2017/05/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にティエンファさんが現れました。
■ティエンファ > 宝石市を少年は歩く。 古今東西大小高安、様々な宝石が並ぶ市。
夜である、昼間ほどは華やかではないが、ランプの明かりや松明の炎を照り返した石々は別の魅力を見せる。
ちらちらした輝きはどこか幻想的で…。
「装飾の事が分からなくても、見てるだけでも面白いもんだ
へぇー…奇麗なもんだなあ」
刺青の少年は足を止め、露天の石を眺める。
黒い肌をした商人が拙い王国語で売り言葉。
しゃがんで興味深そうに聞く少年の姿。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にエルティさんが現れました。
■ティエンファ > 一声かけてから、小さな石を目にはめ込んだ梟のブローチを摘まむ。
明りに掲げて見れば、目の所だけ素通しなのか、きらきらと宝石が光を湛える。
くすんだ銀の梟は、それなりに年代物であるし、梟の目の宝石は小さい物だった。
でも、なんだか凄く気に入って値段を聞いてみる。
「ふぅん? …古いもんだから安くしとく? ふむ…ん? んー…どうしよっかな」
商人と視線を交わせば、にやっと笑ってわざとらしく悩む仕草。
市場慣れした少年の様子に商人は思わず笑い、もう少し値下げを口にする。
■エルティ > ちょっとした仕事の帰りに普段の道を歩いているとふと何かの市、効けば宝石市がやっていると聞き興味本位に足を踏み入れる。
夜の闇をランプや松明で灯りを取った市の中を露店を眺めるように歩く。
森にいる事にはほとんど縁のなかった貴金属や宝石を使った装飾品を興味深そうに眺めて歩き。
時折に足を止めてみるのだがその値段に簡単に買えないと感じて店を離れる。
そんな様子で何軒かの店を眺めて歩けば先の店にどうしてこんな場所に?と思わず疑問に持ってしまう少年の姿を見つめる。
「誰かにプレゼントでも探してるの?」
何かに見入っている様子が気になり近づいていき軽く腰を叩くようにして声を掛け。
手に持っている物を見ようとする。
■ティエンファ > 「ん? あ、エルティ姉さん! いや、冷やかしのつもりだったんだけどな
見て見たら、結構こういうのも綺麗だなって …ほら、綺麗じゃないか?」
振り返り、手の中のブローチを見せる。 渋くくすんだ色の銀の梟の目に、小粒の宝石。
派手さはないが、細かい羽の流れが刻まれた品の良い物。 かなり古そうだが。
「ん、それっ位なら―… よっしゃ、買おうかな あー、包まないで良いよ」
愛想笑いを浮かべた商人に、金袋を取り出しながら言う。
そして、エルティの前で購入したその梟を…。
「はい、エルティ姉さん」
あっさりとエルティに差し出した。
■エルティ > 「こんばんわ、ティエンファ。冷やかし?それなら私と一緒ね。
綺麗なのは認めるけど……その分値段もするでしょ?」
振り返る少年の手の中のブローチを見れば確かに綺麗、銀製の梟で目の所には小さな宝石、渋くくすんでいるのがなお綺麗に見せていて。
細かな作りを見れば古くても、いや古いからこそより綺麗に見えるのだと感じて。
「買うの?少しは羽振りがよくなったの?」
商人に買うと告げて代金を支払う姿に少し見ない間に立派に成長したのかと人間の成長速度に驚き。
その梟は少年によく似合だろうと思っていたのだが……
「え……え?」
