2021/10/23 のログ
リコリス > 「…一人で飲んでいるのもな」

店で一番高い酒を何本か空けつつ、リコリスはため息をつく。
生憎仕事仲間を誘おうにも皆仕事に出ており、仕方なく一人で来たのだが。
やはり少々寂しいかもしれない。

「……誰か絡んで楽しそうなのでも探すかな」

リコリスは店内を見渡す。

リコリス > しかしなかなか面白そうな客も見つからず、一人で飲む夜は更けて…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」からリコリスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」にロゼさんが現れました。
ロゼ > (酒と夜に煽られての喧しさは、フロアの空気をより陽気に飾る。人好きのするマスターの構えた人気の酒場だ。どのテーブル、カウンターも人で埋まって、だから仕方なく立ち飲みする者でさえいる。自然とそこここで生まれる会話から、冒険者、町民問わずが各々の交流を楽しんでいた。 ―――――女はここが好きだった。)

ありがとう。

(酒場の隅、こじんまりとした窓際のスツールに腰かけ、給仕の娘が運んできたジョッキを受け取り歯を零す。黄金色に泡立つエールがなみなみ注がれたそれは、小奇麗な娘が気恥ずかし気に煽るには随分と気風の良いサイズだ。よく冷えたジョッキの持ち手を握りしめ、品よく紅の弾かれた唇で淵を食む。傾けると、ぐび、ぐびと白い喉が嚥下した。たちまち満悦気に大きく息を抜き、)

っ―――はぁ~、 おーいし。 最高。

(ごとりとジョッキを卓上に置き、スツールにせ凭れて天を仰ぐ。)

ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」にエズラさんが現れました。
エズラ > 喧噪の合間を縫って、男がひとり、女の前に姿を現す。
剣と戦しか知らないと言わんばかりの肉体と風貌を兼ね備えている。
おまけにその瞳には、酒と女をもこよなく愛する者特有の笑みが浮かんでいた。

「よう、姐さん、少し一緒、いいかい」

ジョッキの置かれた卓の向かいに腰かけ、己の手にあったジョッキを隣へ。

「向こうの仲間から聞いたんだがよ――本当かい、つまり――伯爵夫人娼婦様、てぇのは」

不躾な問いかけ。
しかし、男の目線に相手を品定めするような気配はなく、むしろ――
さながら戦場における勝敗の帰趨を敏感に察知するかのように、己の問いが「是」であること――
つまりは、かくのごとき酒場にあって尚、失われることのない「品」を、目の前の女に対して認めざるを得ない、というもの。

ロゼ > 唇の端にエールの白い泡がつく。それを、細長い舌先でぺろりと擽り拭うは妖艶に少女を溶いたような仕草。鼻から抜ける酒臭さも自分の香料に織り交ぜてしまえば何を恥じることもない。もう一口飲もうかとジョッキに手をかけた丁度その時、酒場の明かりを遮るようにして女のかんばせに落ちる影。ふとそちらを見上げると、

「なあに、ぶしつけな男ね。」

むす、と唇の先を尖らせたものの、目は笑っている。
酒の無礼講である。さらには、彼の申すに間違っていることはない。
傭兵然とした身なりに、土と血、けぶるような戦の埃の匂いがして、それが何となく煙草の苦さに似た匂いだなとぼんやり思った。
尖った口はすぐにほどかれ、華奢なヒールのつま先で彼が腰かけたスツールを小突いた。

「もちろん暇をしてたところよ、つきあってちょうだい。」

エズラ > 「こいつは嬉しいぜ――」

促されるままに隣の席へ移動してから、相手に対し杯を掲げてから己の喉を潤す。
そうして、改めて間近からその姿をじっくりと眺める。

「オレはエズラだ――まぁ、見ての通りの男だぜ」

酒場で女に対して不躾な問いかけをする剣を佩いた男に、そう複雑なのが居るはずもない。
それに対して、彼女は奇妙。
自分で問うて、薄々答えを感じ、かつ相手も否定はしないのだから――答えは出ているも同じだが。

