2023/05/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にガイルさんが現れました。
■ガイル > 主に仕事が夜である用心棒は暇な昼時間を飯と酒で満たそうと、広場を歩いていた。
褐色肌に紅髪の大男は動く小山のように目立つ。
平民地区で昼から酒が飲める店は何処だったか、貧民地区に比べてたまにしか訪れない場所柄、大男はあまり詳しくない。
「冒険者ギルドも酒があんのに、飲めんのは冒険者だけだしなァ」
とは言え、昼から飲む冒険者もいないからどちらにしろお断りされただろう。
酒と飯、ついでに隣に好い女がいりゃ文句なしだ。
市場から広場へと続く通りを歩きながら、大男は飯処を探した。
■ガイル > 店は諦めて、広場にある屋台で腹ごなしをすることにした。
屋台で焼いた肉串を買う。喰らう。
パンに肉と野菜を挟んだものを買う。喰らう。
魚の塩焼きを買う。喰らう。
巨躯に見合う大口を開け、ガツガツと豪快に口の中で咀嚼し、べろりと口の周りを舐めて拭う。
「お、美味そうなリンゴだなァ、一つくれ」
また別の屋台でフルーツを買い、艶々としたリンゴを掌で弄び、ひと齧り。
じゃくじゃくと音を立てて、甘やかな香りと果汁の蜜を啜るように嚥下して味わいながら、ひとが行き交う様子を眺めている。
■ガイル > 広場の出し物や出店を冷やかし、出会う女にセクハラめいた軟派して、柄悪く歩く大男。
満足したら彼の拠点である貧民地区へと帰っていった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からガイルさんが去りました。
ご案内:「平民地区 冒険者ギルド」にイェンさんが現れました。
■イェン > 「―――銅、級……? ええとそれは、私のランクがFからEへと昇級する、という事でしょうか……?」
(常日頃からポーカーフェイスを維持し続ける鉄面皮が、桜色の唇を僅かに開きほっそりとした眉根をひょこんと持ち上げた。その表情は大層物珍しく映ったらしい。王立学院の生徒であり、駆け出しの冒険者でもある北方帝国からの留学生に昇格の話を伝えた受付嬢は、思わず言葉を失ってまじまじとイェンの顔を見つめてしまった。)
『―――……はっ、はい。イェン様はこれまで精力的に依頼を受注し、その全てを完遂。更には多くの依頼で高評価を受けております。訓練場の教官からもお墨付きを頂いてますので、この度、銅級への昇格が認められました。おめでとうございます』
「―――あ……、ありがとうございます!」
(再起動を果たした受付嬢から改めて昇級の経緯を伝えられ、当の学生冒険者も実感を抱くに至ったのだろう。白皙の頬をほのかに紅潮させてよくよく確認せねば分からぬ程度とは言え可憐な唇を綻ばせる様は、まさに春の日差しを受けてぱぁぁ…っと咲く花を思わせた。その様子に今度こそずぎゅんっと胸を撃ち抜かれた受付嬢が崩れ落ちるも、駆け出しから一人前の冒険者として認められた少女は気付かぬまま、弾む足取りで受付を後にする。)
ご案内:「平民地区 冒険者ギルド」にロスクさんが現れました。
■ロスク > 「えーと、この依頼良さそうだな……」
布鎧をまとう小柄な少年冒険者が、ギルドを掲示板から張り紙を一枚剥がす。
文面を確認しながら、依頼を受理する手続きのために受付へと足を運ぶ。
紙面に視線を落としていたため──受付で会話していた少女が振り返って
弾む足取りでこっちの方向に向かってきていることに気づかない。
少女のほうも気づかないならば、頭一つ小さな銀髪の少年と、衝突してしまうだろう……
■イェン > (正面衝突はさしたる衝撃も産まず、代わりに驚くほどに柔らかな感触と鼻腔を擽る青林檎の匂いを少年に伝えた後)
「―――――……っと。申し訳ありません。お怪我などはありませんか?」
(一体何がどの様に作用したのか、社交ダンスの男役がパートナーをしゃなりと支え抱いたかの様な格好で、イェンは傾いた少年の体躯を支えていた。実に、実にイケメン的な所作であった。イェンはプリーツスカートも良く似合う紛れもない少女ではあったが。)
■ロスク > 「あっ、わっ」
