2022/10/29 のログ
ヴァン > しばらく、男はダーツを楽しんで――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシャノンさんが現れました。
シャノン > 賑わう市場の片隅、美味しそうな匂いを漂わせる屋台が並ぶ一角。
耳と尻尾を隠した白ずくめの銀髪娘は、とある屋台の前に立ち、
ほかの客とやりとりしている店主の横顔を、ちら、ちら、と窺っていた。

目の前にあるのは素焼きの深盆、その中に山積みされた艶やかな果実。
マグメールでは珍しい、異国の果実だ、と店主が先刻豪語していた。
瑞々しい弾力、プルプル揺れる球形の―――――ごくり、娘の喉が鳴る。

「………おいし、そ」

問題は、添えられた値札に記された『時価』の文字。
更に問題なのは、娘が現在素寒貧であることだ。
好奇心旺盛な猫であるからして、珍しいものにはそもそも目がない。
しかしそれなりに、人間たちの常識も学びつつあるので、
―――――そぉっと手を伸ばしたりしたら、大変なことになる。
その程度の考えは、まだ、はたらくのだ。いちおう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエルフェさんが現れました。
エルフェ > 土曜となれば学院も当然のようにお休み。
平民地区に住む少女は、今日も今日とて―――昼食がてら、屋台が並ぶ其処を歩いていた。

「ん~。やっぱり、この時間の屋台は香りがふわっふわでお腹が空いちゃうなぁ……!」

インナー越しのお腹を撫でながら、自分の懐事情を思い出す。
テストも終えたし、魔物を倒して適度な賃金は手に入れた。ここで少し散財してもバチは当たらないはず。
じゃあ、何を買おうかときょろきょろと屋台に視線を巡らせていたところで。「おや?」と声を零した。

山積みになった瑞々しい果実。それを前に目を輝かせ、動きを止めている白ずくめの女の子。
異国の果実の高さに手が止まっているんだろうか?と思えば、そこに書かれている『時価』の文面に、はは~ん。って納得。
これは直ぐに買った!って言えないものだ。

なので。

「おーい、店主さーん!この果実、時価って書いてあるけどどれぐらいのお値段かなっ!

 ――とと、割り込む感じでごめんね? あなたも果物、買いに来たんだよね?」

隣りにいる先客にもわかるよう、少し高めの声で声を掛けてみる。
合わせて、謝罪の言葉とここにいる理由を問いかけて。

シャノン > それほど空腹を意識していたわけではないが、いつのまにか。
左手は裾の長いシャツのお腹あたりを切なげに掴んでいたし、
右手は口もとへ軽く宛がわれて――――もう少し放置されていたら、
じゅる、と涎の音すら聞こえていたかも知れない。

そんなタイミングで、明るい声が傍らから。
ぴゃっ、と耳やら尻尾やらが出てしまうほどではないけれど、
それなりに不意を衝かれて、びっくり顔でそちらを振り仰ぎ。

「え、あ、ひゃい?」

―――――まともな返答が出来なかった。
慌てた様子で、それはそれは挙動不審気味に、ぶんぶんと左右に首を振り、

「あ、いや、ぜんぜん、えっとその、
 お客、というか、えっとあの……たぶん、ひや、ひやかし?
 とかいうアレなので、うん、どーぞ、お気になさらず……」

返す言葉も怪しげである、とりあえず、買う気というより買う当てがないのは事実。
店主が愛想笑いを向けるのも、当然ながら冒険者風の少女に対してのみ。
彼の口からどんな価格が飛び出そうと、はなから、この猫には手が出るものでもなく。

エルフェ > ある意味、涎を零しそうになる油断した顔を阻止したという事になるのかもしれないけれど。

彼女が驚きの声を上げて慌てるのも仕方ない。
だって、いきなり横から明るい声が響き渡り、さらに自分に話題を振られたんだから。

「……おお。」

真剣に果実を見ていた顔立ちから、落ちついた感じの雰囲気かと思ったらそうでもない。
それこそいきなり撫でられた猫のように、慌てふためき、頭を左右に揺らし、必死に言葉を考える仕草は、見ていて少しかわいいなって思った。

「んー……そう? 冷やかしにしてはなんというか、すっごい熱心に見てたし?
 あなたがじーって見てるから、そんなに美味しいものなのかな。って気になっちゃったんだ!えへへ!

 ……オッケー!気にしないのは無理だけど、わたしが先に買って良いってことで!

