2023/05/22 のログ
■セリアス > 仕事を終え、その絡みでの知人との食事を終えて、独りで飲み直そうかと寄った酒場。
いつも通りの喧騒の中、忙しなく動き回る店員に好きな席にと言われて見回す店内。
机の合間を歩いてカウンターにでも、と、進む中で顔を合わせたのは、王国軍第一師団の女性騎士で。
独りでもいいけれど、相手が居ればなお良く、女性であれば文句無しと、声をかけようとすれば、
人差し指で静かに、というジェスチャーを見せられて。
騒がしい店内で口を閉じるまでも、と、思った矢先にその指は一つのテーブルを指差す。
見えたのは随分と悪い酒になっている様子の彼女の同僚騎士。
おや、と、思った矢先には、要領の良い連れ合いは此方の肩を叩いて「お任せしました」と酒場を出ていく。
「……ぇえ……と。ああ、マルリーヌ、さん? 奇遇ですねぇ?」
任される謂れもないけれど、幾らかの興味とそのうちに下心もありながら。
愚痴を垂れ流す女騎士に声をかけてみる。
何時もは軽装鎧姿が印象に強いけれど、私服姿はあまり見ない。
つい、姿を見回すようにしつつ、その視線を相手の瞳にと向けた。
■マルリーヌ > 「でも強く言えばすぐにやる気をなくすし、だからと言って――……はぃ?」
友人のサヨナラにも気づかず、ぐちぐちぶちぶちと一人で喋っていると――
不意に若い男の声で名を呼ばれ、眉をひそめながら億劫そうに顔を上げた。
浅黒い肌をした金髪の男を、その赤の目を見つめながら、瞬きを繰り返す。
「いや絶対知ってます、見たことありますしこの声も……えぇと、いや、うーんと……」
伸ばした人差し指を無意味にくるくるとさせながら、小声で呟いたのち。
「…………セリアス、さん?」
アルコールで鈍った頭にようやく浮かんだ名前を口にした。
一対一で話し合ったことは無かったものの――
学院で教えを受けたことも、騎士団で顔を合わせたこともあった。
……ハズだと、酔っぱらいは考えていた。
■セリアス > 「ええ、どぅも。随分と酒精が進んでいらっしゃるよぅで」
テーブルのすぐ傍まで近づいても愚痴り続ける様子に眉尻を下げて苦笑いをしながら。
名前を忘れられてはいなかったようで安心し、傍の椅子に座る。
騎士団に物資を卸すこともあれば、彼女が担当であることもあり。
学院では騎士クラスそのものを受け持つことはないが、
それこそ兵站に触れる授業などでは講義の一端を担ったこともある。
彼女は家の事情からか勤勉かつ高潔で。
在学中も分隊長になってからも、好ましい生徒であり取引相手であるから、印象は良い。
相対的に今の姿は意外ではあるけれど。
同僚にまで置き去りにされるというのは、そう、随分と。
「危ないですよ、連れが逃げるほどに酔っては。
いくら貴女でも――……不埒者はいくらでもいるのですし」
騎士であれ危ないと諭しながら、自分も幾らか下心があるのだからそう手合いとして大差はないけれど。
一応は心配をするように伝えながら「お一人で帰れますか?」と、尋ねてみる。
■マルリーヌ > 「でっすよぉ、セリアスさん。ここはご飯もお酒も美味しくて……」
酒で赤らんだ頬を隠しもせず、上機嫌に彼へと頷いて見せた。
普段の彼女からは想像しがたい蕩けるような笑顔で、ジョッキで喉を潤しつつ。
「逃げ……? ……あら? あの子――」
そこで初めて周囲を振り返ってみるも、当然彼女の姿は無く騒がしい店内の様子が目に入るばかり。
やれやれとでもいうように、酔っぱらいは肩を竦めてから酒をもう一口。
「ふふ、大丈夫……ですわぁ。そんなに飲んでいませんし、このぐらい……っく、ちゃんと帰れます、から~」
と、ジョッキをテーブルに叩くようにおいては、その場で勢いよく立ち上がった。
――そしてふらふらぐらぐらと、派手によろめいた。
■セリアス > 偶々入った店だったけれど、彼女の気に入りだったらしい。
機嫌よく店の料理や酒を褒める彼女の、騎士然とした印象を一変させる笑顔に幾度か瞳を瞬かせ。
そうして、同僚を探す様子、更に酒精を飲み干す様子まで眺めていれば、
唐突に立ち上がるのにその顔を追うように視線を上に向け――……
「っと、と。とても大丈夫に見えないのですが。
このままお見送りするにも気になって酒を楽しむどころでもなさそうですし、お送りしましょう」
ふらつく頭、ぐらつく足元を見ればよろめくか彼女の腰元を背中側から支えるように腕を伸ばして。
空いた手を傍の店員に軽く振って見せれば、勘定を、と。
結局自分は何も頼まないまま、女騎士二人分で酒が入っても解った物だろうと支払いまで済ませてしまおうとする。
■マルリーヌ > 視界がぐるりと回る。マズイ、と考えられたのは一歩遅れてからだった。
テーブルに手を突くことも出来ず、倒れかけたところを――
「……!」
後ろからの腕が女を支えてくれた。ぱちくりと瞬きを数度。
そっと視線を上げれば、彼の整った顔立ちがはっきりと見えた。
「あっ……いえ、あ、の……ちょっ……私……」
