2019/09/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にミンティさんが現れました。
■ミンティ > 朝から届け物であちこちを歩き回っているうちに、あたりがすこしずつ暗くなってくる。もうすっかり秋だなと空を眺めて、それから手帳に視線を向け、今日の用事がちゃんと終わっているかを確認する。失念していた用事もなく、回らなければならないところには忘れず顔を出せていた。ほっと息を吐いて、すこしだけ広場のベンチで休憩していこうと進む方向を変える。
とたん、どん、と大きなものにぶつかる衝撃。よろめきながら顔を上げてみると、柄の悪そうな三人組の男性が、こちらを睨んでいた。そこから先は、よく憶えていない。とにかく強い口調で怒鳴られて、ずっと下を向いていた。なにか大事なものが壊れたとか言われているけれど、そんなに勢いをつけてぶつかった気がしないし、三人組のうちの一人がにやにやと笑っているから、気の弱い自分を脅して遊んでいるのだろうと、なんとなく察しがつく。
「……ごめん…なさい」
とにかく早く解放してもらいたい一心で、ぺこぺこと頭を下げる。今の時間なら買い物帰りの人たちが雑談する姿も珍しくない場所だけれど、面倒事を嫌って遠ざかっていったのか、広場に人影はまばらで。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にヴィルアさんが現れました。
■ヴィルア > 広場は相変わらずこの国らしく、他人がどうなろうと関係ないらしい。
気弱そうな女が悪漢に遊ばれている。
そんな様子を見てから近づくものは、市民には居ないが…
「すまない。邪魔なのだが、退いてくれるかな」
ふと、その状況に介入する声。
その声の方向に視線を向けるなら、金髪の優男と、その脇にそれぞれ屈強な護衛が二人。
更にその後ろには、何かを運んでいるのであろう馬車が続く。
広場の隅にまで、女が追いやられていなければ、本当に丁度、馬車の進行の邪魔になる位置。
男の服の胸元には、男性の横顔に花が咲いた蔦が絡みついた紋が付いており。
それは、この周辺に広く浅く浸透している、ある貴族の紋だ。
それに気づくかはさておき、男は大変不機嫌そうな様相を見せ
「次の顧客は時間に煩いんだ。しかも馬車に乗ってくる奴は好かないとか言ってね。
だからこうして引き連れながら歩いているんだが…、邪魔をするなら、君たちに損害を請求してもいいかな」
遅れたらこれくらいの額になるのだけど、と
柄の悪い男3人に矢継ぎ早に話す。
その告げられた額は、とても1日2日で返せる額ではなく。
傍らの護衛と共に、1分でも惜しいという雰囲気をわざと出しながら、悪漢たちの反応を待つ。
■ミンティ > いつ手を出されるかわからないのが怖くて、じりじりと後ずさる。けれど彼らは距離を離してくれそうになく、やがて三方を取り囲まれてしまった。それでも踵を返せば逃げ出せない事もなかっただろうけれど、自分の足で、男性が追えないほど速く走れる自信もない。
だからいつもどおり、嵐が過ぎ去るのをじっと待つみたいに、謝罪を繰り返しながら、うつむいている他に取れる態度がなかった。
「…?……っ」
運が良ければ誰かが助けてくれるだろうけれど、自分のために迷惑をかけたくもない。割って入ってくれるような人を探す事もできずに視線を下げっぱなしでいたせいで、大きな馬車がこちらに近づいているのにも気がつかなかった。
三人組以外の声がしてやっと顔をあげて、あ、と小さい声をこぼす。
道を塞いでしまっていると、絡まれている側である自分の方が申し訳なさそうに肩を落とした。謝罪をするように、身なりのいい男性へと頭を下げる。
三人組はといえば、こんな往来で人を怒鳴り飛ばすような柄の悪さではあっても、強引に担ぎ上げて人攫いをするほど無法を極めたわけでもなかった様子。三人ともがちらちらと互いの顔を見合ったあと、鬱陶しそうに舌打ちをしたあと、捨て台詞を吐いてどこかへと行ってしまった。
■ヴィルア > 「……やれやれ。嘘を見抜けないとは。馬車の中に荷物など無いのは覗けばわかるだろうに。
