2017/01/30 のログ
■マティアス > 「良くて、蒸気じゃなくて暖炉の煙と熱を通す管を君の足元、床下に通す位の仕掛けをお勧めしよう。
蒸気は寧ろ、蒸し風呂でも作るくらいで良いと思うよ」
この地域が火山帯であれば、また別の工夫ができただろう。
工費等、色々手間暇はかかるが、改築する機会でもあれば、仕込みは幾らでもできるはず。
「うん、わざとに決まってるじゃないか!」
それこそ満面の笑みで、胸を張る勢いで応えてみせようではないか。
ぺたぺた不埒に触るよりも、舌上で転がす位が丁度良いのだ。
受け取った金額を確かめ、間違いがないことを確かめて懐にしまおう。
今宵ばかりは少し、高い酒を呑もう。鎮魂の酒はざらだが、せめてもの供養であろう。
「ふむ? ――……いいとも。差し支えなければ、簡単に聞かせてもらえるかな?」
そして、依頼話に眼鏡の下の双眸を瞬かせて首を縦に振る。
例によって、解呪や鑑定沙汰であろうか。偶にあるものだ。変な呪いが掛けられたものが。
魔族のたちの悪いいたずらか、真理探究に努める魔術師の機密保持の意識の表れか。
いずれにしても、自分だからこそできる仕事の依頼は有難い話である。
■アンナ > 「蒸し風呂、いいですね…」
(暖房のほうは話を参考にしつつ、とりあえずは明日にでも蒸し風呂に行こうと決めた。大浴場でもいいのだけれど、混浴では困るし、連日の寒さで人も多そうだ)
「もう…繕わないあたりがほんとにマティアスさんらしいですけど」
(からかっては来るが手は出してこない。気心が知れているからこその事と分かるだけにそれ以上は何も言わず。話題も仕事のほうへと切り替えて)
「この通りをちょっと行ったところに、骨董屋さんがあるんですけど。最近買い取った物入れの中に入っていたらしくて。古書のような見た目だけど開こうとしてもダメらしいんですよ。
多分、そういう魔法がかかってるんじゃないかって…鑑定とか解呪が出来る人を探そうかって思ってたんですよね」
(簡単な経緯説明と、受けてくれるならギルドを通して正式に依頼する旨を伝える。触れないとか、触ったら呪われたという話は聞かないので、難易度としては易しいだろうか)
■マティアス > 「たまにはあの類、悪くはないよね」
とても良くわかる。身体に溜まった澱みや毒気を抜くのにも良いとも聞いている。
「まぁね。
下手に取り繕って、馬脚を現すくらいなら最初から率直に遣るのが僕好みだ」
其処に尻や女性器があれば、とりあえず捻じ込むというのは何か違うと思うのだ。
そうする主義ではないし、相手がそうすべき対象とは思えない。
性行為の忌避はなくとも相応の手続き、準備立てが必要だ。
ともあれ、仕事の話となれば緩んだ表情は真剣の二文字に引き締まる。
「――分かった。請け負おう。
開いたら内容を確かめ次第、問題なければこの店を通じて売りに出すし、危険があればその都度相談。
これで良いかな? 売りに出せない類のものだったら、次第によっては焼いた方がいいものだってあるからね」
無造作に禁書指定のものが転がっているとも思いたくないが、世の中何があるか分かったものではない。
際立った危険があるとは話を聞く限り思えないが、十分に備えをしたうえでかかるべきものとも思う。
云わば、誰かの秘密を暴くのにも似る。そうしていることを匂わせず、悟らせず、一から十まで知り尽くしたうえで詳らかにするのだ。
思考のロジックを熟知したうえで、その間隙を突く。それ以上の楽しみがあろうものか。
■アンナ > 「たまに九頭竜にも行くんですよ。女風呂のみの利用ですけど」
(いつもじゃないのは料金の関係上。古書を扱う店は少ないから、商売はそこそこ繁盛しているがぼろ儲けというわけでもない。温泉は疲れた時の息抜きとして利用する程度だ)
「ああ、たまにいますよねえそういう人。私は…時と場所をわきまえてくれるならって思いますけど」
(結婚という文字が現実味を帯びてきている十代後半。男の好みは真面目で引き際をわきまえている人という、なんとも商売人らしい嗜好だった)
「その辺は専門家にお任せしますよ。そもそも私たちじゃ中を確認することも出来ないんですし。
変に吹っ掛けたり、嘘ついて本を横流ししたりもしないでしょう?」
(ギルドを通じて魔術に精通した人を探してもいいけれど、頼み事をするなら見知った人がいいというのは人情だろう。人となりを知るからこそ、信頼も出来る。笑顔で頷いて。明日には正式にギルドを通しての依頼となるだろう)
■マティアス > 「……あそこ、ねぇ。設備は良いのだけど、妙な気配がするから少し苦手でね」
宿部屋に備え付けの風呂では、満足がいかない時もある。
そういう時は手荷物を漁られないように備えをしたうえで、その手の店に赴くこともある。
しかし、かの店はどうにも妙な気配が漂っているようで、二の足を踏むことがある。
「では、時と場所を弁えればいいのだね?
