2020/03/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にリムリアさんが現れました。
■リムリア > 仕事終わりの帰り道
今日の夕飯は何にしようかなどと考えながら、買い物客で賑わう通りを歩いていると。
少し離れた路地に見知った顔を見つけ。
「――タンくん? どうかしたの?
調子悪そうだけど……」
人の波から抜けて少年が腰かけるベンチの方へ。
いつも元気な笑顔を見せてくれる少年は、今日ばかりはなぜかぐったりしてる。
心配そうに顔を覗き込んでみると、顔色は悪いというよりは赤くなっている。
「熱ありそうだね……
テントまで歩けそう?」
そっと額に手を当てて、熱を測ろうとして。
■タン・フィール > 「―――ぁ、 リムリア、さ、ん…っ ええと、調子悪いっていうか…よすぎるって、いうか…」
ベンチにぐったりと体重を預けた姿勢から、なんとか状態を起こし微笑んで挨拶する。
無理をして笑顔を作っている様子はなく、心からの再会を喜ぶ笑顔。
ただ、荒くなりつつある息の正体をどう伝えるか、少し困ったように眉を反らして…
額に当ててもらったひやりとした少女の手には、風邪の類の高熱ではないが、
じんわりと人肌以上の微熱が伝わるだろう。
心地よさそうに目を閉じて、こす、と額を猫のようにこすりつけて。
「―――ぇえと、あの…元気になる、お薬を売ってたんだけど、
お客さんがはしゃいじゃって、まきちらして、ちょっと吸っちゃって…
カラダ、ぽかぽかってしちゃってるから…ちょっと、おやすみしてたの。」
と、『元気になる薬』のことを少しぼかして伝えつつ、熱っぽく潤んだ瞳で見上げて。
■リムリア > 笑みは見せてはくれたものの、どう見ても調子が良いとは思えない様子。
額に添えた手に擦り寄ってくる様子に、そのまま頭を撫でてあげ。
「調子よすぎ、って感じには見えないよ?
どこかでお水貰ってこようか?」
心配そうに、そう重ねて尋ねるけれど。
どうやら病気の類ではなかったらしい。
身体のぽかぽか具合がどのくらいのものか分からないから、とりあえず隣に腰かけて。
「そうなんだ……、それは災難だったね。
それで? 大丈夫そう?」
ちょっとだけなら平気なのかもしれないけれど、見た感じは放ってはおけない様子。
手は頭を撫でたままで。落ち着くまでは一緒に居てあげようと。
■タン・フィール > 「っふふ、ありがと…っ。
じゃあ、もしもらえたら、一杯だけ…おねがい、できる?」
と、少女の親切心に甘えて、もう少し歩ける気力を潤す一杯を貰えればと、お願いする。
少年自身でも気づかないうちに、高まった体温や促された発汗で、喉が乾いていたのかもしれない。
「うん、本当…具合悪いとか、倒れちゃいそうっていうのじゃなくって…
その…毒じゃなくって、興奮剤とか、媚薬…みたいなもの、だから…
…どきどきって、しすぎてて、ちょっとクラクラしちゃってるの。」
と、僅かに赤らんだ顔で、心地よさそうに額や頭を撫でられ、
前頭部や側頭、後ろ髪など、
いろいろな場所に滑る少女の指先を楽しむように、
こてん、と無邪気に顔を少女にもたれさせて休息する。
「~~~、ぅん、だいぶ、よくなってきたかも…っ
ボクのテント、もうあとちょっとだから…そこまでいっしょに、お出かけしちゃ…だめ?」
と、酔っているような、眠たげなような、いつもよりどこか甘ったるいハイトーンの声で尋ねて。
■リムリア > 水を請われると、ちょっと待っててねと言い残して、近くのお店へと駆けていく。
この辺りのお店であれば、ギルドを通じて顔見知りでもあるから、多少の融通はしてもらえる。
水の一杯くらいであれば、嫌な顔もせずに分けて貰え。
「はい、どうぞ。
んー……それだと、落ち着くのに時間が掛かりそうだね。」
よしよしと撫でてあげると、まるで仔猫のように甘えてくる様子に、ついつい意地悪したくなってしまう。
こちらに身体を寄せてくる少年の頬や脇腹をツンと突いてみたり。
「ほんとにだいじょうぶ?
