2019/05/25 のログ
■ミンティ > 人に怪我をさせ慣れているはずもない非力な身。いつもなら臆病に、トラブルがすくないようにと行動しているつもりだったから、偶然が重なって、人に害をなしてしまったと思うと、頭もうまく働いてくれなくなっていた。
何度か通りすぎる人に呼びかけようと試みてはいるけれど、トラブルを避けたいと考える人も多いのだろうか、小さい声はなかなか届けられそうにない。
困り果てていると、相手の方から次の行動を頼んでもらえたから、すこしだけほっとする。自分が支えになれるかは不安だったけれど、他に思いつく事がないのだから、こくこくと頷きを返して。
「あ、…は、はい。…あの、それじゃあ…掴まって、ください」
長い腕を伸ばしてくる男性の手の方へ上半身を傾ける。そのまま自分まで転んでしまわないように、紙袋を抱く腕には必要以上に力が入っていた。
■ガルディ > 見た目以上に子供のように慌てふためく姿を見て、助けようと言うものがいれば余程のお人好しだろう。
何より夕食時も近づいてきて、空腹な人々の歩みは平常時よりもかなり早い。
傾けられた上半身へ、長い腕を巻き付けて身体を起こす。
少女が倒れ込まないように……というように力を込めると、どうしても腕の中に抱くようになり。
「仕事上がりというのもあって、……どうも汗っぽくて申し訳無い……助かります」
直ぐ側に見える緑の瞳を見据えて会釈をし、少女の肩には三割程度の重みを渡す。
「あぁ、そちらは僕が持ちましょう。
幸い、上半身は元気なままですから……ね、貸してください」
その一方で、キツく抱かれている紙袋は男が持とうと告げた。
空いた腕を曲げて力を込めて、丸太のような腕と逞しい力こぶを見せて。
いざ、一歩一歩の移動を始める。
男が出てきた路地を戻り、大通りから裏路地の安酒場――兼、宿まで。
そう長くはない距離だが時折男の方から休憩を持ちかけて、休み、休み。
『ははっ、どうしたいガルディ。随分とがっつりやっちまったね』
『二階を貸してやるよ、ゆっくり休みな』
『手当は……ちょいと忙しくってさ。嬢ちゃん、任せちまっていいかい?』
辿り着いた酒場で迎えたのは30代半ばといった女性マスター。
片隅の席を借りようとする男に、個室を貸すからと促してくれる。
■ミンティ > わ、と小さい声をこぼして、身体が傾く。腕に抱かれるような形になると、近くなる他人の体温にも慌てふためき、ますます動揺して目を泳がせる。
けれど今の状態でも歩くのがやっというくらい非力な自分を思うと、相手が立ちやすいように肩を掴んでくれている方が安心する部分もある。
身体を寄せられるような状態に言及しようかと悩んでいたけれど、やがて覚悟を決めたように、こくんと頷いて。
「いえ。…だいじょうぶです。…それじゃあ、歩きますね」
汗の匂いを気にしているほど心に余裕がなかったから、詫びられるまで意識さえしていなかった。言われてみれば異性の匂いも嗅ぎ取れたけれど、今は足を踏み出す事にだけ集中した。
男性に声をかけながら、ゆっくり歩き始めようとしたところで申し出を受ける。ただでさえ怪我をさせてしまった相手にと躊躇したけれど、両手が塞がっているよりはましだろう。申し訳なさそうに荷物を渡すと、代わりに回された腕に、そっと両手を添えた。
それからしばらく歩いて辿り着いた酒場。顔見知りらしい女性と男性の会話を聞きながら、これで手当てができそうだと、とりあえず安心した。
しかし二階へ続く階段を見上げてみると、また表情が曇りはじめる。
「あ、あの…せっかくのご厚意なのに、申し訳ありません。
わたしでは、ちゃんと二階まで上がれるかわからないので…隅の席を貸してもらえると…」
平坦な道ならともかく、階段を無事に上がりきれる自信がない。申し訳なさそうに縮こまりながら女性にお願いをして、空いている席を探す。