驚いて小さく叫ぶ。衝突によろめいて転びかけそうになったところで、
少女の腕に矮躯が支えられた。
見上げると、紫色の瞳と視線が合う。
「あ、こ、こっちこそごめん……。前見てなくて」
思わず硬直してしまう。柔らかい感触の余韻が残っていた。
これって男女逆じゃないかと胸中でつぶやいて。
無論怪我などはないが、はずみで離してしまった張り紙がひらひらと足元に落ちてしまう……。
■イェン > 「――――では、お互い様という事ですね」
(手首を優しく握っていた繊手を解き、支えていた腰をそっと押して崩れたバランスを戻した後、黒髪の留学生は何事も無かったかの澄まし顔で小躯を開放する。一瞬の交錯で少年は男としての矜持を大層傷つけられたらしかったが、それも仕方の無い事だろう。冒険者としては小柄なイェンより更に低い背丈。それに見合う華奢な身体つき。おどおどと俯き加減の顔立ちなどは、実は女なんですと言われたとて何ら疑問を覚えぬ程に可愛らしいのだから。そんな失礼な感想を冷え冷えとした無表情で抱きつつ、ひらりと落ちる依頼票も地に落ちる前にさっと少女が回収する。長脚を折る事無く、腰だけを曲げて足元の埃を払うような所作で拾い上げたそれにイェンは見るとも無く目弾きの視線を向けていた。)
■ロスク > 「う、うん……」
見下ろす眼差しはどこか冷たく、少年は威圧感を覚えてしまう。
小ささゆえに侮られる視線には慣れていても、それに粟立つものがなくなるわけではない。
出身の里から王都に出てくると、周りは巨人ばかりだ。
「あ、それ……返してくれる?」
怯みながらも、依頼票を返すように要求する。
依頼の内容は、下水道に潜むネズミやスライムなどの退治のクエストだ。
駆け出しや新人も挑む、なんてことのない依頼であった。
■イェン > (2泊の野営を必要したクエストを昨日終えて、今日はその達成報告だけを行い休養日とするつもりだった。しかし、予期せぬ昇格に少なからぬ高揚を覚えていた少女は、見るからに駆け出しなのだろう少年に対しじわりと先輩風を吹かせたくなった。彼が手にしていた依頼票の中身が、かつてイェン自身も受注して、ちょっと恥ずかしい目にあった《ドブ攫い》であった事もその要因なのだろう。)
「この依頼、存外に馬鹿に出来た物ではありませんが、その辺り理解していますか?」
(少年に依頼票を返しつつ、感情の色の感じられぬ声音で問いかける。)
■ロスク > 「うっ」
依頼票を手に、思わず唇を結ぶ。
自分よりも上背のある相手に無表情に見下され問いただされるのは、
相当圧迫感を覚える状況だ。
それがたとえ年端もゆかぬ少女であったとしても。
「べ、別に……。
それぐらいの依頼、前にも受けたことあるし。
ば、ばかにするなよ」
それは一応事実ではあるのだが。
声をつまらせて応える様子は、ただのニュービーの強がりに見えてしまうかもしれない。
柔らかな衝撃の余韻と、まだ鼻腔に残る少女の香り。そして羞恥で顔が赤くなっていく……
■イェン > 「――――ふふ」
(思わず漏らす忍び笑いは、何も少年を馬鹿にしての物では無い。拗ねた様な口調。はにかみに赤く染まる頬。そんな反応が、かつて故国の組織で切磋琢磨してきた幼き日の知人、友人を思い出させてくれたからだ。それが単なる見栄なのか、それとも実際に経験があっての事なのか、直接少年に問いただしたとて正しい答えは得られまい。そう考えたイェンは目弾きに彩られた紫眼をちらり、カウンターで待機する受付嬢に向ける。彼女が首肯を返すのならば経験有り。放っておいても問題はあるまい。しかし、彼女が否定の首振りを見せるのならば、ここは先達としての役を果たそうか。)
■ロスク > 忍び笑いの声に、びくりと身体を震わせる。
稚児へ向けるような笑い方に、嫌悪感があるとまでは言わないけれど……なにかムズムズする。
記憶違いがあるのか、それとも銀髪の少年に悪戯心でも湧いたのか。
少女が受付嬢に目配せをすると、受付嬢は首を横に振る。
アイコンタクトとその応答の意味に気づいて、わたわたと少年は慌てる。
「い、いやっ、本当だから!」
こんなことならもっとレベルの高い依頼を選んでおくべきだったのだろうか?
