2017/01/29 のログ
ご案内:「古本屋『本の森』」にアンナさんが現れました。
アンナ > ふぅ(キュッキュっと音を鳴らしてカンテラのガラスを磨く。芯の残りを確認して、油をつぎ足し店のドア前に掛けるのが夜間営業の合図。夕食も終わらせてきたから深夜までは自分が店番としてカウンターに立つことになる)

「寒いわねえ…」

(座って応対するタイプのカウンター。影になる部分にひざ掛けと、熱した石を布で包んでの寒さ対策はしている。服だって厚手のものを選んでいるけど、冬の寒さはどうしようもない)

ご案内:「古本屋『本の森』」にマティアスさんが現れました。
マティアス > ――本は何時だって嵩張るくせに、何かと手放せない。

それはそうだ。
知識を売り買いして生きることもそうだが、子供の頃からの昔馴染みでもある。
様々な叡智を記した分厚い本もあった。
とても軽いけれども、心躍らす物語が綴られた本もあった。
けれども、少ない荷物を引っ提げて何処其処に行く身となれば、在り過ぎると不便がある。
フードを被ったローブ姿の腰に剣を揺らし、片手に紐で縛った数冊の本を提げて向かう先は……

「嗚呼、在った在った。良かった。無くなってくれてなかったか」

とある古本屋。その佇む姿を確かめて、慣れた風情でその扉を開こう。
どうも、と。とても気楽な風情で声を店の中に投げかけて。

アンナ > 「不吉な言葉がきこえたんですが?!」

(1Fを店舗に。2Fを生活空間にしているこの店。無くなると宿なしになってしまう娘は反射的に抗議をしたものの、客の姿を見れば咳払い。スマイルゼロ円のにこやかな笑顔を浮かべて対応する)

「いらっしゃいませ、どうぞ中へ。寒かったでしょう?」

マティアス > 「はっはっは。

 いやいや、僕としてはちゃんと在ってくれて助かってくれるよ? アンナ嬢。ご健勝で何よりだよ」

勝手知った風情で笑い声を放って、被ったローブのフードを脱ぐ。
露になるのは目じりを弧にした双眸が、眼鏡のレンズの下より覗ける笑みの顔。
ほ、と。室内外の温度差に息を吐き出し、カウンターの方へと歩んで。

「全く今日も良く冷えるね。さて、今日は此方の品の査定を願いに来たよ。あと此れはお土産だよ」

言いつつ、カウンターの上に置くものが二つ。
手にした紐で纏められた本たちと、懐から取り出す上等な布で包んだ小さな包み。
本は全部で10冊。うち、五冊は最近王都で多少流行していた冒険譚の連作。
残り三冊は駆け出しの冒険者向けとも云える、徒手格闘や武器戦闘、生存技術を記した技能書。
そして、残りは死んだ同業者が形見に残した、いわゆる大人向けの小説。或いは春画集。後者には特に、実に鮮やかに男女が絡み合う絵が畳まれて挟まれているという有様。

「侵入除け、邪気祓い、商売繁盛の符だ。まぁ、目立出たない処に置いておいてくれればいいよ」

残りの、紫色の袱紗に包んだ品の中をそう説明する。
異国の技術を模倣する意味で試作したが比較的効果のありそうなもの、である。

アンナ > 「相変わらずですね、マティアスさんは…おかげ様で風邪ひとつひいていませんよ?」

(幾度か店を訪れた事のある客なら、顔も覚えている。特に彼は暇な店主の話し相手にもなってくれるので忘れようがなかった。火を使わない暖の取り方、ないですかねえなんて会話をしながら出された商品の査定に入る。タイトルから知名度を。ざっと中を見て傷み具合を確認するのだ。たまに敗れた本でもしれっと売りに出す輩がいるので、念入りに行うのが癖になっている)

「……」

(その念入りさ故に、顔を赤くする内容のものもあったが、些事である。メモに東洋の稀少本と書いて父親に回すことにする。こういうのは伝手で売った方が高く売れる)

「お土産有難うございます。今度何か買うときはサービスしますね?」

(まだ頬は赤いものの、いつもの調子でお礼を告げる。こういうのを貰えるのも気心が知れたもの同士ということだろう)

マティアス > 「もちろん。万事に於いて、僕は僕だとも。

 ……火を使わない、か。蓋のできるガラス、否、金属の容器だったかな。
 それに湯を入れて、温石代わりにするというものを聞いたことがあるよ」

ふふん、と。そんな笑い声や息でもしそうな風情で笑って、続く話題に少し考え込む。
本があるところは基本的に何処も変わらない。火気厳禁である。
そうなるとまた難しい。魔法仕掛けの器具が一番安直でも、高く値が張るものである。
依頼を受ければ、素材を整えたうえで拵えるのは吝かではないが。
確か、と。査定を待ちながら、中空を見遣って記憶にあるものを言葉に出そう。

「どういたしまして。……うん、すまないね。死んだ知り合いが遺してくれちゃったものでね、それ」

嗚呼、見てしまったか。二度三度もあれば、いつものことであろう。
しかし、この手のものをいつまでも残しておくのも難しいのが、この生業である。
捨てるなら、何処か伝手をたどって手にしてくれる不特定の誰かに行き着く方が、いい。
サービスの品はちょっとしたお詫びもある。

