2019/11/23 のログ
エレイ > 実際のところ、宿など選ばなければどうにでもなる話ではある。
しかしそれでは面白くない、という些末な理由で男は宿を決めかねていた。

「んんむ……あるいは困っている俺を見かねて宿を提供してくれる親切な人が
いちゃったりとかは……しませんかねぇ」

顎に片手を添えてぬぅ、ともう一つ唸ってから、そんな都合の良いことを呟きつつ周囲を見渡してみて。

エレイ > 流石にそれは都合が良すぎたか、なんて自分にツッコミつつ。
やがて立ち上がって、夜の街にの風景に紛れていった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアノンさんが現れました。
アノン > 【アナタの未来を占います。銀貨5枚】

平民地区の大通り
時間帯的にも大勢の人間が行き来する大通りより、一歩奥まった路地にひっそりと佇むこじんまりとしたテントが一つ。

入り口には「占い」「アナタの未来を占います。銀貨5枚」「人生相談承ります」など等など書かれた布が所狭しと貼り付けられている。

「やぁ寒くなると一足が遠のくねぇ……。」

テントの中はやわかな甘い香りがする香が焚かれ、その中央には紫色の布がかけられたテーブルが置かれ、そのテーブルを挟んで対面式に椅子が二つ……と誰もが想像する占いの館的な感じに諸々が配置してある。

テントの天井からは勿論演出のための怪しげな紫色の光で点と内部を照らす魔法のランタン、他には……占い師であるフードを深く被った1人の青年が椅子に座っている。

客足が遠のいたことに愚痴を零しているのはその主人だ。
客が来ないことをいい事に欠伸をし、果汁と水を混ぜたモノが注がれた小瓶を足元から持ち上げて、乾燥した空気に渇く喉を潤してと自由気ままに。

何故って客がこないのであればテントと言う密室は自室となんら変らないからねと。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にタピオカさんが現れました。
アノン > 「……一度テントの出入り口を開けて香りを逃がそうかな。」

路地の少し奥まったところにテントを開いたのが悪かったのだと今更後悔しても遅く、それならと椅子から重い腰をあげて立ち上がると言葉通りに小さなテントの出入り口の方まで足を運び、顔だけひょっこりとテントの外に出して悲しいが誰もいないことを確認してからそっと手で払うようにしてテントの出入り口を広げる。

すると室内にやわらかに広がっていた香の匂いと薄らと白い煙が外へと流れ、大通りのほうまで香りが届くと……嬉しい。

しかし、外は寒い。
隙間をあけた事でテントの中に入り込んでくる冷たい夜の風にふるりと身震い一つして、もう一度だけテントから顔の半分を覗かせたまま辺りをキョロキョロと伺おうと。

タピオカ > 旅の間や王都に戻っている間も手入れは欠かさない自分の得物も、ずっと使い続けていれば刃こぼれがどうしても出てくる。手になじんでいる曲刀を刀鍛冶に預け。次に出かけるまでしばらくの間は冒険者としての稼業はお休み。その間は街をぶらつく事にする。

そうして通りかかる大通り。用がある時は賑わいにまぎれるように直進するのだけれど、今はゆったりと時間がある。気まぐれで小道に入り。
……と、そこで奥詰まった場所にあるテントと、そこから香る甘い匂い。そしてフードを深く被った、男の子とも女の子ともつかない人影がちらりと顔を覗かせているのを見た。

よくよく見れば、その脇の入り口に宣伝文句の書かれた布がかかっている。興味を持って、紫色のランタンの光へと近づいていき。

「こんばんは!占い師さん。
えっと……、店仕舞いするとこだった?
もしまだ時間があるなら、僕の事占ってほしいんだけれど」

テントから周囲を伺ったのは、店を閉めるためかとも思うが。
せっかくこうして見つけたのだから、今少し考えている事を占ってほしいと小さく笑みを浮かべる。
懐から銀貨5枚を取り出してみせながら、軽く小首を傾ぎ。

