2017/02/10 のログ
■マティアス > 「な、なるほどねぇ。
酔狂さには割と自信があるつもりだったけど、上には上には居るということか」
ならば、いいのだが。
まぁ、そもそも趣味の品というのは、他者から見ればガラクタ同然であることもしばしばだ。
本当に必要としているもの、愛でてくれるものに譲らせるという観点で思えば選別は必要であると言える。
売り手が望む来客であるか、否か。誰にでも押し付けていいものを、誰が後生大事に愛でるものか。
「どうもどうも、失礼するよ。……それが例の品でよいのかな?」
先導する姿に続いて、己も服の裾を揺らしながら中へと入ろう。
直ぐに見えるカウンターにあるのは、印象的な存在感を醸し出す一冊の本。
これがそうなのだろうか? 不愛想な店主の挨拶と視線に気楽な、見ようによっては緩くも見える笑みを返して、件の物に近寄ろう。
そうしながら、眼鏡の奥の双眸を細める。
感覚を広げる。肉体の機能としての視覚だけではなく、霊的な感覚を研ぎ澄ます。
何かあるというのは事前の話として明確である。
であるならば、見えざる何かも注意を払う必要がある故に。
■アンナ > 「ここだけの話、実際そういう持ち込みも多いみたいで…」
(今回の発端だって、置き場のない物入れを売ったら、中から出てきた本が開かないという、そういう話だった。たまに、蔵を建て替えるから中のもの全部持って行ってくれというのもあるらしい。そういう時に限って、掘り出し物があるのだとか)
「じゃあおじさん、ちょっと借りるわよ?」
(触っても大丈夫とは聞いていたので、カウンターの本をマティアスさんへ手渡そうと。本には強固な呪いというか、執着のようなものが感じられるだろうか。意訳するなら『絶対に見るな』というような、そんな感じ。封じの魔法の上にその意志が乗っかることで、話がややこしくなっていると、そんな印象を受けるだろう)
■マティアス > 「そうだろうね。寧ろ何処から何が出るか、分かるほうがどうかしてる世の中だよ」
遺品整理から出てきたものを売りに行くとか、良くある話である。
思わぬところから、出るものだ。家を解体したら床下から何々が出た、というのも偶に聞く。
ゆえに、少し聞いておく必要も出るだろう。
「あー、店主殿。――こちらの品の出所を簡単にお聞きできるかね?
あと、小さな敷物でも広げても良さそうな場所があれば、お借りしたいのだが」
差し支えない範囲で、いい。呪いの種類によっては強引に突破することも、やりようによっては不可能ではない。
だが、それはけしてスマートな方法ではない。少し聞けるものがあれば、糸口にもなるだろう。
問題の本を受け取り、表紙や裏表紙等、全体をくまなく見まわしながら問いの言葉を投げかける。
その上で、ふむ、と感じる本からの気配に眼鏡の下の双眸を細める。
基礎としては恐らく、施錠の魔法。その上に何かが蔓草の如く絡みついている印象を受ける。
――執着? 否、執念?
