2021/05/27 のログ
ヴィクトール > 何があったのやらと、謎の放置をかまされた彼女を眺めていると、呼吸の音が変わる。
お目覚めの挨拶代わりのくしゃみに、クツクツと笑いながらも、動ける様子から変な影はしたなかったらしい。
それは一安心だが、こうして裸体を眺める楽しい時間が終わってしまったのは、少々名残惜しいもの。

「よぉ、死んでなかったみてぇだな」

思っていたより元気そうだと思いきや、次に上がる悲鳴が鼓膜をつんざく。
悲鳴の一つや二つ上がるだろうと思っていたが、思っていたより大きな、遠慮なく申し上げるなら品のない悲鳴の高音がほとんど不意打ち気味に突き刺さった。
思わず顔を歪めながら、耳をふさぐと、体を丸める様子をみやりながらゆっくりと立ち上がる。

「服ならねぇぞ、そこで細切れになってたからよ」

ほらと近くに転がっていた服の破片を指差せば、僅かな風にのってふわりと舞い上がる。
とりあえず、もう少し人目が着かないようにと思えば、改めて片膝をついてしゃがみ込む。
丸まった彼女の背中の方へ両手を伸ばし、そのまま横抱きに抱えあげると、近くに積み上げられていた木箱の山の影へと運び込む。
静かにそっと下ろせば、左右に木箱の山、背後は壁の空間に包まれる。
あとは正面に回り込まれなければ、この男以外の視線に入ることはないだろう。

「犯されたわけでもなけりゃ、腹いせのサンドバッグにされた様子でもねぇし。何してたんだ?」

とりあえずこの奇妙な光景の事の顛末を求めながら、苦笑いを浮かべながら彼女を眺める。

ティアフェル >  もう少し早く意識が戻れば見られずに済んだのかも知れないが、得てして運命とはそういうものである。
 自分のいいように働いてくれるものではない。
 ガン見程度で済んだのはむしろ運がいい方とも云える。
 が、嫌なものはイヤダ。

 盛大な悲鳴を上げた後は真っ赤になって全力で身を縮こまらせているが……守れるのは精々前身くらいで。

「見ないで見ないで見ないで、見ーなーいーでー!!」

 死んだ方がマシみたいな顔をして必死だったが、布の残骸となった衣服を示されて、

「うっそでしょ、あの野郎ども、ブチ殺す――って、ひゃっ、きゃあっ……?!」

 涙目で破り棄てられた白衣とワンピースを見ていたが、そこを不意に抱え上げられて軽く木箱の蔭へ移動してもらえば、一瞬何を、と慌てたが極力身を隠してくれているのだ、と察して暴れかけるのをやめ。

「あ、ありがと……で、でもあっち向いてくれます……?
 何って……王都名物愉快な暴漢どもにナニかされかけたので、なにを片っ端から萎えさせてやって……その後は……確か殴られてそのまま気絶して……今に至る?」

 問われて、気を失う以前のできごとを想起させ覚えているところまで話すと、ずっと腰を曲げてコンパクトにまとまっているので大分背中が痛くなりながら、懇願した。

「ぬ、布地を……ある程度の大きさの布地を恵んでください……上着とか貸してくれない、かなー…? ちゃんと返すし後でお金払うから! お願い……!」

 他に頼れそうな人間は見当たらない。一応暴漢どもとは違うリアクションを取っていたので。そこを見込んで平身低頭と云った態で頼み込んだ。

ヴィクトール > 見ないでと悲鳴を上げる彼女を遠慮なく抱き上げ、少しはマシな場所へと移動させていく。
少し暴れた程度ではびくともしない戦人の体は、腕も筋の張り巡らされた丸太といった様にがっちりしている。
しかし、先程といい今といい、見た目の良さとは相反して随分と粗暴な面が見える。
今まで出会ったことがないタイプというのもあって、おかしそうにクツクツと笑ってしまう。
そして物陰に静かに下ろせば、続くおねがいには何故か悪い笑みがにんまりと溢れていた。