「いやしかし、たまげたな姐さん――なんつうのか、堂に入ってらぁ」

酒場でひとり、エールを傾ける姿が、異様なまでに違和感なく風景に馴染んでいる。
高貴なのか、野卑なのか――どちらにも傾かないような、興味をそそらずにいられない姿。

ロゼ > 先ほどより近しい距離で注がれる視線がくすぐったい。
”見ての通り”ともすれば、剣を振るい金を得て、稼いだ金で酒と女を煽る男のイメージが安直に浮かんで可笑しかった。鈴を鳴らすように呼気を吹き出し、ころころと笑う。

「―――ロゼよ。 あたしをつまみに、お酒飲んでく?」

からかう様な声色で、ジョッキの持ち手に指を絡めた。両手で添え持つ方が手首に負担なくて楽だと、そのまま唇に近づけて一口、二口―――いや三口。夏にあおる水みたいに飲み下して、ジョッキを咥えたまま  はあ、と満足の嘆息。エールの気泡が割れて、女に返ってくる。 心地よい。

「貴族がやすーいお酒飲んだって良いでしょ、 好きなんだもの。」

是非を問うているふうではない。ちら、と横を向き呟く。
確かに貴族で娼婦なんて珍しい。近衛もつれず大衆の酒場になんて誰も来ない。

エズラ > 「何杯でも、うまい酒が飲めるだろうぜ――」

相手につられてこちらもからかい半分で、思わず笑みが浮かぶ。
実際、杯を傾ける動作がいちいち男の目を惹いてならぬ。
それは貴族が晩餐の席で手のひらよりも小さなグラス傾ける動作ではなく――
むしろ、己が戦場で飽きるほどに見る、酒盛りの場でのそれ。

「安かろうが高かろうが――よく言うだろ、「誰と」飲むか、ってな」

そう言うや、喉を鳴らして己の杯をたちまちに空けてしまい。

「フーッ……思った通り!うまい酒だ」

横目に女を見てムッフッフ、と今度は助平心を隠さぬ笑みを浮かべ――もう一件、はしごしねぇか、と誘う。
無論、それは単に酒を飲み交わそう、という意味でなく――

ロゼ > 「そうね、 美味しい。」

現に、女は既に美味い酒を飲んでいる。
つまみの男も香ばしい。飲みっぷりも悪くない。
男が一気に酒を煽る様子に負けじと、いくら飲んでも乾きっぱなしの喉にエールを流し込んだ。
ごとりとジョッキを卓上に、ほどよく酒で色づいた頬を隠しもせず鼻から酒精を抜く。

横合いに感じる女好きの笑みはいっそすがすがしい。
はしごの誘いも、なんだかあけすけでこれもまた可笑しかった。
ふうと一息、チューブトップの内側、胸の谷間から取り出した金貨を給仕の娘の盆上に置いた。
男と女の代金にしては釣りがあまりある対価でおあいそだ。

「 馬車賃よ、ほろ酔いに歩かせる気 ?」

抱いて行けと言うのだ。スツールに腰かけたまま女は男を見上げた。

エズラ > 手際よく会計が済まされて、「オレが奢るぜ」を言い出す暇もない――
と思いきや、これまた堂に入った要求に、数秒、呆気にとられていたものの、すぐに「参った」と言わんばかりに頭を掻いて立ち上がり。

「ご随意のままに、お連れ申しあげまする」

傭兵団を雇う連中――つまりは高級な装備に身を包んだ「騎士様」がやる、見よう見まね。
己が胸に手を当てながら、腰を曲げて一礼――それは正式なものとはかけ離れた振る舞いなれど、意外にも姿勢は悪くない。

「――と言うより、「お攫い申しあげる」っつぅべきかね――」

笑みはそのまま、苦もなく姫のように女を抱き上げる。
あとは足取りも軽く、「どいたどいた」と喧噪を掻き分けてゆくのである――

ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」からエズラさんが去りました。
ロゼ > 慇懃な一例の仕草は、今夜ここにきて初めての驚きであった。
眉尻をやや斜めにあげ、ほんの少しの感嘆とともに、椅子に座ったまま胸に手を添え辞儀をした。敬愛と洗練を込めて。