 ……ということで、店主さん!」

ひやかし。という言葉で彼女がこれに手を出せないって事は理解した。
店主の愛想笑いも納得。だって、暫くここで果物をじぃっと見ていたってことなんだから。
なので、店主さんに顔を寄せて、ひそひそと小声で直談判―――もとい、時価相談。

「ということで、わたしは冒険者です。そこそこの貯蓄があります。
 なので、時価でもある程度買えちゃいます。お値段、教えてください!
 ……というか、単なる果物にしか見えないけど、異国ってことで時価なの?
 それともなにかこう、不思議なパワーとかいろいろなものがあったり、味がすごかったり?」

腰に吊るした革の財布代わりの袋を紐を解けば、果物数個は余裕で買える蓄えがあるのを店主に見せ―――
さらに、果物がどういったくだものなのかを聞いてみる。何事も知らずに買うなんて無理なのだ!

シャノン > びっくりした、びっくりした、そりゃあもうびっくりした。
知らないヒトからフレンドリーに話しかけられる、という経験自体、
実はそれほど多くない、のである。

とはいえ、相手はコワモテのお兄さんとか、いかにも怪しげなオジサンではない。
若い女の子である、特に、笑顔がとってもチャーミングだ。
なので、えへへへ、と照れ隠しに笑い返しつつ―――――はたと気づいて、
今更ながらに両手で頭頂部を、そろそろと撫でて耳の露出がないことを確かめてみたり、なぞ。

「い、いやあ、ちょっと、おいしそ、だな、とは、思ってたんだけど……
 でもほら、高そうだし、うん、あは、あはは……」

誤魔化い笑いが虚しく響く間にも、店主は冒険者の懐を油断無くチェックしていたし、
重そうな革袋の中身には、この猫も少なからず興味を引かれていた。
しかし店主は声をひそめて、冒険者の少女にだけ聞こえるように、という意地悪をする。

いわく、
『お嬢ちゃん、こいつはただの果物じゃないよ。
 シェンヤンどころじゃない、とおーい異国から流れてきたもんでね、
 なんでもそこの国じゃあこいつを、初夜の枕元に用意してね、
 ―――――その美味さときたら、まさしく天にも昇る心地なんだって話さ。
 ………もっとも、どうだろうねえ。
 お嬢ちゃんにはちょっと、刺激が強過ぎるんじゃないかねえ?』

店主が彼女を見る眼つきこそ、怪しいオジサンそのものだ。
ちなみに告げられた価格は、彼女の懐具合を鑑みるに、決して手の出ない高さではない。
彼女の言う通り、数個くらいなら容易く買えるだろう。

エルフェ > 照れ隠しに笑う様も可愛らしい。見てて自然と口元が綻んじゃうのは仕方ないこと!
その頭を撫でている仕草にはどういった理由があったのかは、わからなかった。
そう、まだ驚きによって尻尾や耳は飛び出していない。傍から見れば女の子でしかない、目の前の相手。勿論、ここにいる少女もかわいい女の子!ぐらいにしか思っていないのである。

「だねー。他のだとそれこそ何個入りでこれぐらい!って書かれてるけど……。
 これに関しては、うん。時価!けど、逆に考えよう!
 それだけ美味しいものだってこと!なら、わたしは買ってみせるよ!」

誤魔化し笑いを受けても、変わらない反応。むしろ目の前の相手にプレゼントしたらどんな反応をするんだろう?
そんなことを考えたからこそ、サプライズのために店主へと耳打ち。
その目論見を察知したのか、はたまた単純に金づるとでも思ったのか。少女の前で始まる店主とのひそひそ話。

「なるほどねぇ……シェンヤンよりも。なら、ここ住みのわたしが見かけないのも納得かも。本当に希少なんだよね、多分。
 ……ははーん。あぁ、そういうこと。
 うん、それなら高いよねぇ……。それってつまり、精力剤?ううん、もっとすっごいものってことじゃない。
 ―――あははっ!大丈夫だよ、店主さん。……こう見えて、修羅場も、床も、潜ってるからね……♪」

怪しいオジサンの、文字通りの舐め回すような視線。それに応じるかのように成長過多な腰回りを揺らしたかと思えば、
じゃり!っと袋の貨幣を鷲掴みし、その店主の掌に握らせる―――。

「……よっつ、買うよ!
 あ、袋に包んでくれれば大丈夫!」

気前よく、その果物の正体を理解した上で、何故か4つも買い上げた。
ひとつやふたつじゃ足りない。そう言わんばかり。

シャノン > 伸ばした掌に触れるのは、柔らかな銀髪の感触だけだ。
だからようやく、猫のほうも少しは落ち着きを取り戻した様子で。

「うん、ひと山いくら、とかならこう……」

ちらっと、ちょろっと、ひとつ攫ってもわかるまい、とか。
そんなぶっちゃけトークまでは、さすがに出来るわけもないけれど。
空中で何かを掴んで、懐へ忍ばせる、手つきは完全に再現してしまっていた。
どこまで行っても怪しい猫を放置して、店主は冒険者の少女にだけ、

