2021/10/15 のログ
イーヴィア > (本来なら、迎えの一つでもやるべきなのかも知れない
だが、相手に限って、其れが必要とも思えないのは
知る者も、知らぬ者も、歯向かう程愚かな輩は早々に居ないと、そう思うが故か
例え使いを出したとしても、其れは最早、形式的な礼儀以外の意味を持たない

――護衛、などと言う理由で人を遣ろう物なら、其の方が失礼に思えるのだから。)

「―――いらっしゃい、用意は万端だ。 こっちに来な。」

(ノックの音には特徴が出るものだ。
三回のノック。 急く事の無い、軽やかな其れ。
訪れたのが、目の前の武人であると、直ぐに知れる要素の一つだ。
挨拶は短く、部屋の中へと通せば、裏口の内鍵を閉めた後で
相手を店の奥、依然通した部屋とはまた違う、今度は、より広い部屋へと招くだろう

均された、剥き出しの地面に、いくつもの木人形や、巻き藁が刺さった場所。
武器を振るいたいと要望する客の為、用意した試し斬りの為の。
或いは、軽い打合い程度ならば可能な部屋。)

「モノがモノだ、幾ら腕を信用されてても、試さずには受け取れないだろうしな。
嗚呼、荷物は、必要なら其処の籠に。 必要な物が有れば言ってくれ、用意する。」

(部屋へと相手を通しながら、入口に設置された荷物置き場に加えて
部屋の設備の一通りを説明するだろう。 ――木人形や、巻き藁の硬さの違い
人に見立てた物だけでは無く、獣に見立てた物も用意できると、そう告げつつに
部屋の中央を、掌で指示す。 ――其処に、刀掛けで飾られた、目的の物が在る事を、教える為に。)

「――――お望みの、大脇差だ。 検めてくれ。」

メイラ・ダンタリオ > イーヴィア・ヴァルケス
ドワーフの血を持つ赤髪の褐色体躯
メイラ・ダンタリオが武器を数多く遊ぶ癖がある割りに、鎧という一途になるしかない代物
それを依頼された唯一の人物

メイラの貴族としてよりも、ロングスカートを纏う者としての礼儀
それに対しイーヴィアは実にフランクだった
以前は、胸元に手を置いて互いに初々しく礼儀を交わしたこともあっただろうか
だが互いに、もはやと本命のみに対話したいとでもいうように
工房の中でも奥 野外ではなく屋内に築かれた其処は、武器屋では土地さえあれば共通だろう
試し斬りの場が用意されている。

「……ふふっ」

試し斬り 思えば実践同然にすぐに外へ出かけてしまう癖があるメイラ
最近では腰に携える愛刀が主だったものながら、刀の試し切りに対する無機物がこうも拵えられている
イーヴィアは、試してくれと 鎧とは違い、見ただけで納得はされたくはないというかのよう
無論、訓練場でならば幾度も無機物に打ちあいを行うものの どこか新鮮に感じるだろう

そしてメイラは、まるで背中に綿でも背負っているかのように気にも留めていなかった荷物
背負っていた革リュックの大ぶりなものそっとはずし、所定の場所へ置いた

荷物を外すことで、四肢に黒鉄を帯び 黒の衣と長い黒髪ばかりが映えるメイラが一人
腰に白灰色の糸巻き柄が見える刀を下げて、刀掛けで置かれた大脇差を見やった。
これが、メイラがイーヴィアに頼んだ初めての武器である。

研ぎや整備ならばともかく、一から武器を造ってほしいとメイラが望んだのは
腰に携える饕徹に並ぶ代物をメイラという戦狂いの家系が所持していなかったからにある
自身で見つけることもできずにいたメイラが、イーヴィアならば、と頼んだ

 コツッ コツッ カツッ

「……。」

刀掛けの前で、横の姿勢で飾られた大脇差
鞘袋に納めてくるかと思ったそれは、出来上がった新刀を惜しみなく全身を晒している。


―――丁度 願い通りの大脇差 わたくしの待っていた物
―――60㎝……を超えているくらいか 脇差よりも11㎝は長い。


「朱色の鞘に、赤鬼の鍔」

饕徹の白灰毛の糸巻き 黒鞘とは違い、メイラは唯一強請ったのはこの朱色と赤鬼だ
イーヴィアの意匠を込めて、それだけをメイラが希望した
朱色の、光沢を消した落ち着きのある深すぎない色の鞘
黒鉄の五指で握れば、丸鍔には黒鉄に赤銅で象った赤鬼が鍔に込められている

