2019/06/05 のログ
イグナス > ともあれ、何とか目的のモノは購入して店を出れたのだとか――
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「平民地区・街中」にルビィ・ガレットさんが現れました。
ルビィ・ガレット > 夜の街を適当に歩く。たまにこういうことをしないと、人間としての振る舞いを忘れそうだった。
いつもの冒険者の格好ではない。白いブラウスにベージュ色のショートパンツ。
そこに黒のガーターストッキング。編み上げブーツを履いているせいで、ストッキングの黒い生地が半分近くは隠れていたが。

「……はぁ」

街を出歩くのにそれなりの格好をしていても、ため息が出た。
衣類を手に入れるのに、いつも苦労する。雑貨屋や服屋が苦手だった。
単純な話、鏡だ。……鏡には本来の姿が映ってしまう。

服を試着する時はまだいい。試着室を確保すればいいから。
問題はアクセサリーの類いだ。あれらの側には楕円や長方形の鏡がセットのようによく置かれる。
アクセサリー類を手元や首元に合わせてみて、すぐその場で使用感をチェックするためだろう。

自分にはそれがありがたくない。鏡のそばを通る時は、いつも冷や冷やする。

「――っと」

うつむき加減で歩いていたものだから、誰かとぶつかりそうになる。

ルビィ・ガレット > いくら知覚能力がすぐれていても、注意力散漫で歩けば人とぶつかる。
それをすんでのところで回避すれば、自分と同じように立ち止まった相手と向き合う。
相手の顔や性別、種族はさておき、手っ取り早くこちらから謝罪する。

「すいません。少し考え物をしていたもので……。
 お怪我はありませんでしたか?」

控えめな笑顔を浮かべる。軽く頭を下げる。
難癖つけられる前に、こちらから下手に出る寸法。
……しかし、これが通じるかは、正直相手による。

相手の反応はどうだろうか?

ルビィ・ガレット > 相手は気弱そうなローブ姿の青年だった。
格好の雰囲気からして、魔術師や錬金術師の類いに見える。

女より背丈はあるのに猫背だし、こちらをちらちら窺いながら何度も小さく頭を下げてくるので、
たいして背格好が変わらないような気持ちになってくる。
「自分も余所見をしていました」「すいません、すいません」と何度も謝ってくる。

彼の頭を蔽っているフードが不自然に左右、膨らんで見えるのは。
……彼の耳が長く、尖っているせいだろうか。
と、すれば。彼はエルフか。

相手の顔をよく観れば、自信のない表情のせいで若干翳っているものの、
均整の取れた美しい顔立ちである。人間が有する美とはまた趣きが違い、
どこか彫刻めいているそれ。

ルビィ・ガレット > 男性エルフの容姿に見惚れている場合ではない。

「あたしは平気なので――きゃっ」

彼の連続する謝罪を止めようとしたところ、通行人に「邪魔だ」と後ろから肩を突き飛ばされる。
左肩に不快を感じ、押さえながらも、「道の真ん中にいた自分たちが悪いか」と思い直し。
今日"は"通行人を追わないことにする。

ローブ姿の青年はばつが悪そうに目配せすると、足早にこの場を去っていった。
自分もそれに倣い、ひとまず路地裏のほうへ避難する。

ルビィ・ガレット > 「普通のやつは、あれくらいでやり返さないし。
 半殺しにもしないか……」

路地裏。狭い通路の壁に背を預けながら、先ほど張り手された左肩を撫でる。
自分のひとり言を聞いているのは野良猫くらいだ。
黒い猫。金色のまなこ。何か言いたげにこちらを見上げている。

「餌なら今、何も持ってないわよ」

見当はずれかも知れないが、柔らかい笑みで野良にそう言って。

ルビィ・ガレット > ――黒猫に横切られると縁起が悪い。
急にそんな迷信を思い出す。だが、自分にとっては縁起がいいかも知れない。
なにせ人ではないから。人の道理で不吉なものは、彼女には味方であるケースもある。

「……ほら。さっき、私。少し嫌なことがあったのよ。
 ――だから、あなた。私を通り過ぎていって?」

おどけた調子で猫に無茶なお願いをする。
猫は自由で気まぐれだ。自分と似ている。
そんな相手が自分の言うことを聞く義理はないだろう。

それを承知の上で言った自分がいる。
思い通りにならないことを、かえって面白がる部分が、彼女にはあって……。

ルビィ・ガレット > 黒猫は路地奥に消える。彼女と向き合っていた状態からそっぽを向き、
奥のほうへ行ってしまったわけだから。「横切った」とは少し違う気がする。

「……つれないなぁ」

満更でもなさそうに言って、壁から背を離す。
狭い通路から街の喧騒を眺める。人、人、人……。
この中に自分と同じように、人間に化けている魔の者がどれくらいいるのか。

ぼんやり考える。いたとして、見つけたとして、馴れ合うつもりはないが。

ルビィ・ガレット > 「……なにか用?」

路地奥に背を向けたまま、背後の誰かに声をかける。
相手は貧民地区を通って、この裏路地に出てきたのだろうか。
その出入り口に誰かいれば、なんとなく気まずいか。

――それにしても。

「忍び足で後ろから来られるとさすがに気になる」

そこで、やっと振り返る。相手の顔を見てやろうと。

ご案内:「平民地区・街中」にグライドさんが現れました。
グライド > 「……悪いな、つい癖でよ。」

(――其の背に、響かせた一言は、暢気な調子で。
相手が振り向くなら、次の一歩は気配を消さずに踏み出すだろう
其の体躯だけを見れば、とても隠遁に長けているとは見えぬだろうが。)

「だが、気付かれちまうとはな。
まだ間合いにゃ遠いと踏んだんだが、甘かったらしい。」

(くくく、と、咽喉奥で笑い飛ばすように告げながら。
女の瞳を、真っ直ぐに見下ろすか)。

ルビィ・ガレット > 「趣味のいい癖ね。親近感が湧くわ」

歯を小さく見せながら気さくに笑う。
また悪い癖が出た。出会い方によっては伏せておけばいいことも
つい口に出して言ってしまう。そのへんの娘を装っておけばいいのに。

「気づくに決まっているでしょう。
 ……あなた、私より背丈があるじゃない。その分、存在感があるから」

親しげに小さく笑いながら返すものの、内心、腑に落ちてはいない。
一定の距離に入るまで、彼の存在……足音にすら気づかなかったのは確かだ。
気味が悪い以前に、内心、少し腹が立っていた。――人間の癖に、と。

それを笑みの下に隠したまま、紅茶色の双眸で彼を見上げて。

「――退きましょうか」

す……横へ逸れる予備動作を見せる。