あっさりと差し出されたブローチに驚き、本当に驚いているという顔で少年とブローチを何度も交互に見てしまう。
■ティエンファ > 「んー、って言っても、装飾品って元々高いもんだろ? 良く判らんけど
でもほら、綺麗なもんってのはそれだけで良いもんだからさ
こないだもほら、硝子細工の位置とかもあって、めっちゃ綺麗でさー…」
結構色々なものを見て歩いているようだ。
渋い趣味から女の子が行くようなものまで、市場めぐりが趣味なのだとか。
金袋は、裕福とは言わないが、困った様子ではない程度に膨れている。
「ま、結構貴族とか商人からの指名依頼もだいるようになってね、前よりも落ち着いたよ
えーっと、これが針で、服に留めるのか…んっと、ちょっと動かないでな」
目を丸くしているエルティに声をかければ、エルティの胸元にその小さな梟を留める。
手を放し、ちょっと眺めれば、上機嫌に笑って見せて。
「良き物は良き人へ、ってね
うん、良く似合ってる キラキラし過ぎないのがいいな」
エルティが来るよりも前に気に入っていた物を、まるで当たり前のようにエルティにプレゼントする。
そして、それがエルティに似合えば、自分の事のように嬉しそうに微笑むのだ。
■エルティ > 「私はこういうのはほとんど見ないし…見ても木彫りのとかなのよ。
だからこんな銀製や宝石を使ったものの値段がどのぐらいなのか判らないの。
硝子細工の……?そ、それは落としたら大変なことになりそうね」
少年が実は自分よりも色々なものを見て回っていると知れば驚き。
聞けば市巡りをよくしている様子に馴染み博識を得るにはそういう場がよさそうと関心をして。
仕儀とをやや選びすぎる自分とは大違いだと。
「貴族や商人に?それって凄い事よ。その縁を大事にしないと駄目よ。
え、ちょ、ちょっとティエンファ!?」
エルフを雇う貴族や商人は別な目論見を持つものも多く中々受けれない自分とは違うと少しうらやましくなり。
慌てている間に少年にブローチを留められる。
「そんなことを言っても何も出ないわよ…?
で、でもその…ありがとう。嬉しいわ」
あっていきなりのプレゼントに戸惑い、似合うと言われればなれないのか顔を赤くして小さくお礼を口にして。
その嬉しそうに微笑む姿に真っすぐに見れないほどに照れてしまう。
■ティエンファ > 「あははー、俺も実は相場はよく分かんないんだ!
でもほら、良い物は良いよね、綺麗だから良いと思う」
子供の様にシンプルにそんな事言う少年に、商人の方がちょっと驚いた顔をして。
驚く二人の様子に、どうしたのさ、と首を傾げる少年は明るく笑い。
「ああ、いけ好かない奴も時々いるけど、色んな依頼を受けると楽しいぜ
普段合わない奴と話すと、こういう普段いかない場所の情報も貰えるしな」
この市の事も商人から聞いたんだ、と続けて、エルティの忠告に素直に頷いた。
そして、照れるエルティの様子を見れば、満足げに頷く少年だ。
「うん、喜んでくれるならプレゼントの甲斐もあるってもんだよ!
良く似合ってる エルティ姉さんに似合うって、姐さんが現れた瞬間ピンと来たんだ」
ちょっと照れ臭そうにそう言ってから、立ち上がって手を差し出す。
「折角だし、一緒に見て歩こうぜ この後、急いでないなら」
■エルティ > 「ティエンファ…折角成長したって思ったのに落ちを付けないの。
その意見には同意するわよ、でも相場は知らないとだめでしょ?」
驚いている商人の顔を見て、自分は逆に相場を判らないという言葉に呆れてしまい。
首を傾げる姿にそれ以上は何も言えずに少年らしいと笑って見せて。