「雁木巻も、貴方らしいですわね。」

刀では一般的な、中心線に菱形が連なる様に巻いていていくものが多い
しかしこれは、握り柄の全身を真横に細かな段差が見えるように巻かれ続けた黒紫の柄
如何に実践で用いらせるかを、イーヴィアがメイラに向けているのが見える。

そして鞘を握り、刃を上に向かせてゆっくりと抜いた反り浅めの直刀に近い剣身

「……。」

全身を見る
試し斬りを望まれながら、全身を眺めているのは まだこの大脇差との顔合わせが終わっていない故

「うん。」

先ほどから、口元の三日月は消えている
ジッと赤い瞳が、大脇差と見つめ合って会話しているかのよう
クルッと刀を廻し、刃から峰へと向き直しつつ。

「まるで煙が立ったかのような刃文と、杢目肌ですわね。」

地肌に出る、折り返しの細かに積み重なる層
研ぎで生まれるあの横筋の流れも好きなものの、これはいくつもの木の瘤や節目ごと
形になる様に削りきったかのような肌が見える

メイラは瘤と例えた、年輪やダマスカスに似た地肌を見て
まるで鬼の腕を収め込んだせいのようにすら感じた 力瘤の痕のように思える
赤鬼と望んだせいか、更にそう思う。
雁木巻きといい、杢目といい、妖気起つような刃文
メイラの口元が ギギギッ と三日月の笑みを浮かべる。

「これならわたくしが扱っても、潰れないでしょう。」

そして、革ベルトで拵えられた鞘を納めるべき穴へと通す
此処に、二本差しのメイラの姿が出来上がった。

「さて。」

メイラは、手始めに木偶の方にでも向かうだろうか。

イーヴィア > (これが、美術品ならば、試し斬りの必要も無かったのだろう
だが、それならば相手が此処にまで足を運ぶ理由にはならない
求められて居るのは、刀、人を斬り、魔を斬り、仇名す全てを斬り伏せるもの
そして――相手が既に、其の腰へと携えている。 稀代の名刀に並び立つもの

――初めに、細かな説明を入れなかったのは、純粋な、忌憚無き感覚で検めて貰いたかったからだ
既に刀を携え、振るう相手に、刀と言う物を説明する必要は無い。
故に己は、暫しの間、自らが鍛った其れを眺める相手を眺め、見守る事と為ったろう。)

「―――――――………万一握りが切れても、直し易いからな。
美しさって意味じゃあ賛否両論かも知れないが、気にして振るえなきゃ意味がない、だろう?」

(雁木巻、其れを選んだ理由は、純粋に其の一点に尽きる。
他の巻き方に比べ、単純で特徴の無い巻き方では在るが、其の分実戦的ではある。
指の掛かりが均一になる分、如何握っても同じ持ち感と為り、荒い振り方にも対応出来るのだ

刃紋については、正当な東方の撃ち方とはまた、趣が異なる――所謂個性、とでも言うべきものか
元より剣において、ダマスカス紋を刻めるドワーフの鍛冶屋だ
其れを刀と言う武器にまで適応させようと試した事は、当然ある
だが、剣の性質と、刀の性質とが異なる故に、全く同じ物を刻む事は「不要」で有った
――だが、全くの無駄で有った訳では無い。 其の技術と経験は、刃紋に現れる。
其れが、完全な和刀とは違う、ドワーフの打つ刀と言う個性に繋がったのだろう。)

「魔剣や妖刀って呼ぶ程の、特別な何かが有る訳じゃあない。 ……だが、俺の持つ技術は確り込めさせて貰った。
普通の刀よりも錆や汚れに強い筈だ。 血や脂にも、な。 一人じゃあ、足りない事が多いだろう?」

(――ゆっくりと、口を開き、補足を加える。
一対一よりも、複数人を相手取る事の方が多いだろう、戦士に
たった一人しか切れぬ刀では、物足りる筈もあるまい。
木人形の前へ向かう姿を、少し離れた場所で眺めつつ。)

「――――中肉中背、平均的な戦士の其れだ。
体重は70から80ってトコか。 ……まぁ、手ごろだな。
芯には、骨の硬さも作ってあるぞ。」

(――今、相手が対する木人形の設定と特徴を伝える。
その左右にはそれぞれ、中央よりも小さい、または大きい木人形が有るだろう
人の形をして居るものは、人の骨格をも凡そ再現している。
只の木偶と思って無造作に切れば、手首を持って行かれかねない作りだ、が

