2021/11/05 のログ
イーヴィア > 「こーら、ぼろぼろだからって投げんじゃねぇ。
……てか、相変わらず折れる寸前じゃねぇか。」

(所作の雑な相手を、軽く叱る様な声。
けれど、放り投げられた装備の、其の摩耗した状態を一目見ては
溜息を零し、寧ろ、良く其処まで使い伸ばしたもんだと、労おうか

椅子に座って、酒を一本開けては、自らのグラスに注ぐ
隣へと寄って来た相手を見ては、ふ、と軽く笑った後で
相手の分のグラスにも、同じ様に酒を注いでやろう。)

「まぁ、どうせ何時もの事なんだろーが…何はともあれ、お疲れさん。」

(掲げるグラスを、相手の前に。 乾杯を促し、仕事を労いつつ。
――舞い上がるもう片方の掌が、ぽんぽん、と其の背中をあやすだろう
よく頑張った、と。 ――よく無事だったな、と)。

グレアス >  
「うひ、ごめーん……おう、この前ピキって言った」

軽く叱られたら肩を軽く竦めてみせて、反省の意を示す
けれども、労ってくれたなら遊んだ表情は和らいで
うん、と小さく頷いた。
そして、コートを脱いで肩が出ているダルダルのチュニック姿となる
胸元は勿論覗いていて。

コートはそこらにほっぽった。

「イーヴィアってば紳士だよなー?
 モテモテなんじゃねえのー?」

グラスに注がれる液体に目を移した後は
イーヴィアの隣を占拠して満足気に鼻息を荒くする。
こっちのグラスにも注いでくれて、愚痴も聞いてくれる
そんなイーヴィアにそんな言葉を投げかけて。

「イーヴィアもお疲れさん」

掲げられたグラス、それにこっちのグラスも合わせた
そうして、背中をあやすように叩かれて、その意味を汲み取って
早速涙がこぼれそうだった。

「う、うぅ……ありがどな゛イーヴィアぁ」

荒んだ心にイーヴィアの優しさが染み込んで
ポロポロと決壊した涙をそのままにグラスを一気に呷る。

「今日上司に呼び出されてよ、服を脱げって言われてさ
 冗談かと思ったらマジで、にじり寄ってきたから殴ったら
 減俸されてさ……それですんでよかったけど……なんでだよぉぉぉおお」

早速、涙をこぼしながら愚痴を吐き出し始めよう

イーヴィア > 「ダメじゃねーか、其の後使ってないだろうな…。」

(剣から音がした時点で、間違いなくヒビが入って居る。
其の儘使って居たら、間違い無く死ぬぞと告げつつに
己もまた、乾杯と共に、注がれたグラスを、ぐいと煽った
――己が普段飲んでいる酒よりも、度数は大分低めだ
相手が量を飲んでも、早々酔い潰れたりはせずに済むだろう。)

「生憎ながら、最近は忙しくて女っ気も少ねぇよ。
嗚呼、ありがとな。 ―――しかし…騎士団も数在るとは言えよ。
お前んとこは相変わらず、阿呆が多すぎやしないか?」

(――王都を守る為の騎士団は、其れこそ多くが存在する
王城直轄の騎士団から、果ては貴族の私設騎士団なども含めればきりがない
そして、其れだけの数が存在するが故に、其の程度にも大きな差が有る
有り体に言えば、腐って居る所はとことん腐って居るのだ。

早々に愚痴を吐き出した相手が既に涙声ならば、其の背筋を片掌で摩ってやりつつ
以前から伝え聞く限り、内情が酷い有様な相手の状況を聞いては
同情する様に、クソの様な上司の要求を一蹴してやり。)

「――――……個人的には寧ろ、ぶん殴って然るべきだとは思うがな。
……てか、前も何かで減俸食らって無かったか?
実際、此の侭やって行ける状況なのか、御前さん」

(――自分ならば間違い無く、ぶん殴った挙句にその場で辞表を突き付けている。
だが、其れでも。 迂闊に転職や、辞職を口にしないのは
相手が、其れでも騎士と言う職にしがみつこうとして居る事を、知って居るからだ。)

