2021/09/17 のログ
ティアフェル >  打ち身擦り傷くらいでは怪我の内とも云えない世界だけれど、ここには実技を試したい実験体を必要とする見習いヒーラーが獲物を狙っていたりして、軽い怪我でも治してもらえるが……その分、失敗される可能性も秘めていて。
 大失敗時の受け皿としても居なくてはならないという中堅ヒーラー。
 
 主にそちらのフォローがメインと云っても過言ではない。
 今日は30代駆け出し冒険者がまさかのぎっくり腰、それを実地として見習いの前で回復させて見せたくらいの仕事しかしてないが。

 昼を過ぎて、今日、わたし、要るかなー……? と首を捻り始めていた、威勢が響く訓練場内。
 些か退屈気味だったところで、知り合いを見つけるとまあまあ嬉しい。
 わーい、と上機嫌で近づくと、結構久し振りだし、一度こっきりしか会ってないので、「誰?」コール来るかなーと覚悟もしていたが。

「良かった、憶えてたー? その節はどうもどうも、お世話になりまして……
 そうそう、今日は仕事よ。見習いヒーラーが失敗したら尻拭いって感じの……」

 お節介者には適任である。
 今日は以前と様相は異なるが、東国風の衣装で同じ年恰好、目鼻立ちとなれば、まあ、あの人かな、と見当はつく。
 もしも似た感じの人がいれば余裕で間違えてしまうかもだけれど。

 水を勧められれば、いただきます、と肯いて受け取ろう。

「そっちは師匠らしく指南してんの? あだ名付けられた? カゲトキじゃなくて、オニトキとか?」

ご案内:「王都マグメール 平民地区/訓練場」にラファルさんが現れました。
ラファル > そんな見習の訓練風景の中に、混じって居る一匹。
 師匠と一緒に魔族の国だのなんだの行くのだけど、立場的には見習い冒険者と言う幼女。
 師匠と一緒でなければ―――ある一定以上の実力のある冒険者が共に居なければ一人で依頼を受けられない系の子がいる。
 師匠が訓練をすると言うのなら、弟子も一緒に着て訓練をするのである。
 弟子の方は、と言えば、苦無を両手にもって、小刻みに動く練習。
 と、言っても、師匠から色々と教わっているから、今、教えている部分は既に学び終えている所にある。
 かといって、変な癖が付いているかどうか、そう言うのを見直すのもあるから、幼女は自主的に練習をするのだ。
 小刻みに動いたり、ナイフで突きを練習する様にとか。
 そんな際に、聞こえてくる声と、それに応える師匠の声。

「にゅ?」

 聞き覚えのある音声だ、と思えば、お姉ちゃんである。
 師匠もまた、楽し気に相手をしている、様子を見れば仲は良さそうだ。
 おやおやおや?と、想えば、にまぁ、と口角が三日月に吊り上がっていくのだ。
 するりするする、師匠にはバレていても、他の見習い冒険者には気が付かれないだろう幼女。
 隠形を駆使し、とてとてたっと、近寄るのである。
 こう、良く見える所で、二人を観察。

 ―――そう、観察するのである。良い所でヤジを入れるのも、良いのかもニャーと。

影時 > 癒し手においてもちょっと実地研修、かもしれない。
雇用側としては薬箱、救急箱程度の認識の可能性はあるが、凄惨な戦場以外で怪我人に直面する場面とは貴重か。
しかも、仮に失敗してもフォローがしやすいケースとなれば、より一層貴重に違いない。
傷口を塞ぐ程度の治療魔法に失敗してしまったとしても、それをフォローできる機会というのは、まだ笑えるレベルか。
そう思わずにはいられない。

駆け出し冒険者(30代)のぎっくり腰を仮に治癒できなかったとしても、今ならまだ笑っていられる範囲だ。
ヒーラーの出番が多すぎるのは色々な意味でまずいが、全くないというのも少し困る。