――果たして、相手に必要な助言であったかは、如何だろう。
当然、自らその出来を試しはしている、が。 刀程、持ち手の技量が現れる獲物も無い。
己と、目の前の相手との差は、歴然だ。 其の差を――己もまた、目の当たりにすることを、愉しみにして居たのは
きっと、隠しようも無い事実であったろう)。

メイラ・ダンタリオ > 反りの強い 愛刀 饕徹
反りが極端に薄い 大脇差
抜刀という居合抜きで言えば当然饕徹に分配が上がる

反りが産む軌道のまま、抜けきった瞬間威力が始まるそれに比べ
大脇差を直刀に限りなく近づけたのは 受ける為 断つ為 添える為
凡そメイラは、この望んだ大脇差に用途を その 怪力令嬢 に相応しい使い方で感じている

何せ、この饕徹に関することを予めイーヴィアには知らせている
細かくどこまでも なんなら握らせて感じさせたっていい

その上で造ってくれと言われれば メイラはイーヴィア以外に当てはまる人材はいなかった

その上で、イーヴィアは、この饕徹に対する寄り添う相手に、直刀に近しいこの造りを選んでいる

この大脇差は抜き放ちのそれではない 抜いてからが本領だ。

「脇差で殺すような相手ではありませんわね。」

大刀でならばともかく、大脇差で殺るような相手ではない
中肉中背80㎏ 木偶の中に芯まで入れる辺り、イーヴィアの本気が伺える
似せて斬らせなければ、ただのチャンバラだと 繊維方向に断たれるだけの、節も瘤もない薪だと言いたいのだろう。

だから殺す。
メイラ・ダンタリオはこの大脇差で殺す


                     キンッ


小さく親指の黒鉄が鍔を弾く 雁木巻きの柄を人の指をかけて握り、抜いたそれ
後ろでイーヴィアが眺めているとしても、メイラは何も気にする必要もない。
今だ間合いがある中で、朱鞘に添えていた左手が共に握る

敢えて言うとなると 斬るという事とは、拘らないということだ


「―――■■■ッッ!!」

声ではない声
それと共に、飛び掛かる 山猫か豹のよう
袈裟斬りに、肩口から斜めに一線。
刃の中心より下から食い込ませたそれが、体ごと流れるように振り切られる瞬間

木肌肉人形は肩口から入り込んだ刃が、直刀に近い、威力の乗った触れ口から切っ先へと流れ斬るまで
奥に食い込み、左脇腹へと抜ける それは一刀両断ではなく 袈裟に“開き”にしてみせたかのような
大きく深い割れ目を産んで見せた。

力を乗せて、腰から上を右から左へ、廻し斬る
まるで山刀でも扱うかのよう しかし触れた刃から切っ先まで総てを流して触れさせるようにしながら
確実に絶命に至る開き 芯が割れ背中の肉を残した状態のそれ
確実に死ぬ斬り方さえできていれば、好い 真っ二つにしなければいけない相手ならば、真っ二つにすればいい
斬り方に、夢はいらない。 現実だけでいい。

「ん。」

ビシッと血掃いの動作
切っ先が弧を薄く描いて、地面に赤があれば描かれていただろう切っ先の線
ギギギギギと、肉がほぼ割られ、背中を残すのみとなったそれが、自然とバキリと折れて倒れるのに合わせ

「 フ ン ッ !!」

左の木人形の左腕を、左の五指が握り、ミシリと音を立てる
それと共に、押さえつけた相手に突き出す形で、大脇差を腹部へと突き刺すと貫通せしめ
そしてそのまま刃を強引に半回転させる。 貫き、屑口を広げて絶命させ、抜きやすくする法だ

そして右に残る方には、あろうことか大脇差を用いて、右肩口に貫通させるように投擲を行った
それの意味するところはつまり、本命の一撃は別にある。

「―――シ ャ ア ッ !!」

饕徹を抜きざま上段へ 両手に握り直したそれが、反りのきついそれを振り切るように
唐竹割に縦一文字 一撃の乗る部分から切っ先が地面に触れぬように振り切ったそれ
 バ カ リ と割れた木人形 芯が中心ではなく、身が少なく済むよう片側の先が真っ二つになる様に斬られている。
そして右の片割れが、ぐらりと離れる前に大脇差の柄に手を添え、倒れる力と共にカコンと抜き去った

大刀要らずに袈裟懸け
間合いの小さい場からの貫き力
動きを止める為の投擲

本来ならば弾くか、それでも貫かれるか どちらにしろ大脇差は十二分に映えている。
これが防御ならば、受け止める為 添える為に用いられ、怪力令嬢に恥ることない
両腕の腕力でミシリと耐えただろうか