が、そんなかしこまったやり取りも短かに終わる。
ぐっと腰を描き抱かれ、姫抱きに掬い挙げられた。
とっさに首後ろに腕を回し、肌触りの悪いくたびれたシャツやブーツ、ベルトの触覚を妙に新鮮に感じながら。

「 ――っふふ、どうぞお好きに。 あなたが気に入ったわ。」

破顔は愛らしく、少女らしく。
ドレスの裾をたなびかせ、男のはしごを辿る道すがら――――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」からロゼさんが去りました。
ご案内:「ヴァルケス武器防具店」にイーヴィアさんが現れました。
ご案内:「ヴァルケス武器防具店」にコルボさんが現れました。
イーヴィア > (週末の慌ただしさも次第に落ち着き、迎えた夜
夕方からの、一通りの客対応を終えて、一息ついでに椅子へと座り込み
積まれた注文書の幾つかを、ふーむ、と掲げながら改めて目を通し。)

―――――……やはり、目立つってのは何にも勝る広告、か。

(――少しばかり、思案に耽るように。
此れ迄も、己の会心の出来と思える様な作品はあった
だが、それらが人目に広く晒される事はと言えば、余り無かったろう
だが、此処最近の作品は、身に着ける者が身に着ける者故に、大きく人目に晒された
結果――其れを目にしたものからの注文や、来店客などが目に見えて増えたのだ

閑古鳥が鳴いて居た店では無かったし、何ならこれまでも忙しい店では有ったが
真面目に、従業員を増やすべきか考える程度には、変化を感じる
――貴族なんぞに着て貰いたがる輩が多い訳だ、と、何と無しに思い至っては
やれやれ、とため息を零しつつに。

ちらり、窓の外を見る。
陽も落ちた頃、凡そそろそろ、か。 今夜はもう一人、来客がある筈だ)。

コルボ > そんな、噂を耳にし、戦場で奮うさまを目の当たりにして門戸を叩いた一人が姿を現す。

王都の懐刀、狂人と名高い”怪力令嬢”の勇猛に耐えうる武器を打ち上げた名工。

「ごめんくださーいっと。そろそろ大丈夫ッスかね。」

 手には大きな袋を携えてふらりと現れた、一見すれば軽率そうなごろつきが一人。

「……外から見てたッスけど、前より客増えました? ここ」

 上客、金払いというより武器を実際に現場に持ち込む者がどれだけいるのかさておき。

「ひとまず、最初の一組と、お願いした武器のほう、確かめさせてもらいにきましたよ」

イーヴィア > 「―――――……おっと、来たな。 大丈夫、今しがた落ち着いたトコさ。」

(小休止、と言えるくらいの休息は差し挟めた。
訪れた来客の姿に視線を向け、カウンターからひょいと片腕を掲げて見せつつ。
今はもう、問題ないと、安心する様に言うだろう

――持たれて居た椅子から、ゆっくりと体を起こす
ぎし、と、椅子の軋む音が大きく響き。)

「御蔭さんでね。 ま、基本的には有難い事さ。
ただ、いい加減本格的に人手を募集しないと、てんやわんやになりそうだな…。」

(当てはない。 ついでに、誰でも良い訳では無い。
結果、引退済みの傭兵や、元盗賊、元冒険者なんて連中ばかりが店員を遣って居る訳だが。

兎も角、忙しくなったからと言って、仕事に後れを取る様な事はしない
相手の用件は初めから分かって居る、だから、ゆっくりと立ち上がれば
既にカウンターの裏に用意してあった、木造りの箱を持ち上げ、相手の目前へと置き
其の蓋を、ゆっくりと開いた上で、その中身を示す様に、相手へと向けようか

