2019/01/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にミンティさんが現れました。
■ミンティ > 年明けの商店街は普段よりも盛況で、ごった返す通行人の中をぶつからないようにふらふら歩いていると、寒さをすこし忘れそうになる。やっと人の密度が高いところから抜け出すと、ふうっと息をこぼし、乱れたマントを整えた。
お仕事で世話になっている人々への挨拶まわり。朝からあちこちを歩きどおしで、今の時間になってやっと終わりが見えてきた。
手帳を開いて、事前にリストアップしていた訪問場所を確認。もちろんそんなに急ぐ必要はないけれど、どうせなら今日のうちに終わらせておきたい。そう思って早足になりかけたところで、身体に衝撃が走る。前方不注意で、正面からやってきた人とぶつかってしまったらしい。
「っ……!ぁ…っ、ご、ごめん…なさ――――っ」
あわてて謝罪しようとしたけれど、同時によろめく姿勢を立て直そうとしているせいで発声がままならない。転倒しないように足を踏ん張ると、声が続かなかった分をぺこぺこと頭を下げる動作で補って。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にクラレさんが現れました。
■クラレ > 寒かろうと暑かろうと、生きていれば等しく腹は減る。人々が時折、吹き抜けていく寒風に身震いをする横で、白い吐息で口元を隠しながら進む足取りに淀みはない。むしろ上機嫌でさえある大股で、適当に遅めの昼食が楽しめそうな場所を探して視線を巡らせていたからか。
「ああ、ごめん」
腹部に感じた衝撃。視線を下ろすと、小柄な身体がふらついているのを確認。少し申し訳なさそうに眉尻を落とし、彼女の肩に手を伸ばし、痛くない程度に身体を支えようと試みる。大人と子供の体格差だ。自分がもっと先に踏み出していたら、盛大に転倒させてしまったかもしれない。
「僕も前を見ていなかったから、謝らないで欲しい。 ……怪我とかは?大丈夫?」
■ミンティ > 目の前にとつぜん壁ができたようだった。自分の身長ではそう思えるくらいの体格差。ちゃんと目を見て謝罪をしようと思ったら、反らす首がすこしつらい。
それでもちゃんと相手の顔を見て、またぺこりと頭をさげる。伸びてきた手は、こちらの肩を覆っても余りそうなくらい大きかったから、支えられる直前にすこし身を強張らせてしまったけれど。
「ええと……あ、あの……じゃあ、ありがとうございます。
はい、…すこし、驚きました…けど、だいじょうぶです」
謝罪の必要がないと言われて迷う。いつもならそれでも謝りどおしになるくらいに気弱な性格だったけれど、それでは相手の方が困ってしまう可能性も学習している。
考えこんでから、支えてもらった事に感謝して、また頭を下げる。ずれた眼鏡を直しながら、自分は無事だと告げて。
首はつらいけれど見上げた姿勢のまま。自分が小さい子どもに戻ったように思わせる男性の体格を、呆気にとられたように見つめて。
■クラレ > 見上げてくる顔を見つめた。意識はどちらかというと、顔にかかっている視力矯正用の器具に注がれている。時によってかなり高価だと聞くから、破損させてしまっていては申し訳ない。じっと見つめてレンズ面にヒビや傷がないことを確認してから、匂いを嗅ぎ終えた犬のように鼻を鳴らしてひと心地をついた。
「それは良かった。僕も気をつけるよ。 年が明けるとこの街は忙しなくなるようだったから。
君も急ぎかい? じゃないなら、よかったら……ん?」
このあたりのことをよく知っている少女だとあたりをつけて問いをむけようとしたところで、呆けた彼女の顔に気づく。子供、とりわけ小柄な相手には威圧感を与えることを知っているから、不思議そうに首を傾げると、腰を曲げて顔を近づけた。言うほどに齢は離れていない。少女の表情の意味を、既知との再会だろうかと推測して。
「……なに? どこかで会ってたかな、もしかして」
■ミンティ > 手帳に目を向けていて、自然とうつむきがちな姿勢になっていた。ぶつかったのは頭のてっぺんだったのは不幸中の幸いかもしれない。レンズはもちろん、弦の部分も曲がったりしていない。