「私はどうにも貴族と聞けばろくなイメージがないのよ。
こういう場所の話を聞けるのなら悪くはないのかもしれないのだけど」
こういう場所の話を聞けるのであれば少しは受けてみようという気持ちになり。
まさかプレゼントをもらうなど長く生きる中で初めてですっかりと照れてしまう。
「そ、そのティエンファ……これは大事にするわ。
そんなこと言われたの初めてだから…」
どうして良いか分からないというように狼狽え立ち上がる少年を見上げ。
「別に慌てる用はないわよ。だ、だから付き合ってあげるわ」
■ティエンファ > 「んー、まあね …でもほら、エルティの顔見たらさ、あ、似合うなって思っちゃって
そうしたら、贈りたいと思うじゃん、だって似合うんだもん」
実際可愛いし似合ってる、と、どこまでも素直に言葉を伝えて微笑む。
揺れる松明の明かりを照り返した梟が、エルフの胸でちらちらと笑うように輝く。
「金持ってるからいけ好かなくなる奴と、金持ってるからおおらかな人、それぞれさ
まあ、どいつもこいつも油断ならなくなるってのはあるけど、結構楽しいぜ
今度、一緒に依頼やってみる? 護衛の仕事なんだけどさ」
そんな事を言いながら、狼狽えて口ごもるエルティの小さな手を、包むように握る少年。
その手を引く姿は、出会った頃の子供っぽさよりも、どこか落ち着いた様子で。
「うん、大事にしてくれるんなら、俺も嬉しい …似合ってるぜ
よっしゃ、じゃあぶらっと冷やかして回ろうぜ! 二人なら歩くだけでも楽しいさ」
■エルティ > 「もう、ティエンファは天然のナンパ師にでもなったの?
こうやって貰えるのは嬉しいのよ、でも……ナンパみたいよ?」
呼び方から姉さんという言葉が消えていることに気が付かないほどに動揺してしまい、つい思ってもいない事を口にして。
視線を下げれば胸につけられた梟のブローチが松明の明かりに光り。
「それは判っているのよ。でもどうしてもね……。
ティエンファはそれで良いかも知れないけど…私は変なのにかかると良くて飼われて、悪いと使い潰されるのよ?
そうね、ティエンファと一緒なら安心できるわね」
異種族はこの国ではよほど注意しないと危険なのと告げて。
手を包み込むように握られて見上げればそこには初めて出会った頃よりも落ち着いた様子で。
「大丈夫よ、ずっと大事にして……子供たちに引き継いでいくわ。
折角だしそうしましょうか。もしいいのがあったら今度は私がティエンファに贈るわよ」
年上として贈られたままではというプライド、もしあればと告げれば手を引くように歩きだして。
■ティエンファ > 「天然だったらなりたくてなったもんじゃあないだろ!?
ナンパなんて柄じゃないよ …あ、もしかして照れた? 照れたのか!」
酷い評価に唇を尖らせたが、すぐに思いついたように笑って揶揄う。
しかし、ブローチを見るエルティの目が柔らかいので、こちらも目元を柔らかくして。
「ま、俺もエルティ姉さんが変な奴に囲われるのは嫌だしな、
信頼できる奴と一緒じゃない限りはやめといた方がいいかもな
…エルフだってのもそうだけどさ、エルティ姉さんはほら、女の子だしな」
人間の男にはあまりピンとこないけれど、でも、エルティが酷い目に合うのは避けたいと思った。
たぶん、そんな事になったら、自分は貴族をあっさり敵に回して、屋敷にでも城にでも乗り込むだろうから。
「子供たちに、ね… …なんか、そんな言われると照れるのと、
もっといいのが良かったんじゃないかって思っちゃうな…!!
