のお尻の砂を叩き、つま先で椅子の縁を蹴り上げて倒れた椅子を器用に直すと――はて?
「おーっと、何かなチップ?あれ?大通りのお客様ってチップなんて最初にくれるの?初めての経験なんだけども?」
突き出された金貨に視線を落とす。
直ぐに視線を持ち上げると改めて相手の姿を瞳で捉える。
ミレー族、しかも猫系統にして不思議な瞳の色をした少女、あえて言うなら美少女、が小首を傾げている。
……で何故か小首を傾げる少女がチップを突きつけてくる、いや貰う理由が見当たらない、施術でもしていればそれもわかるんだが、まだ相手と交渉にも入っていない。
思わず自分も小首をカクと傾げるのだった。
■ゾーイ > 二人して首を傾げ、そして少女はポンと手を叩いた。
「あ、お兄さんミレー族に対して差別意識持ってないタイプ?
たまにいるんだよねー。じゃあチップはなしで」
ピン、と親指で弾いた金貨をキャッチして、掌の中へと。
さて、と腰に手を当てて本題に入ろうとした。
「えーっと、何だっけ……そうそう、この店の噂を聞いたんだけどさ。
それが兄ちゃん……あ、キミじゃなくボクの兄ちゃんね。
兄ちゃんから聞いた外国の風土と、奇妙なぐらい一致しててさ。ボク自身の目で確かめたくなったんだ」
■シュバルト > ――…灰色の瞳。
小首を傾げたまま視線は硬貨の方に吸い込まれ、弾かれ跳ねて少女の手の中に収まったことに、ちょっと選択肢を間違えたかな?など後悔するも、それ以上に好奇心を疼かせる言葉に誘われて、視線はミレー族のお客様に戻そう。
「まあ、残念だけど自分には兄弟はいないからねー……。で、何か面白い話になりそうな気配がするんだけども、噂?外国の風土?何々?と、一先ず座るかい?」
かしげた小首を戻しながら、お客様との対話に応じる構えである。
こけて倒れた自分は一先ず今まで座っていた木製の椅子に腰をかけなおし、彼女には直ぐ傍にある背もたれの無いスツールを勧めるべく、ポンポンと、そのスツールを叩いて、どうぞ?と言わんばかりの視線を向けるのだった。
さて、噂も気になるし、外国の風土とやらも気になるし、気になる尽くしで一体どんな話をきけるやら、と瞳はキラッキラに輝いてしまう。
■ゾーイ > 「今、お兄さんアレでしょ。ネコババしなかったことをちょびっと後悔したような、そんな気持ちでしょ?」
視線が金貨を追っていたことからの当て推量だが、確信があるらしくケタケタ笑っていて。
そのまま勢い良くスツールに腰掛けて、グルンと臀部を支点に一回りするのであった。
「うん、兄ちゃんが言っていたシェンヤンの話。
シェンヤンにはね、経絡秘孔っていうツボを刺激して、体内の『気』……あ、こっちで言う魔力ね。
それを整える『気功』って技術があるって、兄ちゃんから聞いたことがあるんだ。
これってさ、お兄さんのやってる、えーっと……『調律』だっけ。それとほとんど同じじゃない?」
少女はハキハキとした声で、一息にそう語った。
■シュバルト > 「……ちょっとだけ、いや、だいぶ……とても……かなり。」
財布は軽いのである。
昨晩の支払いは先程自分で確認したとおり来月になる。
施設に招かれ部屋を借りての施術なので、部屋を借りた額は引かれるがそれでも十分に懐温まる仕事であった。
だから今財布は軽いのである。
大事なことなのでくり返したが、財布は軽いのであった。
故に――…そりゃそんな気持ちにもなろうよ。
「『気』、ああ、……どうなんだろう?自分の知識にある気って生命力がどうとか、こうとかで、自分の調律は生命力とかそっちよりも体内に流れる魔力の流れを正す……って確かに、その気がイコール魔力と言うのであれば同じかもしれないな。……気功っていうの?と自分の調律が似てるかどうか、少し試してみる?」
否定などしない。
確かに確かに、とグルンと1回転する少女の言葉に頷くばかりで、自分の持っている気への知識を言葉に混ぜつつ、経絡秘孔という耳慣れない言葉には瞳を輝かせ、言葉は多少矢継ぎ早になってしまう。
それにしてもハキハキした彼女の鈴の鳴るような声色もあってか、酷く心地良くて、表情はすっかりと商売人より素の表情となりつつある。
右手は自分の顎先に左手は自分の膝の上に、誰が見ても思考しているポーズを取りつつ、今度その辺りも調べてみようと思うのであった。
■ゾーイ > 「アハ、正直者! じゃあこれ、あげるね。
正直者にはご褒美ってのが、御伽話(フェアリーテイル)のお決まりでしょ?」
まだ掌にあった金貨をポイ、と投げ渡す。
急に投げたから慌てるだろうなー、などと思い、意地悪く口角を吊り上げながら。
「ふぅん、単純に同一のものじゃなくて、派生した技術かもしれないんだ。
うん、俄然興味が湧いてきたよ。正直、最初に聞いた時は胡散臭いって思ったんだけどね!
