2019/07/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にエレイさんが現れました。
エレイ > 「────んが……」

夕暮れ時。
夕日に赤く染まる王都中央の噴水広場、その片隅のベンチに寝そべり眠っていた男は、ふと目を覚ました。
寝ぼけ眼のまま茜色の空を見つめつつ、覚醒しきっていない頭を徐々に回転させ、現状の把握に努め。

「……。ああそうか、昼飯の後天気がいいからとココでゴロゴロしていたんだったか……
気づいたら夕方まで爆睡してしまっていたという顔になる。──ぬ……?」

くわわ、と大あくびをしてから身を起こそうとする──が、腹の上に何か生暖かい重量物が
乗っかっていることに気づく。その正体は……

「……おいコラぬこ。何勝手に人の腹の上で寝てるわけ?」

丸まった茶トラの猫だった。
しかめっ面で投げかけられた男の声に、猫は顔を上げてきょろりと丸い目を男に向けた。
そのまま数秒にらめっこした後、猫は何事もなかったかのように再び目を細めて寝始めて。

「……おのれ。なんと人をナメくさったぬこなのか……」

ぬぅん、と不満げに唸ってそうボヤくも、男は猫を強制撤去しようとはせず。
寝そべったまま、わしゃわしゃと猫の毛並みを撫で付けてゆき。

エレイ > そうしてしばらく男の腹の上でグルグルと喉を鳴らしながら寛いでいた猫だが、
やがてのそりと立ち上がると四肢や背筋を伸ばして身体を解した後、男の上から
ひらりと降りて悠然と何処かへ去っていった。
それを見送ってフンス、と鼻を鳴らした男も、ゆらりと立ち上がって歩き出し、そのまま雑踏の中に紛れていって──。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエレイさんが去りました。
ご案内:「平民地区・裏通り」にルビィ・ガレットさんが現れました。
ルビィ・ガレット > ――今日、微睡む三日月亭で。舞台俳優のフランク・バルツァーがお忍びでやってくるらしい。
そんな噂を耳にした。前者の店名はおそらく、酒場を指している。立ち入ったことはないけれど、
街を歩いていてそんな名前の酒場を見かけたことがある。……気がする。

後者の人名は、自分の記憶違いや勘違いで無ければ――祖国出身の俳優だ。
自分が二十歳になる前に彼は出国してしまい、どこか遠い国で名高い演出家の下、
舞台で演じたり歌ったりしていると――風の噂で聞いていたが。

自分が16、17の時分に憧れ、恋に落ちた相手でもある。
直に話せなくたっていい。遠目に彼を眺め見ることが、せめてできれば……。
そんな思いで、平民地区の裏通りを足早に進み、件の酒場があるはずの表通りに出ようとしていた矢先――、

「……ちっ」

半吸血鬼は立ち止まる。別に、目の前に脅威はない。
ただ、タイミング悪く彼女の視界に入ったのは――逢引きの男女。彼らを遠ざけて進みたいが、元来た道を引き返す破目になる。
それでは近道をした意味がなくなってしまう。……かといって。

「――人の恋路を邪魔する者は、と。……言うものな」

ルビィ・ガレット > 気配を消して進もうにも、彼らは選りに選って、大人二人が横に並べるかどうか……、
そんな細道の途中で仲睦まじげに身を寄せ合い、何か熱っぽい言葉を交わし合っている訳で。
彼らの真横を通り過ぎる際、物理的な接触は避けられそうになかった。気配の隠蔽は不接触が前提である。

接触後、こちらを彼らに「認識させない」というのは、さすがに無理だ。
――ただの、人間相手に。こんなに考えあぐね、危機に瀕する……という程でもないが。
難儀するとは思っていなかった。

仕方ない。――そもそも、フランク・バルツァーの件は単なる噂だ。裏は取れていない。
件の酒場に向かって粘っても、彼に会える保証は殆ど無いのだ。……と、すれば。
遠回りになることを踏んだ上で、元来た道を引き返そうか。――と。

「……っ、どこ見て歩いて――気をつけなさいよ」

誰かと肩口がぶつかり合う。いつもなら腰を低く装って、気弱そうな笑みを浮かべ、
謝罪の言葉を口にしたのだろうが。咄嗟に出た言葉がそれだった。
少し苛立っていたものだから、言葉に険が宿る。

ルビィ・ガレット > 狭い道を、ぶつかった相手を押しやるようにして、強引に進み――、戻り。
結局、件の酒場に舞台俳優は現れなかった。誤情報を掴まされていたらしい。
後日、半吸血鬼は、倍率の高い彼の舞台チケットを手に入れようと奔走するのだが。

それはまた、別の話だ。

ご案内:「平民地区・裏通り」からルビィ・ガレットさんが去りました。