アノン > 一度首を一つ傾げる、聞き間違えだろうか?
こんな寒い中にわざわざこんな一つ路地を曲がったところにある怪しげなテントに足を運び、更には占いとは書いてあるがそれを信じて占いをして欲しいと?いや……疑っても仕方有るまいと縦に一つ頷く、1人で首を傾げ1人で縦に頷く怪しいのは店よりも自分の行動だろうか。

「何を占うんだい?漠然とした未来かこれからの出会いかそれとも冒険の吉凶か。……まあ店じまいにはまだ遠いから、中に入って椅子に座るといい。」

相手が取り出したるは銀貨を五枚。
冷やかしでもあるまい、など思えばテントに中に軽くひらりと手招きをした後に相手がテントに入りやすいように片腕でテントの出入り口を大きく広げて、テントの中へと誘う。

テントの中の温かな空気、室内の香の匂いが更に外へと流れていくが、勿体無いなどといえる筈も無くて、どうぞどうぞと言わんばかりのやんわりとした笑みを浮べるのだった。

何だろうか、何物だろうか?噂になるくらいうちの占いは実は人気があったのか、それともどこぞの貴族が宣伝してくれたのだろうか、ともかく今宵初めてのお客様の行動を待つのである。

テントの中に入ってくれば勿論温かい風と香が逃げぬように出入り口をサっと閉めるつもりで。

タピオカ > 「ありがと。
……あったかくていい匂いだね、このテント。
ここだけ春が来てるみたい」

テントの入り口の垂れ幕を支えてもらうと、その間にすっと身をかがめて中に入る。紫色のクロスで覆われたテーブルと椅子、下げられたランタンは油の匂いがしない。紫色の明かりに照らされた小さな居住まいを物珍しそうに見回し。
ほっと息をつくと再び笑み浮かべ。起毛の裏縫いがついた鹿革のマントの留め具を外し、脇に畳んだ。

「僕はタピオカって言うんだ。
冒険者ギルドで生計を立てているんだけど、旅するのが好きで。
……王都が完全に雪で覆われるような本格的な冬になる前に、もう一度旅がしたくて。そこで今度の旅は、東西南北、どの方向に行けば良い出来事が起きそうかな?
それを占ってほしいんだ」

背後で入り口が閉められるなか、椅子にちょこんと座る。
相手が対面して座するのを待ってから軽く自己紹介と、占ってほしい内容を伝える。
簡単に言えば、ラッキー方角はどっち、というものだ。

アノン > テントの中は春だと中々に良い表現の仕方をする少女に感心する、その言葉はまるで詩みたいだと。
表情を少しだけ接客よりも友と接するような自然と柔らかな表情へと変え、笑みを深めながら物珍しそうにテントの中を眺める少女が椅子に座るのを待つ。

そして少女が椅子にちょこんと座った後に改めて出入り口の重なりを確認し、外へ暖かな空気と香の匂いが逃げないことを確認してから少女の向いの席へと腰をかけるのだった。

それから耳にしたのは少女の自己紹介と占いの内容。
彼女の名前はタピオカという名前であり冒険者で旅が好き、今回はその旅の行く先の喜事の待つ方角をを占って欲しいという事だ。


「判りました。では王都で指折りの占い師であるアノンがアナタが向うべき方角を占いましょう。さて………。」

方角を占う。
なら彼女の未来の片鱗を覗く事にする。
――…カーバンクルの能力で覗ける未来は曖昧で不確定で映像がハッキリと見えるわけではなく、抽象的なものが見えるだけだが「占い」には丁度良く吉凶くらいは想像できる。

一応占いの形を取り繕うために対面に座った少女に向けてみせると、その状態で赤い染料で縁取りされたローブの袖口から革で出来た小さな袋を取り出す。

「それではまず瞼を閉じてください。そして脳裏にアナタが望む良い出来事を思い浮かべてください。人との出会い、美味しいものとの出会い、まだ見ぬ強敵に財宝、望みは人それぞれ違うのですから。」