衝撃で目元からすこしずれてしまったのを直すだけで、いつもどおり。多分相手も気にしてくれていたのだろうと察せられる視線の角度に、だいじょうぶですと首を振ってみせた。
「いえ。……特に急ぎのようでは、なかったのですが、……なにか」
相手の口調から、なにか困り事でもあるのだろうかと思って小首をかしげる。謝罪は遠慮されたものの、いつもの謝り癖がなおったわけではないから、お詫びに助けになれたらいいと考えて用件を窺おうと。
「……っ!…ぁ、いえ、あの……その……背が、…大きいなって……すみません」
身長差もあって離れていた顔の距離が近くなり、自分の悪い癖が出ていたと自覚すると、あわてて視線を下げた。
首を小さく横に振りながら、見上げていた理由を説明する。不躾な行いが申し訳なくて頬をすこし染め、結局また頭を下げた。
■クラレ > 「ああ、うん。僕より大きい人はあんまり見ないくらい。大きいと思うけど。
……不思議だな、君みたいな子……変な意味じゃないけど……、わりと恐がられることも多いからね」
視線は逸らされてしまったが、少なくとも小動物のように吠えかけてくることも、怯えに身体を震わせているわけでもないように見える。身を竦ませるようなことをしたわけでもないのにされても心外なので、そういう意味で彼女は好ましかった。少しだけ唇を緩めると、肩に添えた手にすこし力をこめて彼女の頭を上げることを促してから離す。
「謝らなくていいよ。見られるのは嫌ではないし、可愛い女の子は好きだから。
君のことを忘れてるとかじゃなくてよかった。少し昔の……いいや。 ところできみ……
ええと、僕はクラレ、っていうんだ。 お腹が空いているんだけど、美味しいものを食べられるところを知らないかな。
なんだったらぶつかったお詫びに奢るよ。懐は少し暖かくなったから」
彼女を呼ぼうとして名を知らぬことに気づいて、少し慌てたように名乗ると、本来の用件を告げ、数少ない「詫び」のレパートリーの中から食事の帯同を提案する。少女は見た目の印象的に、どこか食は細そうに見えるが、何も口にしないというわけではないだろう。
■ミンティ > まったく怖くないかと言えば嘘になる。子どものころほど無邪気に物事を見られないから、目の前に背の高い人が立つと、その気はなくても威圧感をおぼえてしまう。
それでも憧れるような感覚の方が強いから、目の前の男性がこちらに危害を加えそうにない穏やかな表情をしている間は、過剰にびくびくしないで済んだ。
「……すこし、緊張します、……けど、だいじょうぶです。
いいですね。……高いところにあるものに、手が、届きやすそう」
うつむいていた顔をすこしだけ上げて、上目づかいで相手を見るようにする。自分の粗相で赤くなった顔を見られるのが恥ずかしくて、熱が散ってくれないものかと手のひらで頬を擦る。
「かわっ…いえ、そんな、……あ、ええと、ミンティ……といいます。
……?…このあたりの事でしたら、大体は…。どういったものが食べたいですか?」
自然な口調で褒められて、うろたえて声が弾む。謙遜するより早く自己紹介を受けると、つっかえながらだけれど自分も名乗り、小さく会釈をした。
ぶつかったのがお互い様だとしたら奢ってもらうのは申し訳ないけれど、遠慮するのは後回しにして、彼の好みを伺おうと。
■クラレ > 言われると腕をもたげる。手足は長いほうだ。そういう一族だから。あまり高いところにものは置かないだろうけど、彼女の腕では苦しいあたりの空中を軽く掴んでみる仕草をして。
「これくらいの棚もたまにあるからね。 ミンティ……はあれかな、お店のお手伝いをしているのかな。
……そう……本、屋?とか? かな?」
彼女の物言いから、なんとなく彼女の生業を推察してみる。が、具体的な業種は明らかに眼鏡を見て言ったのは、不自然に顔を盗み見た自然が物語っていた。本を好む者は、だいたいかけているし、高いところにまで書が詰まった棚も見たことがある。そういった類型的な思考だ。彼女はきっと自分が知らない知識をたくさん治めているに違いない……とか。
「え……たくさん。 あ、何を食べたいか、か。 そうだな。あまり好き嫌いはないんだ……
そうだな、きみが一番美味しいと思うものがいい。それなら問題ないと思うし」
