2020/04/04 のログ
アルヴィン > 「…卒爾ながら」
騎士は、ようやくそう声をかけた。まだまだ随分と若く精悍な面持ちを穏やかにしつつの挨拶であったが、その口ぶりはさすが騎士というか、随分と時代がかったものに聞こえよう。それは、この騎士がこの大陸の者ではないから、ということもあるのかもしれない。
「お召し物が、随分と濡れておられる。もしよろしければこれを…」
言いつつ騎士が差し出したのは、白い鎧の上に羽織っていた青いマントであった。
魔獣の皮革を加工したものであろう。鮮やかな青いそのマントは随分となめらかでそしてしなやかであった。
「ともあれ…羽織られるがよかろうと思う。いくら酒場が暖かいとて、そのままではお身体に障る…」
と、随分と気づかわし気に騎士は告げる。

アエロリット > 「うむ……?
 おお、これはかたじけない。
 ありがたく使わせて貰おう……!」
差し出された外套を受け取ると、早速身に羽織る。
露出の多い格好だったので、外套一枚でも随分違う。
何か特殊な生地なのだろうか、その肌触りは独特で新鮮であった。

「ふぃー。
 いやな、季節外れのアイスドラゴンを追い払う仕事を請け負ったのじゃがな、情けない話じゃがみごとに返り討ちにあってな。」
熱燗の酒を飲みつつ、饒舌に聞いてもいない身の上を語り出し……

「時にお主、随分ジジ臭い喋り方じゃな?
 ……何処の生まれの者じゃ……?」
随分ババくさい自分の喋り方を棚に上げて、首を傾げたり。

アルヴィン > 「アイスドラゴン…ああ、氷竜…おれの故国ではホワイトドラゴンと、体表の色で呼んでいたな」
知能はあまり高くなく、竜種の中では弱い方ではあるが、まかり間違っても一人で追うような相手ではないはずだがと、騎士はややも首をかしげる。
騎士のその知識が、果たしてこの大陸であっても通用するものかどうかは、わからない。もしやすれば、騎士の指すドラゴンとはまた別の種のことででもあろうかと、騎士もまた興ありげではあるのだが…。
「これは、失礼をした。まだあまり、この国の言葉に慣れていないからだろうな。おれは…」
困ったように。騎士は口許をぽりぽりと掻く。そして騎士が告げたのは、セレネルの海を南に数週間航海してようやく辿り着く大陸の名。そして、その大陸でも強国として知られる国の名だった。
「…そんなことより、よろしければこれもゆかれるがいいと思う」
自らの出自について告げた後に。騎士が差し出したのは、先刻からちびちびと飲んでいたボトルだ。
いわゆる、火酒と呼ばれる類の、それはそれは辛口で酒精の強いものだった。
これを飲めば暖まろうと、騎士としてはやはり親切心での申し出のよう。

アエロリット > 「ほう、お主も遠方から来たのか。
 わらわと同じじゃな。」
アルヴィンが告げた国の名を聞き、感慨深げにうなづく。
少女は祖国の名を語らなかったが、その肌の色から察するに遙か西方の砂漠の国辺りだろう。

「お、良いのかや?
 くく、お主気前が良いのう!
 ……気に入ったぞ、お主名を何という?」
貰った酒をグラスに注ぎながら、尊大な態度で名を聞いてくる。
そして、火を吹くようなその酒を一気に呷った。

アルヴィン > 「…あ、ちょ…っ!」
それはそのように飲む酒ではないが、と。騎士は問われた言葉に名乗らんとしていた言葉を飲み込んで、思わず手を伸ばしてしまった。
火酒の名は伊達ではない。
火をつければ実際に燃えるのだ、その酒は。
騎士がボトルで頼んだその理由は、氷水で割って飲むつもりであったということに加え、余った分は水袋に入れて冒険に持って出るつもりであったのだ。
消毒に気付けなど、いくら病毒に対して強い抵抗を有する騎士だとて、備えがあれば憂いがないのは事実なのだから。
「…アルヴィン。アルヴィン・アルヴァーハードと…」
言うのだが、と。騎士は名乗ってみせたのだが。果たして火酒を見事に呷ってみせた相手はどうなっていよう…?

