2023/06/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にグァ・ジャミルさんが現れました。
グァ・ジャミル > (雨の気配を感じさせながらも空に掛かるのは灰色混じりの白い雲。
 風があるだけ幾分かマシかという天気でも昼間の平民地区は賑やかだ。
 通りには屋台が出て、店で昼食をわざわざ取る時間のない者が立ち寄って買っていく。
 ジャミルもまたその一人。)

「肉ばっか食ってると飽きるんだよなぁ、けど魚って気分でもねえしなあ」

(背面にセレネル海を抱える王都は漁業も盛んなのか、屋台にも塩焼きにした魚が串にささって売られている。
 何でも食べる雑食ミレー族であるが、やっぱり体の資本となるタンパク質を取りがち。
 立ち並ぶ屋台を前に、串焼きにするか~?サンドにするか~?と眺めている。
 今日は私服だ。故に黒髪金目の青年は周囲に埋没しがちだが、彼の不可視魔法を看破できるなら、
 その頭部からは猫型の耳と、臀部からは細長い尾っぽが生えているのまで見えるだろう。
 こうして普通に日常に紛れ込むミレー族はあまり珍しくもない筈だ。)

グァ・ジャミル > 「まっ、適当に買ってくか」

(並ぶ屋台に適当に立ち寄って、香ばしい匂いをさせている肉串や、野菜や肉を挟んだサンド、
 細かくした魚や野菜にソースをかけてくるんだクレープなど買いあさり、
 それを両腕に抱えて食べ歩きながら、休日の昼を過ごしていった。)

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からグァ・ジャミルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシトリアさんが現れました。
シトリア >  
「……ここで良いです。止まってください」

夕方、平民地区の表通りに一台の馬車がやって来た。
馬車が止まると、中から一人の小柄な少女が降りてくる。
透き通るような白髪に、氷のような冷やかさを湛えたスカイブルーの瞳。
身に纏ったローブに施された金糸の刺繍がその身分を示している。

「ありがとうございます。
 では、いつも通りの時間に迎えに来てくださいね」

少女―――シトリア・エルヴィスは御者に一礼して馬車を離れると、
道行く人々で馬車が見えなくなったところで小さく息を吐いた。
今日ここへ足を運んだのは"社会勉強"……平民の暮らしぶりを直に見て学ぶため。
本来なら業者を屋敷に呼んで済ませる買い物も、己の足で出向くことにしている。
従者たちは自分の傍を離れたがらないが、たまには一人にさせてほしいという目論見もあった。
迎えが来るまでの僅かな時間だけが少女に許された自由なのである。

「さて、まずは食事……の前に、書店でも覗いてみますか。
 学院の図書館では扱っていない本と出会う、貴重な機会です」

知人に頼んで書いてもらった平民地区の地図を開いて書店を探す。
どうやら、この近くに何店舗かあるようだ。
店が閉まってしまう前に回ろうと、賑やかな通りを歩きだした。

シトリア >  
さて、歩きだしてから数分後。
シトリアは未だに一軒目の書店にすら辿り着けずにいた。
日によって様子の違う表通りは前回来た時と別の場所に思えてくるし、
地図も大雑把すぎて細かい位置の把握には向かないためだ。

「ええと、今がこの辺りだから……あれ?
 こんな所に花屋があるなんて書いてないですが……
 ああもう、もっと詳細に記すよう言っておくべきでした!」

この場にいない知人の雑な仕事ぶりに頭を抱える。
とはいえ、平民に道を尋ねるのは貴族としてのプライドが許さない。
なんとしても自力で見つけ出してみせると、半ば躍起になっていた。

うろうろ……うろうろ……

気が付けば同じ所を何度も通ったりしている。
その姿は傍から見ても迷子のように映るだろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にユナさんが現れました。
ユナ > 「探しもの?」

定点にいるものは、何度目か現れた影を迷子と認識したらしい。
なんとも雑多な店先に座っていた、フードを目深に被った影が、
どこかせかせかと動く小柄な姿のまえに歩み出て、立ちふさがった。

「このあたりには、あんまり見ないお召し物だねえ。
 歩き慣れていないみたいだけど、従者とはぐれちゃったかな」

上背はあるが外形は細身、声と顔、白く細めの顎からも女とわかるその影は、
親切心か何かなのか、少女の格好をしげしげと眺めながら。

「この近くなら案内できるよ」

シトリア >  
不意に行く手を阻む人物の登場に足を止めた。
こちらの身長が低く、地図に目を落としていたこともあり、
必然的に下から見上げるような形であなたの姿を視界に入れる。

