2022/06/01 のログ
■ジーゴ > 「だってさー、今日は帽子かぶってきたから大丈夫かもだけど…」
そこまで言うとちょっと俯いた。
ミレーに対する風当たりは平民街でも強い。
邪険にされるなんてことはよくあることだから、店に入るのはいつも躊躇してしまう。
「せんゴルド…」
その額を聞いて思わずため息のような声が漏れた。
持ち合わせでは足りそうにない。貯めてあるお金を使えば買うことはできそうだけれども。
一晩を幾許かの金で売ったり、皿洗いや冒険者ギルドで簡単な仕事を受けて稼ぐ額を考えると、1000ゴルドは相当なお金だ。
「やめとく…帽子もう持ってるし…」
値段の高さを聞くと、途端に店の居心地も悪く感じてソワソワし始めて、
帰ろうとばかりにヴェルソートの服の裾を引っ張ろうとして
■ヴェルソート > 「あー……まぁ、気にしても仕方ねぇ事は気にするだけ無駄だよ。」
だからそんなしょげんなよ、とまた帽子の上からぺふんと頭を撫でて苦笑いし…まぁ、気持ちはわからなくもないのだが。
「……。すいませーん、これくださーい。」
価格を聞いてそわそわしだして己の服の裾を帰ろうとばかりに引っ張る彼を…しれっと無視して帽子を手に取り、店員に呼びかける。
歌姫舐めんな、1000ゴルトくらいわけもないわ、とドヤ顔するわけではないが、まあアレだ…少しはいい顔したいのである。
「ジーゴ。…これから10日間、勉強をサボらずに頑張ったら、この帽子をくれてやろうじゃないか。」
しかし、タダであげるわけにはいかん。…ついでとばかりに、サボりがちな勉強に身を入れてもらうため、物で釣る作戦にシフトするのだ。
とりあえず、代金をささっと払って、この帽子の所有権を自分のものに。
■ジーゴ > 「また、帽子さわった!!」
帽子の生地越しに耳の形が見えてしまうのを気にして怒るから尚更、耳はピンと伸びてそのシルエットを明らかにしてしまう。
「え、なんで買うの!?オレ金ないよ?」
戸惑う少年がご主人様の服の裾を引っ張る力が強くなって。
それでも、もちろんご主人様を止めることはできなくて、そのまま購入するのを見守るしかない。
「10日…」
買ってもらえるのかなと少し喜び始めていた少年が漏らしたのは、さっき1000ゴルドだと聞いた時に漏らしたのと同じ、ため息のような声。
10日で1000ゴルドだから、勉強1日あたり100ゴルドになる。
それがとても好条件なことにさえ、割り算ができないから気が付かずに。
嬉しいと嫌だが混ざって、少し眉に力を入れて考え込んだ顔のまま。
「10日…べんきょう…いいけど…怒んないでね…」
勉強の何が嫌だって、わからなくてイライラする少年の態度を見かねたご主人様に叱られるのが嫌だ。
そもそもなんで勉強しないといけないのかもよくわからなくなってしまっている少年は、どうしても勉強をサボりがちになる。
「ね、はやく出よ。高いみせ怖い」
自分のための帽子(まだ彼のものではないが)を買ってくれたご主人様の服の裾をもう一度引っ張って、早く出ようと促した。
■ヴェルソート > 「はっはっは、触ってやったぜ、ん?」
ニヤニヤと笑いながら、シルエットを潰すようにわしゃわしゃと帽子の上から頭をかき混ぜるように懲りずに撫で回してやり。
「んー?なぁに、ちょっとしたご褒美ってやつだよ。……ちゃんと勉強頑張ってたら怒ってないだろー?
学は身につけといて損はねぇぞ?自分で値札読んだり、計算できたほうが後々楽だからなぁ。」
ずぅっと俺に計算させるわけにゃいかねぇだろ?と彼の帽子に手を置いたまま、裾を引っ張る彼に苦笑いして、店の出口へとあるきだそう。
「んじゃ、帰って飯にするか…何食べたい?」
なぞと、今夜のごはんに話を切り替えながら…スタスタと常宿の方へとあるき出していく…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からヴェルソートさんが去りました。
■ジーゴ > 「だから、オレ、ミレーってバレたくないの!」
彼が怒れば怒るほど、ご主人様は面白がって頭を撫でる。
少年にとってはただの悪循環が発生していて。
今はご主人様と一緒にいるからミレーだと周囲にわかられても問題はないだろうけれども。
「うん…」
確かに、さっきの値札も飾り文字で書いてあったことも相まって読めなかったし、
足し算や引き算はできても、まだ掛け算や割り算はできないから、小さなことで騙されてしまうことも多い。
さっきまで耳のシルエットが明らかだった帽子も、中で獣の耳がしょげると耳のシルエットは帽子から見えなくなって。
「肉!肉!肉!」
店を出て、ご飯の話になるとまた元気を取り戻して自分の希望だけを何回も言った。彼の食事の希望は基本的に肉なのだけれども。
ご主人様の服の裾を握りしめたまま、一緒に宿まで帰って行く。
果たしてジーゴは10日間、勉強を頑張れたのだろうか。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からジーゴさんが去りました。