2020/03/29 のログ
■ピング > そのまま時間が過ぎて行く。
今日は心行くまで読書を楽しんだんだとか。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/雑貨店」からピングさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区の酒場」にファーユさんが現れました。
■ファーユ > 酒場の喧騒。グラスに酒を注ぐ音、グラスを空けて叩き付ける音。
話し声、笑い声、泣き上戸の嘆く声。
様々な声と音を包み込むように、リュートの音色が気を揺らす。
歌はない。
濃緑の袖付き外套と大きな帽子を揺らしながら、弦を弾く音色が響く。
ご案内:「王都マグメール 平民地区の酒場」にアルファさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区の酒場」にアルトハルト・スメラギさんが現れました。
■アルファ > 喧しい酒場に流れる音色は、掻き消されることはなく調和をもって耳に届いた。
カウンターテーブルに肘を突いて酒を飲んでいた黒尽くめの半妖はちらりとそちらの方を向け。
誰一人絡む客がいないならば……立ち上がりゆっくりと近づく。
「中々いい演奏だったよ」
差し出す掌には安紙幣が乗せられて。
微笑みを持ってお捻りを差し出していた
■ファーユ > 「……………。」
黒尽くめの男へとちらりと顔を向ける。
鋭く射抜くような瞳が、その姿を映した。
その口には言葉を含まずに、ゆらりと帽子を揺らして会釈をするに留まる。
……再び、リュートの音色が響く。
お捻りには何故か反応することもなく、次は少しアップテンポに。
リュートは、勇ましい凱歌を歌う。
ご案内:「王都マグメール 平民地区の酒場」からアルトハルト・スメラギさんが去りました。
■アルファ > 「あれ?誰もいない」
何者かの気配が背後にあった気がした……が振り向けば酒場の扉が閉まる姿しかない。
理由はないが小さくそちらに頭を下げてから改めてリュートの持ち主に振り向いて。
「いらない?俺はただ、酒の肴に聞いた君の音色が気分良かったからこれを差し出したまで。
同情や憐れみじゃないんだけれどね」
鋭き視線も差し出したおひねりを受け取らないことにも泰然自若とした態度と口調は崩さずに。
リズムが変わるBGMの前に屹立している。
紙幣はくしゃくしゃに丸められ革袋の中に突っ込んで。
「その音色で会話してるのかな?俺には苛立ちにも聞こえるんだが。邪魔なら去るよ」
それに同意の仕草や無視の類があれば背を返して立ち去っていくだろう
■ファーユ > 「………………。」
とんとん、とリュートの音色に混ざり、床を叩く音が聞こえる。
床を蹴った音色の傍らにあるのは、小さなリュートのケース……
と、それに立てかけられた黒板。
『眼は死に喉は潰れた吟遊詩人』
そう書かれている。
……盲ているらしく、また言葉も発せないらしい。
くしゃりと紙が握り締められる音によって、
ようやくお捻りが差し出されていることに気が付いたようだ。
少なくとも、その音色には苛立ちはない。
勇ましく騎士の勝利を唄う凱歌のメロディは、たとえそこに言葉は無くとも
その威風と高潔さを高らかに歌い上げる。
■アルファ > 音のなる先を見て眇めた目で歌い手を見る
「盲目で失語の詩人、か。
かわいそうだが……いや、とてもそうは見えないんだが。
さっきも俺を見ていたような?」
先に見られた青い瞳を覗き込もうとかがみ込んで、すぐに姿勢を戻す。
水を差すには躊躇われる真剣な姿だから。
暫くは猛々しい演奏に耳を傾けていたが、足が疲れたのか近くのテーブルより丸椅子を持ってきて座り。
「耳は聞こえるんだろ?話せないなら、俺も合わせて吹いていいか?