――其処に在る物は、二振りの刃物と、5つの指輪
そして――束ねられた、極細の鋼糸が10本、輪となって居る。)

「出来てるよ、確かめてみな。 妥協はしてねぇと、断言出来るもんだ。」

コルボ > 「なら、お言葉に甘えてっと。

 なんつうか、見た感じ”従業員”は多いが”職人”の募集にゃ引っ掛からない感じなのかね。」

 手先が器用、要領は良いが業物を造る技工が他に多く在籍しているか、と言えば最初の頃と変わらない印象で。

 そんなことを考えていれば、木箱を取り出して品を見せる仕草に、中身を覗き込む。

「……なるほどな」

 まずは依頼した得物。フセットとマインゴーシュ。
 スティレットの派生型のそれは、刃物というには均等な円錐、刺突と受けに特化した形状。
スティレットとの最大の差である目盛には、銀色の金属が埋め込まれていたのを見やって

「……聖銀かこれ。確かに金とつてがあれば手に入るが。それで目盛か……。その辺失念してたな。」

 通常は刻まれる目盛を、別途金属をあてがうことで
 戦闘時にもわずかな引っ掛かりもない、受け流しに一切の余念を残さない構造になっていた。
 ……実際、格上や化け物じみた相手との打ち合いになればその引っ掛かりさえ利用してくるイカレた奴もいた。

 マインゴーシュのほうともなれば、刀身を厚めにした攻撃力を持たせたもの。

(こいつぁ……)

 改めて、この二振りの得物は一組に生まれ変わったのだと感じ取る。
 攻撃用途のすきを減らし、受けの性能を重視されたフセット。
 本来受けや隙を突く間隙に用いられるマインゴーシュに攻撃性能が加味され、

 どちらでも受け、どちらでも攻められる、変幻自在の運用に切り替えられるようになっていた。

「ダマスカスに、ナックルガードは別の合金か……。
 分かりやすくバランスよく調整されてるし欠点全部補ってるし、すげえってか怖えなここまで来ると」

 でも、と言いつつフセットを手に取ると、大きく呼吸を吐く。
 ……目盛に施された聖銀が、呼吸に呼応するように淡く光を伴い始めて。

「……面白いことが一つできそうだなこりゃ。
 現場で使う分な以上箱の中のものを見て断言するのは速いだろうが、
 先に報酬上乗せで話しといてよかったなこりゃ」

 箱にフセットを収めると、指輪に最初首をかしげていたが、手にして、構造を見て、鋼糸を見ると、小さく口を開いて用途に気づき。

「なあ、この糸、一本でならどのぐらいの重さに耐えられそうだ?」

イーヴィア > 「あー、そりゃあな。 この店の物は、全部俺が作ってるからだ。
募集してんのは、俺が制作に集中出来る様に、商売や管理を任せられる奴だな。」

(――全て、この店に存在する製作物は、包丁から大剣まで何もかも。
自らの責に於いて造り出されたモノなのだと、告げる言葉は、至極あっさりと。
そも、他の職人は一切おらず、また募集自体もしていない。
ヴァルケス武器防具店、と自らの名を掲げた以上――己が作るのが流儀なのだから

納品物を確かめる相手の様子を、己は静かに見守ろう
初めからとやかく言う必要も無い、初心者向けの説明なぞ、相手には要らぬだろう。)

「――フセットは使い勝手の良い武器だ。
だが、本来主装備になる様な武器じゃない。 目盛の溝なんざ、戦闘には役に立たん。
とは言え、だからと言って目盛りを削っちまったら、そりゃあ只のマインゴーシュだからな。」

(聖銀、と言った言葉には、緩く頷いて見せた。
希少金属では在るが、必要なのは、教会などへの人脈だ
当然、己が鍛冶屋故に、多少なりとの伝が有る。 あくまで――人の手がなし得る程度の贅沢、だ。)

「当然本物の聖銀だ、死霊や亡者の類には効果がある。
そっちのナックルガードは、同じ材質で纏めたんじゃ、指がイカレちまうからな
俺の独断で、馴染み易い形にはしてる。 ま、指の防護としちゃ最低限だな。」