「残業のお駄賃代わりだ、寧ろ見せてもらいてぇぐらいだ。萎えさせたって……まぁ、運が良かったな。俺が悪党なら腹いせに奴隷商に売り飛ばしちまうな」

下手に反感買って、恨みをぶつけられるぐらいなら、体を開いたほうがマシだというのに。
先程までの言葉もあって、変わった女だと思いながらも、苦笑いが絶えない。
そして、彼女から重なるおねだりにはどうしたものかと暫し考えるように顎をさすり、ピンと一つ浮かぶ。
とはいえ、彼女の言葉を借りるなら、タダでとは言えないものだ。

「服を準備してやってもいいが、金じゃ駄目だな、そんなにうまみがねぇ」

金なら掃くほどあるなんて世迷い言じみたことは言わないが、金に執着はあまりない。
寧ろというように彼女をみやりながら、目線を合わせるようにしゃがみ込むと、エメラルドの瞳を金色がまっすぐに見つめる。
そして掌を伸ばすと、彼女の額に指先を当てるように緩く小突こうとした。

「代わりに、気に入ったら抱かせろ。気に入らなかったらお代はいらねぇよ」

これからすることが気に召すかどうか、それを天秤にかけて報酬を求めた。
それこそ、良かったとしても彼女が気に入らないと言えば、何も得ることがない駆け引き。
大きく彼女に分がある提案をすれば、どうするよ?といいたげに、悪人面が緩く笑む。

ティアフェル >  最悪なのかまだマシな方なのか至極微妙な心地で、元より小柄に類する身体を一層小さくして視線からの抵抗を試みていたのだが。
 空の木箱の隙間に積極的に入り込んでそうか、いっそ箱で……と、木箱の天井と底を抜いて身を隠すという方法を思案し始めたが……だめだ。ひとつでは上半身が辛うじて隠れるのみだし、ふたつは持って歩けない。
 
「……やだよ……それなら後日金銭でお支払いするわよ……。見ないでって云ったら見ないでッ。
 ……そんな相対的な運の善し悪しを考えてどーすんのよ」

 ボコボコにされたりその後結局酷い目に合うのなら大人しくしてた方が賢明だとは――毛程にも思わない。
 女が全員暴力の元好きにさせてやる生き物だと認識されるのも癪だ。
 
「えぇ……ぼったくる気……? 何を支払えばいーのよ」

 金でなければそれに類する何か価値のあるものか、服一枚で吹っ掛けてくるものだとあからさまに顔をしかめていたが、飽くまでもこっちを向いて目まで見て云いだす声と額をつつく指先に思わず顎先を引いて。

「………っは? 気に入ったら……? それはわたしの主観でいいってことよね?いやもちろんそうよね……。うぅん……」

 ここで適当に相槌を打って了承するのは簡単だ。気に入らないと容易く反故にもできる浅い約束であるし。
 けれど、生来真面目な性分は悩むように眉根を寄せて考え込み始めた。
 しかし、簡単な理屈である。気に入った相手であれば大きく問題はない。
 気に入らなければ断れる。しかし気に入る入らないと云うよりも、

「つまり、その気にならなければ無理しなくていいってことでオッケィ?」

ヴィクトール > 少々しおらしさ感じる言葉が聞ければ、それはそれで心を満足させる。
その合間、木箱を使って体を隠そうという奇抜なアイディアが浮かんでいるとは思わず、クツクツと悪い笑みを見せていた。

「金よりいい女の裸見るほうが価値があるからな、無理な相談だな。命あっての物種だ、とっ捕まろうが犯されようが、五体満足してりゃナニ噛みちぎって逃げることも、タマ蹴り上げて逃げることもできるかもしれねぇし、無理なら様子見て逃げだしゃいいだろ?」

奴隷にされて売り飛ばされれば、どれだけ強かろうと枷を嵌められて食いつぶされるのみ。
二つに一つなら、まだ生存率が高い方を選ぶだけ。
女が消費されるモノという考えの答えというよりは、あくまで生き残る考えの言葉だ。
そうでなくとも自身がいる場所は、より一層生き残る事にしがみつく妹達を見ていれば尚更だった。
そして、交換条件を提案すれば、わかりやすい不機嫌顔に笑みが溢れる。
ここまで感情を着飾らないタイプは見たことがない、というよりはよく生き残れたというべきか。
そんな事を思いつつ、吐き出した提案には、相手の方が困惑しているように見えた。