いや、さほど運命に違いはなかった気がする……
■イェン > 「ふぅ……仕方ありませんね。この依頼、私も帯同することにしましょう。申し訳ありませんが手続きをお願いします」
(未だ何事か言い続けている少年から再び依頼票を奪い取り、そのままカウンターにおいてしまうおせっかい。恐らくは受付嬢も少年の危なっかしさにやきもきする所があったのだろう。同行を申し出たイェン―――今や立派な銅級冒険者となった少女にはっきりと分かる安堵を見せて、少年の物言いなどあっさり流して受注手続きを終えてしまった。これでイェンと少年はこの仕事においてパーティメンバーとなる。無理矢理一人で突っ走ったとて評価が落ちる事はあっても良いことなど何もない。幸いにしてこの依頼、基本給の最低保証がなされているため、一人で受けても二人で受けても受け取る報酬にさしたる違いは無い。むしろ、イェンが道中で屠るだろうモンスターの数だけ得られる報酬は増えるので、少年の意地を斟酌せぬなら受け得の申し出ではあるはずだ。)
■ロスク > 「あ~~……」
反論を挟む間もなく、おせっかいにも手続きが済ませられてしまう。
やりとりの後ろでぴょこぴょこ跳ねていたりするが、それを気に留めるものはいないだろう。
とはいえ、難度の低い依頼であっても少女の言う通り油断ができないのも確か。
同行者がいることに越したことがないのは、少年とて理解していないわけではない。
「ま、いいや……よろしく。
おれ、ロスキーリャ。ロスクでいいよ」
唇を尖らせ、不承不承といった表情を向けながらも。
少女のパーティ・インを受け入れ、自己紹介をして、握手を求める。
それから、依頼の地へと向かうことになるだろう。
■イェン > (勝手に手続きを進めて行く二人の背後、必死でぴょんぴょんしてアピールする少年のなんと可愛らしい事か。思わず受付嬢とほっこりとした微笑み(無表情)を交わしてしまった。)
「ロスク、君……ですね。私はイェン。よろしくお願いします」
(不満たらたらながらも大人しくパーティを組むことを受け入れた少年に、イェンは目弾きの双眸を僅か細めてポニーテールの頭を下げた。なんら変わらぬ仏頂面は酷くとっつきづらく感じられようが、先の表情はイェンからすれば初対面の相手には早々見せる事の無い微笑みだったりもする。見るからに幼気な少年に対しては、やはり、庇護欲の様な物が湧くのだろう。受付嬢から目的地となる下水溝の出入り口を聞き、最近そこでおかしな事が起こってはいないかという情報収集も行って、ランタンや非常時の糧食などの用意までして即席パーティは下水口へと足を踏み入れる。以前訪れた下水口は浄水施設にもほど近く、汚水の悪臭にも然程悩まされる事のない一郭だったが、さて此度はどういった場所に回されたのか。)
■ロスク > 「よろしく。おれはもっぱら剣で戦うけど……イェンは術師?」
灯りを手に、下水への階段を降りていく。
少なくともロスクは前を行きたがるだろう。
緊張はあるが、過剰な怯えの様子は見えない。
「この臭いには慣れそうにないな……」
奥に進むにつれてひどくなっていく悪臭に顔をしかめ、スカーフで顔を覆う。
イェンが過去に訪れた場所よりもかなりひどいと言えるだろう。
鼠のミレーというのは嗅覚が人より優れているため余計きついのだ。
そっちは大丈夫か? と視線を向けながら。
「お出ましだぞ」
生き物の気配に、ロスクは腰に佩いていたショートソードを抜く。
目の前に現れたるは、犬ほどの鼠の魔物の群れと、汚水を吸収した大きなスライム。
スライムの透けた身体には動物の死骸やゴミが浮いているのが見える。
下調べで得られた情報と、大きく変わりはない。
油断しなければ、二人で充分掃討できる程度の魔物たちだが……
服が汚れることを覚悟する必要があるかもしれない。
■イェン > 「ええ。私の武器はこれです」
(ウォン…ッと奇っ怪な音を響かせ中空に浮き出たのは、ぼんやりとした紫光を纏う4本の巨剣。3m近い長剣、刺突に特化した両手剣、重量で断ち斬る事を目的とした巨大剣から東方の技術で研ぎ澄まされた片刃の野太刀まで。それなりには広いダンジョンなれど、それらを十全に振るうには少々狭く、刺突を主体とした戦いを余儀なくされる事だろう。)
