2021/09/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にロイスさんが現れました。
ロイス > 夜の冒険者ギルドは、騒がしい。
酒場で飲むもの、依頼を探すもの。
昼の冒険者ギルドは、まだ仕事に出ている冒険者も多いが、夜ともなれば、大勢の人が騒ぎ始める。
そんな酒場の隅っこで、一人エールのオレンジジュース割りをちびちびとやっている男がいる。

「あ、こんばんは。ああ、あの件か――」

時折、冒険者達に声を掛けられては、少し話をして、また別れていく。
元々、仲間とともに大酒を飲んでどんちゃん騒ぎをするような質ではない。
誘われれば飲みに付き合うが、自分から誘いはしないぐらいの人付き合いだ。
本当なら、自分から仲間の輪を作るべきなのだが、これはもう相性というものだった。

「(まあ、実際そうやって羽目を外した冒険者の対処をする事もあるからなあ……)」

別に誰に頼まれた訳でもないが、喧嘩や後輩冒険者の無体に対するガードを自然としてしまうし、その為に酒を抑えめにする。
そういう性分なのも、酒で仲良くするというコミュニケーションは取りづらい原因のひとつなのだろう。

「まあ、別に構わないは構わないけど……中年冒険者がぼっちで酒飲んでる所、後輩から見たら何とも言えない気持ちになるだろうなあ」

そんな事を苦笑気味に思いつつ。
一人酒を口に運ぶ男であった。

ロイス > 「ん……」

そうして、一人酒を楽しんでいると。
ふと、女性の職員が、男性冒険者に絡まれていた。
一応、知り合い同士で話をしているという線を疑ってみたが、彼女の表情的にどうもそうではないらしい。
今の所、尻を触るだのといった直接的な行動には出ていないようだが。

「んー……」

こういう場合、割って入るのは帰って騒ぎを大きくしてしまう。
なので、男は一旦テーブルを立って、気配を断って彼の後ろに回る。
近づいて聞こえてくる彼の言い分は、まあ何というか、普通のナンパである。
「仕事が終わったら一緒にどう?」だの、そういう感じの。

「(だが残念。酔った頭じゃ見えてないかもしれないが、明らかに彼女の左手薬指には指輪があるんだ)」

というわけで、彼女からも見えない角度で手刀一閃。
後頭部に一撃……勿論、後の障害が残らない程度の威力で。
綺麗に気絶した彼を、腕で抱きとめる。
彼にはおそらくこちらの顔は見えていないだろう――おそらく、起きた後は自分でも酔っ払って寝てしまったと、そう思うはずだ。
何が何だか、という顔で眼を白黒させている店員については、

「ありゃ。どうやら、深酒が過ぎたみたいだね。
悪いけど、毛布かけてあげてくれないかな。流石に装備付きの冒険者を運ぶのは俺でも辛いからさ」

と、言いつつ、机にうつ伏せにして寝かせておく。
彼女自身も、釈然としている訳ではないようだが、此処はそうした方が良いと判断したのだろう。
毛布を取りに、バックヤードに引っ込んでいく。

「さて、それじゃ俺は飲み直そっかな……」

そう言って、再び席にもどっていくが――