2023/03/20 のログ
■ヴァン > 「あぁ、朝一番の冒険者ギルドは混むもんなぁ。昔、友人が寝坊して仕事にあぶれたとか聞いたこともあった。
自分に合う依頼が常にあるとも限らないし、大変だと聞くな」
男も一時期、冒険者の真似事をやっていた。
もっとも、依頼も受けずに山賊や魔物のねぐらを急襲する、よく言えば賞金稼ぎ、悪く言うと押し込み強盗のようなものだ。
なんで、という質問に対しては、何故そんなことを聞くのか、という意味だと理解して。
「いや、特に深い意味はないよ。
普段外にいる冒険者がまだ昼間のうちからいるのはなんでかな、ってね」
質問に対しては、短剣を指さした。
この街は治安がよいとはお世辞にも言えないが、子供が帯剣するほどではない。
それなりに使いこなせる自信がある、ということでもある。年齢から最初に冒険者だと思った、と補足する。
そんなことを言っている間に焼きあがったようだ。2本を受け取って、1本を少女に渡した。
今度は間違っても少女に当たらないように、受け取りやすいように串の端を持つ。
■シフォン > 「うん、そう。良い依頼はいつも取り合いになる、から。」
男の言葉に、ふんふんと頷いて見せる。
もともと人混みが苦手な少女としては、そんな時間帯にはギルドに近づきたくない。
結果として良い依頼にはありつけないことが多く。
「今日はお休み。いつも依頼ばっかりだと、大変だし。」
ちょっとばかり懐が温かかったのも理由のひとつ。
とはいえ、串焼きとクレープの両方を買うには足りなかったけれど。
それでも休息を取るのも重要だと一端の冒険者らしく主張して見せる。
「―――ほんとに、良いの?」
焼き上がったばかりの串焼きの香ばしい匂いに、思わず口の中に唾が溢れる。
素直に受け取ってはみたものの、本当に食べて良いのかと疑い深そうな瞳を向けて。
■ヴァン > 「採取とかの常設の依頼だと安全ではあっても実入りはよくないとか、色々ありそうだ。
パーティーを組んだりはしてないのかい?しがらみができるが、役割分担ができる」
そう言う男自身は単発の依頼で人と組むことはあったが、ほぼ一人に近かった。
休憩をとるのも大事だとの言葉には深く頷く。
「まったくだ。仕事・仕事とやっていって金が貯まっても、使い道がなければ意味がない。
宵越しの銭は……とまでは言えないが、あるうちに使って、心身をリフレッシュしないとな。
あぁ、どうぞ。さっきも言ったが、そう高いものでもない」
気にするなとばかりに笑ってみせる。男にとっては本当に些細なことなのだろう。
疑い深そうな視線を向けられると、肩をすくめてみせた。
「元々、俺が君の服を汚してしまった罪滅ぼしだ。そう気にしなくていい。
俺も、好きでやってることだからね」
そう言うと肉を銜え、咀嚼する。飲み込んでから、ほう、と少し驚いた顔をした。思った以上に美味しかったようだ。
■シフォン > パーティーをとの言葉には、ふるふると首を横に振る。
気前のいい男の言葉に、受け取った串焼きに齧り付く。
口の中一杯に広がる肉汁と甘辛いタレの味
ほふほふと熱そうにしながらも、幸せそうに咀嚼して。
「んっ……美味しい」
肉の質も悪くないのだろう。
硬すぎず、かといって蕩けるような柔らかさでもない。
串焼きにするあたり、あまりに上品な肉では野性味に欠けてしまう。
ピリッと効いた胡椒も、味を引き立てており。
もぐもぐと一心に串焼きと格闘する少女
それは小柄な少女には一本で十分に堪能できる量で。
頬にタレを付けながら、食べ終わると、満足したように笑みを浮かべ。
■ヴァン > 首を横にふる少女に、悪いことを聞いたかと思ってそれ以上は言わない。
あっという間に食べ終わると、軽く息をついた。
「驚いたな。この値段でこの味とは……」
男とは対照的に、串焼きは少女にとってはそれなりに時間がかかる相手らしい。
満足そうな表情を見ると頬のタレが目についた。
子供相手ならば指で拭きとって舐めてしまうが、初対面の娘にすることではない。
代わりに己の頬を指し示して、タレがついていることを指摘する。
「それじゃあ、お嬢さん。重ね重ね、悪かった。
気が向いたら『ザ・タバーン』って所にきてくれ。一応、冒険者の宿もやっている。
簡単な採取依頼とか、ソロ向きの仕事もあるからさ」
己が関わっている宿の宣伝を軽くして、軽く伸びをした。
食事をして体調も少し良くなってきたようだ。向かう先を見遣ると、最後に軽く手を振った。
ハンカチを渡したままということに気付くのは、別れてから十分ほど経ってからのこと。
■シフォン > はふ、と満足げな吐息を漏らしたところで、受ける指摘
パッと手で頬を擦ると、べったりとタレが付いていた。
どうやら、人並みに羞恥心はあるらしく、真っ赤になって俯いて。
「あ、ううん。こっちこそ、ご馳走さま。
さ・たばーん? うん、分かった。」
ご飯を奢ってくれた人が言う店ならば、そう悪いところではないだろう。
串焼き一本でかなり警戒心がなくなった少女は、ごしごしと借りたままのハンカチで頬を拭うと、素直に頷いて。
男と別れた後に少女が向かうのは、向かいのクレープ屋。
小柄な少女のお腹に入りきるとか言われれば、甘いものは別腹だという答えが返ってくるだろう。
翌日、男が紹介した店に、洗い立てのハンカチを握りしめた小柄な少女が姿を見せたとか――
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシフォンさんが去りました。