少し視線を下に落として考え込む。しかし口をついて出たのはおそらく彼女が求めた応えではないと思い至って、食べ物の好みは当然あるだろうからと、とりあえず確実に同席できるものを合理的に選んだ。脂っこい肉とか、生き物の形が残った海鮮とかもよく食べる。
■ミンティ > 長い腕が持ち上がるのを見て、やっぱり一瞬は緊張が走る。しかしその動作がどんな場面を模したものかを理解すると、ふっと小さく笑いがこぼれた。
ぶつかった瞬間から今になって、ようやく明るい表情の変化を作り、すごいと言うように小さく手を叩く。
「わたしでは、届きませんね。
あ…、えと、はい。お手伝いというか…古物商の方に、お店を預けていただいています」
先に商人とだけ名乗ると、それなりの確率で本屋かと聞かれている。そう思われる理由はいくつか思い当たるから慣れたもので、無意識に眼鏡の弦を指で撫でる。
「……そう、ですか。……たくさん…食べられるところ。
近くに、冒険者の人がよく集まる酒場なら、あります。
…、あ、すこし先にある温泉宿も、変わったものが食べられたりして、楽しいですよ。
あとは…すこし値段が高いですが、新鮮なお魚を料理してくれるお店も……」
あまり贅沢しないうえ、小食であっさりしたものを好むから、すすめるお店に悩む。彼の体格からして、ある程度の量を食べられないと困るだろう。そう考えて、いくつか候補をあげてみる。
■クラレ > 「古物商。………そうなんだ。
狼とか、熊の置物とか、あるかい。木彫りでも、金属でもいいんだけれど。 あるなら今度買わせて欲しいな」
反復してみると、少し彼女の顔を見てから、逆方向に視線を反らして相槌を打つ。見当違いなことを言ってた事が若干恥ずかしかったので、誤魔化すように提案した言葉は、しかし語っていくうちに語調を安定させた。欲しいのは本当だったからだ。
「どっちだい? ああ。温泉宿のこと。 その変わったものを、食べてみたい」
三つともおそらくは自分の好みを慮ってくれたものだろう、と把握する。冒険者が集まる酒場、という単語は、少なくとも目の前の古物商の少女には似つかわしくない空間に思えた。財布に頓着はないものの、「楽しい」という心情を語った感想に、興味をそそられたのだろう。「すこし先」と言った時の視線のほうこうに指を向けて問いかけると、歩を進める。出会った時よりも歩調はゆっくりだ。いつもの調子だと置いていってしまう。
「ここに来たのはわりと前なんだけれど、宿を借りているだけで空けていることが多くて。
おととい…くらいかな、帰ってきたばかりなんだ。だから、土地勘のある人と会えたのは良かった。
温泉にも浸かりたいし……っと……隣に」
前を見て歩かなければいけない。だから相手の位置を確認しやすいよう、隣り合って歩くように指示をした。
■ミンティ > 「動物の置き物は、いろいろありますよ。……狼か、熊は…見てみないと、わかりませんが」
まだ使えるけれど古くなった日用品のほか、冒険者が旅先の工芸品を売りにきたりもするから、お店の品揃えは雑多。その中でも目立つものなら憶えていられるけれど、全体を把握するのは難しい。
置き物の類は大体いくつかは常に売っていたから、たぶん問題ないだろうと頷いて。
「そうなんですか。わたしはここから出る機会がないので…、すこし、うらやましい。
お金と時間があれば、もっと……いろんなところに行ってみたいと、思うのですが」
あげた選択肢の中から温泉宿を選ばれると、向こうの方だと、あらためて指を差す。そちらに歩きはじめた男性のすこし後ろを、案内のためについて歩く。
よその土地から帰ってきたばかりだと聞いて、小さく溜息が落ちた。せっかく任せてもらっているお店を放り出したりできないけれど、自由に歩きまわれる人が、やっぱり羨ましい。
「こういう寒い日は、いいかもしれませんね。……っ、ぁ、はい」
自分も足湯くらい浸かろうかと考えていたら、隣を歩くように促された。無意識に人の後ろを歩いてしまっていたけれど、その声を聞いて早足になり、彼の左側に並ぶ。
一度追いついてしまえば自分なりのペースで歩けたから、こちらに気をつかってくれていると知れて、またすこし表情が柔らかくなった。
■クラレ > 「じゃあ、こんどお邪魔させてもらおうかな。もし高いところにあれば、取ってあげられるし。
……仕事だから、楽しい旅行、というわけではなかったけれどね。今回のは特につま――……うん