うん、テントまで一緒に行くのは全然良いんだけど。
ちゃんと立てる?」
小柄な自分よりも更に小さな少年の身体を支えて立ち上がらせる。
どこかふわふわした様子は、やっぱり心配で。
■タン・フィール > 「ぁ、ありがとっ! …んく…んっ… ~~~っ…おいしっ!」
持ってきてもらえた、店で提供するための飲料水は、清らかで冷えていて、
手渡されたコップの澄んだ水をゆっくり飲み干すと、嬉しそうに息を吐いて少し落ち着きを見せる。
「ぅん、いっそはやめにテントまで着いちゃったほうがいいかなっておもったんだけ、ど、
ぅあっひゃあぅ!?ちょ、くすぐったいよ…っ」
ふにふにのほっぺを突かれれば、からかわれたように感じたのか、
本気の怒りではなくじゃれるようにプクーっと膨れて…脇腹に甘く突かれた指には、
たまたま脇腹の敏感な部分をピンポイントで…しかも、過敏になっている今、命中してしまったのか、
大きな声をあげてくすぐったがり、うずくまってしまう。
「ぅん、だいじょぶっ…だけど、ぉ、もぉイタズラしちゃ、ダメだよ?
…じゃないと…
テント着いてから、イタズラ…しかえしちゃうんだから…っ」
と、ごっこ遊びのようにぷんすか怒る素振りを見せつつ、
本気か冗談か、彼女に身体を支えられながら、少しだけ艷やかな目と声で呟いて…
ぎゅう、と頼りなげな細腕を、彼女にしがみつくように絡ませて、一歩一歩とテントの方向に歩んでいく。
■リムリア > 「うふふ、ごめんね?
でも、タンくんが可愛いのが悪いんだよ。」
普段から周囲に可愛いと言われているらしい少年だから、
ちょっとは気を遣ってあげようかとも思うのだけれど。
けれどやっぱり可愛いという評価は間違いではなく。
ただちょっとばかり悪戯が過ぎたかもしれない。
蹲ってしまった少年の頭を撫でながら、謝罪の言葉を紡ぐ。
―――あまり誠意は感じられないかもしれないけれど。
「うぅ……悪戯しかえされちゃうのは大変だから、止めておこうかな。
はい、しっかり掴まってね?」
弱々しくしがみついてくる少年からは、普段よりも高い体温が伝わってくる。
抱き枕にすると温かくてちょうど良いかもしれない、なんて思うほど。
潤んだ瞳でそんなことを言われてしまうと、以前のことを思い出してしまって。
ちょっぴり顔を赤らめながらも、移動中は真面目に悪戯も控えておく。
そうして、ゆっくりとした足取りで、それでも少年のお店でもあるテントには辿り着き。
■タン・フィール > 「ぅ~~~っ…また、かわいいっていうー…っ…
…カワイイのが悪いんだったら…リムリアさんだって、かわいいんだから…。
…ふふ、『また』かわいがっちゃおっかな~?』
と、少女がやめておこうと、いたずら心を引っ込めて大人しく家路へと介抱し、送り届けてくれれば、
たどたどしく二人三脚で歩むその道筋で、お返しとばかりに少年は軽口を吐いて…
テントの中は、テント中央にとろ火の焚き火でクツクツ煮込まれる香草の香りと、快適に保たれた室温で、
客人として訪れても、日頃からここに住んでいても、入った途端にホッとできる心地よさ。
焚き火前には、清潔な毛布やクッションを山積みにしたごろ寝スペースが確保されており、
そこに一緒に座ろう、と誘うようにしがみついた腕を引いて。
「ふぅ…ついた~~~っ♪ …ほんとに、ありがとうね、リムリアさん。
…ええと、何か、お茶か、お菓子か… あっ、ごはん、たべてく?」
と、自分のナワバリに戻って落ち着きを取り戻す習性の小動物のように、人心地ついた様子で客人をもてなそうと。
…くれぐれも、未だ残る疼きに負けてしまわないように、ちょっとだけ何かを耐えるようなもどかしさのある声色ではあるが。