『滋養強壮成分も豊富だとは聞くがね、それより何より、
 こいつが効くのはなんてったって女のほうさ。
 ひとつ、まるまる食わせれば、初心な生娘だって―――――』

下ネタすれすれの営業トークは、放っておけば、まだまだ続いたことだろう。
しかし、視線を厭うどころか煽るような腰つきに、オジサンも生唾を呑み込んで、
ことばは一旦途切れてしまう。
すかさず握らされた貨幣の数を、ひと目で数えて、じんわりと目を細め、

『こりゃあ、見かけによらず随分、イケる口なんだねぇ、お嬢ちゃん。
 今夜と言わず、今からでも宿にしけこむつもりかい?
 今日、お嬢ちゃんの相手をするヤツぁ、きっと骨までしゃぶられちまうだろうねぇ』

ニヤニヤ笑いながら、茶色の袋に果実を四つ。
つやつやの、得も言われぬ芳香を放つ、たとえていうなら桃のような、
けれど幻想的な紫色の―――――異国情緒あふれる果実が、彼女の手もとに。

それをじいっと目で追いかける、銀色娘の羨ましげな表情込みで。
半開きの口から、今度こそ、涎が滴るのも時間の問題か。

エルフェ > 「……おっと、それは、し~。」

空中で何かを掴んで、忍ばせる動きを再現した彼女には、指先をぴっと一本伸ばして、静かにっ!ってジェスチャー。
流石にそれを店前で行ったら色々と危ない気がするから。

そして、お買い物は続く。

「なるほどね~……滋養強壮に聞くのはシンプルに嬉しいかも?
 ほほう~?いやぁ、すごいものを仕入れたね、おじさんっ。わたし、こういうアイテム大好きなんだよね!怪しい感じの果物とか……!」

相手が下ネタぎりぎりでも、こちらの言葉は至って普通。
その理由は、もしこの言葉を横でそわそわしてそうな女の子が聞いてしまったら、この後のおすそ分けが出来ない。と考えているからこそ。
傍から見れば、引き締まった身体をインナーで覆う―――肉感的な腰回りを持つ美少女。
だから、おじさんもその動きで言葉を軽く途切れさせたし、その後の貨幣の叩き付けによる勢いを、押し通る事ができる。
かわいいは、正義。

「あはは!――うん、勿論!というか、そんなに美味しいなら一度だけで終わらせるなんて勿体ないからね?
 ……どうだろ?―――それは相手次第になると思うけど。
 ……骨までしゃぶるっていうのは、割と本気かなぁ。よし、いい買い物をした!ありがとう、おじさん!"いい感じ"だったらまた買いに来るね!」

茶色の袋から伝わるずっしりとした重さと淡い香り。
紫色の果実というのは葡萄などでしか見ないが、なかなかに珍しい。それでいてつやつやとした外皮は文字通り艶めかしささえ宿していて。

「ということで……良かったらどこか落ちついた場所で、ふたりで食べない?

 ……そんな美味しそうに果物を見てる子相手なら、きっとこの果物も美味しくいただかれたい!って思うんだよね!」

その袋を持ち。ようやく、涎が垂れる一歩手前な女の子にお誘いを投げかけた。
さり気なく、落ちついた場所。という言い方をして、邪魔の入らない場所に連れ込もうとしているのも含めて―――その交渉を見た、後ろにいるおじさんは更にニヤニヤ笑っていたかも。

シャノン > 「――――― あ。」

ぎくん、と細い肩を震わせて、危ないポーズをしていた手をそっと後ろに隠し、
ぎこちなく笑顔を繕ったけれど―――――幸い、店主の方はこちらを見ていない。
お金を持っていて、色っぽい曲線美を見せつけてくれる少女の方に、
彼の視線も注意もほぼ釘付けだった。

『はいよ、いつも置いてあるもんじゃあないが、お嬢ちゃんが常連になってくれるなら、
 また仕入れてみせるからねぇ。
 楽しんどいで、―――――ああ、相手が羨ましいねえ』

今や単なるスケベオヤジ、としか見えない店主は、もう置いておくとして。
もしかしてほんのひと口くらい、食べさせてくれないかなぁ、と、
口に出さずとも表情と態度で、思いきり伝えていた銀色猫は、
今度こそ、ぴるっ、と猫耳が立つかと思うくらい、大興奮の面持ちで。
期待に満ちてきらきら光る金色の瞳で、まっすぐに彼女を見つめながら、

「――――― え、え、いいの……?」

だって今、結構な金額を払ってなかったか。
いちおう、ヒトの子でいうところの、遠慮、に近い感情も沸く、けれども。
たらり、涎が本当に垂れ落ちる寸前で、ぐい、と口許をこぶしで拭い、