「そりゃぁ覚えてるさな。どういたしまして、だ。
 ここの治癒役に引っ張り出されたって感じか。……いやぁ、尻拭いってのも馬鹿にならンぞ?」

遇うのは二度目であるとはいえ、印象深ければよくよく覚えもする。
逆を云えば、向こうもそうだろう。風貌も兎も角、この手の装束を着こなせる人間と云うのは多くはないだろう。
綺麗な空いたカップによく冷えた水を注ぎ、差し出そう。
酒があれば良かったが、流石にこれも仕事だ。仕事場に酒を持ち出すつもりは毛頭もない。

「鬼、にもなれねぇぞう? こういう時は余計にな。
 怒鳴ってどうこうで伸びる奴はあんまりなくてな。少し道理に従わなきゃならん」

そうでもないがな、と肩を竦めつつ、息を吐こう。
厳しい師匠役をやってもいいが、それで克己心を示せる駆け出しはなかなかいないのだ。世も末か。
そう思いつつ、ふと、微かに妙な気配を覚えて周囲を見遣ろう。観察の気配にはまだ、気づかない風情。

ティアフェル >  あまり忙しくても、ここの仕事ヤダァ~となるけれど、暇過ぎても己の必要性に悩む。ほどほどの仕事量なんてことの方が稀有なのに贅沢で一般的な思考の持ち主は、知り合いを見つけたからには、多少暇な方が良かったかもなーと現金に考えを転ばせ。

「さすが師匠さん、記憶力もなかなかですなあ。
 まあ、うん。尻を拭いきれなかった時は誰にとっても地獄だからねー。見てるとハラハラしてくる見習いも居て今にも手ぇ出しそうになるし」

 逆に似たような東国出身者がいて被ってたらどっちがどっちか分からなくなりそう。異国の人とは現地の人間にとっては同じ顔に見える現象。それは異国の人側でも同じことが云えるかも知れない。
 冷たい水を汲んでもらえば、ありがとう、と表情を崩して受け取り。
 ひょこひょこアホ毛を揺らしながら、茶化したような問いに対する返答に耳を傾け。

「冒険者のセンセなんて、鬼教官がデフォだと思ってたけどねー。時代は変わりましたなあ……」

 なんて、ここにいる訓練生と似たような立場から脱して数年程度しか経っていない分際でしみじみと零し。
 こく、と喉を鳴らして水を飲むと、ひょこひょこ揺れてたアホ毛が、何かを察知したように、ぴ、と立ち上がる。
 窺うようにひこ、ひこ、と揺れる毛に気づいて、

「なにか……いる……?」

 何アンテナだというのか、当人よりも不可思議なアホ毛が小さな気配に反応していた。世間ではそれを妹アンテナといった――らいいな――。

ラファル > 楽しそうにお話をしている師匠と、お姉ちゃん。
 師匠の方は―――お姉ちゃんとの話に夢中になって居る所為も有り、幼女の敵意の無さと、後、人の多さ。
 その辺りに助けられて幼女の気配を上手くとらえきれては居ないようだ、観察に関しても、他の訓練生たちが、師匠の事を見ている。
 それに紛れてしまっているのだろう。
 そんな様々な要因があるので、美味く、隠れ切っているのだろう。
 まあ、ちょっかいを掛ける心づもりではあるが、それはいまではないし、楽しいお話を邪魔するのは忍びない。
 師匠も、お姉ちゃんもラファルにとっては大事なので、大事は大事なままに。
 でも、面白そうなのは確かなので、ニマニマニヤニヤ、二人の様子を眺める。
 こう、いい雰囲気でも醸し出したらもうね、と楽しそうだ、人生は総じて楽しいらふぁるなのである。

「―!」

 しかし、やはり冒険者なのだろう、二人とも、何となくと言う感じで気が付いている様子。
 得にアホ毛ちゃんは、此方を捉えている模様、でも、主人に伝えるすべがないからなのか、主人は気が付いてない。
 しー、しー、と小さな唇に人差し指を当てて、内緒、内緒、なんて、アホ毛ちゃんにして見せる幼女。
 傍から見れば、もう、不思議な光景でしかない。