アンナ > 「金属の容器ならありますし、今度試してみますね」

(客のためにも本当なら暖炉を用意したいところだが、可燃物ばかりのこの店で火事は一番警戒すべき事。申し訳ないけれど各自で防寒してもらうしかなかった。壁も屋根もある分外よりはマシなはずだし)

「…いえ、まあこういうの好きな人もいますから。えっと…全部でこれくらいでどうでしょう?」

(商売柄春画は見慣れている…とまでは行かないが、拒否するほど子供でもない。メモ帳に全部の本の査定金額を書いたものを見せた。商談するならここからが勝負というところ。
ちなみに金額は、豪華なディナーといいワインを1本買い込めるくらい。お守りは暇な時間を見計らって早速飾っておくことにした)

マティアス > 「是非とは云わないが、気を付けて試してくれたまえ。
 多分……温石よりやりやすい分、熱湯を扱うから火傷が心配だ」

適度に布に包むことや同じ場所にずっと当てないこと、と。
分かり切っているかもしれないが、注意はしておくにこしたことはない。
本の保護は重要でも、肝心の人の保護を怠ってもいけない。
だが、実際屋根と壁があるだけでもマシでもあるのだ。
冬場の野宿なんてものは、余程のことでなければ備えなくしてやりたくもない。

「女性向けのがお好みなら、仕入れてくるよ。
 うん、金額としては僕も妥当だと思う。それで確定していただけるかな?」

好事家は、どこにでもいるのだ。美少年や美男子が絡む様子を好んで描くものも。
数寄と酔狂を好むものとして、価値観の多様は押しつけがましくなければ悪くない。

さて、彼女の好みはどうだったか?

小首を傾げつつ、示された金額については問題ないと頷こう。
路銀に窮する程困っていないが、扱いに困るものを処分した価格としては妥当だろう。
とりあえず、死んだ仲間を偲びながら酒を呑む費用にはなるだろう。

アンナ > 「その辺は家事でも慣れてますから。食事の時にお湯も沸かしますからついでにって感じですね」

(思えば温石も彼からやり方を教わったものだ。注意事項には気を付けますと笑顔で返して。湿気の問題さえなければ蒸気で部屋を暖める手も考えたんですなんてこぼす。勿論、本には湿気も良くないので廃案になったけども)

「べ、別に私が読むわけじゃありませんからっ
はい。じゃあこれで確定ということで…今お金渡しますね?」

(戻った顔色がまた赤くなりかけるが、金感情はしっかりと。金閣分の硬貨を目の前で小袋に詰めて手渡した。
好みに関しては……ノーコメントです、と顔を背けたり)

マティアス > 「そんな感じかな。いつもより余分に温めて、使う位が良い塩梅だと思うよ。
 ……蒸気仕掛けはかえって、施工が難しいから本の置き場にはお勧めしないね。
 あれは隙間を作ったら、そこから漏れてしまう。あと、薪や炭の相場も注意が必要だ」

ううむ、と。聞こえる言葉に胸の前で腕を組みつつ、考え込む。
蒸気仕掛けもそうだが、派生系で熱風だけを床下の管に通して、煙突から抜けさせるというのもある。
いずれも重要なのは隙間を作らないようにすることとと、燃料対策か。
安全面や仕掛けの面倒さはあるが、魔法よりも維持費は安い……はず。そう結論付ける。

「そうだったね。まぁ、僕としてはだ。女の子がその手の本を見て、表情を色々変えるのが愉しいので全然構わないけど。

 ――決まりで頼むよ。急ぎじゃないから、後日でも構わない」


ようは、だ。自分が愉しいか、笑えるか、だ。禍根を残さない範囲でその点を基準とする。
悦と快を得る分、それに見合った対価は可能な範囲で報いたい。
無論、踏み躙るが善しと云えるものに対しては論外だが、目の前のこの店や彼女らはその流儀の対象ではない。
ノーコメントとするさまについては、はいはい、と軽く答えて口の端を釣り上げよう。

こんな風に馬鹿話に興じられる位が、丁度いいのだ。用意される硬貨を待ちながら、そう思う。

アンナ > 「ですよね。ここは木造の家屋ですから、蒸気を使うと木も腐ったり思想で…」

(石作りにしなかったのは湿気対策と、単純に工費の問題。この辺は両親や大工さんとも相談して決める案件になりそうだ。燃料は特に冬は高くなるのでこちらも怖い…)

「わざとですか!」

(気を抜いているとこういう悪戯を仕掛けてくる相手。もぉ、とぶつぶつ言いながらも金額は手渡した。買い取りもやる店舗なのでこれくらいの蓄えはちゃんとある。どうぞと手渡して)

「あ、そういえばマティアスさん。今度見て欲しいものがあるんですけど構いません?」

(骨董を営む店に持ち込まれた開かない本。近日中に買い取る事になっているそれの鑑定を依頼する。依頼というか、事前の相談というべき軽い問いかけだ。都合を聞いて良ければ正式に依頼するだろう)