ちょっと試して貰おうかな。もちろん、お代はさっきのとは別に出すね。あそこに寝転がればいいの?」
そう言って、寝台を指差す。
もし男の許可が得られたなら恐ろしくしなやか、かつ、とんでもない俊敏さで滑るように移動し、全く無駄のない動きで寝転がるだろう。
■シュバルト > 投げられた硬貨を自分の顎先に添えていた手を伸ばしてパシッと受け止めると、それを懐にしまうでもなく木製のテーブルに置いてから、意地悪い笑みに対してちょっとだけドヤって笑みを返すのだ。
流石にお金を粗末に扱うのは自分が許せなくなるから。
けどもまあ、彼女の続ける言葉には自分も苦笑を零すしかなくて、胡散臭いって思った等とそれを生業にしている者にストレートにいう彼女に困った顔も浮べてみせる。
「……なら流石に人通りないけども、此処大通りなんで、うち来る?初対面の男の部屋でも二人っきりでも、施術しかしないって信用してくれるなら、だけども。」
お試し程度は出来る。
出来るが意地悪をするには此処は開放的過ぎる。
なので一つ提案を硬貨をテーブルに乗せた手の人差し指を立てて告げる。
もし難しければ、初対面だし難しいのだろうけど、もし断られたらこの場で最初に脅かした分はちょっと意地悪をさせて貰うつもりで、もし提案に乗ってもらえるのなら、さらっと此処を片付けて借りている宿の部屋に連れ込もうと。
――まあ今夜はもうほかにお客様きそうもないので。
■ゾーイ > そのドヤ顔を見て、ニコニコと笑いながら尻尾をゆらゆら揺らす。
犬のイメージに惑わされてはいけない。猫が尻尾をゆっくり動かしている時は、機嫌が悪い時なのだから。
「ああ、この寝台はお試しってワケなんだ。
それじゃあ、短剣を持った泥棒(シーフ)が何の狼藉も働かないって信用してくれるなら、その提案に乗るよ」
いつの間にか腰から抜き放っていた短剣を片手でくるくる回して、ニコニコした笑いはいつの間にかニヤニヤした笑いに変わっているのだ。
■シュバルト > 「……へぇ泥棒(シーフ)ねぇ………。」
王都は人種も職業も星の数ほど様々に。
だから今更今夜のお客様が泥棒(シーフ)であっても驚きはしない、寧ろ妙になんだかしっくりと、彼女から受けた印象と彼女の動作というのか、それがガチっと噛み合った気がした。
素早く抜いた短剣の軌道は見えなかったが、そこで驚けば相手の思うツボである。
この寝台がお試し用だって察しの言い彼女にニヤニヤ笑いが妙に似合う彼女に隙を見せるようにして、両肩を竦めた後に、どうみても鞄の口よりも大きなテーブルを寝台を商品をパパっと鞄に詰め込んで、気がつけば残るは彼女の座るスツール一つ。
「それは……えーっと、名前、聞いてないな。オレはシュバルト、シュバルト・イフシュント、カワイイ泥棒猫さんはお手数ですが、そのスツールをもってついてきてくれます?」
等といい、彼女がどうするか、視線はじぃと彼女の左右で色の違う瞳を覗きこむ。
■ゾーイ > 「良く言えば、だけどね。巾着切り(カットパース)、略奪者(バーグラー)、窃盗犯(スワッシュバックラー)。
やり方によって呼び方も色々だよ」
す、と鞘に短剣を納めてスツールから立ち上がる。
なるほどなるほど、意外と胆力のある相手だと感心しつつ。
「ボクはゾーイ。ゾーイ・ナインライブス。
その胆力に免じて、荷物運びを手伝ってあげる。しかもタダで。感謝してよねー?」
少女は、に、と八重歯のように尖った犬歯を剥き出しにして、笑った。
■シュバルト > 「ゾーイ、ゾーイちゃんね。ハイハイ、じゃあオレの方も施術で色々サービスしてあげるから、貸し借りなしなー?」
鋭い犬歯が酷く魅力的に見える彼女の笑顔に対して、へらっと軽薄そうな笑みを軽く浮べると、肩にかけた鞄のベルトを軽く調節してから歩き出す。
此処から歩いて数分もしない部屋を借りている宿に向けてである。
歩く早さは一応彼女が自分を見失わない程度のゆるりとした速度ながら、まあ、いざとなったら彼女の方が足は早そうだし、とへらへらと笑いながら可愛くて何処か危いミレーの少女を伴って帰路へとつくのであった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からゾーイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシュバルトさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にアルヴィンさんが現れました。
■アルヴィン > 今夜もギルドの酒場は大繁盛。騎士もまた、常のように壁際のテーブルにて、依頼を果たした後の冷たいエール…という風情であるようなのだけれど。
無事に依頼を果たして喜ばれたにも関わらず、どうにも表情が晴れていない。
「…はぁ」
と、エールもさほどに進まぬままに、溜息なんぞをついていたり…。
ブスリ、眼の前に並べられた熱々のベーコンにフォークを刺して、それをエールでぐびりとやる。
それだけで一日の疲れなどいつもであれば吹っ飛ぶというのに。
どうも今宵の騎士は、冴えない風情で溜息ばかり、なのだった。
■アルヴィン > 口腔内に広がり旨味と肉汁。しっかりとした味を冷たいエールで流し込む。すると、ベーコンの脂がエールの苦みでさっぱりとし、さらに食欲が増す。
ちらり、騎士の視線が眼前のベーコンとエールに注がれた。
美味いものをせっかく口にしているのに、いつまでもつまらないことに思い悩むというのは、食事の楽しみを半減させる。それはつまり、人生の楽しみの半分を失っているも同じなのだとは、これは騎士の老いた師の言葉であった。
師は、老いていながら矍鑠とし、何より人生を楽しむということをそれはよく知った人であったのだ。
ブスリ、ともう一度ベーコンをフォークで。
冷めてしまったらもったいない。
それこそ、損ではないかと、騎士ははむりと大きくそれに齧りついた。
美味い。それはもう、美味い。
なんとも素朴というか、単純というか。
食べる、という生き物として最低限度の欲求を満たしてゆくうちに、どうやら騎士のその表情も随分と晴れやかになってきたようで…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からアルヴィンさんが去りました。