もう少し眼を鍛えた方がいいな」
捨てセリフを吐いて去っていく3人組にため息をつき。
護衛にもう下がっていいぞ、と手ぶりで示す。
そうした後、何故か頭を下げている女に顔を向ける。
「災難だったね。…ああ、さっきのは嘘だ。
顧客には既に商品を卸して、その帰りだから心配しなくてもいい」
勘違い…かはわからないが、自分が邪魔をしたのではないかと思っているかもしれない女に笑いかける。
大丈夫だよ、と繰り返しつつ…馬車の中に目をやれば、荷物など本当に乗っていないことがわかるだろう。
「まあ、通行の邪魔だったのは事実だし、そのついでに聡明そうな女性を助けれるなら、私にとっては得だ。気にしなくてもいいさ」
照れもなく褒め言葉を口にしながら、叶うならば、落とされた肩にぽん、と緩く手を置こうとする。
■ミンティ > とりあえず窮地は脱したのだろうか。幸い、お金をとられる事もなく、それ以上に酷い事もされずに済んだけれど、去っていく三人組の背中を見送っても、まだ身体は強張ったまま。臆病に竦みきった心を解そうと、とりあえず深呼吸をする。
呼吸をすこし落ち着けてから、助けてもらったのにお礼さえ言えていなかったと気がつくと、あわてて、またぺこぺこと頭を下げる。
「あ、あの、すみません。…ありがとう、ございました。
……あと、ええと、…ごめん、なさい。道を……、……?」
一声で車体面の相手にも口下手な女だろうとわかる、しどろもどろな喋り方。謝る間も、お礼を言う間も、しきりに頭を下げて、気の小さそうな振る舞い。
例え急ぎだという話が偽りだったとしても、明らかに身分が高いだろうと思わせる相手の進行を塞いでしまった事で、まだ気持ちが騒いだまま。だから肩に手を置かれると、びく、と震えてしまう。
「……いえ、…わたしがこんなところで、道を塞いでいなければ、お時間も、取らせませんでしたし…
そんな風に、お褒めいただけるような事は、なにも」
商人の端くれなのだから、些細なトラブルくらいは自分で切り抜けられるようにならないといけない。そう思っていても、腕力も度胸もないのだから、どうしようもなかった。褒め言葉にも、謙遜ではなく首を横に振って。
■ヴィルア > 今となっては大きな馬車こそが、若干通行の邪魔になっているのだが。
彼はそんなことは気にせず、周りの人々もまた…女に話しかけている者が荒くれから貴族に変わっただけであり、特に干渉してくることはない。
「ふーむ…、謝られた方が付け上がられることは多いのだが。
それに、人によってはその方が苛立ちが募るところもある…、と、偉そうにしてしまった」
ぺこぺこと謝り、声も聴きとりづらく…見るからに気が弱い。
そんな相手を、今あったばかりの自分がどうこう言って変えられるものでもなさそうだ。
一応の忠告をしつつ、笑顔は崩さずに。
「時間を取らせた、と君は言ったが、さっきも言った通り私の用事は終わっているんだ。
特に怒る気もないし。君も何か用事があるなら、送っていってもいいぐらいさ。この辺りにも最近、ああいうのが増えてきているからね」
怒っていないどころか、ついでに馬車に乗せて好きなところに乗せていこうという提案まで続けて。
肩に置かれた手は離れ。治安の悪さに触れてから、提案の答えを聞いてみよう。
■ミンティ > とにかく謝っておけばいいなんて考えているわけではないけれど、ずっと小さいころから、どうしても最初に口をついてしまう台詞が、ごめんなさい、だった。悪い癖だとは認識しているけれど、なかなか直せないまま、また今日も指摘されて、もとから下がっていた眉先がさらに下を向いた。
今度はごめんなさいとも、すみませんとも言わなかったけれど、頷いているのか、また頭を下げているのか、どっちつかずな仕草を見せて。
「……はい。…ええと、あの、いえ…おっしゃる、とおり、なので……」
助けてもらったのだから、せめて表情くらいは明るくしないといけない、と思って両手で頬を擦る。もともとの顔立ちが、よくいえば控えめ、悪く言えば根暗な印象を与えがちなものだったから、手でどうにかしたくらいで改善もしないけれど。