「―――……てか、他の連中は如何してんだそれ。
まさか、大人しく従ってるんじゃねぇだろうな?」

(どんな上司だ、と。
真っ当な騎士団であれば、陳情すればすぐに首が飛ぶだろうに
其処まで強権振りかざせるには、何か厄介な相手なのかとも思えて
相手の頭を子供をあやす様に撫でつつ、愚痴を促してやろう
言いたい事は、洗いざらい言えば良いのだ)。

グレアス >  
「……一回だけ使った……てへ?」

それでも、ギリギリで持ちこたえてくれたのは一重にイーヴィアのおかげだろう。
「いつもありがとな」なんて告げつつに、ぐいっとグラスを呷ったら
グラスが空いたので酒を持ってグラスに注いで、次々と飲み干していく
それは、度数が低いのもあるが、いつもより美味しく感じるからで

「へぇー じゃあしばらく独占できそう
 アタシが、アタシが入った騎士団は糞だぁぁあああ!!
 この前は新入りに身体ジロジロ見られて興味ねえつったら
 ババア呼ばわりされるしでよぉ……ほんと、阿呆がおおいんだよぅ」

こっちの所属している騎士団は、とことんにまで腐っている
カツアゲに強姦まがい、私的制裁など上げればきりがない
「べつのとこいぎだいぃ」と背中をなでてもらいながら涙声でそう主張する。

更に、イーヴィアがこっちを庇ってくれるような言葉に涙の量が増えて

「う゛ぇぇぇ……そう思うだろぉ? アタシもそう思うんだけどさぁ
 ……うぐ、別の上司が新人の女の子に手出そうとしてたからぶん殴って減俸
 その女の子は辞めちまうし。
 で、急に胸触ってきたお偉い貴族様の騎士殴って減俸
 ……やってけねぇよ。飯だって一日100ゴルドで済ませてる」

平民の半分であった。
それでも騎士を続けているのは、昔見たパレードの騎士達の綺羅びやかさに憧れているから、目を焼かれてしまったから
そんな理由で最前線に赴いて戦って、騎士団の中ではもう鼻つまみ者になりつつある

「アタシの所属してる騎士団には女はアタシだけ
 ……アタシってば殴りすぎて鼻つまみ者でさ
 上司に対するイライラはアタシに向けられてる
 アタシの憧れた騎士ってこんなんじゃないのにさ」

腐りきった騎士団だからこそ上司の行動もまかり通っている現状だ
転属願いも握りつぶされるし、と涙を更に溢れさせながらグラスを一気に呷る
そして、頭をあやすようになでてくれるイーヴィアに肩を預けようか。

イーヴィア > 「―――――……いくら汎用品でもな。
俺の鍛った剣で、どんな使い方したらこうなるんだ、本当に。」

(そんな柔な作りはしていない、筈だ。
無論、素材が何の変哲も無い鋼である以上、限度はあるにしても
連日の出動、応戦、手入れ不足――様々な要因による摩耗の加速で
今や包丁の方がマシな位の、ボロ剣でしかない。
鍛った此方までもが、少しばかり悲しくなるくらいの有様に
此方も此方で、呆れと溜息しか出て来やしない。)

「……それ給金、前から下がったまま戻ってねぇじゃねぇか。
酒場で働いた方が遥かに稼げるぞ、御前。
……まぁ、其れでも辞めねぇんだから、ホントに根性だけは感心すんだが…。」

(此方に肩寄せるなら、頭を撫ぜてやりながら
前にここを訪れた時より、更に悪化している労働環境に、眉根を寄せた。
騎士とは、矢張り人の羨望や人気を集める花形の職業でもある
だが、それ故に、華々しい姿に憧れた新入りを食い物にする連中は
やはり、少なからず一定数は存在するのだろう

事実、現在進行形で食い物にされ――かけて突っぱねる事で
相当に搾取されている相手を見れば、渋い顔にもなろう。)

