2017/06/11 のログ
フェロ― > 結局。マスターが戻るまでには結構な時間がかかった模様。
欲望に抗いきれずにケーキにまで手を出して、悪びれずにご馳走様でしたとにっこり笑顔。
お勘定も負けて貰って大満足で店を去っていったんだとか。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 喫茶店」からフェロ―さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 / 酒場」にエディスさんが現れました。
エディス > 少人数の酒場であるにも関わらず、店内は満席だった。
その店の奥に設置された小さなステージで、女が静かに歌っている。
ノリの良い曲はあまり得意じゃない。目立たないように、けれど己が歌を聞き入ってくれるように。
人の姿をした人魚が、歌っている。

想いを乗せれば聴く人々の耳に心に、女の想いごと届く。
今の女の歌には、ただ静かに聞き入ってくれるよう願いを篭めているだけ。
その気になれば客を酔わす事が出来るだろう。眠りに誘う事も出来るだろう。
女の歌には力があり、魔力があり。
けれど女自身、己が歌を聞き入る人々をどうこうしようとするつもりは微塵もない。
只歌えれば良い。己が歌が僅かでも一時でも、彼らに聞き届けてくれれば良い。
そんなささやかな願いを篭めて、女は歌い。

そうして静かに演奏が終われば、客たちの握手に包まれ。
それは喝采とは言わないけれど、気持ちばかりの賛辞だけで女は十分だった。
女は小さく頭を下げ、ステージから降りると、目立たないようカウンターの端に向かい。
バーテンダーから飲み物を受け取り、一口飲んで喉を潤した。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 / 酒場」にキニスさんが現れました。
キニス > 今日の分の依頼を無事にこなし、行きつけの酒場へ寄った時のこと。
店の奥にある小さなステージで催される歌を聞きながら一人酒を楽しんでいれば
美しい女性の透き通った声が耳に入る。

何かと思いそちらへ視線を向けてみれば綺麗な金髪のマーメイドドレス姿の女性が一人。
ステージに立って静かに店内の客に向けて歌を届けていた。
彼女の歌声に聞き入っていれば、暫くして演奏が終わり、気付いたら彼女へ拍手を送っていた。

ステージを降りる彼女を目で追い、酒のグラスを持って彼女の座るカウンター席へ向かう。

「…やぁ、お隣、いいかい?」

静かに飲み物を楽しむ彼女に話しかけつつ、隣に座って良いかと問いかける。

エディス > 客用の椅子に座る訳にも行かないので、予備のスツールに腰を落ち着け、間奏の間の休憩に喉を潤す。
流石に仕事中に酒は飲めないので、中身はただの水だ。氷の入ったグラスを傾け、
透き通った水を飲むと生きた心地がするのは矢張り、種として水が欠かせないものであるからだろう。
ひと心地ついたところに声を掛けられた女は、ゆるりと貌を上げて灰色の眸とかち合わせた。

「――――……、…は 、い。
 …休憩中、ですので……またステージに戻らなければ、いけません、けれど…」

女の声は酷く小さく、けれど声を掛けてくれた相手にのみ、その声が聞こえる仕様だ。
人魚には歌だけに留まらず、声を発するだけで何らかの力が作用するから、どうしても声は潜めがちになる。
その間でも宜しければ、と薄く微笑むと、座った儘彼の分の椅子を引き、隣へ座るよう促した。
こうして客に話しかけられる事も儘在るので、慣れた仕草であったかもしれない。

キニス > 彼女の透き通る眸と視線を合わせる。
続いて発せられた彼女の小さい声を聞けば、「ありがとう」と告げて隣に座る。
持ってきたグラスの酒を一口飲めば、カウンターへとグラスを置く。

「…さっきの歌、感動したよ」

小さく息を吐いた後、先ほどの彼女の歌について話し始める。
静かで素朴。しかし、その内側には人々に対しての何らかの願いが籠っており
小さくも力強い歌に上手く感想が漏らせず小さく「感動した」とだけ告げる。