そんな風にしていたら、相手からの申し出に目を丸くする。反射的に、とんでもない、迷惑になると言ってしまいそうになった口を、あわてて押さえて。
「え、と、……それ、では…、あの……、…大通りの、向こうの方まで…お願い、できますか。
そこまでで、いいので……、ご迷惑でなかったら……、お願い、します…」
人からの厚意に遠慮してばかりなところも悪い癖だと認識しているから、本来出かかった言葉はぐっと押しこめて、小さく頷く。それでも家まで送ってもらうのは申し訳ないから、そう遠くもない大通りの端を指定して。
■ヴィルア > 「どうせ軽くなった馬車だ。一人二人乗せたところで、その方が荷台も荷台としての役目を果たせて本望だろう」
両手で頬を擦る様子を見て…一応、改善しようとする意志はあるのか、と思う。
ただ、それを改善するよう促すには、自分はまだ他人だ。
御者に合図を送れば、自分もまた荷台へと先に歩いていき。
荷台に入れば、こちらへどうぞ、とでも言いたげに手を伸ばす。
「聞いたな。大通りの向こうまでだ。…家を知られたくないというのは当然だが…
臆病なのか、それともそれ故の用心深さか…」
何事か呟きながら、伸ばされた手に女が応じれば、広い荷台へと案内されるだろう。
幌もついたその荷台は、夕日を遮断して心地よい空間となっており。
男が適当なところへ腰を降ろせば、御者が手綱を打ち、馬車がゆっくりと動き始める。
「そういえば、君の名前は?私は、ヴィルア・リルアール。
まあ、商人のような貴族だ。これも何かの縁だろう。よろしく」
わずかに頭を下げ、その動き出した馬車内で自己紹介を。
確かに、王城でふんぞり返っている貴族というよりはどこか商人のような雰囲気に近い。
■ミンティ > 一日に何度も絡まれるような不運さは持ち合わせていないつもりだけれど、秋の夕空はあっという間に暗くなっていくだろう。一人で帰るよりも、馬車に乗せてもらう方が早くつくから問題はないと思うけれど、言葉に甘えてよかったのだろうかと悩んでしまう。助けてもらったうえに送ってもらうなんて図々しいんじゃないかと考えてから、首を振って、思考を切り替えようとした。もう返事はしてしまったのだから、今さらやっぱり一人で帰るなんて言い出せるはずがない。
先に立って歩く男性の後ろをそろそろとした足取りで追いかけて、差し伸べられた手を見る。迷って、手を伸ばしたり引っ込めたりしたけれど、やがておそるおそる掴まって。
「……ありがとうございます」
なにか呟く声までは聞き取れなかったから、小首をかしげた。荷台に引き上げてもらうと、どこに座ろうかと周囲を見回してから、男性とすこし離れた位置に、縮こまるような姿勢で小さく座り。
ゆっくりと走り始めた馬車に揺られながら、落ち着かなさそうに、腿の上で両手を握ったり解いたりと意味のない動きを繰り返し。
「……ぁ、すみません…、助けていただいたのに、…申し遅れました。
えと…ミンティ、と…、いいます。古物を扱う、お店を…任されています」
自分の名前さえ伝えていなかったと気がついて、またうつむきがちになる。今にも消え入りそうな声で、ぼそぼそと自己紹介をして、深く頭を下げた。
あまり偉ぶっている印象ではないけれど、やはり身分の高い人だったと知ると、あわてて背筋を伸ばし。
■ヴィルア > どうやら相当に緊張しているようだ。
見ている限りの性格と、身分の差を相手が意識するのなら仕方のないことだとも思う。
むやみに近づいたりせず、男は片膝を立てて荷台の壁に背を預け。
「ミンティ、か。覚えておこう。ああ、別にかしこまらなくてもいい。楽にしてくれ。
君が私を暗殺するために巧妙に送られた刺客だというなら話は別だが?」
くすり、と…そんなことは微塵も思っていない様子で冗談を。
もしかすると更に恐縮させるかもしれないが、冗談を言う人物なのだと認識してもらえればそれでいい。
「約束通り、大通りの端までだ。そこから先は、ゆっくり気を付けて帰りなさい。
ああ、そうだ。古物を扱っていると言ったね。…ふむ。どういったものかな。壺や絵画だろうか」
続いて触れるのは相手の職について。
大体の古物商はその辺を商品としているのだが…何分この町は広く、特殊だ。
