2023/02/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にマージョリーさんが現れました。
マージョリー > 春を思わせる麗らかな日差しの午後、広場へ通じる通りのひとつ。
小さな木のカップを両手で包み持ち、ドレスの裾をひらひらと翻し、
ひとり、気ままにそぞろ歩く娘の姿があった。

屋敷を出るとき連れ立っていた、幼馴染みの少女の姿も、
わがままな令嬢二人に連れ回され、疲れ気味だった侍女の姿も今はなく。
前者はともかく、後者は必死にこちらを探しているかも知れないけれど、
間違っても、こちらから探してやる必要はないと思っている。
前者にしたって、お金は持っているのだから、ひとりでどうとでもするだろう。
それに今は、手許のカップの中から、魅惑的な香りを立ち昇らせているショコラのほうが、
ずっと、ずうっと重要だった。

『そこを行く可愛いお嬢さん、ショコラはいかがです?』

異国風の装いと、愛想の良い笑顔の、商人と思しき男から、
可愛いお嬢さんにはサービスです、と手渡されたホットショコラ。
当たり前のこと言うのね、なんてうそぶきながらも、もちろん悪い気はしない。
見ず知らずの人から渡されたものなど、口にしてはいけません―――――
きっと侍女が居れば、そう言ってカップを奪われるだろうけれど。

「いいじゃない、ねぇ、ショコラの一杯くらい。
 ……ああ、これ、本当に良い香り……」

今はまだ、あたたかさと甘い香りを楽しんでいるだけ。
けれども広場に辿り着く頃には、きっと、カップに口をつけているだろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にトーラスさんが現れました。
トーラス > 退廃と背徳が支配する都、マグメール。
下を見れば貧民街では日常的に他者を傷付ける事を厭わぬ輩により多くの事件が起きて、
上を見ても富裕地区では資産家が下々の者達を人間とすら扱わぬ状況が茶飯事である。
そんな都に於いて最上位に位置する王侯貴族の間では権謀術数など当然のように行なわれているに違いない。

その日、冒険者である彼に舞い込んできたのは、そのような貴族社会の暗部を現わした依頼。
とある貴族の青年と王家の姫君との縁談話を良く思わなかったのか、はたまた別の理由があったのか。
その真相は彼の知る由ではないが、兎にも角にも、その貴族の青年の妹を誘拐しろとの依頼。
外套のフードを目深に羽織り、不用心にも一人、歩み行く貴族の子女を追い掛けていき、

「…………、」

恐らく、同じ依頼を受けたであろう異国風の商人とすれ違うと目配らせをして相槌を打ちながら、少女の所作に軽く肩を竦める。
彼女の手の中のホットショコラには身体を痺れさせる軽度の毒が含まれており、
侍女の忠告に耳も貸さない少女が、不用心に口を付けて身体の自由が損なわれるタイミングを待ち望み。

マージョリー > 静かで人通りのまばらな場所なら、また違っていたかも知れない。
けれどただの娘にとって、賑やかな街中を歩いているとき、
果たして後をつけられているかどうか、察知するのは難しい。

喪中というには相応しからぬ、ひらひらとしたドレスを纏い、
華奢な靴を履いた娘は、買い物客で賑わう大通りを抜けながら、
ごく自然にカップを口許へ運び―――――

「ん、――――――… ん、おい、し」

ほのかに頬を赤らめて、唇に残るショコラをそっと舐めながら。
うっとりと微笑む、上機嫌な娘の足は、けれども、しかし。

かつ、っ――――――――

不意に縺れて、娘のからだがぐらりと傾いだ。
きょとんと目を瞠り、小さく口をあけたまま、その手から零れ落ちるカップ。
石畳に飛び散るショコラのあとを、小柄なからだが追いかけるのも、きっと時間の問題だろう。

トーラス > 依頼主からの提供で少女の情報は多少なりとも把握している。
我が儘で傲慢な性格の彼女は自由気儘で束縛を厭い、
今のようにお供の侍女を振り切って街中で独りになる事も珍しくないらしい。
貴族の身柄が、如何に貴重であるのかを理解していないお気楽さに、
仕事のやり易さを感じると共に、幾許かの軽めの苛立ちを覚える事を否めない。