(もっと、細くて華奢な護拳も存在するが、はっきり言ってお洒落みたいな物だ。
本物の戦闘を考えれば、取り回しを阻害しない程度には、必要な幅広さ
最悪護拳での受けも可能な強度は確保したと教えつつ。)

「――――アンタ、目方はどのくらいある?」

(ふと、そんな問いを返してみようか。
もし、相手が凡そ見目通りの目方であったとするなら
きっと、少しばかり考えた後で、こう言うだろう。

――ただ吊るだけなら、7~8人てトコだな、と)。

コルボ > 「……マジかよ。この量を一人で?」

 頭を抱える仕草をする。情報屋の側面を持つにも関わらず自分が

 先入観だけで物を見ていたこと、そして目の前の人物が想像以上に並外れたことを想定しなかったことに対しての仕草で。

「なら、金勘定や伝票整理できる奴、っか。
 こっちでもツテがいねえか探って、アタリがつきゃこっちに声かけるように言っとこうか?」

 ……読み書きや計算をしっかりできる者、となれば、損をしないように冒険者が自然と身に着けるからこそ、そちらのほうがメインになりそうだが。

「ありがてぇな。スケルトン相手なら頭蓋なり腰骨なりけり崩せばいいが、
 ファントムだのには出費がかさむからな。」

 フセットを見やりつつ、マインゴーシュも手にして、軽く取り回しを確認する。
 一見すればジャグリングに近い動きだが、鍛えこまれた指先で扱う動きからは風切音が絶え間なく聞こえ、
 遠心力を活かしたパリィや護拳部の局面を用いてのいなしも選択肢にはいり、
 クロスレンジでの力の流れを支配できるともいえる仕上がりで。

 ……元より重心が崩れているようなことは考えてはいなかったが、それ以上に”振り回しやすい”
 刃で、柄で、護拳部で変幻自在に受け流しが出来る。
 防戦に徹する自分のスタイルであればよほどのパワーで押してくる相手か余程の格上でなければ凌ぐことは出来る代物に目を細めて。


「体重は、人より軽いつもりだけどよ……。」

 このぐらい、といくらか平均より低い数字を指で示しつつ。

「……7から8か。括る場所の強度をおいとけば、俺一人がぶら下がって少々跳ね回るぐらいなら大丈夫そうだな。
 にしても、うーん、旦那一人でやってたのか……。」

 追加で注文したいが、想定外だっただけにうーんと唸り。

「……旦那の業物は他の欲しがってる奴にも回ったほうがいいもんなあ」

イーヴィア > 「―――ッハッハ。 ドワーフ舐めんなってトコだな。
伊達に先祖代々、鍛冶一本でやってきてる訳じゃあねぇって事さ。」

(勿論、一日で一気にこの量が出来る訳では無い。
日がな炉と向き合い、金づちを振るい続け、完成した物を積み上げて行く
日々の積み重ねが、この店の品揃えである事には違いないだろう

まぁ、其れを差し引いても、規格外の作業量だろうが。)

「あー…そうしてくれっとありがたいな。
ただ、できりゃあ度胸があって、ある程度力仕事もこなせると良いんだが…。」

(――そうやって、採用基準が上がる為に、人が余り増えない。
今いる連中も、もう大分古株ばかりになりつつあるのは、そのせいだ。
馬車馬のように働かせる心算は無いし、現役の冒険者でも構わない
休暇との折り合いは相談の上で決めれば良いし、融通は利かせる心算なのだが。)

「―――とは言え、暫くは慣らす事を勧めるぜ。
獲物が変われば感覚も変わる。 咄嗟の時、変わった感覚に追っつかなくなる事も在るからな。」

(達人でも。 ――達人だからこそ。
僅かな誤差が命取りになる事も在る、と、油断はせぬように忠告しつつ。
相手の言う用途を聞けば、ふむ、と少しばかり腕組みして思案し。)