「あぁそうだ、アンタが気にいるかどうかだ」

軽いノリで承諾するだろうと思っていれば、思いの外真面目に考えている様子が見える。
粗暴というか、むき出しというか、直情的なタイプだと思えば、今度は生真面目な様子が見て取れる。
変わったヤツだと、自分のことは棚に上げて勝手な事を思いつつ、どうでるかと楽しみにしながらその様子を眺めていたのだが。
ルールを確かめるような、そんな質問を重ねられればおかしそうにクツクツと笑ってしまう。

「その気がヤる気にならねぇのか、それとも俺が気に食わねのかは知らねぇけど、気に入らねぇなら無理する必要はねぇわな」

何を基準にするかは彼女に委ねる。
義に応えて体を開くのか、それとも与えられたモノに素直に気に入って抱かれるのか。
その答えの元になる部分には触れないと、暗に答えながら改めてどうするのか、彼女を見つめる金色が問いかけていた。

ティアフェル >  木箱を思案深げな眼差しで眺めて溜息を吐き出し、「木箱はムリか……」と呟く声を落としていたが、相変わらずみぞおち以外沁みも傷跡も痣もない豆にケアした身体は自身の腕や姿勢のみで一生懸命隠し。

「お金でいくらでも見せてもらえるでしょ、わたしよりよーっぽどイイ女のサービスたっぷりでナイスなバディを。
 今そんなたられば聞いたところで、『そうね!無傷で済んでわたしはラッキーガールだわ!』なんてはしゃげないわよ……」

 何も落ち度のない王都に籍を置く一般市民であれば、奴隷商に売り飛ばすことは易々とはできないものだ。
 そんなことが日常的に可能ならば街には奴隷女しかいなくなる。
 はーあぁ、とまた重苦しい溜息を吐き出して。それから、難題を吹っ掛けられた顔でしばし悩み顔を晒していたものの。

「わたし、嘘は得意じゃないの。
 ――気に入らないってなれば顔に諸出しになると思う。
 だから気に入らなくとも無理に付き合えって要求じゃなくて大分安堵しているし、そこら辺は残念ながらポイント奪取された」

 無理に、と云われてしまったら心底打つ手なしである。諦めて全力疾走で家まで帰るしかない。
 だから、その質問にも衣服の調達を頼むのを諦めて、ダッシュで帰るかとも思いはしたのだが。
 ――条件が案外ユルかったので躊躇いが生じる。やっぱり不特定多数に見られるのも嫌だ。
 見られてしまっている今の状況もかなりイヤと云えばイヤだが。

「残念ながらあなたに一目惚れはしてないし、今夜中に『わたしを好きにして!』って思うタイプでもない。
 ――わたしはそんな女な訳で、とりあえずこっちの意向次第って形で落ち着いてくれるんだったら、服先に持って来てくれないかな? こんなカッコじゃ冷静に話せば話すほど間抜けだし風邪引く」

 いつまでこの羞恥プレイ続けてなきゃならないのか、とそこでちょっと大事なところに行きついて――いやずっと思ってはいたが――早急に解決せねばならない問題を提示した。
 何ターンか前に戻り、服お願いしますレスに戻る。

ヴィクトール > 「それはそれ、これはこれだ。そういう意味じゃねぇんだが……とりあえず、気をつけるこった」

この話は続けても埒が明かないなと思えば、それ以上は特に言わず。
軽く肩をすくめて答えると、悩む彼女の様子を眺めていた。

「だろうな、そんな気はするぜ。無理に付き合えなんざいわねぇよ、気に入ったらっていったろ?」

先程から遠慮なくあれこれぶつけられているので、気に入らなかったら取り繕う様子もないのは想像がつく。
納得した様に小さく頷くと、更に遠慮のない言葉が続いてきた。
何となく覚えがある感じはしていたのだが、追い打つような言葉に一人納得がいく。
嗚呼、妹達に捏ね繰り回されている時にそっくりだと。
遠慮なくあれこれ言われるし、本気の拳はないにしろどつかれる事もしばしば。
苦笑いが引きつった後、わかった分かったというように両手で落ち着けといわんばかりのジェスチャーを見せる。

