2019/08/24 のログ
カイン > 「ま、たまには少し遠回りになるのも悪くはないか」

そう急ぐような話でもないと気を取り直すように漏らして、
繁華街とは逆の方へとゆっくりと歩いていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2/路地」からカインさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 端境」にルドミラさんが現れました。
ルドミラ > 富裕地区と平民地区の狭間にある、歓楽街の一画。

カジノや娼館が軒を連ねる通りに、週末の賑わいを払う重く荒い足音が響いていた。

通行人が何事かと振り返ると、殺気を背負って駆けてくるのはどう見ても暴力のプロと思しき男たち──しかも、ゴロツキの類ではなく。

リーダーと見える先頭の男以下、奇妙に統制がとれていることから、恐らく軍人か傭兵だ。道が別れる地点でいったん立ち止まってあたりを見回し、何事か仲間内で囁き交わした後。

二手に別れて一方が直進、もう一方が横道に入って猛然と何者かの追跡を再開し、嵐のごとく去って行く。

ルドミラ > ──その傍らで。柳の葉陰に隠れるようにひっそりと、黒塗りの馬車が停まっていた。扉の真鍮の金具にさり気なく刻まれているのは、女性の両腕を意匠化した紋章。

窓に引かれたレースのカーテンの向こうでは、王都で娼館を経営する女主人が肘をつき、脚を組んだ姿勢で、薄暗い座席に腰かけており。魔術的に快適な温度に整えられた車内の空気を、女本来の肌の香と、控えめにつけた香水の入り混じったにおいに染めている。

男たちの足音が聞こえなくなると、黒目がちの瞳を対面の座席へ──正確には座席の足元へと流して。肉厚の唇から流れ出したのは、落ち着いたアルトの声。

「……どうやら行ったようよ。あなたが隠れたかった相手はあの殿方たち、ということで良いのかしら」

そこにうずくまるのは、まだ性別も判別できぬ黒い影。知らぬ仲ではない相手なのか、それとも初対面なのか。わかっているのはただ、女主人が何らかの理由で匿った「誰か」ということだけ。

あんな剣呑な連中に追われていた理由はまだ聞いていないわけであるが、さて。

ルドミラ > 女主人が御者に合図を送る。相手の今夜ここに至るまでの物語をも乗せて、馬車は更けゆく夜の中へ消えて行った──。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 端境」からルドミラさんが去りました。