それからも氷を分けてもらおうとしたり、自分のハンカチで怪我をしていない足首を懸命に固定しようとしたりするさまは、相手の目には、もしかしたら滑稽に見えたかもしれない。
手当てが終わってからも、お詫びに食事の代金だけでも払わせてほしいと頼みこんだりと、恐縮しきりの時間はもうしばらく続いたかもしれない…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からガルディさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にフラニエータさんが現れました。
■フラニエータ > とある酒場。
昼間の熱を溜め込んだ土、それが吐く茹だる様な息を避けるべく訪れた人々が、
涼しさを帯びた夜風を受けながらテラス席で冷たい酒を味わっている。
端的に言うと、暑いから涼しい所で一杯、なのである。
女も同様の理由で二人がけのテラス席を陣取っていた。
冷やされたワインが入ったグラスたおやかな視線で眺め、軽く揺らし、香りを愉しんでいる。
その表情は涼しげで、まるで『イイ女は汗をかかないの』と宣っているよう。
「…もう少し涼しくなるといいのだけれど…ね。」
首元をばたつかせながら小さく息を吐く辺り、やはり暑いのであろう。
それでも周囲の視線には涼しげな視線と微笑みを送っている辺り、女なりの苦労が伺える。
グラスに纏っていた水滴がテーブルの上に濃い円を描いている。
それを人差し指で撫でながら、女はほんの少しの清涼を味わっていた。
■フラニエータ > 通りすがる人々は夜風を愉しむものから帰路を急ぐものまで様々。
女はそんな人々を眺め、視線が合えば淑女の微笑を返し、会話の無い一期一会を愉しんでいた――。
そんな訳が無い。
女が人々を眺めているのは今宵の標的を探しているからだ。
時折女の口角が微かに上がっているが、それは金持ちそうな人が通り過ぎた為。可愛らしい子が此方を見た為。
「…フフ…とっても美味しそうだこと…あらあら、顔を赤くしちゃって…」
淑女の微笑みの裏でこんな事を口走っている女、これが本性なのである。
瞳は獲物を探す肉食獣の様になっており、その表情のままひっそりと微笑む姿が違った意味での清涼を周囲に配っていた。
女はそれに気づくと、誤魔化す様にワインを一口。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアデラさんが現れました。
■アデラ > あまたの〝獲物〟が通り過ぎるテラス席に、吹き込む風と足音。
その少女はまるでそれが当然のように、二人がけのテラス席の、空いている片一方へと向かった。
座って良いかとは尋ねない。まず腰を下ろしメニューを開き、偶然近くを歩いていた店員に酒を注文する。
甘く、弱い、一杯ではさして深くも酔えぬような酒。
そのグラスが届いて、唇を濡らす程度に咥内へ注いでから、ようやく少女は言うのだ。
「こんばんは、お姉様。今日も誰かをお捜しかしら」
果実酒の匂いを伴う言葉を、二人の間のテーブルへ上体をかぶせながら。
あたかも純粋無垢な令嬢を気取った、子供のように屈託のない笑みを浮かべた。
■フラニエータ > 空いている席、己の前へ座る女性が居た。
その存在に気づいた女は、ほんの少し目を丸くしたがそれも刹那、
女はそれを目で追う訳でもなく、否定する訳でもなく、さも当たり前の様に酒を注文する彼女をじっと見ている。
その酒が届き、彼女の喉を潤すまで数分経っただろうか、女は口を開かずに、ただじっと、彼女を見ていた。
時折妖しくも優しく微笑みながら。己の唇を軽く舐めながら。
「…そうね…――貴女を探していたの…嬉しい?」