「以前、私が立ち入った場所にはこれほどの悪臭はありませんでした。生息する魔物にも違いがあるかも知れませんね」
(眉間に僅か皺がよっている事以外は陰りを見せぬポーカーフェイスが淡々と少年に同意して、油断ない足取りで構内を進んで行く。そんな二人の気配に引き寄せられたか、ランタンの橙光も届かぬ暗がりから出るわ出るわ見るからに不浄な魔物達が姿を見せる。)
「――――驚きましたね。これほど育った鼠がうじゃうじゃと……とは言えやることに変わりはありません。ロスク君、つまらぬ怪我など負わぬよう、十分に注意して戦いましょう」
■ロスク > 「うお、すげー……
そんなんが出せるなら、心配する必要はなさそうだな」
具現化された、自分の振るうダガーやショートソードよりも遥かに立派な武器たちに、素直に感嘆する。
マジックユーザーの術の派手さを知らないわけではないが、少し気後れしてしまった。
だからといって卑屈になるほどではないが。
「そっちこそ、ビビって逃げるなら今のうちだぞ、イェン!」
魔物に相対すれば、軽口を叩いて、灯りを床に置き、剣を構える。
ロスクが一歩踏み出したのを皮切りに、大鼠たちが我先にと殺到してくる。
敏速なれど単調で読みやすい動きに、ロスクは対応する。
(同じ鼠ってのは、ちょっと複雑だな……)
眼前に飛びかかる一匹を横薙ぎに払い、反対側から忍び寄る一匹をブーツで蹴飛ばす。
右腕に飛びついてくる一匹を、左の逆手に握ったナイフで仕留める。
着実に鼠は減っていくが、一方では巨大なスライムがイェンへと接近してくる。
動きは鈍重だが、うっかり組み付かれてしまえば厄介だ。
■イェン > (血の沸き立ちを感じさせる事のない無表情が、少年の背を守る様に小躯の踏み込みに追随する。正直、駆け出しが一人で相手取るにはきつい量ではなかろうか。イェンの帯同が決まったのを良いことに、特に難度の高い場所に回された可能性も考慮すべきだろう。にも関わらず腰の引けた所を見せぬ少年の態度は果たして、それに見合う実力を持つからこそか、経験不足の蛮勇なのか。少年の死角を伺い回り込む鼠の動きを牽制しつつ、怜悧な視線がその戦いぶりを評価する。攻撃力の不足には如何ともし難い物があるが、その戦いぶりには意外にも危なげが無い。色濃い影の多くなるランタン光の中での戦闘にも問題なく対応している事から、先に彼が口にしていた経験があるという言葉も案外嘘では無いのかもしれない。無論、鈍重なスライムの動きなどは先刻承知。あらかたの鼠を刺突にて断裂し、湯気立つ肉塊へと変えた4剣が十分な余裕を持ってその粘体を地に縫い止め)
「―――――弾けなさい」
(バァァァアンッ! 涼やかな声音に応じて炸裂した魔力の奔流が、粘塊を四散させた。大惨事であった。勢いよくぶち撒けられたヘドロは回避の余地なく二人の身体に浴びせかけられ、全てが終わった後に残ったのはげどげどのどろっどろ。)
「…………………悪くない戦いでしたね」
(ポーカーフェイスがしれっと告げるも、その紫瞳は脇へと泳ぐ。新入りに良い所を見せようとして少々張り切りすぎたなどとは口に出来ない。)
■ロスク > 「…………。
ふう。
思いの外、数が多かったな……
イェンがいて、助かったよ」
戦いが終わって。二人以外に動くものはいなくなり。
素直に感謝の念を示す。
しかし視線には(もうちょっとどうにかならなかった?)という感情がいくらか混じっていた。
ほとんど負傷はないが、鼠の返り血と、スライムの酸混じりの汚水を全身に浴びている。
上着はおろか下着までぐしょぐしょだろう。
「ははは……。
ま、怪我らしい怪我はないみたいでよかった。
お互い、戻ったらちゃんと洗わなきゃな」
そう半笑いを浮かべるロスクにいつのまにかぴょこんと、鼠のような耳と尻尾が生えているのが見える。
汚水を被ってしまったのと勝利の気の緩みで集中がほころび、ミレーの隠蔽の術が解けてしまったのだ。
それにまだロスクは気づけていない。