■リムリア > 「可愛いんだから、仕方ないよね。
はぅ……あれは、その……恥ずかしいから、内緒にね…?」
密着した状態で、軽口とは言え、そんなことを言われるとドキッとしてしまう。
ただでさえ、少年はいつもと違ってどこか妖しい雰囲気なのだから。
それでも、どうにかテントにまで辿り着くと、ほっとする温もりに包まれる。
そのまま柔らかなクッションが山積みになった場所へと誘導し。
「無事に辿り着いて、何よりだね。
お茶もご飯も良いけれど……もうちょっと休んでからの方が良いよ?」
僅かな距離を歩くのも、ゆっくりとした足取りだったのだから。
いくらテントに戻れたといっても、すぐに動き回るのは良くないだろう。
立ち上がろうとする少年を押し留めて、クッションに挟まれながら腕の中に抱えるようにして。
■タン・フィール > 「ふふっ…♪ はぁーい、ないしょ、二人だけの、ないしょ。」
いたずらっぽい口調で、からかい返すように煽るようにクスクス微笑み、
クッションに寝転ぶも、ソファーのように並べて寝転ぶも自在の寝転び空間で、
ぽて、と少女の細い腿に、膝枕をオネダリするように頭をのせ、じっ…と見上げて。
「ぅん、じゃあ…もーちょっと、ここで一緒に、ごろごろしよ?
っふふ、お仕事先のヒトからもらった、ふわふわの毛布やクッションだよー。」
膝枕をしてもらいながら、少年は自分より一回り小さい抱き枕を持ってきて、ぎゅうーっと抱き潰して見せる。
「ほら、リムリアさんも、やってみてっ」
と、彼女にも抱き枕を差し出して…どこか惰眠や堕落を誘う妖精のような、甘い誘惑。
■リムリア > 「もうちょっと時間が早かったら、ここでお昼寝とかも良かったかも。」
ふわふわの毛布とクッションはごろ寝をするには最適で。
膝の上に頭を乗っけてくる少年の温もりと相俟って、とてもいい感じ。
「うぅー、今の時間からお昼寝しちゃうと、夜になっちゃう…」
抱き枕を差し出されると、そのまま少年ごとぎゅっと抱き締める。
ふわふわして、すべすべで、温かくて、気持ちが良い。
そのまま抱き締めたままで、ぽすっと身体をクッションの海に沈めて。
気持ち良さそうに瞳を細めてしまうけれど、そのまま瞼が落ちてしまうのも時間の問題といった様子で。
■タン・フィール > 「―――っふふ、じゃあ今度…ギルドのお仕事がお休みの日に、いっしょにあそぼうよ?
…一緒に王都の色んなとこでお買い物したりー、いろんなお店いって、
おいしいものたべて、ここでごろごろーって、お昼寝して…。」
と、たまになら許されるほどの夢の休日コースを、ぽわぽわとした眼差し特徴でつぶやきながら、
クッションを手渡すどころか、クッションごと少年の背中に手を回されて、
抱きしめられれば、「むぎゅうっ」と声を漏らして、
けれども息苦しさではなく、むしろ心地よさそうに抱き潰される。
「ぇへ、じゃあ、おきる?おきれるー…? いーよ、寝ちゃっても…♪」
少年からも少女の背に腕を回して、きゅっと抱き枕を挟んで抱き合いながら横向きにごろん、と身を投げて。
体中を柔らかさと温もりと、毛布のわずかな毛先の心地よさを頬や太腿に感じながら、
こしゅ、と額と額を合わせるように顔を寄せて、髪と髪が触れ合う音が聞こえる、寛ぎの時間。
■リムリア > 「それ良いかも……一緒にお出かけだね。
タンくん、甘いものとか好き?」
外はまだ肌寒いけれど、テントの中はぽかぽかとまるで春の陽気。
柔らかな毛布とクッションに包まれて、温かい少年を抱き枕にしてのお昼寝タイム。
誘われたそれは、冷静に考えればデート以外の何物でもない気がするけれど。