やっと開いた口からは挑発めいた言葉。
そんな言葉を吐く顔は優しくも艶やかに微笑んでおり、
テーブルに上体を被せる彼女、その頭を優しく撫で、髪を掻き梳く様はまるで姉か母のようだった。
■アデラ > 「あら、うれしい。……けど、少しだけね」
髪へと伸びる手を、首を差し伸べて受け止める。指に黒髪が絡んで流れ落ちる感触は、髪には神経こそ無いが、さらさらと心地よいもの。
けれども、猫のように細めた目とは裏腹、吐き出す言葉はこちらもまた、挑発に挑発で返すようなもの。
「だってお姉様、そんな口説き文句ならば誰にでも向けていそうだもの。
私じゃなくても、ちょっと愛らしい女の子が相手なら。
そう思うと嬉しさも半減だわ。むしろちょっと悲しいかしら」
濡れもしない目を隠しもせず、手だけ目の下を拭う大げさな泣き真似。
それも直ぐに飽きてか、手は直ぐに目元を離れて――昇る。
髪を捕えた指の上へ、己の指を重ねるように、絡みつくように。細指で縋りながら、少女は言う。
「覚えてるかしら、お姉様。私ね、悪いことって大好きなの……ふふっ」
空いた手をグラスへ伸ばす――自分の、甘いばかりの果実酒のグラスではなく。
少し離れたワイングラスを手に、その中身をくうっと、口へ逆さに注ぐだろう。
唇の端より零れる雫は赤か、白か。いつぞやの言葉を繰り返す、濡れた唇。
■フラニエータ > 目を細め心地良さそうに掌を受ける彼女。女もまた猫を可愛がるかのように、その手を髪から耳の裏、首筋へ這わせ、再び髪へと戻って。
擽り、掻きながら彼女の言葉を受けると、女は心底嬉しそうな笑顔を彼女に向けた。
この生意気にも挑発めいた言葉、駆け引き。それが齎す悦びが女の心を擽るのである。
「…あらあら、見透かされているわね…。どんな言葉なら悦んでくれるのかしら…。
ううん、言葉じゃなくて行動の方がイイのかしら、ね…?」
泣き真似をする彼女にくすりと近親に対する優しさを帯びた笑みを零しながらも、
己の手に絡みつくその手、指には、ゆったりと己の手、指を巻きつけ、爪で指を掻き、擽っていた。
「…ええ、覚えているわ…悪い子だって事も、ね…
――ああ、そう…結局握手、しなかったわね…今日はできるのかしら…?」
己のワインを口にする彼女に意味深な返答を吐きながら、女はそっと、彼女の顔に手を伸ばした。
彼女の口元を濡らす赤のワイン、それを人差し指で掬い取り、ほんの少しだけ唇を割り…
その指を己の口元へと運んで、ちろりと舐めて見せる。
■アデラ > 「どんな言葉ならって、簡単よ。お姫様扱いされて喜ばない女の子は珍しいわ。
特別扱いして甘やかして可愛がって――強引に攫っていっちゃうような。
そんな人がいたら、私はうれしいかしら……ええ」
指と指が交わり合う様は、蛇が互いを絞め殺さんと絡みつく様にも似る。
違うのはそこに伴う意思が憎悪でなく、生み出すものが快楽であるということか。
爪の先が肌をなぞる度に背を這う、まだ穏やかな寒気にも似た感覚。
少女はかすかに身を震わせて、唇へ伸びる指を受け入れる。
赤い酒を拭って戻って行く指と、酒よりも鮮やかに目に映る女の舌。
知らず息を呑み、熱に浮かされた声で少女は言う。
「できるのかなんて考えないで、お姉様。
無理にでもするの。お姉様のしたいように、壊れちゃってもいいから、するの。
……ね? その方がきっと、私もお姉様も愉しいと思うから――」
手を伸ばして、遠ざかった指を引き寄せた。
先程までは赤い雫に、今はまた異なる液体に濡れているのだろう女の指を、少女は口に含むだろう。
爪を舌でくすぐり、指の腹を味わうような口淫の後、銀糸を引きながら唇は離れて、
「――お姉様。私を、アデラを、好きなように使って……?」
望むのは、普通の形の情愛ではない。
道具として扱われることを、少女は求めた。