 彼らを見て、どうしようか。
 1、等速直線運動……所謂飛びつきを敢行。 避けられたら大惨事。
 2、分身で、周りをかごめかごめ。 お仕事の邪魔。
 3、普通に声を掛ける 基本的には大推奨 でも、退屈。

 うーん、うーん、幼女は悩む。
 なんか、逃げたそうにしている盾持ちの冒険者の腰を叩き、気合を注入して見せる。
 一応参加してるので、お仲間の落伍は許さない系幼女。

 結果。
 お代わりのジョッキのエールと、あっさり爽やか果実水を手にして。

 ほい、とごくごく自然に、エールを師匠に、果実水をティアフェルおねーちゃんに手渡して。
 会話に溶け込むことにした。
 気が付けばそこにいる系幼女。

影時 > 血走って鬼教官ぶる、暴力教師を気取るのだけは容易だ。手荒に振舞えばいい。
が……そうして怪我人を大量にこさえ、最悪後遺症が残ってしまうという事態はギルドの沽券にも関わってしまう。
難しいものである。そう、世界は鬼教官なるものを望んでいないのかもしれない。
一先ず、今のところは自主訓練や仲間同士の打ち合いが主になっている風情だ。
危険行為を見咎めれば、其れを制止するだけでいい。あとは請われれば教えると云うのは、教師の仕事だが。

「手がかりやら何やら覚えてねぇとな。冒険者も仕事にならねぇと覚えるのさ。色々仕事してたらな。
 気持ちは分からンでもないんだが、其処は口も手も出さずにおかねぇと学びにならないのが儘ならんよなァ。

 ……手前ぇ遣ったら、もっとこんな風に出来ちゃうのに!とか思っちまうだろ? ン?」

見た目は三十路近くの大の男が、年頃の女の子の声真似をやってみせるというのは奇異この上ないだろうか。
救いなのは、きゃー、とか嬌声めいた声と其れらしい仕草を交えないことだけ、か。
どーいたしましてと改めて告げつつ、さもありなんとばかりに頷こう。
ベテランやら少しでも心得があるのであれば、この手の感覚はきっと共通か。
何かひょこひょこ揺れる風情のアホ毛の様に一瞬、微かに首を傾げながら、水を含んで。

「敷居が低すぎるからかもしれねぇなあ。
 代筆でもアリとはいえ、誓約書に署名したら其れで登録完了、というトコもみてぇだ――、と悪ィ、な、って、こら」

敷居が低すぎると、教練の強度のレベルも合わせて下げなければ使い物にならないかもしれない現実。
困ったものだ。死傷者、引退者で新陳代謝が図られると嘯いていられるものではない。
ああシャレにならんと空を仰いでいれば、空いた手の方に何が握られる感覚がある。
水ではない。ジョッキの握り応えと重みだ。視線を降ろせば、ちっこいのがその場に溶け込むように居た。

見ればすぐにわかる。誰かの仕業など、考えるもない位明瞭である。
有難いが、ちょっとばかり咎めるように目線を遣って口元を緩めよう。

ティアフェル >  訓練で死亡者が出る、なんて云うことは特に軍人では稀とも云えないが、冒険者=個人事業者の世界。
 クレームに存外弱いという形態は、ある意味人間らしい。
 扱きの現場を見物してやろうかしら、なんて物見遊山は早々に消えた今。雑談に興じる余裕があるのを取り敢えず感謝しておく。

「必要に迫られた時、人間の脳は普段の倍稼働するのね……。
 そうなのよ……、まあ、そっちもだろうけど、危険行為と判断したら口も手も足もフルで発動するけどね。
 こう……当然なんだけど、基礎を失念してたり、応用がなってなかったりって、要領が悪すぎるケースは、『そうじゃなくてえぇぇ!』の言葉を飲み込むのがめっさしんどい」