邪魔はしない。曲に上乗せしてハーモニーを出すだけだ」
自分の尖る外耳を突きながら問いかける。その手にはいつしか銀色のフルートが握られている。
■ファーユ > 「…………。」
ぴたり、とリュートの音色を止め、足元の黒板を手に取り……
がりがりとそこに文字を描く。
『音でおおよそ方向が分かります』
……そういうことらしい。
再び、リュートが旋律を紡ぎ出す。
セッションの誘いについては、断る理由もない。
再び、ふわりと帽子を揺さぶり、気にする様子も特に無く。
■アルファ > 「あはは、律儀だね。別に演奏の手を止めて書くまでもないのに。
わかったよ。信じる」
黒板へ一瞥した後は一切口を挟まない。
酒場を見回して吟遊詩人に寄り添い何かを始める黒尽くめの男に視線が集まっている。
ただそれに穏やかな微笑を浮かべ、瞼を閉じ、生命の息吹を注ぐようにフルートに唇を結ぶ。
その途端に甲虫の背のごとくつややかなフルートが歌い出す。
「――」
たちまち魔法めいた気配と力が酒場の広間じゅうにみなぎる。
吟遊詩人のリュートと半妖のフルートは、二頭の蝶が互いに絡み合いもつれながら勇壮なる戦士の凱歌の幻想に誘っていく。
■ファーユ > その歌は、まるでまさに人が歌い上げるかのように……酒場の隅までも
満たし、一つの空気へと染め上げていく。
野営を明け、暖かな春の夜明けに目を覚ました日。
咽るような夏の夜、妖精とも聖霊ともつかない何かと邂逅した日。
紅葉を掻き分けるように山へ挑み、遥かな街までも旅をした日。
極寒の吹雪に撫でられつつも、民草を護るため戦った日。
一人の騎士の、素朴な、そして高潔な一生の物語を、弦と筒が語る。
その音色は紡がれ、描かれ……いつしか、酒場に流れる声はなく。
演奏が終わる頃には、喝采と拍手、口笛、硬貨が床へ転がる音が
音楽の代わりに酒場を満たした。
■アルファ > 吟遊詩人が奏でる曲の意匠は知らない。
ただ彼女の旋律に即興で音を乗せたのみ。
だから割れんばかりの喝采にはフルートから呆然と唇を離し。
「いやー、どうもどうも。アンタらもいい夜を過ごしてくれよ」
盲目と失語と称する吟遊詩人に代わり起立して優雅に腰を折り曲げてゆく。
そして引き潮のように元の喧騒に戻ってから床に転がる硬貨を集めて。
「どれもこれも小銭だが大分良い金額になった。
なぁ、この金で宿でも借りて一緒にパーッと飲まないか?」
お椀を作った両手に収まらぬ金貨をリュートケースにしまい込む。
ジャラジャラと小気味よい音を立てながら相手の反応を待った。
同意しないならそのリュートケースに丸めた紙幣もいれて立ち去るだろう。
■ファーユ > 「………………。」
割れんばかりの喝采へ、軽く会釈を返す。
無口で無表情で、しかしその顔は少しだけ……喜んでいた、ようにも見える。
その日は一旦、ここでお開き。
思い思いに酒を飲み、飯を喰らい、明日への英気を養い、
そして再び日々の糧を得るために立ち上がっていく。
「…………。」
そうして潮騒のような酒場に戻った頃、貴方の誘いを受けて。
再び黒板を手に取り、ごしごしと袖で擦ってそれを消す。
『ありがとう でも申し訳ない
これから晩餐会での演奏があるので』
そんな断りの言葉を書き上げた。
……そして、酒場の扉の開く微かな音に顔を上げる。
そこに立つ、時間だぞ、と語る一人の男は、少しだけ身形がいい。
■アルファ > 「そうか。先客がいるなら仕方ない。楽しかったよ」
革袋から取り出した紙幣をリュートケースに放り込んだ半妖は
まるで白昼夢のように手にしたフルートは手にしておらず。
フードを被って迎えに訪れた男の隣を通って酒場を後にする。
ご案内:「王都マグメール 平民地区の酒場」からアルファさんが去りました。
■ファーユ > 「……………。」
かたりと扉を開けて出ていった貴方を、音だけで顔で追いかけて。
フルートを仕舞い込んだ音がしないことを少しだけ不思議に思うが、
すぐに気にせずに椅子から立ち上がる。
そうして身形のいい男へと付いていくように酒場を後にした。
ご案内:「王都マグメール 平民地区の酒場」からファーユさんが去りました。