慌て、まっすぐ立とうとするも、足はふらつき覚束ない。
――何より、誰かに背後から抱かれる感覚が、酔いに酔った彼女にとって心地よく。
少々上ずった声をこぼしてしまってから――
「……ふぁい。お願いしまふ……」
■セリアス > 彼女の身体を支え、倒れてしまわないようにとすれば自然と立ち上がり身を寄せるようになり。
布地越しの女騎士の肢体を感じながら、器用にポケットからチップ込みの貨幣を店員に支払って。
何事か言い及びながらも姿勢を整えようとして、そのたびに柔らかな身体が押し当る。
役得と思いながら彼女の方へと視線を向ければ、瞬く瞳と男の紅い瞳が重なるだろうか。
「ええ、お願いされました」
酒精に赤く染まる頬が、普段とは違う印象を与えてくる。
騎士団では高潔で、眉間に力が入っている表情ばかりの記憶だけれど。
そんな彼女を支えながらに、酒場を後にして。
一応は家の場所を聞きながらに送っていく積りではあるものの、
彼女の酩酊具合と、下心の疼き具合次第で何処かに寄り道くらいは、あるかも知れず――……
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からセリアスさんが去りました。
■マルリーヌ > 「……」
背後から抱かれ、どこか浮くような、夢の中にいるような気分のまま、
ぼんやりと翠の目だけで彼の仕草を追っていた。
スマートだ、などと本当にぼんやりと考えながら、彼に体重を預けるばかりで。
――と、先へと促されれば素直に頷き、彼に支えられながら夜の酒場を後にしていくのだろう。
その行先をまだ、女は知らず――
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からマルリーヌさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にオウルさんが現れました。
■オウル > 冒険者ギルド。
以前足を運んだ貧民地区にある冒険者ギルドと違い、平民地区の冒険者ギルドはそれなりにお人好しや一般的な冒険者が利用するようで、冒険者ギルド内は良い意味合いで賑わっている。
特に1階の酒場は冒険者達が己の冒険譚を語り合い、酒を酌み交わし、或いは冒険で手に入れた戦利品を見せ合っている。
そんな中で依頼書が張られた掲示板の前で一人の少年が背伸びをしてはつま先をプルプルと震わせて、直ぐに足をつけ、また背伸びをしてはつま先をプルプルと震わせてと、屈伸運動でもしてるのか?と思うくらいに微妙な行動をとっていた。
――…これには深いわけがある。
なんせ手の届くところにあるクエストは軒並みはがされているか、若しくは塩漬けになっているクエストか、高難易度のクエストばかりである。
と、すると手の届き難い位置に貼られているクエストに一縷の望みをかけて、手ごろで美味しくて簡単なクエストが無いか探す事になるのだが、なんせ手が届かない、背伸びをしてもギリギリである。
「踏み台くらい用意しておけよなぁー……。」
愚痴っても始まらない。
始まらないが愚痴ってしまう。
愚痴りながら「ソロで出来る奴」「なるべく短期間」「採取か偵察任務」「臨時パーティー:ポーター募集」とか、無いか、無いものかとブツブツいいながら、背伸びをして、また足をつけてを繰り返し続ける。
いい運動になるよちくしょう……。
■オウル > 「……ソロでも討伐系はなー…火力不足だし。」
一番高い場所にあって辛うじて指先が届いた依頼書を千切って、手元に寄せて眺めての一言――内容はゴブリン退治。
ゴブリンが一匹とか少数であれば何とか、何とかなるが、PT必須クラスの数は愚痴通り火力が足りない。
毒煙やニードルの遠距離攻撃で数を減らして、とか作戦が無くはないんだが、それでも事故ると眼もあてられない。
しかし結構急なクエストのようで同様の依頼書が数枚貼ってある。
――んー……巣の場所を探るだけならいけるけど。
ひとまず近くに転がってる樽に腰をかけて、眉間に皺を寄せながら依頼書と睨めっこだ。
準備期間、必要な道具の手配、目的地の距離。
後は報酬の額と道具手配を差し引いてとか、あとは前金幾らかとか、ひとまず手配書をじっくりと拝見させていただこう。
■オウル > ダメだ。
採算取れないし、デメリットの方が大きい。
採算取れない、危険、難易度高い、な依頼を受けるのは止め。
「もー少し、せめてオーク単独とかならイケるんだけど。
それか美人さんと組めるとかならやるんだけど……。」
難しいところか。
ふぅっとため息を吐いてからやれやれと肩を竦めて首を左右にふると苦笑いを浮かべる。
また日を改めてこよう。
座っている樽から立ち上がると、こっそりと依頼書を掲示板に貼り付けなおして、よし、と頷くと踵を返し冒険者ギルドを後にする。
少年は一人、夜の街へと消えていくのだった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からオウルさんが去りました。