…はは、エルティ姉さんが似合うと思ってくれるのがあったら、その時には甘えるよ」
手を引かれれば、急に元気になったなあ、と笑って。
2人で宝石の夜市を歩き始めるのだった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からティエンファさんが去りました。
■エルティ > 「ティエンファってこう……ピンポイントで喜ばせるような事をたまにするのよね…。
て、照れたわよ。こんなの貰うの初めてだから仕方ないでしょ」
口をとがらせる姿にこういう方面でも成長したのねと見るのだが急に笑う姿をなに?と見て。
そして揶揄われればついそんな事を言ってしまう。
「囲われるで済めば御の字よ。貴族に奴隷にされてるミレー族は知ってるでしょ?ああなるかもしれないのよ…。
信頼もお金次第っていう人もいるから中々なのよね」
女の子と言われればきょとんとして、次には笑えば少年の脇を肘で突いたりする。
「大事な物なんだから継いで行くのは当たり前の事よ。
こういうのはね、価値じゃなくて気持ちなのよね。
その時はどんと甘えていいのよ」
いつまでも主導権を取られたままではと少しから元気。
少年と二人夜一を見て歩くのであった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエルティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にピングさんが現れました。
■ピング > 平民地区の一角にある、とある雑貨屋。
位置は大通りから一本離れており、道行く人も疎らといった立地は当然、良好とは言い難い。
また店の見た目もやや古臭く、一見して何が売っているのか判り難い、そんなお店。
一つ目立つ点があるとすれば入り口の扉にでかでかと”アルバイト募集中”の紙が貼られている事だろうか。
”明るい職場””未経験者でも簡単に出来る!””高給与に自信あり!”等々、内容がポジティブ過ぎて逆に不安を煽りそうな内容だったが。
そしてその貼り紙のある店内のカウンターでは、店主とその友人らしき中年二人が茶を啜りながら談笑に耽っていた。
「あん?なんだって?いやいや、あれくらい書いておかないとアピールにならんだろう」
話の内容は、入り口の貼り紙について。
あれは流石に無いだろう、との至極真っ当な突っ込みに対し、本気であれが有効であると断じる店主。
あきれ顔の友人の面を見て、ふん、と鼻を鳴らすと。すぐにその面を緩め。
「今に見てろよ!綺麗で可愛い店員を雇ってエロエロしっぽりの店番生活って寸法よぉ!」
商売の為ではなく、邪な目的の為に間違った頑張り方をしている駄目店主の姿がそこにはあった。
何はともあれ、今日も変わらぬ呑気な調子の店だった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にレナーテさんが現れました。
■レナーテ > 仕事帰りに何気なく通りかかった店の前で、足を止める。
こんなところに店などあっただろうか? そう思えば軽く首を傾げつつ、ざっとあたりを見渡すも何の店やら分からない。
ただ、古臭い作りは、魔法に関する物を取り扱っている店ならあり得ることで、そこに小さな興味を惹かれた。
(「とりあえず入ってみましょうか」)
こうして遠目に見てもなんの店かわからない。
思案顔のままドアの方へと向かうと、入り口にある随分と気合の入ったバイト募集の言葉に手を止め、呆然とした様子でその文字を確かめる。
どれだけ人手不足なのやらと思えば、呆れたように苦笑いを浮かべつつドアを開いた。
「……」
カウンターには肥えた店主と、もう一人別の男。
丸レンズの眼鏡の下、金色の大きな瞳が彼らを一瞥すると、すっと視線をそらしながら、棚の方へと視線を向けた。
背中には長銃、可愛らしい戦闘衣とは裏腹に、腹部には斜めに掛かったフリントロックピストル。
ほっそりとした体つきに、童顔の割には物々しい格好ともいえる。
陳列されているものなかで、先に興味を引くのは装備品の類だろう。