声色は少女よりも低く、少年よりも高く、歌うように占うときの文言を彼女に告げて、自分も未来視に意識を集中するためにそっと瞼を閉じる。

タピオカ > 「うん、よろしくね。アノン。
……」

ローブの袖口から取り出された革の袋を見てから、静かに瞼を伏せる。
色白で性別もはっきりしない、白のローブに身をやつす占い師に自分の未来を計ってもらう。
今まで脳筋一辺倒、道行く自分自身で曲刀を振り回して未来を拓いてきた遊牧民は奇妙な緊張感を覚えた。その昔は神聖な色で王侯しか着用を許されなかった事もあったそうな紫色の神秘的な空気に呑まれて、とくんとくんと小さく胸が弾む。

「僕が望んでる、良い出来事は……」

占い師の声が、自由の鐘のように聞こえる。
耳に心地よいその声に浸りながら、望む出来事を考えた。
相手が口にした、出会い、グルメ、強敵に財宝。
どれも魅力的だし、一瞬、そのうちのどれかを思い浮かべようとした。
その後に脳裏に浮かぶのは冬を迎える直前の青空だった。
澄み切って清い青空。空が高く遠く見えるけれど、それに向かって手を伸ばし続けたくなるような青空。
そんな空を見に行くには、どちらへ向かえば良いだろう。自分の望む良い出来事を思い浮かべ。
占い師たる相手へ、未来視による予言の道標を求める。

アノン > ゆるく濁った翡翠色の瞳とは違うもう一つの瞳で彼女の未来を見つめる――…其処に見えたのは危険を示す赤、幸福を示す黄、財を示す黄金と行く末が完全に見えない白、それと判別のつかぬ白銀。

その色に加えて彼女の思いを僅かに読み取り、望む青空を天空の空を様々な色に落として、その波紋を読み取り望む良き事と見えた抽象的な色が混じりあい重なる方角を見据える。

手元では占いの形を取るために取り出した皮袋。
その中にもう片方の手を差し入れて中から様々な色の水晶や天然石を取り出して見もせずに机に並べ始める。
結構乱雑に出鱈目に……。

それからゆったりと瞼を広げると大きく息を吐き出してから、改めて彼女の方を見つめなおして。

「結果が出ましたので瞼をあけてください。……悪戯して良いなら別ですけど。」

結果は出た。
少しの疲労と能力行使による反動とで冗談を口にすると、結果を告げるまでに彼女が瞼を開くのを唇に微笑を浮かべてまつのであった。

人により色だの風景だの様々見える。
今夜出会えた彼女からは色で、色であれば容易くは無いが未来と彼女の自身の希望を繋げるのは多少楽ではあった。
なので内心早く結果を言いたくてうずうずしているせいもあり、テンションが若干高めである。

タピオカ > 水晶や天然石が机の上に設えられる小さな音も、この静かな春のテントの中にいるとよく聞こえてきた。
実際には占い師が別の能力によって未来を見据えているとも気づかず、自分にとって石が並ぶ音は紅葉したいちょうが地面に折り重なる音だったり、山のふもとの小川が小さな滝に落ちていく音のように聞こえる。

自分の未来を覗いてもらう経験は、初めてだった。
医者に裸体を見せるのにもどこか似通っているけれど、身体ではなく運命を見てもらうという非日常がなにか心地よくて。ほんのりと頬が紅潮する。

「あはっ……!
どういう悪戯するつもりだろ。アノンになら悪戯されてもいいよ……?」

瞼を閉じたまま、くすくすと肩を揺らす。
自分に魔術の心得は無いから、それと同じようなまじない、剣士として慣れ親しんでいる腕力も反射神経も関係の無い場所でいつのまにか占いを終えたのだろう。新鮮な心地を覚えるまま、相手の冗句が快くて目元が緩む。

そっと、青緑の瞳を開いた。
その瞳はランタンの光を帯びてきらきら、こちらも結果を早く聞いてみたいと目で語っているかのよう。