 声真似というか似た調子での語り口を交えての声に肩を揺らしながらうんうん肯いて。自分は示唆する立場でここにいるのではないので余計なことを云わない努力大変と苦笑い。

「流れ者やならず者が身分を獲得する為に冒険者てのも普通だからガラも悪いしねえ……――?」

 能天気に会話を続けながらも、自然と気配に反応するアホ毛。
 アホ毛の動きになんとなあく、何か察した。
 毛が独立思考を持つ、不気味な女。ティアフェルは、「んん……?」とアホ毛の動きを見て小首をかしげており。
 アホ毛はと云えば、一部においての感知能力はあっても思考力…というほど高尚なシロモノはないのか、黙ってて、というような金色の挙措は理解できていない。
 
「――あれ?」
 
 けれどやがて、最初からそこにいたような態で混ざって、水のカップを持っていない方の手に果実水を渡してくる様子に咄嗟に受け取ってしまいながら。

「あら、あらあらあら……いたのね。いつの間にー……」

 と云いながら少女の頭をよしよしと撫でながらも、なるほどアホ毛センサーに反応してたのは……と密かに納得した。
 こっちで話してるの見て混ざりたくなったのかなー。と弟過剰環境な姉は概ね察した。小さい子ってそうなのよねえ、と。

ラファル > 鬼教官、それは軍隊などの規律をシッカリと覚え込ませるには良いのだろう。
 ギルドでは、必要がない、と言うか―――このギルドはお行儀の良い人が多いのだ、其れなら必要がなくなるのではないかと思う。
 素行の悪い冒険者等は、矯正の意味を込めての鬼教官は必要じゃないかなーと考える幼女だった。
 強い物に弱い物が従うと言うのは、ドラゴンの生まれついての思考、ケダモノ思考なのである。
 それは其れとして、私た瞬間に窘められる声。

「ほえ?」

 きょとん、と金色の目をぱちくりと瞬かせる。見つかった事なのではない。
 お代わりを渡しただけなのに、と、師匠の言葉の意図をちゃんと理解している辺り、ちゃんと弟子をしている幼女。
 うむむ?と首を傾げつつ、御変り前のジョッキをひょこ、と覗き込んだ。

「あ、水。」

 師匠が水を飲んでいるというイメージが沸いてなかった、お酒大好きなイメージもあるし、酒豪のイメージもある。
 たぶん今の程度では酔わないのだろう、でも、お仕事中に呑むのは、ええええ。
 イメージダウンになるのだろう、多分その辺りで怒られたのだ、と理解する。

「――てへ★」

 師匠に関しては、リアルに間違えた、ごめんチャイ、と。幼女はウインク一つ、舌をぺろりと出して軽く謝罪。

「えへー。」

 そして、お姉ちゃんの方に関しては、良かったようだ。
 果実水はちゃんと手の中に納まり喜んでもらえた。
 さて、自分も話に入ろうか、と思ったのだけど大変な事実が判った。
 いま、二人は何の話をしているのかが判って居なかった。
 なので、幼女はとりあえずお姉ちゃんの脇にぴ取り、と張り付て二人を見上げる。
 何を話してるんだろうなぁ、と。
 タイミングが合えば、話題に混ざろうと思う事にしたのだった。

 師匠が飲まないのなら、エール酒は、変わりにのむよぅ?と、全力でアピールも、忘れない。

影時 > 騎士やら傭兵の教練で死人が出るということはざらではないが、冒険者の世界では何かと問題がある。
己の域“レベル”まで強度を挙げた場合、付いてこれるかどうかというレベルになってしまう。
然程隠せていないかもしれないという嫌いはあるとしても、手管を晒すと云うのは極力避けたいところだ。

同じ位戦える同業者だって、それはきっと同じだろう。
己と同じレベルを初心者に求めた場合、間違いなく齟齬が出る。
教えるものと教えられる側、その相互で噛み合わない箇所が出てしまう。