「食べさせてくれるなら、なんっ、でもする……♡」

そうとは知らず、墓穴を掘るような発言とともに。
きっといそいそと弾むような足取りで、彼女について行くはずだ。

エルフェ > 幸い、彼女の危ない行動は、文字通り自分に釘付けの店主には見えず。
結果、残ったのは良い買い物をした少女と、いい感じに品物が捌けた店主。そして、その様子を見て、涎を垂らしかねない黄金色の瞳をした少女。
「うん!楽しんでくるね!」と、店主に最後の一言を向け、改めて視線の先にいる彼女の事を見遣り。

「あははっ。だって、そんなに目を輝かせてるんだもの。
 今、ちょっと聞いてみたけどすっごい美味しい果物なんだって。……だから、一人で食べるより、誰かと一緒に食べたほうが美味しいと思うんだよね!」

確かに、結構な金額だった。先日、ギルドで魔物退治をしていなければ1,2個ぎりぎり買えるか?というぐらいの金額。
普段の、甘やかされたら警戒する彼女だったなら―――こんなお誘い、少しは訝しんだかもしれない。実際、遠慮の気持ちも宿っている。
だけど、今はそう……食欲が大勝利してしまっている!

結果。

「何でも―――。んー、じゃあ……この果物に合いそうなもの、他にも買っていって……パーティーと洒落込もうよ!
 いろいろなお話したり、美味しいものを食べてっ!……さ、行こっ!」

提案したのは、一緒にさらなる買い物をして、準備を整えて、今日という一日をふたりで過ごす。ということ。
弾むような足取りなのはこちらも同じ。

―――ことばだけ聞けば、とても微笑ましい少女たちの会話。
けど、ここから訪れるのは、もっと桃色な空気であり……。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシャノンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエルフェさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にリセさんが現れました。
リセ >  放課後。一日の授業がすっかり終わって校門をくぐり。
 そのまま真っ直ぐ帰途に着く気にはなれずに、のろのろと緩慢な足取りで。
 制服に教材を収めた学生鞄を背負ったまま、ぶらぶらと当て所なく街に出た。
 貴族を始め富裕層まみれの地区は、貴族と云えど斜陽に照らされた没落族には少々馴染めない。

 気楽な平民地区の商店の立ち並ぶ目貫通りを買うものがある訳でもないのに気の向くままに遊歩しながら。

「………いいなあ……」

 思わず呟く視線の先には、同じ学院の制服を着た女子生徒数人のグループ。
 皆、仲良さげに露店で甘味などを購入しては食べ歩きしながら、華やかに笑いさざめいている。
 あんな風にたくさんの友達と過ごすのはどんな気分だろうか。
 友人に囲まれたことなどありはしないので想像は及ばなかったが、羨ましい。
 女子学生グループからやや距離を置いて、羨望の眼差しを注いでしまっていたから。
 その内視線に気づいた彼女らの一人が、こちらを見たもので。

「――……」

 慌てて目を逸らし、通り沿いの雑貨店を見る振りをして誤魔化したが、気づいた女子学生も、どうでも良さそうな少し冷たそうな一瞥を最後にくれただけで、賑やかな会話に戻っていた。

「…………」

 なんとなく情けなく、物哀しい気持ちに陥っていると、自分で思っている以上に感情の振れ幅が強かったのか――。

「………ふ、ぁ……」

 瞼が急に重たくなって欠伸が零れた。

 あ、拙い、と認知した際にはもう手遅れで。

 ふら……っ
 足元から頽れて上体が大きく傾き路傍に倒れ掛かった――

リセ >  どさ り……
 40キロ余りの重量が路面に倒れ込む鈍い音。
 突如、前触れもなく道端に昏倒した制服の学生。

 そのまま、すやすやと、伏せ気味の側臥位でまるで自室のベッドで眠り込んでいるように穏やかな寝息を立て、目を閉じていた。

 暮れなずむ街の中、秋風に冷えた道の上で眠りこける女子学生に、通りを往く人々は或いは怪訝そうに。或いは邪魔くさそうに眉を顰め。或いは興味本位で覗き込んでいたり。

 また、或いは、余りに静かに唐突に思わぬ場所で人が落ちているものだから。
 そのまま気づかずに道と同化した居眠り学生を踏んづけてしまった場合もあるかも知れない。

リセ >  そして案の定。

 ぐしゃっ
「―――!!!」

 通りすがりの街人に踏まれた。
 声にならない悲鳴を上げて飛び起きた。
 不幸中の幸いだったのは足首辺りだったこと。

 しかし痛いことには変わりない。
 驚いたように跳ね起きて開いた目に映ったのは、同様に驚いた都民の顔。

「すみ、すみ、すみ……ません……っ」

 何故か踏まれた方が謝って貴族の風格微塵もなしにへりくだったように頭を下げ、慌てて立ち上がると、足をもつれさせながら。

「また、わたし……っ」

 やらかしてしまった、と顔を真っ赤にしては急ぎ足で帰途に着くのだった。 

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からリセさんが去りました。