「―――吊る方法を考える必要はあるかも知れんが、その位なら問題ない。
女連れで、密林の蛮族ごっこも出来るだろうよ。
まぁ、確かに工程は面倒だが…何、心配すんな。 逆に言えば、俺が工房に引き籠れる位に従業員が足りれば
何の問題も無くなるんだからな。」

(結局、作業を妨げている最大の要因は、自分が工房に籠って居ない時間。
店主としての挨拶や、交渉などの様々な事を、一通りこなさなければならない部分にある
こうして日が落ちた後ならば、別に一向に構わないのだが、昼間は適うなら引き籠りたいのが鍛冶屋の本音で在り)。

コルボ > 「そういう種族だって片付けられちまうと、そういうもんかって、
 いやなんねえだろおかしいだろ。」

 何も王都で稼業に営むドワーフは彼だけではない。
 だがここまではそうそうお目にかかれない、ましてや質が世に轟くほどの水準で維持していて。

 ……友人のサイクロプスの鍛冶屋も没頭するタイプだが、こちらも大概である。

「金勘定に度胸に力仕事かぁ。難しいなあ。
 ツテってより”そこまでやれると他にも仕事がある”しな。
 俺みたいに依頼の流れとかに興味ある奴なら話は別だが、
 ここじゃきな臭い仕事は受けないだろ?」

 流通の変化から事件やネタを嗅ぎ取ることもするが、ここでは表ざたに出来ない仕事を受けるか、と言えば首をかしげるもので。

 本当に受けてないかどうかは調べたこともないので断言はできないが、
 だが、切れ味や性能を追求し、結果を見出すほどに踏み外した人ではなかろうとも。

「ああ、そりゃあまあな。使いやすいのと馴染むのは別だし、毛先ほどの油断で一回死んでハイ終わりってのが本来冒険者だのだしな。

 格下の盗賊団の根城探りつつ練習相手になってもらいたいが……、山の方はそろそろ雪が気になるしなあ。
 手頃なヤサでもないもんか。」

 さっき貴方を非道な試し切りとかさせる人じゃないだろうと思いつつ、自分は滅茶苦茶試し切りに行くクズ野郎は、引きこもれるぐらい、と言われれば頬を掻いて。

「そりゃあれば助かるしやってほしいし、色々考えてるとある程度の品質保証できるところ、てな不可欠だけどよ、こいつを造るよりか、んー、いやでもその辺決めるのは旦那次第なのか」

 自分が提示したように何かの縛りを、テーマを持った品へ当たる。
 貴方に依頼出来たこと自体僥倖と言える鋼糸だが、それでも製作工程は一度決まれば単純作業であり。

 それを造っている間に、もう一振り業物が生まれるのではないか、とまで考えて

(あー、この人のファンになってんのか俺)

 ふと、その業物が生まれる瞬間を勝手に想像しただけで高揚していた自分に気づき。

「まー、実際旦那がどの仕事を受けるかはさておき、意識してツテが見つかるように目は配ってみるわ」

 その機会を少しでも増やすのがファンの役目であろうと思いなおして。

イーヴィア > 「何言ってやがる、鍛冶屋が鍛冶しねーで如何すんだっての。
俺の頭ン中は大概、酒と良い女と鍛冶仕事で出来てんのさ。」

(けらけらと笑い飛ばしながら放つ戯言。
鍛冶は仕事でも在るが、間違い無く趣味で在り、生き甲斐でもある。
其れが全てと定めた職人が、妥協する事無く研鑽するならば――其処に際限など在りはしない
まさに根っからの鍛冶師である。)

「まぁ、実際そうも言ってられなくなっちまったからな…
最悪金勘定と客対応が出来るんなら、力仕事は他の連中に手伝って貰うって感じでな。
華がありゃあ尚良しだが、まぁ、贅沢は言わんよ。
裏仕事ってか、表にしたくない仕事も内容次第だな。 気に入らなきゃ追い返すが。
武器に善も悪も無いし、武器が誰かの命を奪うって点は、誰が持とうが同じだからな。」