「……失礼な、私は迷子などではありません。
 従者には馬車で待機させているんです。
 そういうあなたは……ただの平民、ではなさそうですね」

頭二つ分ほども身長差のある相手に対しても臆する様子はなく、
むしろ射貫くような鋭い眼差しを向けている。
あなたの纏う、どこか浮世離れした雰囲気を感じ取ったのだろうか。
その声音には若干の警戒が滲んでいた。

「まぁ、道を探していたのは事実です。
 この辺りに書店があると伺っていたのですが、見つからなくて。
 場所だけ教えていただければ、あとは自力で辿り着けますから」

向こうから訊ねてきたのだから、答えないのも失礼だろう、と。
心の中で自分に言い訳をしながら現状を吐露する。
つまるところ、少女は従者も付けずに一人で慣れない街をうろついていたということだ。

ユナ > 「どこを見てそう思ったの?」

ただの平民ではなさそう。
そういわれると、少し不思議そうに目を丸くした。
警戒も露わなそれも、突然声をかけられれば妥当であろうと判じたか、
嫌な顔ひとつせずに言葉に首を巡らせると。

「書店…………?ああ、あるね。
 富める方がわざわざ足を運ぶなんて、なにか目当てがあるのかな。
 この近くに、たしかにあるにはあるけど……どの書店だろう。
 通りのあの店、か……人づてに聞いたってことは、"隠れてるあそこ"のことか?
 ……いや、でもあそこはそんな噂にもなってないはず……」

歩き慣れている身からすれば、単に『書店』だと絞りづらい。
たとえばそこにいる者すらそうそう知らないような、
『深い』場所を知っていたりもする。
細顎に手をあてて、どこのことだろう、と思案するものの。

「書店ならどこでもいい?それとも、何か……
 どういうふうに伺ったのか教えてもらえる?」

シトリア >  
「そんなの、魔力を視れば分かります。
 エルヴィス家の魔術師相手に隠せるとは思わないことです」

エルヴィス家―――宮廷魔術師の家系。
あなたに貴族関係の知識があるなら聞いたこともあるだろう。
流石に魔族であることまで見抜いてはいないだろうが……

「別に……何を読もうが私の勝手でしょう。
 少なくとも、あなたには関係の無いことです」

これから教えてもらおうという相手に随分な態度だ。
本気で警戒するなら距離を取るか、そもそも会話を続けないので、
元々そういう性格というだけなのだろう。

「どこでも良いというわけではありません。
 "学院には置いていない本"が欲しくて来ているのですから」

今日の目的は雑学や娯楽の本。
つまり言葉の通りなのだが、何かの暗号とも取られかねない。

ユナ > 「エルヴィス家…………エルヴィス……?」

名乗られた家名が気になったのかそこではじめて、
小柄な少女の顔を、蒼氷色の瞳がじっと観察した。
それは審美か値踏み、あるいは確認のようでもある。

「懐かしいなまえ。私が聞いたことのあるエルヴィス家かな。
 私が、学院に置いている本を知らないから、ここだとは言えないけど。
 この国は本がそれほどの財産にはならないんだよね。
 場所によっては、刷られた国ではありふれた文庫でさえ高値で取引されたりもする。
 文明が発達しているとはよく言ったものだけど、えてして軽く扱われがち……」

踵を返して、少女の前を横切るように、先程までいた店先へ帰るように。
案内する気を失してしまったかのようでもある。

「そういうなかで、面白い本を狙って収蔵してるような趣味人の書店は、
 この国ではひとつの魅力のようにも思えている。
 口頭では伝えづらい場所なんだ。気になるならついておいで」

振り返らずに軽く手招きながら、向かっているのは店と店の間の細い路地だ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からユナさんが去りました。
シトリア >  
「知っているなら話は早いですね。
 ほら、さっさと案内を―――って、ちょっと!」

踵を返すあなたに、まだ話の途中ですよ! と憤る。
しかし、その足が路地の方に向いていることに気付けば、慌てて後を追いかけた。
そうして少女は、赤髪の女性と共に暗がりへと姿を消すのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシトリアさんが去りました。