駆け出しがベテランと同じ位動ける訳がないのだ。
もっとも、動けたとしても知識等の座学を叩き込みなおす機会を別途設けられるのは疑いなしだが。

「分かる分かる。そうなっちまうわなァ。
 最終的にできてることは間違いじゃねぇにしても、途中で無駄を削ぎ落せるなら俺だってそう思う。誰だってそう思う。

 ……それを呑みこめねぇ大人もそれはそれで、大人げ無ぇと謗られるのも面倒だが」

講師役として諭せる点はいくらかあっても、それをどう言ってやるべきかを常々悩む。
こうすれば出来るだろう俺凄いだろう、と包み隠さず述べるものは――講師に相応しくない。
余分な自尊心やらお節介を程よく隠しつつ、述べるというのが難しい。

「見た目でもわかる奴らなら、俺も怒鳴るのは然程困らんが……と、仕事中なんだがなあ。
 まぁ、この位なら水のようにイケるから困らんが。

 次からは、気ぃつけてくれやラファルよ」

如何にも食い詰めました!というレベルの風体なら、己も怒鳴る最早やむなしである。
冒険者をするより、何らかの手に職を付けた方が明らかに喰えるのに、冒険者なら楽して喰えると考えるのは害悪にも近い。
そんな思考を過らせる中、隠形の技か。己が手にエールを満たしたジョッキの重みを認識すれば、酒呑みとして無下にできない。

下手人の仕草は認める者の、酒のみとして供されたものに口を付けないというのは、勿体ないという心理も働く。

「で、どうだ? お前も此処に居る以上、周囲の様子やら動きやら見れるたぁ思うが」

そうしながら、お前にはこっちだと水が残ったコップを弟子に差し出し、ひとまずジョッキに相対しよう。
此処にいる以上、研修に混じったり見分もしていることだろうと。

ティアフェル >  訓練場では飽くまで新米をカバーすることが目的であり、他に師がいるような同業者に垂れる講釈はないが、それでも見てるとじれったくなったり、注意したくなるのはどうしようもない。

「アドバイスもねー……例え正しいとしても余計なお世話になっちゃうとねえ……。わたしはまだまだ、若輩だから教えるまでには至ってないし。
 だからこそ、自分もやったミスがよく見えましてねえ。訊いてくれたら答えられるんだけど」

 良かれと思っても裏目に出ることは多々ある。
 ましてや数年前までは訓練生だ。必要なことだけ的確に指導する自信なんてない。教える立場は凄いもんだなーと改めて感心したような目線を送っていたが。

「ぉぅ…………」

 仮にも訓練場で酒はなー……。と一般常識の通じる冒険者を気取っているヒーラーはナチュラルにエールを差し出す様子に、『ここはお行儀のいい人が多いんじゃなかったんか…』と悩むようにアホ毛を揺らして、密かに悩み顔。
 けれど、当事者ではない訳だし、ここは静観しよう。仮にも師匠と弟子の間柄なのだから、と見守り体制。

 結果、

「で、呑むんだ……」

 どうするんだろう、ジョッキ……と思ってたら、もったいないとばかりにエールと向かい合うことを師匠は決定していた。
 うん、ベストな師弟関係だったんですね。と感想。
 こっちは平和にノンアルでもらった果実水と水を交互に飲んで落ち着いた。どっちも冷たくておいしい。

「――そだそだ、ぜっかくだしこの後、みんなでごはんとかどう??」

 そして、会話に混ざれない小さい気配、察した。
 なので、新規で全体会話を振ってみることに。滅多にない面子なのでなんか食べいこー。と提案。
 水と果実水をごくごくと両方飲み干してお腹たぷんたぷんになりながらも。

ラファル > 「はーい。」

 窘められてしまったのは仕方がない事だった、流石に仕事中にお酒、はあまりよろしくはないのだ。
 先程彼に渡してしまったものは、とても間違いだった、と言う事を認識している。
 こういう所を間違えずに渡すのが一流なのだ、と幼女は確認をして、視線を訓練の人々に向ける。
 剣を持って突きを放つ人、才能がないのか、ヘロヘロの動き方をしている人、と色んな人が居るのが見えて。