楽しむための旅行は、したことがないな。 今度してみるかい?短い間の護衛なら、お金は取らないよ」
自分の生業は、はっきり告げると恐がられることはわかる。単純にボディガードのようなものと告げながら、他愛ない話をした。見知らぬ男の誘い文句を、まさか受け取る筈もないだろうと、彼女の顔を見ずに前を見ながら告げたことで、冗談だと暗に示しながら。
「……こうして、歩いたことのない土地を案内してもらっていると。
僕のほうがちょっと旅行している気分になるな。可愛らしい案内人もいるから、とても気分が良い。
……ああ、あそこ? かな?」
外行きの者も居るだろう、少し賑わっている区画に、それらしき建物が伺えた。
湯に浸かれることを喧伝する看板が目立つ。人混みに彼女が流されてしまわぬよう、隣り合ったその肩を抱いて、踏み入ろうとしてみよう。言葉通りに機嫌が良い。なんたってどうやら楽しい場所らしいからだ。
■ミンティ > こうやって背が高い人の隣を歩いていると、孤児院にいたころを思い出す。友達づくりも下手で、一人でいる時間が長かったから、手伝いに来ていた大人の横をついてまわっている時だけは安心できた。
そんな記憶が甦ると、多少はびくびくして小心者そのものだった態度も、多少は落ち着いたものになって。
「……はい。その時は、お願いします。
…旅行……できたら、してみたいのですが。…その間、お店を空ける事になってしまうので……」
背の高い彼に取ってもらう様子を想像すると表情が綻んだ。お店には踏み台もあるけれど、実際にそんな場面を見られたら楽しいだろうと思って、小さく頭を下げる。
旅行に惹かれはするも、お店の事を考えたら躊躇する。それなりに休みは取っているけれど、日帰りできそうな場所じゃないと難しい気がして肩を落とし。
「……可愛くは、ないですけど。……あ、いえ、…ごめんなさい」
見るからに陰気な自分より、もっと華やかな女性といた方が楽しいだろう。そう言いかけて、あわてて口を押さえた。気分がいいと言ってくれる相手に、わざわざ自己評価の低い発言を聞かせるのも悪いと思った。
大きな手に肩を包まれると、小さく震えて身を強張らせる。怯えたのではなくて、すこしおどろいただけ。
落ち着きかけていた頬の赤さが戻るのを感じて顔を伏せがちにしながら、温泉宿の入り口を見て、あそこだと首肯する。
■クラレ > 「一箇所に落ち着けるというのも、いいことばかりじゃない、か。
だったら、行ったことのない場所に、足を運んでみる、くらいかな。きょうの僕みたいに。
短い旅行になってしまうけど、やろうとさえ思えば今すぐにでもできると思うし。
……お仕事の休憩中にでも、どうすればできるのか、頭の隅でゆっくり考えるといいよ。
旅は逃げないと思う、きみから逃げない限りは」
自分の顎を撫でながら、考えたことをそのまま言葉にするよう、ゆっくりした口調で告げる。自分にとっては当たり前のことでも、彼女からすれば遠い世界であることのように聞こえる。であれば少しだけ、その世界同士を近づけるように、当たり障りのないことだが、前向きにとらえてものを言った。
「きみにぶつかった僕が、その手段のひとつだ。楽しみにしながら待ってれば、手段はきっと揃うと思うよ。
旅だけじゃなく、何事も……。 さて、じゃあ、小さい旅を、僕はお先に楽しませてもらうけど。
……ミンティ、注文もきみに任せていいかな?」
どうにか入店し、フロントで部屋の鍵を受け取ると、振り向いて食堂への案内を頼んだ。と、言うところで、ふたたび彼女の肩に手を置くと、視線を今しがた手続きを担当したフロントの番頭に顔を向けて、真面目な表情で問いかける。
「可愛いですよね」
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からクラレさんが去りました。
■ミンティ > 自分にとっては、ときどき足を運んでいる温泉宿。そんな場所でも彼にとっては小さい旅行なのだろう。それをすこし羨ましく思いながらも、頭の隅では、どこで食事を取るのがいいだろうなんて考えて…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からミンティさんが去りました。