……と、いう理屈になるから、其れを言う相手は選んだ方がよいと思うよ」
やはりそろそろ年頃であれば、その手のことも思う機会は増えるだろう。
カウンターの上に頬杖をつきつつ、眼鏡のレンズの縁越しに視線の高さを合わせて相手を見遣ろう。
間髪入れない切り返しは、割ときっとよくあり得る相手側の受け答えそのもの。
「もちろん。信用問題にも関わる以上、きちんと判断を君たちに仰ぐよ。
万一僕が引き取る場合は、相応のものを用意させて頂くとも。」
信頼を失した冒険者はもはや、仕事もできなくなる。
仕事を必ずこなす誠実さも何もない者は、最早無頼の徒よりも始末に負えない。
半端なごまかしよりも、誠実に事を明確にしなければならないのだ。
しかも、ちゃんと信頼に基づいての頼み事であれば、なおのことだ。
何か、即座に高額金額等に出来る金品があっただろうか。宿部屋の私物を思う。
■アンナ > 「私は、ほら。あのお店冒険者も多いじゃないですか。
嫌いじゃないんですけど…ちょっと近寄りがたいんですよね」
(気心が知れている相手は別として。ごく平凡に生きる自分に冒険なんてものは縁遠いし、したいとも思わない。いずれどこかに嫁ぐにしても、今はこの店で本に囲まれる暮らしをしていたい)
「考慮はしますよ…って答えますけど。こういう話題が出来るってことは、それだけ仲もいいわけですし」
(曖昧な返事に見える前向きさ。行かず後家は避けたいけど安売りもしたくない葛藤が見え隠れするだろう。だからと言って、目の前の彼に貰って欲しいと言い出す勇気はない…なにしろ、仲のいいお客さんという立ち位置なのだから)
「良い答えです。そこはお互いに誠実にやりましょう。こっちも買いたたいたりしませんし、払うものは払いますよ」
(でなければ、常連客を一人失って、信用も失うことになる。古書の買い取りにだって信用は不可欠だからそんな真似、するつもりもなく。ただ、あまりに高額な場合は硬貨ではなく、同等の価値を持つ何か、になる可能性はあった)
■マティアス > 「うん、其れがいいと思うよ。危うきには近寄らず、という奴だね」
冒険者にはつくづく、好き好んでなるものではない。
憧れる程度が丁度いいと思うのだ。もっと安全に、かつ、確実に稼ぐ方法はいくらでもある。
だが、それでも敢えて選ぶなら、危険と隣り合わせの自由とそれ以上に得るものがあるからこそ、だ。
「まぁねえ。そこはじっくり頭を悩ませるといいよ。
僕としては、そういう姿を眺めているだけで愉しいのでね」
安売りはしたくもないが、さりとて高望みをするのもまた悩ましい。
そういうものだろう。
いずれ孤高を気取っていられなくなる時が来るだろうが、魔術師に引退という文字はない。
言いたくなる時が、あったら? その時はその時である。
「もちろん。では、改めて依頼を頼むよ」
言いつつ、取り出す懐中時計の蓋を開く。
それは、長針と短針の文字盤以外にも複雑怪奇な別の文字盤がいくつも混じった特製のものだ。
星辰の時期も確かめ得る、そんなそれの時刻を確かめ、ぱちんと閉じる。
■アンナ > 「お店に冒険者のお客さんが来てくれたら、話もしやすいんですけど…まあ、普通のお店より脈ありですかね?」
(古書を扱うという点で。こうして持て余した本を売りに来ることもあるだろうし、買うにしても新刊よりは経済的だ。初心者冒険者でも購入に悩まない値段という自信はあった。
悩みどうこうというところは、マティアスさんだって独身じゃないですか、と反撃してみせたりして。
ふと店に響く鳩時計の音。気づけば随分と話し込んでしまったらしい。カウンターの椅子から立ち上がって)
「とりあえず、表のカンテラを取ってきますね。お店を見る分ならまだ平気ですから、ゆっくりしていってください」
■マティアス > 「紹介でもすれば良いのかな。
けれど、……嗚呼、そうだね。やっぱり顔見知りだから安心して使ってるととも云えるね。
――僕は良いんだよ。一人で基本的に遣るのが気楽でいいのでね」
少なくとも、家督を継ぐ任については放り出したのも同然だ。
好きに生きることにしたからね、と。ひょいとローブに包まれた肩を竦めて見せよう。
己の魔道の技を研鑽するのも善し、何かを拗らせて殺戮者になるのも善し、だ。
身を固めるにしても、相応の所以がなければ自分から好んで選ぶというのもないだろう。
だが、せめて知り合いについては良い選択を選んでほしいと願う。
身内に甘いという自覚があれば、なおのことだ。
響く鳩時計の音におっと、と声を零して。
「分かったよ。では、少し品ぞろえを眺めさせてもらうとしようかな」
なら、少しの間店に居た方がいいだろう。品揃えも確かめて、必要な物があれば買って帰ろう。
その辺りも気楽にやれるのもまた、信頼あってのことだろう。
■アンナ > 「そういう事言えるのも、冒険者って感じですね」
(男女の区別以上に、彼らにとって守るべきものはそう多くないのだろう。自分たちはこの町で生まれたし旅行に出ることすら稀。死ぬときもやっぱりこの町なんだろうなと思っているが、彼らにとっては通過点の一つに過ぎないのだろう)
「はい、ごゆっくりどうぞ?」
(営業向けではない言葉を残して閉店準備に入る。こうして、よくある一日は平穏に過ぎていき――――)
ご案内:「古本屋『本の森』」からアンナさんが去りました。
■マティアス > 「そうでなければ、こんな風に生きている甲斐がないよ」
守るべきものは、己の誇り。懸けるべきは、己のすべて。
荷物が少なければ、守ろうとするものも少ない。
国の守りともなろう家柄の子が、このように行きついたのだから。
しかし、掌中の宝が何よりも尊ければ、また話は変わるだろう。
「……――さて」
では、もうしばらく。閉店準備を眺めながら、暫し入り浸ろう。堪能すれば帰途に就いて――。
ご案内:「古本屋『本の森』」からマティアスさんが去りました。