(――様々な意味を含めて、中立。
場合によっては、盗賊だと分かって居て武器の整備を受ける事も在るだろう。
何故ならば、其れが其の相手にとっての生きる術であり、其処に貴賤は無いと、そう考える故に。
其れを、道を踏み外すと言うならば、そうなのだろう。だが、其処には己なりの明確な基準が存在するのは確かだ。)

「何を作るか、作りたいかは俺が決める。 ……そうさ、判ってるじゃねーか。
第一な、何に使うかも知れない試作品が日の目を見たんだぞ? これが嬉しく無い筈が無いだろうよ。
頼みたいなら先ずは話を持って来い、相談は其れからだ。」

(勿論――納品する前提の話、だ。
この鋼糸であっても、間違いなく己にとって十分な業物である事に変わり無い。
剣や鎧に比べて目立たないかもしれないが、其処には鍛冶師としての技術の粋が詰まって居る
ならば、何の問題もあるまい。 相手が心配などせずとも、他の仕事を疎かにはしない。
其の為に、十分な納品期間を取らせたうえで、分割納品にさせて貰ったのだ。
だから、良いのだ、と、口元に弧を描き)。

コルボ > 「華ってか手ぇつけたりしない? むしろしないの?」

 酒と女と鍛冶師事。そう豪語する貴方へ俺ならすると言わんばかりのアンサーを求めて。

「……まあでもそういうことなら、俺にも利はあるし客対応と帳簿整理ぐれえはやれるよ。
 ついでに新しい頭数引き込んで、経理のコツ仕込めばまあまあしのげるようにはなるんじゃないかね。」

 情報整理、数字からネタを導き出すのに自然と覚えた財務の仕事。
 一応雇われるだろうから金銭も得られるならそれに越したことはないと。
 ちょうど寒くなってきて街での仕事も増やしたかったところで。
 そして何より良くも悪くも中立。そこが良い。貴賎なく仕事も情報も流れ込むというのなら、
 願ったり叶ったりではあって。

「それに、後ろめたい仕事持ってくる奴ぁテメエでテメエのケツは拭くだろうしな。

 しっかし、何に使うか、とは言うがよ、旦那。もしこれが世に広まって作れる職人が増えれば、少なくとも文明ってレベルで革命が起きると思うがね」

 これほどの業物、最高級品はお目にかかれないとはいえ、鋼糸を人の手で作り出せる、というのは、
 なぜ誰も目を付けないのか不思議でならず。
 世の中にはミスリルで糸を作り織り込むものもいるが、そういうことが出来そうな、なおかつ希少金属では意味が薄い。

 鉄という普遍的な素材に、糸のような柔軟性を持たせ、なおかつ驚異的な強度を維持している。
 すべての条件をそろえたことが大事なのだ。

「俺も嬉しいが、これが今まで日の目を見なかったってのが、たまに不思議に思うんだよな……。
 それこそターザンごっことは旦那は言ったが、そういうこと今考えてるしな。
 ……なら、空いた時間時でいいからさ、もう2セット追加で頼めるかい?」

 鋼糸一つに無数の可能性を見出している男は、そう言うとやや申し訳なさそうに発注の提案をして

「てか今から自分で発注票書くか」

 俄然雇用というか臨時はやる気のようで

イーヴィア > 「逆にオマエ、気に入った相手なら、少なくとも一度は口説かなきゃ失礼ってモンだろうがよ。」

(其の結果、鉄拳制裁を食らえば無理強いはしないし、職権乱用もしないが。
そう言う所は問題無く、確りと欲求に素直である事は安心させよう。
ただ、其の上で相手が仕事に手を出せるなぞと言うならば
其れは意外だとばかりに片眉跳ね上げ、其れから、ふむ、とと暫し考えた後。)