「分かった。とりあえずそこに座って大人しくしててくれや」

そう告げると、彼女の足元に腰に掛けていたランタンを置き、火を灯す。
そして、何故か背中に背負っていた大剣を引き抜いていった。
黒曜石を削り出したような真っ黒な刀身が顕になっていくと、それが砂鉄のように崩れて粒子に変わる。
改めて動くなよと告げると、彼女を隠すように広がっていき、黒塗りの木箱のようなハリボテに変わっていく。
内側の彼女から見れば、二人の合間に真っ黒な幕がかかっていくように見えただろう。
彼女が外から見えないようにすると、粒子にまとわせた魔力が熱を発していく。
それによって、密閉された空間が温まり、待つ合間に風邪を引く心配もなくなる筈だ。

「じゃあとってくるぜ」

一瞬、地響きの様な音を響かせると、その体は一足飛びに建物の上へ。
人外の筋力を発揮しながら急いで目的の場所まで向かうと、服を手に彼女の元へ戻る。
恐らく5分程度の短い時間だっただろうが、戻ったところで暗幕の天井が開き、そこから服が放り込まれていった。
黒の色合いに染まったワンピースである。
だが、普通のワンピースと違い、ダブルボタンのデザインと縁取るような金色の刺繍は戦人の礼服を思わせるかもしれない。
しかし、裾は膝丈程度であったり、プリーツがある内側の部分と、ない外側部分があったりと妙に可愛らしい方向に手が込んでいた。
袖を通せばわかることだが、生地自体もゴワつくことはないが少々固さがあり、重さも見た目より少し重たく感じるかもしれない。

「着たら言ってくれや、これ解くからよ」

これを指し示すように彼女を隠すヴェールとなった相棒をゴンゴンと小突き、着替え終わるのを待つことにした。

ティアフェル > 「見せたがってる奴よりもってタイプなの? ……どっちかと云えば今気を付けていたい」

 向こうを向いてと頼んでいるのに一向に応じてくれないこの状況、気を付けようがないけど警戒したい。
 真顔でぼやくように零していたが、

「そっかそっか……あなたにもわたしが無理にやるくらいなら殺すか死んでやるって気概を持っていることが伝わっているのかしら」

 命懸けで凌辱阻止、という頑固で偏屈でガチガチに身持ちの硬い女。利己的にそんなことをしみじみ呟き。
 家族とのやり取りを思い出すそちらと違ってこちらは弟と書いてサルと読む連中のことは欠片も想起できない。
 相手がまったく感情論を出さないからか。
 無駄にぎゃんぎゃん喚くこともなく自分的には比較的落ち着いた態で。

「よろしくー」

 衣類の調達に了承してひとっ走りしてくれると思い今日初めて笑顔になってひらあ、と手を振ろうとしていたが。

「……おっ?」

 火のついたランタンを置き背中の大剣を抜いた彼の所作に、目を丸くして見ていると大剣はそのまま黒いヴェールとなって木箱の間に収まる自分の姿を隠してくれる。
 人が来れば逆に何事かと思う者もいるかも知れないがこの時間闇に同化する黒は余程目ざとくないと素通りされるだろう。ぱたりと意外そうに瞬きしていたが、ご丁寧に剣が発熱までして夜気に冷やされる身体を護ってくれると防御型武器……などと妙な感想を抱きながら感心したように、またへらりと表情を緩め。

「ありがとう!」

 どことなく晴れたような表情と声で地響きを立てて飛び去って行く背中を見送った。
 そのまま待つこと五分。待っている時間は通常長く感じるものだが、珍しい大剣のガードを眺めたり、腹部に負った痣を自力でヒールしたり、コンパクトに縮まっていたせいで凝った背中や腰を伸ばしたり関節を労わったりしていたせいで、瞬く間に感じた。
 やがて戻って来た彼から黒地のワンピースを放り込まれて慌ててキャッチし、衝立となった剣のせいで向こうからは見えないだろうがこくこくと首肯し、