「ん、さっき一人、こっそり逃げようとしてたよ。
 そのおっちゃんは、動きが槍を使うほうが良さそうだとね。」

 さっき気合を入れようとしたのが、取り立てて、才能が薄そうだった、と報告を。
 ただ、剣での装備攻撃に対して、なので、槍の方ならもう少しましになるだろう、と。


「あー……、やー。お姉ちゃん!」

 エールは師匠が飲むらしい、残念、ありつけませんでした、羨ましそうに酒を飲む師匠を眺めてから。
 クルリ、と視線を動かして、お姉ちゃんに。
 にぱっ、と顔中で笑って右手を上げて、やー!と挨拶をして見せて。

「ボク、お肉!」

 お姉ちゃんのご飯の提案には、速攻で食いつきました。
 肉食獣的な返答を返して、お願い―と姉の腰にコスコス、と頭を擦りつけておねだり。
 頭をなでてくれるととても嬉しがるだろう系の、幼女でした。

影時 > 「助言をな、悪口やら何やらを誤解されちまうという沙汰もあり得るからなァ。
 まだまだ若い頃ならまだ良いんだが、特に歳行った奴が冒険者になっていた際にその辺りに困る。
 
 ……それ、ひとつ言い足すとなりゃ、アレだ。自分が何を仕損じたのか自体も分かっちゃいねぇこともある場合だろ?
 そういう時はイロハ、……あー、こっちじゃあれか。アー、ベー、ツェー、の順から並べて教えなきゃならんこともありそうだ」

イロハという言い回しが、このあたりでは通じ難いか。
A(アー)、B(ベー)、C(ツェー)の順という箇条書き、列挙するニュアンスとして伝えたいとコトバを選ぶ。
己もやったことがある仕損じは、経験則として嫌でも脳裏に刻まれる。
その経験則が他者に当てはまらないということだけが、教える側としては困る処だ。

水のように飲めてしまうエールを含みつつ、嘆息を零す。
エールも酒も、作り手が精魂傾けて醸造している産物である。それを地に零して台無しにするのは、厭われる。
かといって、子供に呑ませるというのは酒場なら兎も角、衆人環視でというのもまた避けるべきか。

「……然様か。逃げようとしてたってのは、ははァ、あいつかな恐らく。
 成り立てなら長柄の奴の方が、心理的に楽ってのはあるのさ。
 剣の方が映えるって云うンで欲しがるのは子供に多いが、鍛えるなら槍の方がまだ安く済む利点もあるしな」

弟子からの報告に周囲を見遣り、あいつかとそれぞれ察しを付けよう。
最初から万事才能がある人間は稀だが、一先ず他のギルド員に共有だけはしておこう。
逃亡するなら、現場の逃亡、依頼放棄だってありうる。

「貰っちまった以上、任せると云うのもちょっとなァ。
 ……ああ、いいなそれ。幸い今日の講師代も入るし、大人として奢ってやろう。大人として」

酒を仕方がないとはいえ飲んだ以上、体面として手を出すような武術としての荒い教練はする気はない。選択肢として失せる。
あとは、定められた刻限まで講師と監督を済ませてしまえば、交代して仕事を上がっても問題はないだろう。

ティアフェル > 「別にウラで陰口叩かれるのがイヤってんじゃないけど、出しゃばりは良くないよね。
 まー……この業界体力勝負だから、年配の冒険者ってのもなかなかいないけど……指導者の立場ならそういうクチも見るんだろーね。
 アベ……? ああ……はいはい。そうね……そう云われるとやろうと思ってないけど、わたしはやっぱり指導者には向かないな。短気だし」

 肩を竦めつつ、指導者として指導していた見習い剣士の様子について情報交換する様子を見やり。
 こうやって一人一人に目を配れるかっていうとやっぱり向かぬ、と結論。尻拭いで精一杯だ。