「―――いずれにしても、もっと人は必要だから、ツテが在るんなら頼みたいがね。
働くってんならこっちは歓迎だ。 腕っぷしにも問題無さそうだしな?」

(男っ気は増すだろうが、と、戯言混じりながらも。
何なら、明日からでも人が増えるなら、此方としては願ったり叶ったりだ。
本当ならばもう少し面接なり、人となりだのを吟味する所では在るのだが
何せ、己に現在進行形で長期製作依頼中の相手。
血迷った事などする筈も無さそうだと、寧ろ安心出来る。)

「―――――そりゃオマエ、アレだ。 ……そう簡単に作れる奴が居れば、の話だろ。
腕の無い鍛冶屋が気まぐれで造ったとしても、精々その太さの3倍、強度も柔軟性もそこそこって感じにしかならねぇからな。
俺の作業量と精度だから其れが出来るが、同じモンを態々作ろうとして見な。
イチから初めて、何年かかるだろうなぁ?」

(――己が腕を、謙遜する心算などこれっぽっちも無い。
人間にも到達し得る技術では在るが、其れは、相応の努力と研鑽を費やした上での話だ
なら、此れが十分に量産される為には、己と同じ技量を持った鍛冶師を何人必要とするのか、と言う話である
そういう意味で、きっと、この鋼糸が革命を起こすには、まだまだ至らぬだろう。
無論将来的な事は判らない、が。)

「モノってのはな、利用しようとする奴が居て初めて輝くのさ。
よく斬れる剣と、煌びやかなだけの剣。 どっちに価値があるかってのは…見る奴次第なのさ。
2揃えか、構わないぜ。 クク、なら、うちの帳簿の付け方を教えさせるか。」

(――世の中、そう容易くは行かない物だ。
けれど、容易くないからこそ、挑み甲斐も有ると言う物だ。
机の中に眠って居た物が、こんな形で日の目を見る事になるのだから、人生は面白い
至極愉快そうに、笑みを浮かべ、そしてふと、店内に残って居た男の店員を呼び止めては
帳簿の付け方に付いて、目の前の男に教える様に指示するだろう。
週末で閉店間際では在るけれど、きっと、気前良く応じてくれる。
臨時職員の話についても、相手が望むなら歓迎して、話を進める筈だ)。

コルボ > 「分かる。口説くというかヤるまでもってく。」

端的に頷く。素直に言ってしまう。
鉄拳喰らわないように持ち込んでしまうチンピラなのだけれども。

腕っぷし、と言われれば手をひらひらさせて。

「よしてくれ。取っ組み合いは苦手だよ。そういう代物依頼してねえだろ?
 ……そうならないようにうまく丸め込むほうならやるけどさ。
 やれってなら動く前に腕ひねって”丸め込む”がね」

 まー、女をいれたくはあるなぁとしばし思案顔で。
 だが、職人から現状の他の職人の質とその差を聞けば。

「今はまだ全然、か……。実際俺もこれは”銘品”って認識だしな。
 だからこそ、少しずつでも旦那にこれ作ってもらえるのはでかいアドバンテージになるが、
 多分よほどじゃなければ、人相手には使わないだろうがな」

 自分の生涯の目標である人の手による魔神討伐。特記戦力に依らず、代替可能な人材や資材を大量に投入してなしうるそれが、
 いずれ遠い未来革命が起きればより容易になるだろうと。

「……先に言っとくが、結構酷使するぜ、こいつはさ」

 日の目を見た、使い手に巡り合った鋼糸達を一瞥してそう呟く。
 単独で絶大な魔力を行使するわけでもない、伝説の系譜に名を連ねる者でもない、
 ましてや魔剣名器に至っては本人から遠ざかり、触れる機会もなく。

 手にしたのは、人が手にするには少し早い、しかし無限の可能性を秘めた鋼の糸。

 それを得た工房で、臨時職員としての顔を得て、男は仕事を覚えていくだろう。

ご案内:「ヴァルケス武器防具店」からイーヴィアさんが去りました。
ご案内:「ヴァルケス武器防具店」からコルボさんが去りました。