想像は如何様にも効く。あとは、如何にして呪いの根幹に至り、その奥底を解き解すかである。
■アンナ > 「逆に、価値あるものだって売りつけられたものがガラクタだったりとかも」
(表の看板はそういう輩を近づけさせない意味でも役立っているらしい。店主自ら、安くでしか買わないと言っているのだから。
出所との言葉には、野外で使うゴザを持ってきた店主が口を開く。今は没落した下位貴族から買い取った品であるらしい。本に関しては、おそらく物入れを愛用していた祖父のものだろうと…祖父は、凄腕とは行かないまでも魔法が使えて、王城にも出入りしていたらしい)
「なんか、そんな人の家系でも没落しちゃうんですね…」
(しみじみと告げる少女は勿論、魔術の才能なんてないので、見ているだけだ。ゴザを広げたりする手伝いはするがその程度。
本に絡む思念は、どうやら女性に反応して強くなるらしく、少女が近くにいる場合、絡みつく思念も強まるのが分かるだろう)
■マティアス > 「それは、見抜けなかった方が愚かという話さ。
ああ、けど。僕は違う……なーんて、言えないか。僕だってたまにやる」
では、原価自体はそこまで高価ではないのか。
出所を聞けばなるほどと思いながら、一旦件の本をカウンターに置き直す。
ゴザを持ってきてくれた店主に有難うと云いつつ、己も担いできた鞄を床に置こう。
ぱちりと留め金を弾き、鞄を開けば色々なものがそのなかに並ぶ。
奇怪な結び方で封をされた巻物や、骨片やら干からびた草等が入った小瓶。
曲がりくねった刃をした短剣や、異様な光を火種として裡に封じされたカンテラ。
呪符を描く際に用いると思しい筆や墨、方位磁針が組み込まれた方位盤、等々。
専門の者が見なくても分かる呪具のうち、魔法陣を描いた赤い敷物を取り出してゴザの上に重ねる。
懐中時計の文字盤を開き、現在時刻と星辰の位置を確かめたうえで、適切な位置にルーンを刻んだ小さな水晶を数個置き、不慮の事態の護りとする。
「――割とある話だよ。つくづく他人事じゃあないね。
ともあれ、念のためだ。この石を持って、下がって。いいね?」
気になるのは、何か同伴する少女が近くに居ると脈動する思念の気配が強まる。
まさかな、と思いながら首下げにでもできる革紐がついた蒼い石を少女に手渡しておこう。
そうしたうえで、問題の本を敷物に書かれた魔法陣の中に安置する。
これで準備完了。では、始めよう。すぅ、はぁ、と。大きく息を整えた上で、ぱん!と手を打ち鳴らす。
■アンナ > 「私も持ち込まれる本で価格に悩むことはありますねえ…」
(一般的に売られているものならともかく、マニア向けの本の査定は難しく、親に任せている状態なので、こちらも偉そうな事は言えなかった。鞄の中からでてくる怪しげなアイテムにはおお、と思わず声を上げながら見入ったりして。冒険者とかかわりのない少女、勿論こういう儀式的なのを見るのも初めてだった)
「あ、はい。お邪魔してはいけませんよね。下がってます」
(ついつい前に出過ぎていた。お守りの石を握って壁際まで移動すれば、それに呼応するように念が弱まる。大きくなる手の音に一瞬で店内の空気が入れ替わり、静謐さが漂って)
■マティアス > 「ははは。
扱いに困る本を押し付けて、懊悩するそんなアンナ嬢を見るのも楽しいね」
たとえば、先日のように春画付きの本とか色々と。
けして需要がないワケではないのだ。女性を旅先で抱けない男の精処理等々、という面でも。
嫌がらせではけしてない。断じて、ない。多分。
モノによっては劇物も混じる鞄の中身に見入る姿に、少し危ないよ?と柔らかく注意して、一旦鞄を閉じる。
星辰の位置や周囲の霊相次第によっては、また幾つか出すものもあったが、事足りるだろう。
「邪魔ではないよ? けど、なーんか、この本の気配が騒ぐんだよねえ」
まさかと思うが、女性がらみの何かか。可能性としては皆無ではあるまい。
そう思いつつ下がる姿を確かめ、安置した本のほうに向き直る。
霊的にも安定かつ、周囲への安全を確保した状態で左右の手で幾つも印を切る。
ぱ、ぱ、ぱ、と。指を閃かせて、口の中で連動するように幾つかの呪言を連ねて。
「我――四方を封じ、天と地を敷き、威を以て統べる。
姿を現せ。見えているよ? さっきから気になっているのだろう? ほうら!」