「――――御前が騎士にさえ拘らねぇなら、ウチで働くかって言えるんだがなぁ。
……かと言って、他のトコにはいそうですかで転属出来るかってと、な。」

(――騎士団に対するコネは、在る。
鍛冶屋なんて物を遣って居る以上、様々な騎士団へ装備を卸している訳で
そう言った所へと、其々声を掛ける事も出来なくは無い、が

相手が所属している騎士団が、其処と繋がりが有るかは判らない
それはつまり、彼女が他の騎士団へ所属するにあたって今一度
入隊試験を受ける必要があるかも知れぬ、と言う事だ。
当然、相談を持ち掛けるべき"まっとうな"騎士団程、入隊の基準は厳しくなる
つまり、騎士に戻れぬかもしれぬ、と言う事だ。)

「……騎士としての査定は、底辺を這ってるだろうしなぁ。」

(何せ、そんな上司だ。 査定など在ってない様な物だろう。
だからこそ余計に、転属が難しくなっているのは容易に推測できる
折れる迄、飼い殺しにするなんてのは、常とう手段だ)。

グレアス >  
「えへ……アタシの剣って受け流しが多いから
 まだ未熟者だしで、前線にいることも多くてさ」

刃で逸し、剣の腹で逸し、逸して逸して
多数に囲まれている状況で逸らすことができないときもあって
思い切り受け止めることも多々あるため、摩耗はひどくなって
戦終わりで疲れ切って手入れも少ししか出来ていない状況だったりする。

イーヴィアのため息が聞こえて、肩を跳ねさせて伺うように見上げて。

「うぐぐ、戻ってないんですー 底辺を這い回ってるんですー
 そんな事、分かってるけどさ……根性だけでやってる」

頭を撫ぜてもらったらもっともっとと言うように頭をグリグリと押し付けて
もうグラスには注がずに瓶を手にとってラッパ飲みをしだす始末
つまみにも手を出しながら、酒が進んでいく。

最近は心が擦り切れてきているもののイーヴィアのような人に
甘やかされていることでどうにか均衡を保っていたりする。
だから、イーヴィアからの言葉に少し心はぐらつくけれど
それでも、と憧れた騎士像を胸に抱く。

「……めっちゃ嬉しい。けど、うん……まだ騎士にこだわってるから、さ
 はぁ、こういう星のもとで生まれたのかな、アタシってさ
 ……ひぐっ……えぐっ……」

転属できるならしたいものなのだけれど
できる状況ではない。入隊試験をパスできるかも心配であるが
査定の問題もあって、それを思い返したのかラッパ飲みをして瓶を一つ開けた

「……うわぁぁぁ、こんなにがんばってるのになんでぇぇえええ!
 やだやだやだああああ! イーヴィアぁぁ!」

ついには、瓶を離して床に転がし、イーヴィアの腕に胸を押し付けるようにして
抱きついて、涙をこぼしながら、駄々をこねる子供のように甘え始めるのである。

イーヴィア > 「……お前の其れは騎士とかの剣ってより、傭兵の其れだな。
と言うか、前線に送られてるのは未熟って理由でもねぇ気がするんだが…。」

(――寧ろ、てい良く遣われて居るだけでは無かろうか。
相手が自ら未熟と言う程に、己は未熟とは見ていない
寧ろ、あれだけ前線送りになりながら、満身創痍ながらも戻って来て居る
其れだけで、十分に立派なもんだと、そう思うが故に。

――御前を咎めた訳じゃねぇ、と、肩跳ねさせたのに気付いて、安心させてやり。)

「最低賃金を減俸で下回ってるんだから、底辺どころでも無いけどな…。
……まぁ、しがみ付くだけしがみ付いて見ろ。 ぶん殴るくらいは大目に見てやる。
けど…約束しろ。 せめて、頭に来ても半殺しまでにしとけ。」

(じゃないと、引き取ってやれなくなっちまうからよ、と。
もし、相手が騎士と言う理想を追いかけきれなくなって仕舞った其の時には
せめて、後ろに己が控えていてやると、そう伝えながら