「うん、うん……ちょっと待ってねー……」

 返事をしながらも立ち上がって早速ワンピースに袖を通してボタンを留め。少女用にでも改造したかのような軍服めいたシックにかわいいワンピースは、然して手間も暇もかからず素肌に着こめて。
 しっかりした重い生地の衣類は下着もつけていない肌に優しいとは云えなかったが着心地はそう悪くなく。うん、まあまあ、いいじゃない、などと己の姿を見下ろして後ろを確認するように腰を捻って見やったりして。
 こんこん、とガード用大剣の表面を軽く叩き。

「おっけ。着れた、ありがとう、サイズも大丈夫みたい」

 あつらえたように、ともいかないが、ぶかぶかだったり小さくて着れないということもなく程々に身体に合っていて。ようやく素肌を晒さなくてよくなりかなり精神的に落ち着くが、何分下着が上下ないので裾を気にし勝ちに。

ヴィクトール > どっち好きというところだが、それを言ったら言ったで改めて揉めそうな気がして口を噤む。
続く言葉にも、だろうなと言うように苦笑いを浮かべていたが、見送りに見えた笑みには少し気も紛れたというもの。
明かりと熱、そしてブラインドを準備して服を取りに向かっていく。
組合の派出所に飛び込んできた男の様子に、妹達が少々驚いていたが気にすることなく、綺麗に収納されていたワンピースを片手に再び走る。
そうして放り込んだ後、衣擦れの音を耳にしながらも、彼女の体が覆われていくのを待つことに。
ノックと声に気づけば、剣に手を翳し、変形を解いていくと元の剣へ。
暗幕の向こうから現れた姿は、先程までの騒がしさを全て忘れれば可愛らしいの一言に埋め尽くされそうだ。
思い出して感想を述べるなら……可愛いが、凶暴の一言を添えたくなる。

「そいつぁよかった。いい感じに似合ってるしよ」

倉庫で眠らせておくよりはずっといいと思いながら、にっと笑みを浮かべながら剣を鞘に収めていく。
そして先程おいたランタンを回収すると、その明かりを消していき、片付けていった。

「……治安いい辺りまで送ってやるから、下着はそれまで我慢だな」

そして何処と無く裾を気にする様子に気づけば、行こうかというように、人通りが多い方を指差し意地悪い言葉とともに口角を上げていく。

ティアフェル >  粗野な感じに見受けられるのに、目隠しを置いて行ってくれたり冷えないように熱源処理をしておいてくれたり、印象よりも気の利くタイプなのだ、と正直に意外性を感じた。
 まさか同じくらいのサイズの妹さんから調達してきた、とは思わなかったが……新品でもなさそうなことは判り、誰のだろ?とは小首をかしげていた。
 いきなり兄が服を貸せと飛び込んで来たら、何事かと追及が飛ぶだろうが奇跡的にスムーズにことが進むご家庭だったらしく、ものの五分程度しか待つことなく。そして数分も掛からず着衣すると、風に裾が少しでも持ち上がりそうになることが不安で手で押さえながら。

「んー。シックだけどなかなかカワイイ……あんま着ないけど黒もありかなーと思った。
 古着……ぽくもないね。誰のお洋服? 洗濯に出して返しにいくよ。お礼云わないと」

 くたびれてはいないが。明らかに使用済み。この時間購入したと云うよりも借りてきた方が早そうでもあり、そうアタリとつけて。

「よけーな一言控えとけばいいのに……あなた……えと、名前は? わたしはティアフェル。ティアでいい。思ったより女性の扱い上手だよね。見た目もいーし、モテそうだけど。こんな女にまであわよくば手ぇ出そうなんて相当な雑食……いや、悪食っすね」

 悪食、と悪食材自ら、自虐というより揶揄気味に己を指差して笑い。そして促す声にこくりと首肯して。

「助かるわ。よろしくねナンパ騎士様」

 本業騎士、とも認識していないが、そのように呼ばわってかわいげの片鱗でも見せておくか、と軽く腕を組んだエスコートを要求して、適当なところまでご同行願う。

ヴィクトール > 可愛いという感想を聞ければ、そうかと言うように小さく頷きながら笑みを拵える。

「そりゃよかった、兄貴に伝えておくぜ」

作り主が喜びそうだと思いつつ、続く言葉には緩く頭を振っていく。

「そいつはうちの組合で使ってる制服の試作品で、もう使ってねぇんだ。袖通したのもうちの秘書だけで、それっきりでな。良けりゃ使ってやってくれ、千切れねぇ穴開かねぇし魔法で壊れねぇんだとよ」