アエロリット > 「ふぃー……」
酒を呷り、満足げな笑みを浮かべる少女。
……かなり酒には強い体質なのだろう。

「あっははは、あるゔぃんなー!
 よろしくな、わらわはあえろりっとじゃー!」
いや、全然強くなかった。
酒は好きだが、決してそんなに強くは無いのだ。
けらけらと明るすぎる笑顔で、呂律の怪しい言葉を放ちながら、
その顔は既に真っ赤に。

アルヴィン > しまった…。遅きに失した。
騎士の顔にはありありとそう書いてある。ボトルごと渡したのがまずかった。せめて、割ってから差し出すべきだったと、悔いたところで後の祭りだ。
「…すまぬ。水を…いや、そのように小さなグラスではなく、そう、その大ジョッキで」
傍らを行き過ぎた女給を急ぎ捕まえ、騎士はそう注文を出す。
そして、アエロリットと名乗った娘の前へと、氷水の満々と満たされた大ジョッキを差し出したのだ。
「なるほど、アエロリット殿か。
 さあ、アエロリット殿。なかなかいける口のようだ。これもいかがだ?おすすめらしい」
と、ただの氷水を差し出してゆく。
これほど盛大に酔ってくれているならば、もう味もわかるまいというところに賭けて。
…せめて今更でもチェイサーを飲まねば、この後が心配でならぬ、と…。

アエロリット > 「やだ!
 それ、こおりはいってるのじゃ!!」
差し出された氷水を拒否。
手にしたボトルで手酌、さらにもう一杯火酒をぐいっと。

「ふははは、あったまってきたのじゃ……!!」
燃えるような濃度のアルコールが身体を回り、彼女を暖める。
そして、借りた外套をいつの間にやら脱ぎ去り、
さらには自分の衣服にも手をかけようとするでは無いか。

アルヴィン > 「な、ならば…」
騎士は慌てて再び女給に声をかけ、今度は水だけのジョッキを求めるのだが。女給は女給で、いい加減酔っ払いの相手に辟易している。今度は随分とめんどくさそうに、ドン、と音立てて騎士の前にジョッキが置かれることとなり…。
「さ…これを…って、あ、アエロリット殿っっ!?」
常日頃、泰然自若、融通無碍とした振舞がこの騎士の佇まいだ。死者の群れやキマイラと対峙したとてそれは変わらない。
だというのに、酔漢…否、酔っ払いの少女一人に随分と慌てているのは、その娘が今まさに薄い召し物を自ら脱ぎ捨てようとしているから。
「ま、待たれよっ、い、いかぬっっ」
アエロリット殿、と呼びかけつつ。騎士は脱ぎ落されたマントを手にしてそれにて娘の身体をくるむようにと腕を回すが…それは下手をすると抱擁をするかのような仕草となってしまった。
いや、そもそもくるむように差し伸べられたマントは、少女の脱衣に間に合ったのだろうか?

アエロリット > きめ細かく美しい褐色の肌、そのしなやかな肢体が露わになる一瞬、
アルヴィンのマントに包まれ、その布越しに腕の中へ。

「んーー??
 なんじゃ、このふとどきものめ〜……!」
腕の中で、アルヴィンを見つめる悪戯めいた紫の瞳。
しかも何やら、少女も手をアルヴィンの背に回して、その身体を密着させてくるでは無いか。
少女の柔らかなあれこれが、押し当てられて感じられる。