半分、寝ぼけた頭ではそのことに気が付かないままに。
「むーりー……タンくん、気持ちいい……」
少年に身体を摺り寄せながら、うとうとと微睡の淵を行ったり来たり。
きっとそのまま寝入ってしまえば、起きるのはもうすっかり夜になる頃だろう。
その時になって大慌てで起きるか、そのまま朝まで寝てしまうのか。
幸せそうに、無防備な寝顔を見せる少女の顛末を知るのは少年だけで―――
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からリムリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からタン・フィールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にネメシスさんが現れました。
■ネメシス > 聖バルバロ騎士団の活動は王都の中でも行われる。
「「おい、そこのお前。 ちょっとこっちに来い。」」
突如として通りの一つを閉鎖するように展開される団員達。
賊が街の中に侵入したと理由でつけての言いがかり的な取り締まりである。
男であれば金を渡すことで嫌疑が晴れるが、見目麗しい女が相手の場合は通りにあるごろつき宿へ連れ込まれるか、最悪通りで皆が見ている目の前で凌辱されるだろう。
彼らを率いている副団長のネメシスは奴隷たちの上に座り込んでは退屈そうにお茶を飲んでいる。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にビョルンさんが現れました。
■ビョルン > 「なんだ、あれは」
平民地区の1軒の家を出て、馬車通りまで歩こうとしていたところ。
己たちの往く手を遮るように軽装重装の兵士が立ちはだかっている。
己の知る王国の正規軍にも見えず、振り返って護衛の舎弟に問いかけた。
今日は2人連れた、舎弟たちはたった今しがた借金のカタに取った姉妹の少女の両側を挟むように己の後ろを歩いている。
──引き返すか否か、
足を止めれば右手で腰に下げた長い白木の柄に手を掛けて警戒心は隠さずに先を見る。
■ネメシス > 「「おいおい、兄ちゃん。
可愛い女を連れてるね?」」
「「どう言いくるめて連れ歩いてるんだ?」」
下卑た顔の騎士団員たちが一行に声をかける。
正規軍ではないが、王都内外で無法を行おうとこの聖バルバロ騎士団を表立って取り締まる勢力はいない。
王都の外ではまとまった戦力がなく、王都内では金に目が眩んだ権力者達が目こぼしをしている。
そういう状況にあって、平の団員たちはたまに手を出してはいけない相手にも噛みつくことがあった。
いまがまさにその時なのであるが。
副団長であるネメシスはそんな状況に気づかず、茶を楽しんでいた。
■ビョルン > ナリは騎士でも、騎士道精神の欠片もなさそうな声がかかる。
姉妹の少女は姉が15、妹が13位だろうか。
野卑な声に、彼女たちはびくっと身を竦める気配がする。
「こちとら、親御さんのたっての頼みで決まった奉公先へ娘さんたちをエスコートしているだけだ。通しな」
ざっくり言って嘘ではない。
声をかけてきた団員に近寄り、姿をしげしげと見詰める。
「都に上がって迷子になったか、『山賊騎士さん』」
敢えて挑発する言葉を投げて瞬間振り返る。
こうしている間に、舎弟は娘を連れて逃げてくれているまいか。
■ネメシス > 実際のところ、騎士団の団員たちは賊と大差ない。
賊よりはまともな身なりをしているが、元山賊や落ちぶれ冒険者などが多く在籍し、
実態は強力な犯罪者集団である。
「「あんだ?
