2018/11/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 平穏な王都の、平凡な庶民向けの、凡百な飯屋の一席。
商談を纏める為の外回りの最中、少し遅い昼餉にありついた小さなシルエット。
北方帝国由来の装束の意匠が、王国の平民に理解できるかは兎も角、扱われている生地の善し悪しから何処ぞのボンボンと見られても不思議ではない。
そんなお子様風情の存在が、足が付かぬような椅子にちょこんと腰掛けて、食事を貪っている。

「豆…というのは、煮ても煮ても煮ても煮ても豆じゃのう。
 南方の味付けとやらで風情は変わっておるが、食感までは化けることは出来ぬようじゃ。」

焼く行程の最中、水蒸気をたっぷりと満たしたオーブンで焼き上げる、外皮がカリっとしたパンを、細い指で千切り、口の中に放り込む。
言及された豆料理は、眼下のテーブルに鎮座しており、赤い色彩の煮汁で煮込まれているらしいと知れる。
牛の挽肉で旨みを与えているのは理解できるし、唐辛子でアクセントをつけているのも分かる。
然し、独特の風味の解析には、今一つ及んでいないようで、大ぶりな木匙で豆を掬い上げ、口内へと流し込む。
行儀作法は知らぬでもないが、用いる場所や状況を選んでいるだけ。
斯様な料理店で、フォークの背に豆を乗せて食すなんぞ、もう隠し芸の類であろうと気安いものだ。

ホウセン > 恐らくは、凡その商談に臨む時よりも生真面目な佇まい。
分からぬというのが興味をそそられるのか、それとも単なる負けず嫌いなのか。
供された料理の分析に掛かりきりである。
きっと、平民地区にある定宿一泊分の費用で、十回は食せるようなリーズナブルな品物を相手にする滑稽さは拭えないかもしれないが。

「甘みは…刻んだ玉葱を挽肉と炒めて強調したものじゃろうし、他の要因は酸味も含めてトマトか。
 味が染みるというより、味を馴染ませている風じゃから、豆は生の状態から煮たわけではないのぅ。
 予め水煮にしておき、それを加えたようじゃ。」

基本的な骨格は看取できるのだけれど、香辛料の組み合わせには小さく唸る。
ちぎったパンの端に汁を付け、其の侭口へと運ぶ。
どうにも、食材の持ち味を生かそうとする、出身地周辺の調理思想とは乖離しているようで、複合的な香辛料の分析には手間取っているようだ。
手放しで美味いと絶賛する訳ではない。
値段相応より少しお得感がある位と評価しているのに、腹を満たすことよりも意識を引っ張られてしまっているという有様。

ホウセン > もっもっ…と、脇目を振らずに皿に掛かりきりになっている様子は、ともすれば小動物のそれに似よう。
決して食べ急いでいるのでもないし、小型げっ歯類のように頬袋を備えて膨らませているのでもないけれど。
贔屓目に見れば、多少愛嬌と呼べるかもしれぬ物を撒き散らしつつ、一緒に頼んでおいた茶に手を付ける。

「んくっ…んっ…ふぅ。
 茶は茶で王国風なのじゃが、故に少しばかり合わぬ気がせんでもない。
 何と言うたらよいか、こう、濃い目のエールやら穀物由来の蒸留酒が欲しゅうなる料理じゃ。」

恐らくは、大蒜とクミン辺りのスパイスを入れることで味に深みを与えているのだろう。
すっきりと飲むだけの茶では押し負けるし、繊細な香気を楽しみながらとなると、その前に嗅覚が機能不全になってしまう。
故に、端から当たり負けしないものを選ぶべきなのだろうと結論付けるのは間違いではないけれど。
果たして、それが椅子に座ると足が床から離れてしまうようなこじんまりとした”お子様の”論評なのかというアンバランスさは否めない。

ホウセン > その後、店員を呼び止める為に手を上げかけて、それを下ろしてという動作を幾度か。
果たして、日中から飲酒に耽るかどうか、その顛末は――

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からホウセンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にイリーナさんが現れました。
イリーナ > 平民地区、冒険者ギルド横の酒場はこの時間にもなれば人で溢れている。
その日の仕事を終えた冒険者、その稼ぎを狙う娼婦達に、店員達。

さて、カウンター席の端に座っているこの女はというと……。


「あぁんの、くそ女(アマ)ぁあああ」


飲んだくれていた。 昼から、今まで。

どん、と空になったエールのジョッキを軽く叩きつけながらマスターを呼べばおかわりを。
はてさてそれが何杯目かは覚えていない、どうでもいい。
ただすぐに差し出されたそれを左手で取ればもう一杯、ぐびっと勢いよく呷る。

「あぁんの、クソ女ぁぁぁああ!」

と、コレの繰り返し。
時折右肩をぐるぐる回すのは調子を確認するようで。

痛みは引いた、引いている。
だが、なんとも厄介なもので時にうずき、それが思い出せるのだ。
ゆえに、飲む。 酒を。 忘れるようにと。

イリーナ > 飲んで、怒って、飲んで、愚痴を吐く。
その繰り返しではや数時間、できたのは一人の酔っ払い。

心配をしてか、今晩のデザートにしようとしてか、はたまた面白がってか。
時折声をかけられるものの、とっくに酒に飲まれて据わった赤眼で相手を見つめた後で

「いいたくない」「興味ない」「笑いにきたわけぇ?」

などととりつく島もない。

何時間に一度は突っ伏し寝息を吐くものの――。

「ぃ、ひ……ぁ、く」

と、寝息……には聞こえない少し艶やかな息とともに起き上がれば
右肩を軽く押さえて起き上がるのだ。
そしてまた、飲む。

マスターは黙ってエールを差し出すのだが……。
いかんせん飲みすぎだ、と哀れみの視線をこの飲んだくれに送っていた。
が、深入りしすぎないのも礼儀であるとそれ以上のことはせず。