アルヴィン > やれやれ、なんとか不測の事態というか、不測の痴態は防げただろう。騎士はほっと胸を撫でおろす気分で息をついた、のだが。
「…不届きとは、おれのことか?」
それはまあ、不届きかもしれない。なんとなれば、知り合ったばかりの娘の肌身を、いくらマント越しとはいえこうして抱き締めているのだから。
いくら酔っ払い相手とはいえ、あまりといえばあまりな言われように、困ったように騎士は口許をむずつかせる。きっと、常であれば口許を掻いているのだろうが、今は下手に手を離せばマントが落ちてしまうのだ。
「…アエロリット殿。少しおとなしくなさるがよい」
娘のアレやコレ。それがきっと、感じられたことだろう。
そう、騎士が鎧を着ていなかったなら。
マントで随分と温かいはずだが、娘は今、自分から冷たい鎧に乙女のアレやらコレやらを押し付けてしまっているのだが、もしかして酔って熱くなったあまり、むしろそれすら心地よいのかと、騎士は呆れ半分で吐息を零し…。

アエロリット > 「……うむぅ……つめたい!!
 そのうえかたいのじゃ……!!」
と、不平を口にする少女。
抱きついたその身体は、硬い金属の鎧で覆われていたのであった。

「なんでそんなのきておるのじゃー!
 わらわひとはだであったまりたいのじゃー……!」
ぶーぶーと不満を口にする少女。
この酔っ払い、大人しくする様子が微塵も見られない。
喚いているうちに、マントがずり落ちてまた素肌を晒してしまいそうだ。

アルヴィン > 「おれも冒険の帰りでな。つまりは軍装のままということだ。お許しあれ」
酔っ払い相手にも、逐一真面目に受け答えするのは、この騎士がそれだけ朴訥で律義であるからだが、その実周囲へ視線を投げて助けを求めているのだけれど。
好き好んで酔っ払いの相手をしてくれるような奇特な冒険者は、あいにくと今ギルドにはいないのだった。
…そう考えると、この騎士は随分と奇特な部類に入るのだろう。
「人肌で、というのは随分とまた、アエロリット殿は大胆なことを口にされるな。それよりも、温かい湯に浸かる方が心地よいと思うが?」
そう言いつつ。騎士の手があたふたわたわたと娘を包むマントの上を動き回る。なんとかずり落ちることだけは避けねばならぬとしているのだが。はたから見ると撫でまわしているように見えかねないのが、騎士としてもなんとも情けないこと極まりなく…。

アエロリット > 「んむー。
 ふふふふふ。」
布の上から撫で回されて、
その微妙な感触が心地良かったのか、珍妙な声を漏らしながら、表情を緩める。

「ふろもよいがな。
 みもこころもあっためるには、まぐわいあうのがいちばんじゃぞ?」
酔っているからなのか、それとも元々なのか、
大胆で淫らな発言をさも当然の様に言い出す。

アルヴィン > 「な…っ!」
どこをどう押さえればよいものか。騎士としては随分と四苦八苦しているのだ、これでも。なんとか、マントをうまく合わせ、ずり落ちぬようにと整えて。ようやくほっと一安心したところにかけられたその言葉に、騎士の頬が一気に染まった。
「な、なん、なんということを…っ」
真っ赤になってむきになっていさめてくるところを見るに。
これはどこからどう見ても、この騎士女性経験はまだ、ということが露呈される。
その場を取り繕うように。手を放しても大丈夫と見極めをつけた騎士は、元の位置へと戻ってそして、こほん、と大仰に咳払い。
「アエロリット殿。いくらきこしめしていらっしゃるとはいえ、そのように軽々に男を誘われるというのはいかがなものか」
なんと、この騎士酔っ払い相手にお説教をし始めた。

アエロリット > 「むぅ……??
 ふふふふ………。」
なんとなくだが、触れるその手の遠慮がちな加減から、
女性経験がなさそうだということを悟ってしまう。
…かくいう少女も、性を知ってからまだそれほど日が経っているわけでは無いが。

「ふむぅ、なんでいけないのじゃ?
 わらわ、もうハーレムをもっててもいいとしじゃぞ?
 ……性を謳歌するのは、若き男女の務めじゃ……!」
当然、この生意気な酔っ払いは説教に屈することは無く。
西方の砂漠には、マグメールに負けず劣らず性事情が乱れた国があるらしいが、おそらく彼女もそこの出身なのだろう。