そちらを見つければ、コツコツと足音を立てて移動し、じぃっとそれ眺めていた。
■ピング > 実際の所、人手不足どころか暇を持て余している始末。
故にある意味で道楽でしかないバイト募集なのだがそれはさて置き。
熱く、アルバイト店員とのめくるめく官能の世界を語っており、それが来客に聞こえてしまったかどうかは定かではないが。
その存在に気づくと、おっと、と手を口で塞ぎ、らっしゃいまーせー、と愛想よく手を振りながらお気楽な挨拶。
その前の言葉が聞こえていたら一瞥された視線の意味合いが色々とアレな予感だが、気にはすまい。
何しろ、女性客である。
談笑していた友人にはしっし、と手を振り払い邪険に扱い。
慣れているのか友人は何を言うでもなく、のんびりと茶を啜って椅子に座ったままで。
にっこにっこと上機嫌な様子で物色する相手を遠目に見やり、何やらタイミングを見計らっていた。
さて陳列されている品と言えば、一言で言えば、雑多。
ベルトやポーチと言った品の直ぐ横には何故か本が並べられ、その横には飲料水。
中には簡素だがマジックアイテムなんぞも混ざっており、宝探しと言えば聞こえは良いが探すのは骨が折れるだろう店の拵え。
■レナーテ > (「……そんなに忙しそうではないですが」)
閑散とした店内に客は自分ひとり、オマケに店主は友人らしき男と雑談している。
運よく会話の内容は聞こえていなかったが、向けられた上機嫌な笑みが、どこか不穏な感じがして、ぞわりと淡い悪寒を覚えた。
多分、苦手なタイプの人だからだろうと、深くは考えないようにしながら品物に目を向ける。
「……」
無言のまま品物を見破っているも、ベルトやポーチは今あるもので事足りているのもあり、便利そうなものがなければ一瞥するだけで終わってしまう。
ただ、魔力の気配のするものがあれば、それを手に取り、なんだろうかと色んな角度から見てみたり、触ってみたりと真面目に品物を見ていく。
玉石混交といった中でも、気にせずというところか。
「……?」
一旦品物を置き、ふと本があることに気付く。
装備品のところに何故こんなものがと訝しげに首をかしげるものの、何かの取説かもしれないと考え、手に取れば、パラパラと中身を確かめようとするだろう。
■ピング > 明らかに色欲を持った視線を向けているのだから、そりゃあ悪寒もするだろう。
こうした日々の積み重ねがあるからこそ店の評判が上がらないのだが、それを気にする店主でもない。
一度相手から視線を離し、近場に居る友人に声をかけると「中々上玉だなぁ、おい」などと下世話なお話をしているのは、お察し。
そんな、何とも言い難い空気の中で進む物色の具合と言えば。
相手が手に取った本が特に異質であった、と言うべきか。
それを手に取る瞬間を遠目に見ると、お、と口の端を緩め。視線を外し、少し間を置くことにした。
何故ならばその本は――――官能小説だったのだから。
ご丁寧にカバーがされているその本は、外側から見てもどんな本なのかは判らない。
しかし開けば一転、艶めかしい挿絵が所々に入った立派なエロ小説である。
描写がやたら艶めかしい、ある男湯に女性が入ったら…というアレな展開の本ではあるが。
■レナーテ > ベレー帽の下に隠れた耳は、そこそこに聴覚が鋭く、あまり離れていない相手の小言ぐらいなら聞き取れてしまう。
悪寒の理由が、下卑た視線だったからだと、その呟きから察すれば、小さく溜息を零す。
(「来る客にそんな目を向けてれば……寂れるはずですね」)
この店の異様さは、ただ店主の態度が悪いというところか。
そう思いながら本を開けば、文字の中身は確かめなかったが、何かの小説らしいと文字の並びから察していく。
そして、挿絵がはいったページを開いた瞬間、ぴしりと硬直したように、手の動きが止まる。
「……っ!?」
頬を赤らめながら、少しばかり目を見開いて驚くと、思わずパタンッ!!と音を立てる勢いで本を閉じてしまう。
なんてものを置いているんだと、僅かに憤りを覚えながら本を棚に戻すと、踵を返し、店を出ようとするが……ドアの前で足が止まった。
(「……念の為、聞いておきましょうか」)