実際使用されている制服は、もっとシンプルなデザインであり、彼女が纏っているのはコストを度外視したとりあえずの試作品。
纏った時にほんの少し掛かる重みは、見た目とは裏腹に戦闘用に調整された堅牢性維持の結果だった。
それこそ、今日のように彼女に嫌がらせしようとする奴がいたとしても、服をバラバラにされる可能性は抑えられるだろう。
──尤も、服を持ち去られるという手段があれば、壊れづらいということで絶対ではないが。

「肝に銘じておくとするわ。じゃあ、ティアだな、俺はヴィクトールだ。その辺は受け売りがおおいけどな」

元々は女の扱いなんぞ力でどうこうする程度しか知らなかったが、兄に拳込みで躾けられて今がある。
そんな昔話をひっそりと思い出しつつ荷物を片付けていくのだが、その最中、軽く自己紹介をすれば悪食という言葉に小首をかしげる。
顔を上げれば、彼女が自身を指差す様子に理解すれば一歩踏み出して彼女との距離を少し詰めていく。

「確かにうるせぇし、粗暴?っていうんだっけか、そんな感じだけどな。でも体付きもよけりゃ、可愛い服がちゃんと似合ういい女だ。あと顔立ちで気に入ってんのは目だ、色合いが好きだ」

彼女が遠慮なくいうのに倣うかのように、女らしかぬ部分を遠慮なく並べて苦笑いを浮かべた。
しかし、そのアクすらもいい味に変えるような幼さが残る愛らしい顔立ちと、相反する艶を感じる体付きを褒めていく。
透き通る様な緑色の瞳は、そんな彼女の中にあるパーツの中でも自身にとっては目を引く。
好みだといったエメラルドを、金色がじっと見つめながらに卑下する必要のない魅力を語る。

「騎士様ってガラじゃねぇんだが……いいのか? そのままどっか連れ込むかもしれねぇぞ?」

彼女の要求に答えるように、求められた手を自身の二の腕の辺りへと導く。
軽く添えさせるようにすれば、それっぽいエスコートの格好になるだろう。
その手へ、騎士というにはあまりに無骨な戦歴が刻まれた硬い感触を伝えながら。

ティアフェル > 「っへー。お兄さんが。いいなあ、かわいい服作れるお兄ちゃん……ウチのサルととっかえてくれないかなー……」

 戯れ交じりのぼやきを織り交ぜながら、弟よりも兄姉が欲しかったとちょっと羨ましそうな顔をして、少し重たいがお洒落で丈夫という衣服に感心して。

「もらっていいの? それじゃあ、ありがたく…! オフの時に着ーよう」

 仕事の時は白衣と決まっているから、シックな黒を着たくなった時に活用させてもらおうと譲渡いただけることになったワンピースに嬉しそうに表情を綻ばせ、やったーと弾んだ声を立てた。
 
「ヴィクトールさん、よろしくね。やあ……受け売り女殺しとはいえ、ジゴロがせっかく全裸の女に親切にしてやったのにノリが悪くてすみませんねぇ」

 通常この街のスタイルであれば、ここで「好きにして!」コールがハートマーク付きで飛ぶのだろうが、何分変わり種なものなので、兄仕込みの伝家の宝刀、女の扱いも威力が絶対ではなくて。
 最初は身体を見られて最低だ、とさえ思っていたがその後のフォローの巧みさに印象は向上し、さらに飾り気はないが真っ向から誉める言葉にきょとん、と一瞬目を丸めて。

