2018/11/29 のログ
ミンティ > 悩んでいると先ほど取引を終えた相手から声がかかった。今日も冷えるから温まってから帰るといいと、貨幣を一枚手渡される。あわてて遠慮しようとしたけれど、強引に手の中に握らせられると断りづらい。
続けて一緒にどうだと誘いかけられたけれど、それは彼の仲間たちが制してくれた。
不器用に笑いながらお礼を言って、混雑の中をくぐりぬけてカウンターへ。

「あの…アルコールが入っていないものを。…ミルクとか、ありますか」

そう酒場の主に尋ねたら笑われた。まわりにミルクなんか飲んでいる人はいないから、それもそうだろう。じゃあ、とアルコール入りのものを注文しようとしたけれど、すこし待っているように言われて黙りこむ。
給仕の女性たちを羨むように眺めたり、通行の邪魔だと言いたげな顔の冒険者におろおろしながら道を譲っていると、カウンターに木のマグが置かれ、柔らかいミルクの香りが漂った。

ミンティ > わざわざ用意してくれたらしい酒場の主人に頭を下げて、マグを手に取る。カウンターのスツールに腰かけて、息を吹きかけ冷ましながら温かいミルクの味を楽しんで…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/夜の酒場町」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > ――諸々片付け終えれば余暇が生じる。

時間と予算を費やしてもままならず。
一朝一夕で儘ならぬと分かっていれば。
後は折り重なる疲れの種を何かで発散させたいと思うのは、自然の摂理だろう。

否、誰だってそうする。役職という装置と云えども生きる人間である以上、ストレス発散は必要である。
そんな言い訳ではなくとも、主に自分よりも配下向けの理論武装を経て外に出る。
王都の居住地として設けた屋敷の裏口から、騎士服ではない少しは市井に紛れうる装いで目指すは酒場町だ。

「……――嗚呼、良かった。まだこの辺りは残っていたのね」

昔、冒険者だったころにこの辺りは日銭を稼いで、よくつるんだ仲間と騒いでいたものである。
その時に得た得物がこの左腰にある。腰に巻いたベルトで吊るした剣を揺らしつつ、夜の街を歩く。
人の入りと流れはそう遠くはない昔日と、大差はない。

街娼がちらほら立ち、酔い潰れた浮浪者が裏路地の入口で雑魚寝する風景も見慣れたものである。
立ち並ぶ看板は知らないものがあれば、何度か足を運んだ記憶のあるものもいずれも等しくある。その内の後者に足を向けよう。

アマーリエ > 「この生臭さも相変わらず、ね」

扉を開けば、ぷんと鼻につく生臭さと煙草の臭いにはついつい苦笑が滲む。
どうせ酒場の上階の宿部屋だけではなく、薄暗がりで絡みあう男女のそれやらの痕跡だろう。否、現在進行形かもしれない。
雑厳という二文字を誇張し、体現したうえで野放しにしたような風景がここにある。
性質で言えば、平民地区に置いていくには少々質の悪い店だ。
お上品さとは縁のない店だが、不思議と料理は旨い。それと酒の揃えがいい。

「久しぶり。……そうねぇ。赤ワインと何か付け合わせを金額の範囲で適当に頂戴な」

店の奥のカウンター席のスツールに腰掛けつつ、知った顔の店員に硬貨を置いて品を頼もう。
量を多く喰うにも向く店だが、今日はそんな気分ではない。
一先ず適度な酒精と摘まみ代わりの料理を頼みつつ、肩にかかる髪を払って後方の雑然さに耳を傾けよう。
奥の小さなステージで歌姫らしい姿が流行りの曲を楽士と共に奏でる姿は垣間見えるが、哀しいかな他の喧騒に掻き消える。

そういうものだ。慣れと昔日の記憶があれば、この風景に文句はない。ただ、自分を守るための用心が大事なだけだ。
日雇いや夢に負けた敗残者や、一攫千金を得た冒険者等々、良きも悪しきも混ぜ込んだ風景がここにある。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2/夜の酒場町」にジェネットさんが現れました。
ジェネット > いろいろ頑張って働いた給金を握りしめ、下手くそな人化の術で馬の体"だけは"しっかり隠して赴いた、久々の娼館漁りの日。
しかし今日行った娼館はどちらかというとハズレだった。
はじめてが高級娼館だったせいで、評価基準が高くなっている可能性は否めないが、それにしたってなんとなく欲求不満。

……人馬でも隠さず入れる娼館、無いものかな。

今日のところはひとまずもう娼婦を買うほどの金は無いので、酒をかっ喰らって帰って寝よう。
そんな思考のもと、ふらふらと適当に見かけた酒場に踏み込んでいく黒い甲冑の女武者。