――飲んで、食って、吐き出して。 ――堰を切ったように泣き出した相手を
まだ酒の入ったグラスをテーブルに置き、代わりに相手の身を両腕で抱き支えて遣ろう。

慟哭だ。 精神的にも、不安定以外の何物でもない。
甘えたい、なぞと正面切って強請らざるを得ないほどに追い詰められている時点で
きっと、もう相手はギリギリなのだろう。
己に今できるのは、責めて其の涙に付き合って遣る事くらいだ。)

「―――――……ほら、来い。」

(促して、己が膝上に招く。
叶うならば、其の身を正面から、ぎゅうと、甘やかす様に抱き締めてやろうか。
背をなぜ、後頭部をぽむぽむと撫ぜながら、自らの肩に涙を招く。
泣きたければ、思い切り泣けばいい。 他に誰も聞く者など居はしない。
甘やかしてやると告げた通りに――其の耳元で、囁こう。)

「―――――……お前は、頑張ってるよ。
其の頑張りが、どうか報われりゃ良いって願ってる。
……だからよ、せめて、もう少し甘え上手になりな。 ……こんな貯めこんじまう前にな。」

グレアス >  
「よく言われる。俗っぽい傭兵の剣って
 あはは、イーヴィアの剣をあんなにするんだから未熟だって」

家庭での経験か、褒められたことのないこっちは未だ自身のことを未熟者だと思っている。
最前線で傷つくのもそれが原因じゃなかろうかとも
出撃の度に毎回神経をすり減らし、小さな傷を作っているのも
自身を過小評価する対象になっていて。

そして、こっちを咎めたわけではないと言ってくれたイーヴィアに
安心したかのような笑顔を浮かべて。

「むしろ地下ほってるぅ? やだなぁ、もう
 ……ありがとな? そう言ってもらえるだけで嬉しい
 あはは、勿論――っ!」

引き取ってやれなくなる、その言葉を聞いてしまえば
騎士を続けている理由が揺らいでいく気がするほどに歓喜で
心が満たされて、溢れていた涙が増えていく。

「イーヴィアぁ……!
 うわあああああああ!! なんでアタシばっかり!!
 他の人でもいいじゃん! なんで、なんでえええ……!」

自分が全ての不幸を背負っている気がしていた
それでそんな言葉を吐いたものの、イーヴィアの膝の上に招かれたら
するりと膝の上に乗ってイーヴィアの背に両手を回して抱きしめよう
顔をイーヴィアの胸元に擦り寄せて、涙を服に染み込ませながら
幼児が無くようにわんわんと泣き喚く。

「昔からっとうちゃんかあちゃんも厳しくて、あまやかされたことなくてっ
 騎士になったら変わるのかなっておもったらちがくってっ!
 きらきらすることもできなくてぇぇえええ!!」

きらきらとは、昔見たパレード、それのことで
キラキラと輝いて見えた騎士が、薄汚れて今は見えていた。
それでもイーヴィアに抱きついて泣きちらして、たっぷりと甘えたら
グスグスと鼻を鳴らしながら顔を上げて。

「ごめんねイーヴィアぁ……愚痴ばっかり聞かせてぇ!
 うぇええええっ!」

イーヴィア > 「……良いか、剣に上も下も無い。
お上品な剣の振り方でも、其れで死んじまったら何の意味も無いんだ。
御前は、御前にとって必要な剣が身についてる。 何としてでも生き残る為の剣がな。
だから胸を張れ、気にすんな。 御前を碌な目に合わせない連中の評価なんて、聞いて如何すんだ。」

(鼻で笑ってやれば良い、と、自信を持たせる様に。
戦場では、前線では、何よりも生き残った者こそが語る資格を持つ
剣を振るわなかった者に、何かを評する権利なぞ無い、と。

赤子の様に泣きじゃくる相手を、きっと、暫しの間あやすだろう
どんな叫びも、どんな怒りも、何もかもを許容してやり
結果、胸元がいくら濡れようが、別に気にする事じゃない
――何時もの様に。 一寸した兄貴分の様に。
其の嘆きに、寄り添う者も居るのだと、教える為に。)

「―――――――………、……。」

(――――暫くして、すっきり、とは行かないまでも
激情の波を落ち着かせた様子の相手が、此方を見上げるなら。
見下ろす瞳が、自らの服の袖口で、ぐしゃぐしゃな顔を、ほれ、と軽く拭って遣りながら。)