何か自分が知らない商品を扱っている可能性もあるかもしれないと。
■ミンティ > 暗殺なんていう物騒な言葉を聞かされると、また目を丸くした。口ではとっさに否定できなかったから、あわてて、首をぶんぶんと横に振る。凶器の類を持っていないと見えるように、両手を腿の上に揃えて置いて、先ほどまでの意味のない動きも控えるようにして。
臆病なうえに真面目な性格が災いして、最初は冗談を言われたものとも気がつかなかった。相手の顔に浮かぶ笑いを見て、やっと、力が抜けたように緊張を解き。
「……あの、すみません。お話をするのが…あまり、得意ではなくて。
…なにか、ご不快にさせていたら……遠慮なく、おっしゃってください…」
冗談だと気がついたら、本当は疑われてもいなかったのに身構えた事が急に申し訳なくなってしまう。いけないと思いつつも、また謝罪が口をついて。情けない癖が抜けない口元を片手で押さえながら、その手のひらに小さい溜息を隠して。
「…はい、壺や、絵も、置いています。…あとは、冒険者の方々が使っていた道具とか…、
まだ綺麗な食器、とか、…あとは、子どもたちが持ちこんだ、変わった形の石…とか」
お店の仕事については、ある程度は話せるようになってきていた。ぽつぽつと扱っている商品を挙げてみながら、外の様子を窺う。大通りの端までは、大した距離もない。ゆっくりと進む馬車であっても、そう時間がかからず到着するはずで。
■ヴィルア > こちらが言った冗談に、面白いように慌てる相手。
ただ、嘘であることは伝わったのか、少し緊張が解け…たものの、結局吐き出された謝罪の言葉に苦笑い
「…不快などとは思っていないが…。まあ、君はもう少し、信頼できる人を見つけて、よく話すといい。
そうしていればじきに、ある程度は堂々と話せるようになるだろう。」
おせっかいだとは思うが、自分は女性を大事にする主義だ。
それが奴隷であろうと貴族であろうと、平民であろうと。
がたごととゆっくり動く馬車に揺られつつ…ただ、それでも、少しすると馬車がゆっくりと止まり。
「ああ。着いたか。それならまた会えた時にでも、店の場所を教えてくれ。
どんなものがあるか少し興味がある。絵などは、たとえ名もない画家が描いていたとしても、個人の感性次第だからね」
相手の職業に興味を示しつつ。
馬車が到着したのなら、もう拘束する理由はない。
再び先に馬車から降り…相手がこけないようにまた手を差し出して。
降りて女が歩き出すなら、また緩く頭を下げて見送るだろう。
■ミンティ > 信頼できる人。自分にとってそんな存在がどれだけいるだろうと首を傾げる。頭の中に誰の顔も浮かばないような暮らしはしていないから、親しいと思っていても否定されないだろう人たちについて考えているうちに、すこしだけ気持ちが軽くなった。
やたらとぎくしゃくしてしまうのは、臆病なうえに人見知りする性格のせいかもしれない。
「…ありがとう、ございます。……なかなか直せない、悪い癖、ですが…
もうすこし、ちゃんとお話できるように……努力、してみます……」
今度は謝罪が口をつかなかったから、ほっとして、相手の忠告に感謝を示す。ぺこんと頭を下げたと同時に馬車が止まったから、その揺れでバランスを崩しかけた身体を、なんとか片手で支える。
外を窺ってみると、指定した大通りの端の景色が見えた。自分の足でのろのろ歩くよりも速い到着に、そのままの姿勢から立ち上がろうとして。
「……はい。また、ご縁がありましたら。…ぁ、…ええと、あの…
……送って、くださって、ありがとうございました。…お気をつけて……」
お店について興味を持ってもらえるのは素直にうれしい事。その間だけは素直に頷いて、立ち上がる相手の動きを目で追った。先に降りた男性が手を差し伸べてくれているのを見ると、また申し訳なさそうな顔になったけれど、今はおとなしく、その手を借りて、自分も荷台から降りる。
再び足が地面についたあと、また何度か頭を下げて。暗くなる前にはお店に戻ろうと、細い路地へ早足で姿を消していった…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からヴィルアさんが去りました。