「それとも、わらわがあいてじゃたのしくもないかのぅ……?」
かと思えば、急に瞳を潤ませて、あからさまな泣き落とし。

アルヴィン > 「…アエロリット殿。その手はあまりにもあからさまだ」
語られるハーレムという言葉から、おおよその価値観のようなものはこの騎士には察せられたのだろう。あいにくと、マグメールとは異なり貞操観念のしっかりとした国から来たこの騎士は、やはり見た目通りにカタブツなのだった。
「…褐色の肌というものをおれは初めて近しく拝見したが。とても美しいと思う」
そう、真面目くさって告げてから。ややも頬を染め、騎士は再びこほんと咳払い。
「…とはいえ、そのように軽々に交わるというのはおれの知る士道にはないことだ」
士道、などと当然のように口にするあたり、やはりこの騎士は朴念仁としても筋金入りだ。大方、剣の道に邁進するからには、女色は断てとでも言われてきたのだろうと、それも容易に推測されるところである。

アエロリット > 「むぅ、かたぶつじゃの……!」
泣き落としは聞かないとみるや、唇を尖らせる。

「んー、かたぶつなそなたはどうすればなびいてくれるかの?
 いっそ、まっこうからくどいてみればいいかのぅ。」
見ず知らずの凍えた自分に酒と外套を差し出した、
たったそれだけではあるが、少女は彼の事が気に入ったのは事実だ。
貞操観念が緩い彼女には、一夜を共にするには十分な理由であった。

「ふむ、士道、か。
 なるほど、そなたもほこりたかき剣士というわけか。」
少女も剣を扱う身。
強い戦士は、彼女の敬意を払う対象である。

「わるかった、ちょっとからかいすぎたな。
 そなたの誇りを傷つける様なら、今宵は身を引こう。
 …いや、からかってたわけじゃないがな、ほんきではあったのじゃがな?」

アルヴィン > 至極真面目である朴念仁にとってはむしろ、正攻法というのが最も有効な攻め手であるというのはよくあることで。
少女の言葉を耳にして、ぼぼ、と騎士の頬が染まった。
そして、染まった頬をむしろ晒してしまうことになりながらも、騎士はふい、とそっぽを向いてその真っ赤な頬をぽりぽりと掻く。
「いや…。おれは朴念仁の無粋者ゆえ…。からかわれたとも思わぬし、嫌であったわけでもないのだ。ただその…なんというか…」
愛の交歓というものへと、やはりそれなりに甘やかな幻想を抱いているのだろう、この騎士は。呑気でお人好しなようでいて、随分と旅慣れて世故長けているこの若者は。なんと色恋沙汰に関してのみ、まったく世間ずれしていないのであった。
それを今宵、騎士は騎士でこの少女によって思い知らされた、ということなのだった。
「そうだな、アエロリット殿。貴女のお眼鏡にかなったというのは…やはり嬉しいな。その喜びを今宵の夢の供としよう」
そう告げると。騎士は二人分の支払いをし、どうにもくすぐったそうに微笑みながら席を立ったのだ。
青いそのマントは、しばし少女に預けられることとなる。
そのまま、少女が持っているのか。
それとも、ギルドに預けられ返されるのか。
それはまだ、この若い騎士のあずかり知らぬところ…。

ご案内:「王都マグメール 冒険者ギルド」からアルヴィンさんが去りました。
アエロリット > 「うむ、次に会った時は、よい返事を期待しておるぞ〜……!」
酔いが周り、微睡始めた少女。
アルヴィンに甘えるまま、マントだけならまだしも会計まで済ませて貰ってしまった。

……その礼くらいは、次に会ったらしなければ……。
と、次の朝、二日酔いに苛まされながら少女は思うのであった。

ご案内:「王都マグメール 冒険者ギルド」からアエロリットさんが去りました。