2019/02/04 のログ
レティシア > 女が、ふと足を止めたのは、古書店の前。
隙間から灯りが漏れる扉を女は、ゆっくりと押し開く。
淡いランプで灯された店内は、天井まで届く位の書棚が幾つも並び、
書棚に収まりきれなかった書物が、床にまで積まれて置かれている。
店内へと足を踏み入れると、奥から店主であろう初老の紳士が、ひょっこりと顔を覗かせる。
フードを取った女は、フルっと髪を揺らしつつ、店主へと会釈をすれば、紳士は微笑を浮かべて、奥へと引っ込んでゆく。
ゆらりと店内を見回すと、女は書棚の間を歩き始め、時折、並んだ書物の背表紙へと指先をかけたりしていて――。

レティシア > 「確か…――の紀行文と…魔導書だったかしら……」

何か目的の書物があるのか、口元に指先を添えながら、書棚の間を歩いてゆく。
この店の主は、本を入手したら、分類せずに書棚に収めてゆくのか、並んでいる本のジャンルはバラバラ。
植物図鑑の隣に貴重な魔導書が、紀行文と料理の本が並んでいたりという有様で。
苦笑を漏らしながら、「相変わらずねぇ」と呟く女は、どうやらこの古書店の常連らしい。
――ふいに、書棚の間から、ふわふわと瑠璃色の蝶が姿を現す。
女が指先を伸ばすを、その先に止まる蝶。
「ん?」と首を傾げ、蝶の羽ばたきに耳を澄まし

「あら、それは困ったわねぇ…」

口調とは裏腹に、面白げな表情を浮かべる女は、空に弧を描き、そのまま空間の狭間に姿を消して――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からレティシアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にカーレルさんが現れました。
カーレル > 露天や酒場の前では引っ切り無しに客引きが冒険者だとか、商人だとかを引き込もうと
声高に店の名物だったり値下げするとかだったりと叫んでいる
さる王族が!だとか、大公閣下が!だとか、貴人も店に訪れたなんて事も言っていたりして面白かったりする
中には英雄や歴代陛下の名前を出したりしていて、どの店も商売熱心なことこの上ない

そんな中、王太子殿下が召し上がった、という触れ込みの菓子を一袋露天で買い求め
もぐもぐ、とそれを食べながら仕事の報酬を受け取りに行く所であった
古くなり硬くなったパンを油で揚げて糖蜜をかけてナッツなんかをまぶした庶民向けの菓子で
果たして、これがこの国に何人いるかも知れぬ王子だったか姫だったかが口にしたのか怪しい所だけれども、
サクサクとした軽さと程よい甘さが空いた小腹を満たすにはちょうどよい塩梅というわけである

「んまい…」

そこいらの露天で売っているものだが中には糖蜜をケチっていたり、本当に古いパンを使っていたりする
露天もあったりするので今日の露天は当たりと言えよう
王族がこんな菓子を口にしている姿は想像できないけれども、売り口上にそぐわぬ出来と言えなくもない

カーレル > 商売熱心な商人、商家が多い一方で当然、廃業を余儀なくされる者たちもいる
その後の身の振り方はそれぞれだろうけれど、最悪なのは一家離散とかそういう家も少なくはない
男親は炭鉱へ、息子は戦場へ、母娘は揃って娼館へ…なんてパーフェクトな離散を先だって仕事で見届けたが、
別れ際に抱き合って泣く姿などは如何にダメ人間王都代表候補筆頭の自分でも見ては居られなかった
…と言っても、借金を肩代わりしてやろうだとか、せめて娘の身請けをしてやろうだとかは露程も思わぬが

「金が全てとは思わんが、金が無くては立つ瀬がない…」

半分ほど残った菓子の袋を懐にしまえば、商家のドアをノックする
程なくして明かりを持った下男がやってきて自分の顔を見れば、金貨の入った袋を手渡してくれる
遅くまでご苦労さん、と一声かければポケットにあった菓子を買ったお釣りの銀貨を下男に手渡し、
入れ替わりに金貨の入った袋をポケットにしまって商家を後にする

「さて、帰る前にもう少し何か腹に入れていくか…」

金も手に入れたことであるし、食事をしていこうと思う
酒場や飲食店の立ち並ぶ方へと歩みを向ける
肉もいいが、この時期はやはり魚が良いかな、なんてぼんやり考えながら
先程の売り口上なんかをぼんやりと思い返す。魚料理が名物の店はあったろうか?

カーレル > 大通りまで戻ってくると相変わらずの活気であった
客引きの口上はなんだか胡散臭いものもあったが、だからといって慎重になったらいつまでも店は決まらない
結局、そこそこ繁盛していそうで魚料理が食えそうな酒場にふらり、と入れば夕食を取ってから帰路につくのだった

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からカーレルさんが去りました。