聖バルバロ騎士団に歯向かうってのか?」」
団員たちの表情に苛立ちは見える。
彼らは王都を大手を振って歩くようになってから、ほぼ言い返されたことがない。
「「てんめぇ~~~!!」」
団員たちが顔を真っ赤にして怒り散らしているところで、
なぜか娘たちの方から女の声がする。
「ふ~ん、そう。貴方達借金のカタに売られちゃうの。
かわいそうにね。 きっと碌なところに連れていかれないわ。
うちに来る?」
姉妹を前に、にこやかに笑みを浮かべているネメシス。
団員たちと頭らしき男が口論をしている隙を塗ってはお目当ての
女の子たちのもとへと近づいていた。
そして、舎弟らしき男はネメシスの護衛である大柄な男に行く手を阻まれている。
大半は雑兵ぞろいだが、頭数が多い騎士団。
こうして相手をばらけさせることはお手の物だ。
■ビョルン > 団員の鶏冠に血が上るのも当然だろう。
先頭で偉そうに長物を下げて歩いているのはまだ少年と呼んでも差し支えぬ年頃の男だからだ。
「聖──なんだって?
噛まずに言ってくれるか?」
そんな団員がちょっと面白くすら思えて図に乗った言葉を乗せたところ。
怒号が上がれば刀を抜こうかと右腕を動かすが、其処へ混ざった機嫌よさげな女の声を聞けば弩に弾かれたように振り返る。
「──そいつらに触るな。
年季が明けたら親元に返す約束だ」
実質変わらないが。
女団員と少数の兵に回り込みを食らったらしい。
姉妹という荷物連れの男3人に正面突破は無謀と知り、じわじわと後ずさる。
まずは姉妹を攫われてはなるものかと、視界に女団員を捉える。
「その子たちに触るな」
重鎧の女に、繰り返して言葉と視線を投げかける。
■ネメシス > 団員たちは実力が伴っておらず、それゆえ強者を見たところで
その危険性が認識できない。
「「聖バルバロ騎士団だ!
くそがき!」」
団員たちは本人の自覚なく、囮の役目を果たしている。
口から唾を飛ばして喚き散らすが、副団長の指示がないために一定の間合いを取っている。
「年季って、いつのこと?
そんな日は本当に来るのかしら?」
王都の闇を構成する1勢力故、売られた女たちがどのような境遇になるか熟知している。
少女たちはネメシスの言葉を聞いては動揺を露わにしていった。
それもまた想定通りなのだろうが。
「貴方、うるさいわねえ。」
女たちに向けた表情とは異なり、眉間に皺を作るネメシス。
彼女だけは男の実力に気が付いており、常に視界の端に捉えている。
その代わり、護衛の二人にはそれほど気を配っていない。
自らの護衛である親衛隊で十分対応できると踏んでいるからで。
■ビョルン > (くそ親父)
とか、餓鬼めいた雑言投げつけてやろうかしらんとも思っていたが舎弟たちとの分断を知れば内心青ざめる。
故についついついと後じさり、今は己が保護すべき少女たちとは合流を果たせた、筈。
女が姉妹に語り掛けている言葉には言い返し賭けるが、先ほどのこともあり暫くその言質を見守る。
先程、納得ずくで連れだした姉妹の気が揺らぐのはまずい。
女が眉間にしわを寄せて嫌そうな言葉を吐けば、少し離れた舎弟たちを睨みつける。
(どちらかだけでも抜け出して、応援を呼べ)
頭と体の素早さのある舎弟だったならば叶うかもしれないが、さて、応援はいつになるやら。
さて、それから。
この女もただ遊びで紛れている訳ではなさそうだ。
ファッションショーごっこで重鎧は着れない。ましてや、その装備で己の注意を逸らして後方へ立つなど。
「──済まないね。
けれど、この子たちは磨けば上玉になる。
絶対に稼がせるつもりさ。
……見逃す気はないか」
黒と金の指輪を嵌めた左手はまだ刀の鞘を持ちながら、声音と笑顔だけは紳士然と申し入れる。
■ネメシス > 察しの悪い団員達も男の表情の変化や、副団長の口上を耳にしては表情が強張る。
男が少女たちのもとに近づくことを無理に止めようとはしなかった。
下手に手を出せば長物で斬られる可能性を考え始めたようで。
「うちならその点は大丈夫よ?」
姉妹ににこやかに声をかける。
男の読み通り、少しずつだが姉妹の気持ちはぐらつき始めている。
ネメシスも親衛隊も、舎弟の一人が抜け出すことを敢えて見逃す。
その気になればこちらも応援を呼ぶことは可能であるし、彼ら側の
応援が来るまでの間に事を済ませる自信があるのだろう。
「ないわね。
こんな可哀そうな女の子、見過ごせないでしょ。」
今のところ、両手がフリーであったネメシス。
だが、その視線は常に男の一挙手一投足を捉えている。
「抜くの? 抜くのならこっちも弾くわよ?」
ネメシスの右手には、団員の一人が持たせた短筒。
魔力を込めて打ち出すマジックアイテムの一つ。
銃口は男に向けられており、短筒だけに狭い間合いでも十分に機能する。
「まさか彼女たちごと斬るなんて言わないわよね?」
■ビョルン > まずい。
姉妹の決心の揺らぎが己の目にも見て取れた。
「──勘違いするな?