「――――――……構いやしないさ、判ってて呼んでんだからな。
全く、不器用過ぎて、甘やかさないと泣く事も出来ねぇなんてよ。
……ほら、可愛い顔が台無しだぜ?」

(ふ、と、からかいめいて、そう囁けば。
軽く袖口で、相手のぐしゃぐしゃな顔を拭って遣ろう。
そうして、緩やかに其の額へと唇を寄せれば。 柔く口付けを落とし。
そして、其の目元に又、唇を落として擽った後で。)

「――――……足りなきゃ、まだまだ、甘やかしてやる。」

グレアス >  
「……うん、うん……ありがと、ぉ!
 イーヴィアに言われた通り、むねを、張ってみる
 クソ野郎どもに言われた言葉も、鼻で笑ってやる
 だから……だか、らぁ……剣、いつもどおりにつく、て?」

イーヴィアの言葉に救われた気がして、評価を真面目に聞いていた自分が
バカのように感じて、気持ちが上向きになっていく
涙腺が馬鹿になったかのように泣きじゃくって、イーヴィアをしっかりと抱きしめて。

「イーヴィアぁ! イーヴィアぁ!」

しこたまイーヴィアの胸で泣いて、あやしてもらって
苦痛の叫びも、溜め込んでいた怒りも、全てを許容してもらって
もう名を呼ぶことしかできなくなって、寄り添ってくれる人がいることに
感謝を伝えよう、ゆっくりとだけど、泣きじゃくりながら。

「あり、がどぉ!」

感謝を伝えて、暫く泣き叫んでいたものの
激情が一旦落ち着いてきたらしゃくりあげながらも
顔を拭ってもらったら、涙を懸命に収めようと試みて

「んぷ……本当に、いつもありがとう……アタシは、一人で、泣けなくて
 いっつもいっつも、心が沈んでて……んぎゅ、可愛い……えへへー」

からかいめいた言葉に、本気になってしまって
照れたように顔を赤らめていたのだけど、額に口付けを落としてもらって
それから目元、唇にまでイーヴィアの唇が来ると、ぺろり、唇を舐めよう

「……うん、もっと甘やかして?」

ぎゅぅ、そうやってイーヴィアを強く抱きしめたなら
憑き物が落ちたような、そんな晴れやかな笑みを浮かべよう

「ね、ね……おかえし、させてほしいな」

そう言って、甘えるように胸元に懐いたあとはベッドへと視線を向けて。

ご案内:「ヴァルケス武器防具店」からイーヴィアさんが去りました。
ご案内:「ヴァルケス武器防具店」にイーヴィアさんが現れました。
グレアス > 【お部屋移動致します】
ご案内:「ヴァルケス武器防具店」からグレアスさんが去りました。
ご案内:「ヴァルケス武器防具店」からイーヴィアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミンティさんが現れました。
ミンティ > 朝早くから図書館へ出かけた帰り道。借りてきた鑑定用の資料本がずっしりと重たく腕に負担をかけている。貴重な本だから、うっかり落として傷つけたりしてしまわないように、慎重に抱きかかえながら、のろのろとした足取り。
出かける時にはまだ人通りがすくなかった往来の空気も、今ではすっかり賑わっていて。威勢のいい掛け声をあげながら荷車を引いていく荷運びの人とすれ違うたび、ぶつからないだろうかと内心ひやひやしたりした。

「ええと…あとは…」

せっかく外に出たついでだから、他に済ませる用事はないかと小首をかしげて考える。休憩用や応接用のおやつはこの間買い足したばかりだし、日常品もだいたい揃っていたはず。
そんな風に考え事をしながらぼーっと歩いていると、遅めの登校らしい学生とすれ違う。制服姿の彼ら、彼女らにふと視線をひかれて、しばらく足を止めた。自分も生まれが違えば学校に通っていたりしたんだろうか、なんて想像をして。