多人数相手での二刀や、連撃同然の暴れは、もっと獣になれるだろう

「……。」

そして、終わった後の感触や、刃の具合を平たく寝かせて眺め。

「フゥゥゥ…… 大脇差に反りを限りなく浅くした、イーヴィアの気持ちが通じてると思っても、よくて?」

メイラとしては、初めてのお付き合いにしては、まずまずといったところ
同じくらい反りがきついもので御揃にされてしまっていたら、こうも自由度は高くなかったろう

イーヴィア > (――己は、極まった刀の”型”と言う物を未だ見た事が無い。
刀の打ち方は知って居る、だが、実際に其れが振るわれる様を見たのは、これが初めてだ
そう凡百の使い手では無く。 ただ"扱えるだけ"の者に振るわれるのではなく
刀と言う物を、熟知した者に、刀を自らの手足として、従える本物に、振るわれる様を

――大脇差、だ。 当然、居合での其れよりも、想起するは更なる近接戦闘
饕餮と言う、一刀必殺の刃が有る以上、同じ性質の刀は二本も要らぬ
己がもし携えるならば、必要とする二振りは、何か――
其れを突き詰め考えた末の、真逆の性質を持つ刀、だ。)

「――――――――――――。」

(言葉や冷やかしを差し挟む気分は欠片も無い。
裂帛の気合と、放たれる斬撃の鋭さを、固唾を飲んで見据える。
決して柔に作って居ない木人形だ。 普通の人間程度の力では、刃を叩き付けたとて、骨を断つ事は難しい
だが――今回ばかりは、相手が悪かったと言えるだろう。)

「―――――――……綺麗なもんだ。」

(――そう、評した。
斬れればいい、殺せればいい、絶命せしめるならば、形なぞ。
其の振るい方は寧ろ、一般的な感覚で言えば流麗さとはかけ離れた
寧ろ、暴力的な其れであったろうが――ある意味で、純粋に過ぎる、戦う為の其れ、だ

他の要素なぞ微塵もいらぬ、ただ、相手を斬る為に最適な動き
だが、其れが判らうからこそ――その、余りに無駄のない殺人の為の軌道が
美しいとさえ思えるのは、其れが一種の極致だからに他ならぬ。

一瞬だ。 三体の木人形が其のカタチを失うまで、ほんの一瞬の動作に過ぎない。
されど、少なくともそれがもう、元の形を取り戻す事は在るまい
実際――そうなるだろう予感はしていたし、そのつもりで用意した木偶であったが
いざ、其の瞬間を目の当たりにすると、自然、笑みが口元に浮かんでしまうのは――致し方あるまい。)

「俺の意図した通り、だが…俺の意図以上の使い方をされそうではあるな。
まぁ、其れでも問題ないさ、俺の作品だ、十分に応えてくれるだろうよ。
……大脇差、銘は窮奇。 アンタのお眼鏡に叶ったかい?」

メイラ・ダンタリオ > 刀で、華麗に 切り口も滑らかな引きずらない痕を残す
そんなことをしてのけるのは、刀に獲り憑かれたほどの猛者だろうか
メイラはまるで違っていた 殺せればそれでいい 応えてくれればそれでいい
それならば頑強な出刃でもいいではないかと言われればそうなのだろうか

それでも、腰に差す愛刀と寄り添える形で求めるある意味の贅沢を成した姿
叩き斬って 貫いて 投げ突けて おおよそ狂戦士が刀を握った姿というものが
こうなのだろうという行為をした姿

一種の鍛冶屋泣かせの例にもなりそうなそれで
豪刀・剛剣といった形の二刀を革ベルトの輪で腰に差し直した姿は
始めてではまずまずは使えた なら手になじむようになったのならば
もっと暴れ狂う 鎧を身に着ける戦場以外で メイラに鬼金棒のような言葉を与えてしまっている

メイラが撚り物騒になった原因の半分を築いたのがイーヴィアだ。
鎧の時に贈られた言葉のように、メイラはもっとある意味で名高くなってしまうだろうか

メイラの暴れっぷりを見た姿 イーヴィアは納得しているのか していないのか
メイラに応えられる物を拵えたことは間違いないものの

まさか綺麗だ なんて言われるとは、メイラも思っていなかった。

「……雅も糞も無い わたくしに相応しいものを造るのが、貴方ですものね。」

クスッと、試し斬りなんてさせられても、恰好なんてつけられない
この大脇差で殺すならばこうだという方法のいくつかを見せた後
直刀気味なその意には触れられたらしい

銘は窮奇 貪る者と寄り添う相手は、災いと風の神の別名だっただろうか
なら、これは暴風か、と雁木巻きの柄を撫で、手を添えたまま。

「ええ、二代饕徹に寄り添えるにふさわしい刀ですわ。
 わたくしのプライベートも、もっと楽しめそうですし 鎧姿以外でも、王に貢献できるかもしれない
 そう思うと、たまりませんもの。 貴方の色というのもありますわ。」