「この次もあるのか!…大変だなぁ」

彼女の小さな声には敢えて触れず、そう告げる。
ステージに立つ彼女を見た時に大体その正体を把握していた。
しかし、正体を言い当てるといった無神経なことはせず、あくまで今は気付かないふりをし続ける。

エディス > 「………、……ぁ………あ、ありがとう…、ございます…」

ぽっと小さな灯火が灯るように、女の頬が仄かに赤らむ。
心からの賛辞だと分かるから、客から何回も聞いている感想とはいえ、毎回気恥ずかしい想いがして貌が熱くなるのだ。
叶う事なら、グラスを持った冷たい手を頬に当てて冷やしたかったが、グラスを握り込む事で何とかその衝動を抑え。
賛辞を当然と捉えず、種として当然だと自負もせず、女もまた心からの感謝を男に述べた。

「……いい、え。歌う事が……、…好き、なので。…ですから、大変などでは……ないのです
 ――――…、ぁ……ぁの、もし…何か、リクエストなどござい、ましたら……
 私が知っている、歌であれば………、…次、歌うことも出来ます…、けれど…」

好きで歌っているから、ぶっ通しで歌おうが女にとって全くの苦ではなく。
そう告げたことで思いついたように、客が聞いてみたい好みの歌はないか、駄目元で聞いてみる。
客からのリクエストであれば、伴奏者も否やは言うまい。
問題は、女は陸の上での生活がまだ浅いために、己の肖り知らぬ歌がたくさんある事だ。
己が正体をもう、大体は把握されてしまっているなど露程も思わない女は、そう男に問い。

キニス > 彼女の頬が僅かに赤らめば、こちらは小さく笑みを返す。
褒められ慣れて無いのか、それとも何かのせいで気恥ずかしいのか。
初々しい彼女の仕草を微笑ましく感じる。

「ふむ、リクエスト…そうだな…」

彼女の言葉を聞けば、顎に手を添えて考え込む。
どの曲にしようか…と自分の知っている曲と彼女が知っていそうな曲を模索する。
彼女の正体、そしてこの地域。色々と思案すれば、ある一つの曲を提案する。

提案した歌はこの地域に古くから伝わる曲。
大地や海、空などの自然について謳った曲で多くの場合は子守歌として扱われる曲。
子守歌を酒場で、となると少し似合わない気もするが、彼女の歌声なら大丈夫だろうと考えた。

エディス > 羞恥心の強さをからかわれる事無く済みそうで、女はひっそりと安堵する。
他者を慮る御仁のようだ。酒場と謂う場所柄、悪酔いで絡まれる事も数多あるため、彼のような人柄には好感が持てると謂うもの。
そうして呈されたのは、幸いにも女でも知っている歌。子守唄。
多少はアレンジしても問題ないだろう、頭の中でメロディを思い浮かべながら、男に向けて柔らかく微笑んだ。

「畏まり、ました…。……良かった、私の知っている、曲で…。
 ……では、今宵の、その唄、は―――お客様の為に、唄いましょう…」

今日の邂逅と、感謝と敬意を篭めて。
そう言って軽く一礼すると、女は椅子から立ち上がり伴奏者の許へと向かう。
客席から死角にあるステージの隅で軽く打ち合わせし、暫くすれば女がステージに立つだろう。

『お待たせ、致しました…。次の曲は、こちらのお客様からリクエストを頂き、まして―――。
 子守唄では、ございますが。間違ってこの場でお眠りにならないよう、唄わせて頂きます、ね…』

女の科白に、店内が少しだけ笑いに包まれる。
こちらの、と告げる際には掌を上にして男の居る席を指し示し、暗にリクエストも承っている事を伝え。
深々と頭を下げると、客からの拍手。
伴奏を経て、女が唄い始めれば―――優しく、柔らかく、透き通った歌声が店内を満たすだろう。
今宵はよく眠れるように。母に父に、優しく唄ってもらった幼き頃を思い出してくれるように。
或いは我が子に唄い聞かせた頃を、思い出させるように。
そんな願いを篭めて、女は唄うだろう―――。