ミンティ > 出身の孤児院は環境のいいところだったし、身寄りがなかった自分でも、今ではお店を任せてもらえている。これまでの人生にはあまり不満もないけれど、同じ年頃の子たちを見ていると、ときどき考えてしまう。
冒険者だったり、違う仕事をしていたり、学生だったり、自分がそんな風に生きていたらどんな感じなんだろうと想像してみるものの、あまりはっきりとした像は浮かんでこない。

「やっぱり…」

たまには気分転換に、いつもの地味で野暮ったい服装を変えてみたりしてもいいのかなと思う。ふと目についた洋服店のショーウィンドウに飾られている可愛らしいデザインの服を、しばらくじっと眺めて。
その視線が、今が仕事帰りらしい、娼婦のような雰囲気の女性に移る。大人っぽくて派手な装い。ああいう服も、なんて考えたけれど、自分の胸元を見下ろして、小さく溜息。

ミンティ > 胸元に視線を落とすと、当然ながら抱きかかえていた分厚い本も目に入る。仕事のために早い時間から図書館へ向かったのに、と我に返り、雑念を追い払うために頭を振った。
こんなところで立ち止まっていたら、ますます開店する時間も遅れてしまうから、ふたたび歩きはじめると今度は早足で、大通りの向こうへと姿を消していき…。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミンティさんが現れました。
ミンティ > 一日の仕事が終わったころには、外はすっかり暗くなっていた。夜は冷えこむ季節だから、特に用事がなければ、普段なら家でゆっくり過ごしている時間。けれど今日は、お財布にそれなりの金額が入っている事を確認してから外に出る。
向かった先は、自分のお店が並ぶ商店街からはかなり離れたところにある広場。円形の敷地内は、若年層向けのお店がぐるりと囲んでいる。もうすこし行くと大人向けの施設だったり、いかがわしいお店もあったりする関係で、日が落ちてからも賑やかさが薄れる事がない。
集まる人たちも自然と、地味で奥手な自分とは真逆の、派手な印象の人が多く、いつもならまず近寄ろうともしないのだけれど。

「…はぁ…、は…ぁ……、つか…れた…」

普段の地味な装いから脱却する挑戦くらいしてみようと洋服店に入る。買い物が終わるのに結構な時間をかけて、お店を出るころには少々ふらつき気味になってしまった。
緊張のせいで顔も手も熱くて困る。膝もすこし震えている。そんな状態で、ぎゅうっと紙袋を抱き締めた。かなりの心労を溜めこんだものの、はじめて入るお店でしっかりと買い物ができた。それだけで、ちょっと誇らしい気持ちになる。
この勢いで、他のお店にも入ってみようか。それとも、近くにはカフェや公園があった気がするから、すこし休もうか。考えこみながら、息を整えようとして。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にロブームさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からロブームさんが去りました。
ミンティ > しばらくすると呼吸は落ち着いてきたけれど、胸の鼓動はまだ小さく高鳴ったまま。足も、ふらつくほどではなくなっているものの、膝に力が入っていない気がする。
なにより、なかなかおさまらない頬の熱さを考えると、さらに新しいお店に乗りこんでみるなんて、自分には到底難しそうに思えた。すこし、夜風に当たって熱をさまそう。そう考えて裏道の方へと足を進める。

「あれ…?」

こう進んだら、暗い時間でも魔力灯が並んだ静かな公園があったはず。そう考えて歩いていたけれど、気がつけば元の広場に戻ってきてしまう
このあたりには、あまり足を運ばないせいで地理の感覚が曖昧だった。今歩いてきた裏道を振り返りながら小首をかしげ、どうしようと考える。まさか二度も道を間違えるなんて事はないと思いたいけれど、すこし自信がない。

ミンティ > 考えている間、ちらちらと視線を向けられている気がした。いろいろな人が利用する大通りならともかく、このあたりだと、自分の地味な服装では浮いてしまっているのかもしれない。
そう思うと、とたんに恥ずかしくなって、頬の熱さがぶり返す。とにかく移動しようと、あわてて踵を返すと今来た道へと逆戻り。そのまま裏道の暗がりに姿を消していって…。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からミンティさんが去りました。