「ぅぅわぁ……ヴィクトさん、大分コマして来たクチっしょ。そういう……変な美辞麗句じゃなく、思ったところを素直に誉めました、みたいなん、ポイントたっかいんだよね……いやあ、参った。
 でも、率直に嬉しいわ。ありがと。悪餌じゃなくってそんな風に云ってもらえるとどきっとくるわ。ふふ、こーしてみるとその金の眼も綺麗だと思うわよ。晴れた日の満月みたい」

 不慣れな男性は大抵喩え思っていたとしても素直に口にすることができないケースが多いが、目を見てそこを誉めながら云われるとかなりの女性はグラっとくるだろう。

「あはは、あなたが本気で連れ込むって思ったら慌てて逃げようが無駄でしょ? だったらこうしてても一緒よ。少なくとも今は紳士的であってくれるし、約束は破らない人かなって信じてるわ」

 先程服を取りに行ってくれた時の異常なほどの瞬足を見てもう察している。
 軽く添えるようにした彼の腕は近衛騎士、など見た目も多少必要な城仕えの騎士ではなく、戦場にて馬を駆り大剣で切り結ぶような軍人の中でも鍛え抜かれた強靭なそれ。力でも足でも敵う訳はない相手は、無理強いしないというのだから安心してエスコートを任せられるというもので。
 小さく楽し気に笑いかけて、衣服の残骸の散る路地裏から自宅の方角へ向けて出発――。

ヴィクトール > 「デッサンは兄貴がして、後は職人に頼んだっつてたなぁ。って、サルってなんだよ?」

サルと言われてそのまま普通に猿が脳内に浮かべば、何故それと交換になるんだと繋がらず訝しむ。
確かめる言葉には勿論というように小さく頷き、喜ぶ様子に緩く笑みを浮かべながら、その横顔を見つめる。

「気にすんな、口説き文句ってか、乱暴じゃない接し方ってのを教えられただけだからよ?」

何より、そんな気遣い程度で彼女がすんなりと折れるとは思えない。
予想通りというような、あけすけな物言いにクツクツと可笑しそうに笑いながら答えていく。
良くも悪くも欲望に忠実で、欲しいものは手に入れる為に手を尽くす。
けれど、兄のような流暢な語りは出来ないが故に、教えられた通り良いと思ったことを、好いたものを、愛でたく思う事を発していく。

「下手くそなりにはな? そりゃよかった、思ったとおりにしか言えねぇからよ。……んん、あぁ……そうか、そいつぁあまり言われた事なかったな」

目を丸くする彼女の様子も、その緑色の表情を豊かに変えてくれる。
可愛がればどんな表情を見せてくれるのやらと思えば、やはり抱いてみたいものだと唆るものがある。
そして、逆に瞳を褒められると鏡写しにしたように目を丸くした後、なんとも歯切れの悪い言葉を浮かべながら照れくさそうに笑う。
普段怖いだの悪そうだの言われてばかりの顔のパーツを褒められるのは、妙にくすぐったかった。

「そうかもしれねぇが、ティアだと連れ込むまで大変そうだな? じゃあ、約束の中で納得させるしかねぇな」

エスコートの仕方やら、作法やらはお前も隊長格なら覚えろと捩じ込まれた分、様にはならないがそれなりの動きはみせる。
彼女が感じた通り、城にいるような美麗な騎士というよりは、戦場の紅が映える戦人だ。
噛みつかれそうだと我慢していた手が微笑みに伸び、許されるならその頬を優しく撫でるだろう。
自宅へと向かっていき、彼女の答えがどうなったかは今は知る由もなく消えていった。

ティアフェル > 「デザイナーさんか、そんな兄ちゃんいたらかわいい服着放題だなー。……弟……5匹いるのよ。一匹交換してよ」

 サル=弟。姉のものでもないだろうに、デザイナーの兄の方がよっぽど羨ましくて半ば真面目に交渉(?)。
 この素敵な服はそんなお兄さんが考えてさらに弟を上手く仕込んだという。兄として素晴らしい。優良兄の服、大事に着ようとにこにこした。

「兄に仕込まれる前はさぞかし……」

 もしかしたらうちのサル共と似たような野生だったのだろうか、幼き頃は。と何となくそんな風に考えて窺うように自分の頭の上にある表情を覗き見た。
 ついでに兄はきっと正統派ジゴロなんだろう、と何とはなしに予想した。

