2023/05/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にマルリーヌさんが現れました。
■マルリーヌ > 「――ええ、そうです。相場の5割増しで……
私が同行しても構いません。可能な限り早急に済ませたい案件ですから」
そこは王都平民地区にあるギルドとも呼ばれる冒険者の酒場。
そこのカウンターで話しているのは、そこの雰囲気から少々浮いた、白いマントの女騎士。
向こうの問いに軽く頷くと、結い上げた金髪がまるで少女の様に小さく揺れる。
「よろしくお願いします。報告は私個人でなく第一師団でも結構ですので」
彼女が頼んだ依頼とは――近隣の農村の側へと住み着いてしまった、ゴブリンの討伐。
ボンボンでも出来る簡単な仕事だと第一師団に回されたのはいいが、
任された部隊が嘘の報告をした上に、資金を懐に入れ使い切ってしまっていたのだ。
後にそのことが発覚したからまだよかったものの――
結局彼女がその尻ぬぐいをしているわけなのである。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にケストレルさんが現れました。
■ケストレル > 「あれー、マリーの姐御じゃないすかー?
第一師団の分隊長サマがなにゆえ冒険者ギルドに?」
そんな女騎士に背後から声を掛ける男が一人。
広義で括れば同じ騎士という肩書を持つものなれど、彼女は分隊長、しかし此方は末端も末端。剣も槍も碌に扱えない落第生。
本来なら気楽に声を掛けられる相手ではないかもしれないが、そんな事は気にせず男――ケストレルは続ける
「あ、もしかして師団で打ち上げでもするからその店探しとか?
この頃暑くなってきましたっすからねー、でもそういうのは分隊長サマ自ら動くほどの事で……あ、やべ」
つらつらと言葉を並べてからはた、と気付く。
相手は騎士、自分も騎士。けれどここは冒険者ギルドで、自分の出で立ちは冒険者然。
相手が騎士装備だからと自分の姿を省みることをすっかり失念していた。
つまるところ、サボりがバレやしないか、と声を掛けておきながら内心冷や汗だらだらである。
■マルリーヌ > 振り返った先に立っていたのは、こげ茶の髪をした整った顔立ちの男。
――なのだが、彼を確認した瞬間に思わず眉をひそめてしまう。
今のような軽い調子で何度も声を掛けられ、その度に袖にした過去がある、のだろう。
「いえ、そういうわけではないのですが……」
生真面目にそう答えるも、今回持ち込んだ依頼は第一師団の汚点でもある。
隠すつもりはないが、外の人間にはあまり知られたくないことではある。なので少し言葉に詰まってしまった。
一瞬視線を逸らし、すぐに彼を見上げたが――ふと、その格好に違和感を覚えた。
「……ケストレル殿、でしたね。ええ、暑くなってきましたが、あなたはここで――」
何を、と問おうと小首を傾げたところで、カウンター向こうから声がかかる。
『依頼出しておきましたよ、マルリーヌさん』
と、明るい調子で。
■ケストレル > 彼女の反応を目にし、思わず苦笑い。
日頃の行いって大事ねー、と反省しつつも一度沸き上がった好奇心は抑えるのは難く。
まあ今回はナンパ目的での声掛け、ではないと示すべくやや引き攣った笑みのまま両手を上げて無害アピール。
「はら?妙に歯切れの悪いお言葉……はっはーん」
さては職場関係での厄ネタか?と目星を付ける。
騎士と言えど王国民、素行の宜しくない者も少なくはない。
彼女の属する師団の人間が酔って喧嘩沙汰が起こって謝罪行脚中、とかそんなところだろうとか思っていたのだが。
その最中、彼女からの訝し気な視線にひくり、と再び頬が攣り
「あー、俺はー、そのー……ほ?依頼で?」
さてどう言い訳したものか。
騎士の癖に白兵戦が素人レベルと揶揄されるのが情けなくて肩書隠して修行中、とか口が裂けても言えないし言いたくない。
上手いこと騎士としての仕事から逃れ、冒険者の姿を取っている理由を考えなければ……と思った矢先に彼女の奥、カウンター越しに聞こえた単語に耳聡く反応した。
■マルリーヌ > 両手を上げてみせた彼を、じぃっと目を細めて見ていたものの――眉間の皺を消し、一つ息を吐いた。
(日頃の行いはあっても)声を掛けられただけで警戒するのも、と。
そして彼に首を傾げたところで背後からの声。
「……な、何ですか? ええ、ちょっとした依頼を出しに来ただけ、です。
私の分隊を動かせればよかったのですが、すぐに……とはいかなくて」
こほん、と一つ咳払い。そして依頼書が張られた掲示板へ――数歩向こうへと足を向けては、その内容を確認する。
『○○村の近隣に住み着いたゴブリンの討伐』と、予想される数や多めの依頼料などがしっかりと記されている。