そう言って、これはもう返さないというかのように腰にしっくり収まっている
怪物令嬢 魔人の腰には、やはり貪りや鬼が住まうと馴染みやすそうであった

「さ、片付けますわよ。 此処は戦場ではないんですもの。」

そう言って、木偶を廃棄用のズタ袋の中へと自ら片付け始めては、この試し切りの場所を跡にする。

再び戻ったのは、以前報酬の場所としても使っていたテーブル席だ。

「さ、報酬にしましょうか。」

そう言って背に背負っていた荷物をドンと置いて。

イーヴィア > (だが、出刃であれば、其の厚みを振り回すのは億劫であろう。
より機能的であるならば、それに越した事などあるまい
出刃を腰に携える姿は、其れは其れで怪力令嬢の名に相応しい姿かも知れないが
だが、己としては今の、この二刀差しの姿の方が、より、支配的である様に思えた。

――そう言えば、昨日訪れた客人も、彼女の噂を聞き付けていたと思い出す
元より、その道の人間には名を知られている相手では在るが
その印象に一石を投じ、より物騒な物へ変じさせたのが己であるなら
其れは其れで、光栄でもあり、愉快な事でもあり。)

「着飾って、お綺麗にしろ、なんざ言う心算は無いさ。
見栄なんて要らん、アンタが振るいたいように振るえば良い。
俺に見せてくれるってなら、其れが一番の役得って奴だ。 鍛冶師としてはな。」

(――そういう性質じゃあないだろ? と、そう戯言めいて笑えば。
己よりも先に、率先して片付け始めた様子を見て、おっと、と慌てて手伝いに走った
俺がやるぞ、と、曲がりなりにも客人である相手の手は煩わせないよう声を掛けつつ
壊れた木偶の残骸を、袋に入れて、一旦部屋の端へと退避させては
地面に埋まって居た木偶固定用の木杭を、軽がると片腕で引っこ抜いて行き。

――そうして、一通りの整頓が終われば、場所を移す。
以前のテーブル席にて、相手が持って来た報酬とやらの袋を見れば
そう言えば、随分とまた大きな袋だと、今初めて興味を引かれたように視線を上下させるだろう
刀の事で頭が一杯だった証明。 何はともあれ、相手が開けるまでは手を出さぬ。
僅か首を傾げつつ、其の瞳を静かに見やり。)

「また、随分と大荷物な報酬だな。 ……素材かい? 其れとも、予想も付かない何か、かね?」

メイラ・ダンタリオ > イーヴィアの言葉を聞きながら、メイラは共に片付けているというある意味で希少な場面
それを、客にはやらせられんとその大きな身体で背中を押され、隣に避難させられつつ
わたくしが手伝うといっておりますのにぃ など 聞く耳もたぬ で終わりだろう
そして離れ際に、後ろを向いてメイラはニコッと笑みを浮かべる。

「貴方はわたくしの大切な友人ですわ イーヴィア。」

数少ないだろう友人という枠 身体の関係ならいくつあってもお互い不思議ではないものの
親友のような間柄で捉えるなら、目の前の赤髪は数少ない一人だ

そうして、腰に二刀差したメイラと、イーヴィア
報酬という件に移るものの、今回前金というものがない状態からだった
材料費の関係や生きた鎧というテーマ

あれらとは違い、この愛刀と見合うものを、というだけだった今回
メイラは報酬となると、以前メイラだから手に入る革を提供したことで喜ばれたものながら
今回の荷物は又別である。

「さすがに、狂獣の革とタメを張るようなものはすぐには思いつきませんわね。
 何か意見があれば伝手があるかもしれませんわよ。」

笑ってそういうと、今回 一途な鎧 とは違う 気持ちは特別な刀の伴侶を求めたのだからと
まずは革袋にゴルドだった 以前合計6つを出したのは全身鎧からだった
故に今回は4つ、どさりどさりどさりと出されたそれ

資金源が謎と言えるダンタリオ家 闇めいた しかし表立っても首を そして褒賞があってもおかしくはない
惜しみなく出したそれは、質実剛剣を作り上げたイーヴィアに対する技術料と、此処のところの時間を窮奇に費やさせた
言わば独占代といえるだろうか。