「――――おっと、危ない、危ない。
 傷を付けるな、とは言われちゃいないが、怪我でもしたら可愛い顔が台無しだ」

転げ落ちるショコラのカップを追い掛けるように前のめりに崩れ落ちる少女の身体。
だが、背後から近付いた男の逞しい腕が腰から腹に廻ると倒れ込むのを妨げる。
依頼人が手配した同輩の仕事は十全であった事を確認すると小脇に少女の軽い身体を抱えて、
衛兵達や通行人に見付かる前に傍らの路地裏へと連れ込んでいく。

それは王都マグメールでは何の変哲もない日常の一コマ。
突然、少女一人が誘拐されたとしても、当事者以外は気付く事もなく――――。

マージョリー > これが日暮れどき、あるいは夜更けであれば。
場所がこんな人通りの多い界隈ではなく、うらぶれた寂しい路地ででもあれば。

―――――もう少し、結果は変わっていたかも知れない。

けれど実際には声も無く、娘のからだは脱力し、
抵抗らしい抵抗も出来ないまま、見知らぬ男の腕におさまった。

「ぇ、……… ぇ、ぁ、 ぁ、っ―――――……?」

耐性の薄い、若く健康な娘には、少し薬が強過ぎたようで。
舌さえ縺れて上手く動かず、満足に声も出せないうちに、
荷物のように抱えられ、娘の姿は雑踏に紛れて何処かへ消えた。

目撃者も、もちろん咎め立てする者も無く。
白昼堂々の誘拐劇は、あっけなく第一幕の終焉を迎え―――――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からマージョリーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にラフェッテさんが現れました。
ラフェッテ > 日も殆どくれた平民地区の大通り。
寒い日がまだ続きはするが酒場に繰り出す者たちには関係のない事。

「おじさん、起きないと風邪ひくよ。その前に私がお財布を貰っちゃうかもだけど」

そんな酒場が並ぶ通りの一角で深酒をしては道端で眠っている者を見つけては近寄り声をかけ。
起こすように揺らしては声をかけてそんなことを告げる。
風邪だけならば、そのまま眠ってしまう人も多いが財布の事を言えば大抵は怒りと共に飛び起きる。

現に今声をかけた相手も財布を聞けば目を覚まして飛び起きる。
それを見れば、早く帰りなよ、と声をかけてその場を離れ。

「後どれだけで終わりだったかなー」

もう何人に声をかけたかは忘れたが楽しそうに通りを歩き。
ギルドで受けた依頼、通りの巡回のついでに酔っ払いを起こしては楽し気に歩いていく。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からラフェッテさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/大通り」にソカレさんが現れました。
ソカレ > 「よいしょ、っと。
ゴミって探すと結構、落ちてるんだなぁ。
普段は気にしてなかったから、気付かなかったや」

(背中に籠を背負い、軍手をして。
していることはギルドの依頼を受けての、大通りのゴミ拾い。
駆け出しの冒険者に割り振られる、常設されている清掃活動。
依頼料は低いものの、安全な街中での作業なので良く受けている)

「もうちょっとお金が貯まったら、せめて武器くらいはちゃんとしたのを買いたいな。
木剣だと、狼もゴブリンも退治できないだろうし」

(腰に下げているのは、自分で削って作った木製の剣。
宿屋に戻れば木製の槍もあるけれど、そちらは街中ではいらないので置いてあって。
街中での奉仕活動的な依頼や採取依頼よりも、やっぱり討伐依頼の方が、大した素材ではないにしても討伐料と素材料で収入は多くなるから。
将来的にはお世話になった孤児院へ仕送りが出来るくらい稼ぎたいけれど、今のままでは夢のまた夢、とため息をつく)

ソカレ > 「えっと、大通りを往復だから、次はこっち側だよね。
籠、そろそろいっぱいになりそうだけど大丈夫かな。
入るだけ入れて、ゴミ捨て場に持っていってから続きをすればいいよね」

(往路として大通りの右側のゴミを拾い集め、復路として大通りの左側のゴミを集めるのが仕事で。
もう籠がいっぱいになりそうなのを見て、一度はゴミ捨て場にいかないと駄目かな、と呟き歩き出す)

「今度は別の通りのゴミ拾いの依頼を受けてお金を稼いでいかないと、宿代だけでも大変だし……本当に街で暮らすのってお金がかかるなぁ」

(ギルドから紹介された格安の宿でも、駆け出しの自分のお財布には負担が大きく。
もう少し稼げるように早くなりたいと思いながら、ゴミを拾い集め、ゴミ捨て場に一度向かいと、清掃活動を続けていく。
そして、大通りを往復してからギルドへ向かい、依頼を終えたことを報告して、少額ながらも依頼料を手にしてその日は宿屋へと帰ることにした)