 そして、果実水と水、両手に持ってふたつとも残さず飲んで、けふ、と息を吐いた。
 ごちそうさまでした、と器をテーブルに置くと、20分弱でお花摘み……と読んだ。
 そして、ようやく塞がっていた両手が空きましたので。かし、と肩を抱き寄せながら、頭を存分にわしわし撫でて、それはそれはかいぐりしたおし。

「よーしよしよしよし! 肉な! 肉! もちろん肉にしよう!
 がっつり肉にしよう! さきに詫びる、家畜のみなさますみません。
 ――ラファルちゃん、奢りですって、OGORI! やったねッ」

 かなりの尊い犠牲(家畜)がでることは謝って済ませる。あまり気にしてたら、魚卵も食べれませんので。
 それよりもうちのカワイイ妹が食べたいとすり寄ってくるんだから、それに応じない姉もない。し、今日のお勘定役を買って出る、弟子の食欲を知らぬ訳じゃない師匠の太っ腹さに顔を輝かせ。

「きゃー、いいのかな、わたしまで、わたしまで……!! 悪いわ、申し訳ないわ、ありがとうございます!!」

 お前は知らん、と云われる前にきゃっきゃしながら捩じ込んでおきます。
 物凄くはしゃいだタカリだった。

ラファル > 今回に関しては、師匠もお姉ちゃんも、先達としての会話をしているのが判る。
 正直に、幼女としては今の二人の会話には入れなさそうな気がすると言うのは、実力は兎も角。
 経験が足りないし、経験を分け与える訓練の話なので、どうしても、と言う事になるのだった。
 なので、今は大人しく、幼女は座って聞いていることにしていた。
 飽きたり喉が渇いたりしたら、飲み物でも取ってくることにしよう。

 お酒くれないので、しゅん、と諦めモード、こういう時には貰えないのは判って居るので。

「あい、まあ、ボクに気合を入れられて、逃げられなくなってはいるよね。」

 幼女は、今回の参加者で一番若いといって良い、そもそも、本来は一人で登録できないぐらいの年齢であり。
 師匠のオマケと言う側面も十二分にある。
 そんな幼女に逃げないように釘を刺されてしまえば、逃げたくても逃げられないのだろう。
 それで逃げると言うのであれば、それはそれで、と。
 逃げるという事にも才能が必要だ、復帰するというタイプの才能、それで良いのだろう、と。

「わぁい!お肉、おにく、おにく!」

 じゅるり、目が輝く幼女、口の端から涎が、たらり、と。
 牛さんとか、一頭なんて言わない系の、暴食幼女、肉のお願いが通り、ご満悦。
 器用に椅子の上でぴょんこぴょんこ跳ねるぐらいに悦ぶのだ。

「いただきまーす!」

 はい、と幼女は懐(?)から、メモを取り出す。
 ベルトで隠している程度の何処から出て来たのか、謎ではあるが突っ込んではいけない。
 視れば、こう、一寸良い所のお店の、割引券。
 こう言うのを考えると、商人のお家と言うのはお得だ、そういう物に、事欠かないので。
 はい、と、師匠に。
 いっぱい食べるけど、ちゃんとダメージコントロールは考えて居るのだ。
 なので、うきうきしながら、姉にすりすり頭を擦りつけて懐く幼女。

 話が一段落したのなら、二人に纏わりつきながら、食事に出るのだろう―――

影時 > 「見過ごしていると、明らかに命取りになりかねねェ事物に関しては……止むをえんのが面倒しい限りか。
 俺と歳がタメやその上であってもな。駆け出しである以上、先達として導かなきゃならねぇ仕事が出てしまう。
 仕事なら割り切って受けるが、そうでもねえ時は……――、一番困るな。

 余所者だと、こういう時の言い回しにちょいと困るな。
 ははは、短気だからって云うより、割り切り方、捌き方に慣れているかどうかじゃねぇかな」

此の手の講師役やら教導役を遣る、遣らされる機会があれば、厭でも慣れてしまう。
弟子を持っているから、教えるにも慣れているだろうという判断もギルド側では働いているのかもしれない。
だから、短気だからというより、感情をコントロール出来るかどうか次第、か。
若しかしたら、考えている以上に向いているのかもしれないと思うことはある。