「わたくしの愛刀への礼金ですわ。 おつりはもちろん受け取りませんわよ。」

足りないと言われたら、上等ですわと追加を背負う気満々な笑み。
そしてもう二つ取り出したのは、ガラス壺という 品としてはクリアな光沢の、金がかかりそうな代物
なにせガラス工房などというものは、欲しい者しか欲しがらない しかしその中身が中身だ

黄金色の酒で満ちた中には赤い蛇がとぐろを巻いて鎮座している。
酒に漬けられた凶悪な顔と開いた口 言わば蛇酒である

「今回、貴方には身体に堪えさせる場面がありましたもの。
 労いと回復のためのバルブ・ボアの赤蛇酒ですわ。」

強い蛇と言われる、いわば元から強く生まれてしまった大柄な蛇酒
生命力を溶かした酒は、以前のガルガンチュアとは違い身体を気遣う酒である
当然、辛口の酒好きにしか好かれないような、精力がグンと上がる代物
バルブとはこの場合 開放 の意味だ

「あとこれを時々嘗めなさいな。」

トンと小壺を一つ差し出すと、中には白い丸薬状にされたものがころころと満ちたもの

「バルブ・ボアの胆を用いた活性丹ですわ 男を上げるのにもいいでしょうけれど
 鍛冶場の体力を補えると思いますわよ。」

今回、実はイーヴィアは熱中しすぎて少し身体を崩している節があった下りがある
メイラは、友人に対しは気遣いという言葉が辞書にあるかのように、酒と丹で持ち込んできていた
このイーヴィアが元は絶倫という名の魔人めいたものがあると知らずに。

「あとはそうですわねぇ……わたくしとしてはゴルドと労いが最初に頭に浮かんで一杯でしたけれど」

そう言って、ショットグラスも添えてあるそれ
小さな長い柄のついたカップで栓を抜いたバルブ・ボアの蛇酒をすくいとると
トププンとショットグラスにそれを注ぎ、差し出そうか。
もちろん自身も注ぐのは、互いで乾杯もするためだ。

「なにかわたくしにお願いとかありませんの?」

そう言って、イーヴィアに、と乾杯の意を向けてからクピリと飲むと、喉と胃でくる
アルコールとは別にくる熱の量

「キますわねぇぇ……っ。」

イーヴィア > 「そうかい? そう言ってもらえりゃ、有難いね。」

(天下のダンタリオの怪力令嬢から、直々に友人と評されるのだ
本来もっと、光栄であると頭を下げるべきなのかも知れないが
其処はやはり友人、である以上、気安さを見せながら、軽く一礼して見せるのだろう

実際、珍しい事だ。 良い女で有れば手を出す事の多い己が
ただ純粋に、依頼人と客で有ると言う事が。 ……対等な友人、と言う立場を崩さない事が。
其れだけの敬意と、畏敬の念を、より先んじて抱く証明にもなるだろう
報酬の件を、半ば途中まで忘れて居たのも、一種良い例だ。)

「純粋な金だって有難いもんさ。 こちとら、従業員を養う立場だからな。
正直、何を請求するかってのが、すっかり頭から抜けちまってたんだが…。」

(相手が、踏み倒す様な輩とは違う、と言う安心感も有ったが。
実際に、良い金額を提示されれば、双眸細め、ふ、と視線を上に向けた後
――礼がわりに、ぽん、と胸の前で、掌と拳を合わせて見せ。
其れから、取り出された酒瓶を目にした後で――判り易く眼の色変えたのは
ドワーフなぞと言う大酒のみの血筋にとっては、致し方ない事だ。

ガラス壺と言う珍品で在る事もそうだが、其の酒自体がより希少だ
街を多少で歩いたところで、早々手に入るものでは無い
所謂薬用酒、なぞと呼ばれる類の其れでは在るが、純粋に酒としても一級品
ひと瓶で、兵団一つを元気にさせる、なぞと嘯かれる事も在るような代物なのだから
酒飲みがはしゃぐのは、当然と言えば当然であった。)

「――――……オイオイ、マジかよ。 ありがてぇな…!
安酒でも全然喜ぶ性質だが、嬉しいね。 と言うか、気ぃ遣わせちまったみたいで済まんな。
ま、おかげさんで、何とかなってるぜ。 酒がありゃあ、疲れも吹き飛ぶってもんさ。」