ご案内:「王都マグメール 平民地区/大通り」からソカレさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にテンドンさんが現れました。
テンドン > 深夜の王都マグメール。
人気も大分少なくなった通り道を千鳥足みたいにふーらふら。

「…朝から晩まで働き詰めて体力底尽きモード…でも、まだ着手すべき案件多数…息の休まる暇無し…」

今墓場から起き上がって来ましたよと言われても疑われないであろう顔色の悪さ。
口から半分ゴーストを吐き出してくゆらせながら歩いている。
通り道を右に左によろけつつ、出鱈目な舵取りで通行人に衝突しないのは奇跡的。
鉛を呑み込んだように頭は重たくうつむきがちで。
垂れ込んだ尻尾の房は往来の自動清掃機となって路面を掃いている始末。

テンドン > そのまま誘蛾灯に誘われる羽虫みたいにほんのりと灯りの灯っているお店の前にへとやって来る。
きちんと店構えではなく、寧ろ庇付きの荷車を引っ張っている程度の粗末な屋台みたいなものだ。
私財であろう草臥れた、貧民窟から拾って来たかのような壊れかけの机や椅子が無造作に置いてある。

「……この匂い」

くん、と、類稀なる嗅覚が働き出していた。
牛の耳がぴくんと起き上がり、ついでゾンビィさんになっていた顔が持ち上がる。

「コーヒー?」

粗末なコーヒースタンドの前。
席にへと無言寡黙にとすんとお尻を落ち着けた。

テンドン > 「……エスプレッソ下さい」

力無く注文する、人差し指一本を立てて。

「あ、砂糖はもうすっっっっっごい量で、どろどろになるぐらいに、濃い奴で」

思い出したように追加注文も入れる。

テンドン > 「………」

後はすとんとその場に寛いでいる状態で店の主人がコーヒーを滝れてるのを見ているだけだ。
手持ちの道具を駆使して火を立て、凸凹の鍋に少量の水とたっぷりの轢き立てのコーヒー豆の粉が煮たてられている。
ふわ、と、冷え込んでいる夜更けの空気に触れて真っ白に染まる湯気に載って。
辺りに芳しいコーヒーの香がまた漂い始めた。

「いい匂い……」

眠気と格闘し続けている眠たい目が匂いだけでちょっと目を覚ます。
椅子から食み出してだらんとなっていた長い尻尾はぱたぱたぱたんと左右に揺れ始めた。
こびりついている汚れが払われる、清められる。

テンドン > 「ありがとござます」

間も無くして出来上がったコーヒーがテーブルに出された。
内容物はほんのちょっぴりだけ。
掌に乗る程度の小さな陶器の器の中に、煮立てられまくって抽出されたドス黒いと形容できる色彩の液体が湛えられている。
砂糖をどっさりと放り込まれているのか煮え立つ泡にすらも粘りが孕んでいた。
手でとる、というよりも指で挟んで摘まみ上げる。

「頂きます」

ぐっ、と、そのまま一息に呷った。
煮出したものなので底に残っている粉の部分は飲まないように。
その上澄みだけを口の中に。

テンドン > 「…っっ!!!」

びん!と尻尾が起き上がるように直立した。
背中を反らした姿勢からぱっちりと目を見開く。
椅子にかけた所から仰ぎ見る銀の星々の鏤められた夜空。
滅茶苦茶に甘くて滅茶苦茶に苦い矛盾の塊を飲み下し。
ごっくりと喉が上下に動く。

「ぷはぁっ」

呼吸すらも忘れた数瞬後に大きく息を吐き出し。
飲み残しの小さな器をことんとテーブルにへと戻した。
御代である貨幣も数枚ばかりそこに添えて。

テンドン > 「ご馳走様。美味しかった…というか生き返った」

ぺこりと無口な主人に頭を下げた後に席から立つ。

「よーし…」

ぐりんぐりんと肩の付け根から腕を回しながら、その場より離れ出す。
先程よりも顔色は大分いい、しゃっきりと背筋をまっすぐにして。
そして踏み出す足幅も大股闊歩だ。

「まだ、がんばろっ」

そして他の深夜労働者達に紛れ込んで。
颯爽とその歩みはとっぷりと暮れた日の下。
街中の宵闇に霞むように消えていく。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からテンドンさんが去りました。