2015/11/26 のログ
ご案内:「安宿の一室」にイルミさんが現れました。
■イルミ > 「うーん……」
宿屋の主人に言われた部屋に入ってみて、荷物を置くより先に顔を歪めた。まず、狭い。うちの店も結構狭くて、四~五人も客が入れば窮屈になってしまうけれど、それよりもずっと狭い。ベッドは粗末ながら普通の大きさであることと、窓がないことも閉塞感を強めていた。
「まぁ、しかたないかな」
最近なにかと出費が多いとはいえ、払う金を惜しんだのは自分だ。快適とは言えなさそうだが、ベッドがあるだけありがたいと思おう。半ばトレードマークとなりつつある黒の三角帽子とマントを椅子に掛け、自分はベッドに腰掛ける。
■イルミ > 「…………」
カバンから取り出した本を黙々と読み始める。読書は好きだし、色々な本から蓄えた様々な魔法に関する知識はそれなりのものになっていると自負している。……その知識が、もう少し分かりやすく魔法や製薬に成果として表れてくれればありがたいのだけど。今日古本屋で買った本は、主に薬効のある野草やキノコ、特にそのまま食べるのではなく、なんらかの魔術的な加工を施すことで効能を表すものを中心として解説しているものだった。
「……ん、思ったより、静かだな」
しばらく読んでいて、周囲にあまり雑音が無いがために読書に集中できていることに気づいた。安い割には防音性がいいのか、それとも繁盛していないせいか。……そこまで考えて普段あまり客が来ない自分の店のことを思い出し、溜め息を吐いた。
■イルミ > 「……うん、こういう時こそ勉強勉強」
何もやることがなく退屈だと、精神が参ってしまうのか何かと思考がネガティブに傾いてしまう。とにかく今は目の前の本に集中しよう。思えば自分が勉強熱心なのは生まれついてのことではなく、普段からこうやって退屈しのぎに本を読んでいるというだけの話なのかもしれない。要するに、他にすることがない。
「冒険者さんとかは、もっと刺激的な生活なのかなぁ……」
根っからのインドア派な自分ではあるが、そうした生活に憧れる気持ちはある。なんといっても、良くも悪くも「退屈しない」。それだけでも物凄い魅力だ。……体力は並、魔術も未熟、根性も何もない自分にとっては所詮夢物語なのだけれど。夢のことを考えているから……というわけでもないだろうが、なんだか眠くなってきた。本に視線を落としながらも、ゆっくりとまぶたが重くなっていく。