(勿論――グラスを向けられれば、拒むはずなんて無い。
今の今では、普段よりも少々効くかも知れないが――其れは其れ、だ。
受け取ったショットを、相手と一緒のタイミングで、一気に飲み干す
淫蕩に流れ込み、胃腑を焼く強烈な酒精と、蛇の生命力の気配に
一度眉を顰め、染み渡る心地に吐息を飲んで――)

「―――――っあぁ…、……仕事の後の一杯なんざ、格別じゃねーか。
っはは、おねがい、ねぇ。 なぁに、これからも良い仕事が在れば宜しくってのと。
後は…まぁ、イイ女でも居りゃあ、紹介してくれるかい?」

(後半は一つ、戯言だ。 ぱっと問われて、思いつくものなぞ殆どない。
酒精を切っ掛けに、仕事の緊張感からは多少解放されて、普段の砕けた調子が出るだろう)。

メイラ・ダンタリオ > 以前はサプライズで、ガルガンチュア 巨人の方向という赤琥珀酒をプレゼントしたことがあった
それと同じような笑みを浮かべているのには、さすがドワーフといったところだろうか
所謂元気になる為の酒 体を想っての分、無論酒好きならば蛇酒も立派な酒だ

ガルガンチュアほどは喜ばれないかもしれないと思っていたものの
蛇酒としては上級な代物 そしてその体と相性がよかったのだろう
ショットグラスを片手にカパリと軽々空ける姿は変わらない

酒を前にしてもう元気に見える姿は百薬の長と言ったところか。

「ガルガンチュアもバルブ・ボアも貴方っぽいと思って選びましたけれど
 さすがドワーフですわねぇ……貴方に恋する女でもいれば酒もっていけと言っておきますわ。」

ご機嫌な様子に笑いながら、蛇酒の中身をお互い注ぎ合う
トプトプと、啜るだけで空にできそうなショットグラスの中身
どぎつい味と芳醇な薬効効果を思わせる香り

素材や伝手となると、ダンタリオに適う者ならばと思っていた者の
想像の半分には入っていた 女の伝手がほしいなど

「お黙りなさい病み上がり。」

言うと思っていましたわ、と笑いながらも
一つ頷きつつ、近い提案はする様子で。

「わたくしの暴れっぷりも ダンタリオもこの都では当然のように狂犬扱い
 それを見た中で認めれるような相手ならイーヴィアに行けばよいと導くことはできますわね。」

女性客の紹介 とはいえど、自身の親友で 唯一の鍛冶師のような存在に向ける者など
メイラが認める格というものがなければやらない様子
イーヴィアは、見合った相手に見合ったものを作ることを好む
豚に真珠 ド下衆に聖剣 な行為はしない性質だ
ただ女を蹴り入れてもなにもできまいとして。

「まぁそのあたりは食事でもデートでもしてあげるから、我慢なさい。
 以前食事に行きたいと言っていたでしょう?」

酒の席で。一緒に飯にいきたい、などと言っていたのはまだ覚えている
当然メイラも、こうして店内だけではなく外で友人と遊ぶのも歓迎できるだろう

「」

イーヴィア > 「っはは、喜んで一杯頂く事になるだろうな。
とは言え、持たせるのがこんな酒じゃあ、酌み交わす、なんてのは中々出来そうに無いがね。」

(何の変哲も無い街娘に飲ませる様な酒では無いのは確かだろう
己と相手に効くのだ、下手に煽ろうものなら卒倒して仕舞う
酒精もさることながら、精力増強としてもかなり強い物なのだから
無理に飲ませるのも忍びないしと、くつくつ喉奥で笑う。

ガルガンチュアの方ならば尚の事、迂闊に飲ませれば死人が出るなぞと
言いながらも自らは、簡単に酒精を煽り、愉しんで居るのだが。
折角と要望した良い女と言う要求を、即座に却下されては
残念、と軽く舌打ちしてから、口元に弧を描いて。)

「おーおー、手厳しいこって。 まぁ、別に構いやしねぇさ、思いつく物なんざ酒位だ。
それも、こうして何時も上質なもんを持って来てくれるんだから、文句も出やしない。
―――……だが、まぁ、御前さんのお眼鏡に適う様な女って言うのにも、興味は有るな。」

(気まぐれにでも、気に留めて置いてくれりゃあ良いさ、と。
酒の席、あくまで戯言の延長線上での言葉、ではあるが。
それでも、目の前の相手が見繕い認める女と言う物が存在するなら
其れは其れで、興味が無い訳では無い、と言うのは有った。)