ローブの裾と腰の剣の鞘を揺らし、片膝を突きながら屈んで魔法陣に触れる。
そうすれば、光が立ち上がる。本にかけられた術式を明確にさらけ出させる。
その式に絡んだ執念、執着と対話するように声を放ち、横目に壁際の方に下がった姿を見よう。
■アンナ > 「マティアスさんやっぱり意地悪ですよね…」
(こないだの事を思い出して頬を膨らませた。逆を言えば、その程度の苦言ですむくらいの困惑。決して嫌うような事までしないのは、彼の空気読みスキルが長けている証拠だろう。珍しくてついつい、と言い訳しながらその後の様子を見ていれば、なぜかこちらに話が振られている様子。訳が分からず首をかしげて)
「あの、私なにか…ってぇええ?!」
(呪文の内容はさっぱり分からないが、今まで見えなかった影のようなものがはっきり目に見えた。本に絡みつくそれはまるで木の根のよう。そして、こっちを威嚇するようにさざめく影はなんだか、毛を逆立てた猫のような気配だった…姿自体は、姿も定かではない黒い固まりなのだが)
■マティアス > 「可愛い子はいぢらないと嘘だろう?」
そう、弄るという。或いはからかうともいう。だが、やりすぎは良くない。
後に引くようなものとなると、其処に禍根が生じる。業の辻褄合わせの点でもよろしくない。
ともかく、問題のものにかかろう。あまり時間をかけすぎるのもいいことではない。
加護と対象術式の賦活、解析――持ち前の魔力を呪具を使って高め、必要な術を維持しながら。
「……妙に気になっていたんだよねえ。
アンナ嬢が近づくとざわついて、離れると落ち着くのさ。
そうかそうか、さては――女性には見せられないのかな?
いいとも。その気持ちはわからなくもないよ。
けれど、示し晒すべき相手は彼女じゃあない。僕に対してだ。ほら、――このあたりかな?」
見えた。沸き立つ影のような凝りの有様にレンズ越しに見つめ、笑って右手を伸ばそう。
そっと触れる。魔力を込めた五指をもって、その内側に進めてゆこう。
核心の箇所に触れ、その内側を脳裏で開いて読み解す。
解呪のワードがあるのか、どうなのか。鍵穴に対応する鍵のカタチを、求める。
■アンナ > 「そんなもんですか…」
(なんか釈然としない顔をする。近所のおばさんにも弄られる身なので反発したくもあるのだ。むやみやたらに反発するほど幼くもないのだけど)
「ええっと…つまり、見られたくない?あの、私後ろむいてますから、どうぞ」
(よく分からないけど、なんか不都合が有るらしい。そういう事情は古本屋をやっているのでよくわかる。くるりと後ろを向いて目隠し。なにも見ませんよという態度を示して)
(ざわざわと影が蠢く。封じの魔法、難易度は初級くらいか。故人がかけた魔法と考えれば、難易度はやや低め。要するに日常的に開け閉めしていたのだろう)
■マティアス > 「そういうものだよ? 自然の道理だね」
弄るし、その逆としてもたらすべきものも与える。そうでなければ、つり合いが取れない。
相応に敬意を以て接しているつもりでもある。
動きの気配を感じつつ、刻む横顔には笑みが浮かぶ。どこか人の悪いそれが。
「――たとえば。
誰かへの思いの丈をただひたすらに書き連ねたもの。
清らかなる乙女への思慕に飽き足らず、穢れに穢れさせたい妄想。
またまた或いは、恋い焦がれたのに届かないどころか横から掻っ攫われる嘆き。
さぁ、君のうちに記されたのはどれかな? 僕の知らぬ秘め事を白日に晒けだすといい!」
ここか。これか。術式の要と思しい感覚をつかんだと思えば、其処に魔力を流す。
合言葉の類があれば、向こうの中身を除けばよい。
ぼんやりとした形でもあれば、その方に流し込むように魔力を成形し、解き放とう。
これにて、恐らくは決着だ。
■アンナ > 「これって、耳をふさいでおいた方がいいんでしょうか…」
(弄られる云々はもう、自分が年を取ったとき年下の誰かを弄ることにして。
つらつらと並べられる言葉は、確かにそれは絶対見せたくないなと納得できるものばかり…自分が近づくだけで威嚇してたのはその成果と納得して耳をふさいだ。ついでに目も閉じた)
(見るなと言わんばかりの抵抗も、そもそもの地力の差。そして、経年の劣化という事情もありかちん、と正しく物が収まったような感覚が彼に伝わるだろうか。魔術師なら日常的なそれは、魔術が成功した独特の感覚。