「――マスター、人参と肉で適当になんか飯を。酒は安くて強いのを頼む」

どっかとカウンター席に腰を落とし、頭頂部の馬耳をふるふると震わせて雑多な喧騒をBGMに料理を待って…………
うん?
ばっ、と横を見ると知った顔。
――娼館帰りの自分となぜかこんなところに居る雇い主。
気まずい。これは気まずい。
向こうに気づかれる前に早業で兜をかぶって顔を隠す。その兜、思い切り初遭遇からこっち、ずっと使い続けてるやつだけども。

「なーマスター料理まだー?」

裏声で他人を装い、必死に私は別人ですアピールする不審な武者である。

アマーリエ > 程なく運ばれてくるのは、店の風体の割にきれいに磨かれたグラス入りのワイン。
そして摘まみにセレクトされた生ハムと新鮮な野菜のサラダ、オリーブオイルをかけたバケットのセットだ。
昔と比べて、大食い出来る時分はとうに過ぎている胃袋には有難い。
今も昔も身体が資本な世界であるが、どちらかと言えば頭を使う機会の方が多い。

その手のあれこれについては先代の頃からいる副長に任せればいいが、そればかりでは済まないことも多い。
知るべきことを知り。為すべきことを為す。
義務を果たした後にこそ、自分の好きに出来る時間が生じる。
現状、本来予定している編成まで隊の編成を再編出来てはいない。良くも悪くもその点悩ましい。
頂きますと、雑な祈りの所作と共にまずはワインを一口。
雑味の少ない味わいのチョイスは相変わらずであることにほっとしながら、つ、と横目を遣れば――。

「……あら?」

何か、見覚えのある兜姿が見えた。
グラスを置いて、こてりと首を傾げながら脳裏で数種の可能性を浮かべる。
元々人違いか。恥ずかしいのか。顔を出せないような何かでもやらかしたのか、或いは何か。
しかし、兜以外の装具は――どうだろうか。そしてこの裏声によるアピールは知ったものからすれば、あやすぃことこの上ない。

「ねぇ、あなた? こんなトコで他人様のフリしてまで何しているのかしらん?」

であれば、前置きなく突っ込むが最良であろう。
食器を置き、立ち上がっては鎧姿の背後から抱きすくめるように近づきつつ、兜より垣間見える首筋を突きに行こうか。
鎧の板金に大きく実った乳肉を挟むことになることも構うことなく、どこかからかうような風情で。

ジェネット > 「ぎくぅ!」

今どきぎくぅ、なんて口で言うやついるのか、というくらい分かりやすく狼狽える。
鎧の隙間から首筋を突かれればぞわりとした感覚に震え、振り向けば後ろから抱きつくように密着している雇い主。

――この人、至近距離で見るとこんなに美人だったのだな……

そんな感想を抱くが、今はそれどころではない。
旅の恥はかき捨てと言うが、ある程度行動の範囲を落ち着けた今、かき捨てられる恥ではない。

「いぁっ、お姉さんとははじめましてで間違いないと思うぞっ。
 それともナンパかな?」

普段の声音が低めなのもあって、甲高い裏声は異様に喉が疲れる。
けほけほとむせながら必死で他人のフリを貫いていると、
店主がそっと甘く仕上げられた人参のグラッセとチキンソテー、そしてエールのグラスを並べる。
――食べたい。
食べたいが、食べるには兜が邪魔で、しかし一番興味を持たれたくない相手が密着してガン見していると脱げない。
でも人参グラッセは温かいうちに食べたい……
食べたい………………
"運動"で減ったお腹がぐぅ、と鳴る。

「はぁ……………………」

長い溜息。兜をそっと脱いで、しかし変顔を繕ってあくまで他人のフリは続けながら食事をしようとする。
言い訳のしようがない特徴的な馬耳は、緊張から忙しなく動いていた。

アマーリエ > 「……なーに知らぬ顔しているのかしら。初めましてじゃないクセに。
 疲れると思うけど、しらを切り続けると良いことないわよ?」

嗚呼、分かりやすい。
此処まで今時分かりやすいうろたえ方をしてみせる様に、ちょっとばかり呆れたように間近で見遣ろう。
しかし、これでもなお裏声をやってみせる様に何故と思いつつ、並べられる品々を見遣ろう。
兜を脱ごうとする気配に加え、腹の虫の鳴き声も聞けば仕方ないわねと一旦身を離そう。

幸か不幸か、今のところ互いの席の間に来客はない。
ついでにとばかりに自分のグラスと皿も持ってきたうえで、隣の席を陣取ってしまおう。

「答えなくてもいいけど、どう? 何か動いてたみたいだけど――“収穫”あったかしら?」

自分も少し腹が減っている。
サラダをちまちまと喰らいつつ、ワインで喉を湿らせては何の収穫かは言わずに問うてみよう。
傭兵が動く理由となれば、似たようなことを冒険者時代に遣っていた身で思うと幾つか限られる。
装備の更新としての動機が薄いとなれば、他の欲求の面で考えるといい。おのずときっと、定まってくる。