「お、良いね、だったら是非、美味い店でも巡りたいとこだ。
だが良いのか? 俺よりも、アンタの方がよっぽど忙しい身の上だろうによ。」

(迂闊にそんな約束をしちまって良いのか、なんて。
鍛冶屋である己よりも、余程様々な役割に縛られて居るだろう相手に
無理はすんなよ、と――其れは、あくまで、友人としての気遣いだ
幾ら相手が文字通りの狂戦士であろうと、人の理を外れた存在で有ろうと
不眠不休で機械のように働き続ける、何てことは出来ないのだろうから

心配された分、心配で返すくらいは、させて欲しい所だ)。

メイラ・ダンタリオ > 鍛冶師と飯食ってる暇なんてあるのか などと
己を高め続け王に貢献する それこそが己の生きざまであるダンタリオ
それに通ずるコレはともかくとして、友人としての、プライベートな時間を割けるのかという問い
メイラは フンッ と蛇酒片手に少し頬を染めながら怯みはしない

「当然ですわ 己の武器と鎧を預けた鍛冶師と飯を食えぬダンタリオがどこにおりますのっ
 戦場を超え、プライベートな暴れを超え、旨い肉料理と女を喰らって生きているのがわたくしですわよ。」

故に、イーヴィアの気遣いなど一切無用と断じるのが、メイラだった
ショットグラスの中身を飲みながら、普段の桃白葡萄の発泡ワインなどとは違う
まさに これぞ 酒 というような味 身体に魔性を帯びる身でも、一晩暴れ続けそうな味がする

「いっそあなたもわたくしの隊に入りなさいな バトルハンマーや星鉄球でも握れば、わたくしと
 巨人の槍とパワータッグを組めますわよ。」

時折傭兵なども行う 造るだけではないイーヴィア
専属鍛冶師などと狭めず一緒に暴れなさいと、酒が入っているせいか
願望を口にしながら、この優秀な人材を己の隊で互いに斬りこみしようなどと勧誘交じりに
その日は、依頼を終えた者同士 友人の酒で雑談しながら過ごすのだった

そしてその日より メイラが私用で暴れる際 腰には二刀になった愛刀に目を向くようになったという噂があったとか。

ご案内:「ヴァルケス武器防具店」からイーヴィアさんが去りました。
ご案内:「ヴァルケス武器防具店」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエデンさんが現れました。
エデン > 今日はとっても天気が良いから。
今日はとっても温かいから。
今日はとっても気分が良いから。
だから、今日は依頼は受けずにオトモダチに良さそうな子探し。

「♪~」

鼻歌混じりに大通りを目的も無く歩く。
キョロキョロとその目は右に左に忙しく動き、並ぶお店や行き交う人々を見遣る。
オトモダチも良いけど、何か興味が向きそうな食べ物とか、何かしらの商品とか。
そうしたものもあれば面白いな、なんて事も考えながら。

今日は依頼も受けてないし、念の為に腰に帯剣はしているけど私服姿。
ぱっと見は一般人に見えるかもしれないが、それが冒険者か何かと示しているだろうか。

エデン > 途中、見掛けた露店で何個かの肉饅頭を購入し。
すぐ側にあった別の露店でエールも追加。
そうなれば、次に目的とするのは食べる場所だ。

「うーん、どこか良い場所でも…
あら、あの辺りなんて丁度良いかしら?」

片手に肉饅頭、片手にエール、両手をそれらに塞がれながら場所を探して周囲を見渡す。
そんな視線の先、大きな広場を見付ければ、ゆっくりとした足取りでそちらへと向かう。
お昼過ぎ、遊ぶ子供達に、それを見守りながら談話する親達。
自分と同じように散歩をしていたり、一休憩にベンチに座っているような人達。

「都合良く場所が空いていれば良いのだけれど…」

そんな人達を横目に、腰を落ち着ける場所を探す。
なるべくなら、ついでに目的にも通じる誰かが座っているベンチとかあれば良いのだが。
そうでなくとも普通に誰も座っていない空いたベンチでも良いか。

エデン > 「おっと、と…あ、あそこなんて良さそうね」

片手で抱えていた肉饅頭の包みが小さく揺れ、それを支え直しながら。
少しバランスを崩した際に、偶然視界の先に入った誰も座っていないベンチ。
何とか肉饅頭が冷める前に食べられる、とベンチへと向かい歩み寄る。
偶然とも、その際に誰かが同じベンチに座ったとしても、手にした包みとコップに意識が向いて気付けないだろう。
そのまま腰を下ろし、包みを傍らに置いてゆっくり味わって頂こうと。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエデンさんが去りました。