本は開かれて、隠された中身が露わになる――――)
■マティアス > 「――いやぁ、いっそこれ朗読会をしてあげるほうがせめてもの供養じゃないかなぁ」
と、言うのもおおよその正体が見えてきたからである。
術式を解き解す。術自体の難易度もそうだが、もともとの編成能力については己の方が勝ろう。
故に、かちりと鍵穴にはまるような手ごたえとともに、ぐっと拳を握ってここに解呪を為す。
キィン、と。小さく鐘が軋むような音色と共に本に掛かった術がはじけ、失せる。
「……えーと、なになに? 某月某日……」
そして、敷いた術の数々を己も解除し、小さく息を吐きながら本を取り上げよう。
先ほどより感じていた気配はもう、ない。
左腕で裏表紙を支えつつ、革で装丁された表紙を開こう。
基本的な仕立ては日記帳。だが、内容はそうではない。
或る貴族令嬢の思慕から始まり、身分違いもあって届かぬ高嶺の花を堕とし、穢す妄念。
されども、果たせぬ妄想を令嬢が何処ぞに王族やら何やらに妾として娶られ、また歪む想念。
表に出せぬ、しかし、吐き出さなければ心が歪みそうなものを込めた掃き溜め。
それが、これだ。お子様にはとても見せ難い。
「…………あー、うん」
ぱたむと閉じて、祈ろう。普段から神に祈ることはあまりないが、これに勝る恥辱とはそうはあるまい。
■アンナ > 「…結局、何が書いてあったんでしょう?」
(こてりと首を傾げる。店主の方はなにかを察したらしくて目を背けて礼金の準備を始める。答えてくれる気配はなさそうで)
「マティアスさん、何が書いてあったんです?」
(なんだか気になる。隠されているものだから知らないほうがいいと解ってるが、中身が気になるのも事実。帰り支度を手伝いながら彼に話を強請ろうか」
■マティアス > 「一言で、言うとだね。……男には、涙を以てでしか語れないようなコトだよ」
そう、言うしかない。言わざるを得ない。
眼鏡を押し上げつつ、その手で目元を隠して首を小さく横に降ろう。
店主も悟っていただけただろう。
丁寧に解呪が完了した本をカウンターの上に戻し、広げた呪具類を慣れた手つきで片付けにかかる。
「さぁ、貰うもの貰って帰ろうじゃないか! 仕事はちゃんと果たしたしね!」
そう言って、店主から礼金を受け取ったのちに店の外に出よう。
帰り道にも内容についてせがまれれば、曖昧な笑顔で隠しながら――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアンナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からマティアスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にシンシアさんが現れました。
■シンシア > 平民地区で、いつもいく馴染みの酒場。
今夜も一人時間を潰すために、足を向けてた、入口の扉を開いて
店主に軽く挨拶もしたら、入口にちかい窓辺の隅っこに座る。
ほどなくして、店主がもってきてくれたメモは数枚、以前よりも少ない
手渡されて、愛想よく笑みを返し、ホットワインのハチミツ多めを注文して
手元のメモに視線を落としては、頬杖をつきながらため息を落とす
■シンシア > 落ちてくる金髪を耳にかけて、足を組んで座る
先ほどの貰った数枚のメモ
自分では判断しかねる内容ばかり、とりあえずポケットに仕舞って
ホットワインが届くと、窓のむこう通りを眺めながら
いつもより甘くしたものに口をつけて
■シンシア > ぼんやり…見てるか見てないか
青い瞳の視界になにか映ることもないように
誰に見せるでもない無感情なままでの無表情
いつもの笑みを浮かべる柔らかい表情よりも冷たく頬も冷えたような
ただ甘い暖かいワインだけが喉を流れていく
予想してたけど、予想以上に情報が少なかったし
自分が読んでいた文献にもあまり、今につながるようなものを見つけられず
重ねて落ち込む…役に立てていない気がして
ワインを1杯だけ飲み終えたら、席を立ち…会計をすませば店の外へと出ていき
森にでもいってみようかと…
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からシンシアさんが去りました。