「一応、呑み物持ってきて呉れた礼だ。
 目ぇつけられて逃れられんかもしらんが、現場で万一ってこともあるからなあ。
 その辺りの裏取りなど、気を付けておかねぇといかんのさ」

弟子の食欲も何もかも承知の上だが、収入はあるのだ。この際、プラスマイナスゼロになってもそれはそれでいいだろう。
交友を深めると云うのは、値千金以上の意味を偶に持ったりする。

「……肉、肉な。心得た。奢るといった以上はちゃぁんと全員分奢るぞ、俺は。
 水飲みながら、ちぃと待ってくれや。報告してから、貰うもの貰ってくる」

宵越しの銭は、その時はその時。
ダメージコントロール的に割引券など差し出してくれる弟子に、忝いと頭を撫でてから、先ほどの話も含めてギルド員に報告してこよう。
契約上、定められた時間を過ぎれば、報酬を受け取って、目的の場所に目掛けて繰り出そうではないか。

その姿はさながら、親子連れとも見えたか見えないか――。

ティアフェル > 「わたしの場合まさにドクターストップ的な。今のところ『それ、死ぬから待っ…!』っていうのは数少ないのでみんな優秀ねえ。
 あーね……確かに年かさだと云い方ひとつにも気を遣うわね。
 ま、憎まれても云うべきことは云うしかないわ。聞く耳を持つ人は年上でも年下でもちゃんと聞くもの。
 
 母国語じゃなきゃしかたないわよ。――わたしマイペースだからな。わたしのやり方でイケル人がいれば、よね」

 弟達を見て来て、ああ、ものを教えるの向いてないなあ、と実感して来た次第であるが、それは身内だからイラつく要因も大きい。
 現場仕事が好きで座学は苦手という性分も手伝って、師範に進む道は見えていない。 

 ちょこんと大人しくそんな話を聞いていた少女の頭を撫でながら。

「先生の奢りなんて、無闇に素敵だよね。一種憬れだよね。
わたしの先生ではないけれども今日はゴチになりまーす!いえーい」

 お肉、お肉、と弾んだ声で妹と唱和する姉。人の良さげな師匠が断り辛い空気しか醸し出さないあたり、性格が悪い。
 なんの肉になるのかは、師匠の財力と割引券の威力にかかっている。鳥でも豚でも牛でもなんでもいいです、いただきます、と眼に肉を浮かべる。
 やったねやったね、わーいわーい、とすりすりする妹の手を取って巻き込んでジャンプする。華やぐタカリ。

「ごはんだごはんだ嬉しいなー。そのチケットどこで使えるのー?」

 奢りだからってめったやたらに食べようというほどさもしくはないが、ごちそうしてもらえるというのは心弾む。だって庶民ですもの。

 割引が通用する店を訪ねて探して、行きつけばやがては賑やかな乾杯の声が店内に響き渡る。
 お父さん、ご注文なんにします?とお店の人にナチュラルに声を掛けられていたのが、印象深い夜だった――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/訓練場」からラファルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/訓練場」から影時さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/訓練場」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にルーミスさんが現れました。
ルーミス > 「………はぁ。やれやれ」

夜の帳が降りる頃、平民地区にありがちな広場の隅で小さく毒づく女の姿があった。
先程まで客と商談をしていた所。
客がかなりの吝嗇で曲者だった為、隙あらば値切られそうになって常に気を張っていた結果…
疲労困憊して今に至る。

「つっかれた………気晴らしでもして帰ろうかな…」

気晴らしといえば買い物か、薬の調合か。あるいは娼館に行って楽しむという手もある。
さてどうすべきか。顎に手をあてながら一人考える姿は、端から見れば少し浮いているかもしれない。

ルーミス > 「……よし」

行く先を決めたのか、一度頷くと女は歩き出す。

はたしてどこへ向かったのか、それは女にしかわからないことで。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からルーミスさんが去りました。