お前らがそこの自称騎士団の荒くれどもに犯されて襤褸雑巾のように捨てられたところで、親父の借金は減らないからな。
びた1文もだ」
なのに、何をして『大丈夫』と誑かすのか。
理詰めの言葉を姉妹に向けて、淡々と吐く。
そうして、この女の思惑を測りかねながらも、舎弟の1人が逃げ出したのを知ればふっと息をつく。
「──見過ごせないとして、どうするつもりだ」
脅しの仕草が効かぬ連中であることは既に知れていた。
だが、女の示す方向に飛び道具が見えれば。
「──ふぅん…」
一旦は左の親指で浮かせた鍔口、落してチャキリと音を立てる。
そうしながら目視で距離を測る。
目的は、飛び道具の団員だ。
武器を落とさせれば、こちら側には駆け出す隙があるのではなかろうか。
■ネメシス > 「借金ねえ…具体的にいくらなのよ?
元本は? 利息は?」
いよいよ揺らしにかかるネメシス。
実際の金額まで口にさせようとする。
少額ならその場で支払うし、暴利を吹っかけているのならそれが露呈した時点で
姉妹が心情的に男から離れていくだろう。
「それは、貴方しだいよ?」
既に団員たちは親衛隊を除き、この二人のやりとりを見てるだけであった。
到底割って入れる場面ではないと理解したようだ。
相変わらず銃口は向けたまま。
ただし、魔道で動く銃とはいえ次弾の発射には僅かに隙が生じる。
ゆえに無駄うちもできず、互いに機会を伺っていた。
■ビョルン > 「残り16万。それ以上はまからん。
それはこの子たちも知ったことだ。
なんだ? 代わりに耳ィ揃えて返してくれるってェのかい?」
娘が身柄を押さえられるとは、それなりの金額が絡んでこそだ。
ちらちらと視線で諸々を測りながらの言葉。
「俺次第とは、また──」
返事を返しながら素早く大股で駆け出す。
長ドスは抜かぬまま、刀を支えた左腕で切っ先の嵌った鞘の先で突く。
狙いはネメシスの握る魔法銃。
銃を取り落とすのなら、姉妹へと腕を伸ばすが咄嗟のことで動けないでいるだろう。
瞬間判断し、居残った舎弟に目配せ。
この機に乗じて、デカブツ騎士の傍らをすり抜けては逃亡せんと。
■ネメシス > 「別に払ってあげてもいいわよ。
どこに金をもっていけばいいの?」
これには二つの理由があった。
一つは、彼女ら姉妹をネメシスが気に入っており、愛妾として手元に置きたい。
もう一つは、彼らから優位を取ろうとの思惑である。
「…おっと。」
どうやら、相手の接近を許しすぎたようだ。
長ドスがその鋭い刃を見せるかと思っていたが、意外にも鞘での刺突。
バン!
手元に伸びる鞘を躱しつつ、牽制の射撃を加える。
当然、男にはかすりもしないだろう。
だが、男と舎弟の連携を一瞬でも断つことに成功する。
その瞬間、親衛隊の一人で姉妹の手を取り逃走する。
そして、団員たちも半数がそれに合わせて撤退。
残り半数に囲まれたネメシスは、左手をひらひらと振ってから、
団員たちに守られつつその場を後にする。
後日、男の居場所に16万ゴルドが運ばれることになる。