店に入った理由の一つ、これは店主に聞かねばほぼわからないだろう内容だ。
ゆっくりと振り返ると、嫌悪感をどうにか抑えながら、苦笑いを作り、彼を見やる。
「すみません、魔法に関するもので……ティルヒアから流れ着いたものはありますか?」
戦争の中で会得した魔法銃と同様に、戦争で流出した技術があるかもしれない。
それは、魔法であれば魔法銃に関連する可能性もあり、暇があればこうして調べ回っている。
こんな下品な店にあるはずもないが、念の為と、内心嫌々ながら彼に問いかけた。
■ピング > 読み耽ってくれれば非常に楽しい展開だったのだが、そうはいかなかった模様。
けれども慌てて閉じ、その顔が赤らんでいるのを見れただけでもスケベなオヤジとしては収穫があった。
これだから…と近くの友人が溜息を吐いているのは、無視だ。
そのまま店を出ていくかと思われた客が、けれども振り返ってカウンターへと戻ってくる様子を見ると目を瞬き。
苦笑いを浮かべる相手に、はいはい何でしょうかとにこにこの笑顔で応対を開始。
「ティルヒアたぁまた酔狂なもんを。あー……どうだったかなぁ。
ティルヒアかどうか微妙だが、シェンヤンから流れて来たもんだったら確か…」
片眉を持ち上げ、記憶を探る様にこめかみをぐりぐり。
カウンターから立ち上がると、少し良いかい?と相手に声をかけて一緒に移動を促した。
店の奥まった場所へと移動しながら、振り返ると口を開き。
「ちなみにどんなもんを御所望だい?確か、何か本があった記憶があるんだがね」
流石に由来のマジックアイテムまでは無い、と言い含め。
とある棚の一角で立ち止まると、どれだったか、と髭を撫でながら指を当てて本の背表紙を一冊ずつ撫で。
尚、付近の棚には所謂大人の玩具系の淫具が並ぶ雑っぷり。狙った訳ではない。決して。
■レナーテ > 振り返れば、笑顔で応じる店主に、エッチな目で見ていたくせにと毒づきながらも、顔に出さぬようにしつつ問いかけていく。
「戦争後、色々と流れ出たものがありますから……そういうのを探しているんです。シェンヤンですか?」
こめかみに指を当てる店主に、そんな理由を添えると、隣国の物というワードに反応を示す。
それはそれで、何か使えるものがあるかもしれないと思えば、彼の促しに応じ、店の奥へと歩いていく。
傍で歩く度、髪に染み込ませた柑橘系の甘い香りが僅かに漂い、彼に届くかもしれない。
「魔法に関わるものであれば、何でも……本当はティルヒアのがいいのですが、シェンヤンのでも…参考に……なり、ますから」
本ならあったということでも、それが技術書なら十分。
彼の問いかけに答えながら辺りを見渡すと、みるみる頬が赤くなる。
大人の道具が色々と並んでおり、それが何に使うかはよく知っていた。
ほんの少し過去を脳裏によぎらせ、怖くもなるが、同時に羞恥も煽られ、言葉が途絶え途絶えになって弱くなる。
周りを見ることが出来ず、視線を下へと落として、彼の物色を待つしかなかった。
■ピング > 「確かティルヒアと似た文化ってぇだけだがね。魔法、魔法なぁ」
相手の内心の毒づきなど知りもせず、というか気にもせず。
鼻孔を擽る柑橘系の爽やかな香りに緩む顔は、今は棚に向いているから相手に見えぬのが幸いか。
しかして応対をする相手の反応が、少々興をそそるものになってきている。
くふりと口の端を緩めながら、邪魔になる品をどかす名目で男の男根を模したディルドと、男性の自慰用道具――所謂オナホールをつかみ取り。
「すまんが、ちょいとこれ持っててくれんかね。傷をつけちまいそうでね」
そもそも、むき出しにして置いている時点で傷も何もあったものではないが。
卑猥な道具をそれぞれ相手の手に押し付けると、ごそごそと雑多な棚を漁り続けた。
「はぁ。何か特殊な魔法でも探してるんかい?おいらは魔法に関しては下手くそでなぁ
…お、あったあった。お嬢さん、ほれ、確認してくんな」
等と適当な会話を続けながら品を漁り、漸く見つけ出した一冊の本。
装丁はだいぶ傷んでおり、文字も帝国特有のもので果たして読めるのか怪しいものだが。
内容は魔法に対する基礎の学術書、と言ったもの。