「ダイレクトに云えるのは取り柄だと思うよ。やっぱり正面から誉めるのって誰だって照れるもん。
 ……ふふ、そいで誉められ慣れはしてないのか、そういうカワイイとこ出してくるなよー」

 女ったらしはどちらかと云えばちょっと苦手だが、この雑食さんに関してはあんまり壁ができないのがちょっと不思議だ。彼も彼で嘘を吐けないタイプの人であるように見えたからか。
 月の色銀色だったり時に赤だったりするが、この人のような金色に見えたりもする。そんな月の夜は思い出してしまいそうだなと感じながら照れ笑いに、ころころと楽し気な笑声を重ね。

「そうだねー。連れ込んだところで一筋縄じゃいかないと我ながら思うよ。
 ――あー、約束守る人は好きだよ?」

 そんな風ににこにこと笑いかけておく、そうすると簡単に裏切れなくなると信じているかのように。
 そして、思ったよりずっとエスコートの型が成っているいる所作にまた少し意外そうに眼を瞬いてから、綻ばせ。
 頬に伸びる指先にくすぐったげに肩を揺らした。紳士たる振る舞いをしてくれる相手に咬みつく歯の持ち合わせはなくて。
 その夜は、普段着ないが充分かわいい黒のワンピースを着て、普段話す機会のない相手にエスコートしてもらい、普段はないような最悪の始まりだったが、結末は想定外なほど穏やかに幕を閉じるのであった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からヴィクトールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にザイケルさんが現れました。
ザイケル > 昼過ぎの時間帯の冒険者ギルド。
朝一の仕事を終えて戻っていた者やこれから仕事を探そうとする者でそれなりに混雑をしたギルド内。
そんな中で依頼の張られる掲示板が見える場所の壁に背を預けてギルド内を眺める。

仕事を探しているというよりは冒険者の観察がメインというように視線は動き。
時折に誰かと視線が合えば顔見知りならば笑みを向け、見知らずならば軽く会釈を行い。

「知らない顔が数人か。新しい奴か他所からやってきた口か…」

このギルド内ならば大抵は顔は知っているので知らないとなればそのどちらか。
受ける仕事や態度で友好を結ぶべきか、それとも避けるべきか、現在は冒険者とはいえ前職が前職なので多少は警戒が必要となり。
他にも目が引くような者がいないかとギルド内を眺め続ける。

ザイケル > 「今日はこんなものか」

数時間観察を続け目についたのは数人のみ。
後は見知った顔ぶればかりに今日はこんなものかと決め。
掲示板に近寄ればソロでできる仕事を手にしカウンターへと向かって。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からザイケルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にイディオさんが現れました。
イディオ > (様々な冒険者が集まる場所、冒険者ギルド。そのギルドの中に、一人の冒険者が返ってくる。
その冒険者は、身長はそれなりに高く、髪の毛青く短髪、青い目はどよんと濁り、死んだ魚のような眼をしている。
装備に関しては、前衛職なのか、大きな盾が目に付いて、全身を守るコンポジットアーマー。頭には鉢巻を巻いているが、別に魔法はかかっていない模様。
腰には大筒があり、その他に、ロングソードにクロスボウ。一般的なソロの冒険者の装備であった。
のそり、と、素早さの認められない動きで、ギルドの中に入れば、常連らしい冒険者たちに軽く挨拶をしつつ、カウンターへ。
中堅のベテラン冒険者であり、顔自体はそれなりに広く、然し―――ソロ。
理由はほかの冒険者に聞けばわかるが、目が、怖いとの事。ゾンビみたいとよく言われる男だ。
カウンターに付いたら、バックパックから、麻袋を取り出す、大きな袋一杯に詰め込まれている何かは、かさり、と音がして見た目に反して重量は少なそう。)

「常設依頼の薬草採取、完了報告です。」

(目が濁っているから、笑いかけてもにちゃぁ、と言う擬音が似合いそうな不気味な笑顔になってしまう冒険者。
受付の人は流石に成れているからか、薬草の入った麻袋を回収し、検分しますのでお待ちください、遠くへと行く。
其れを見送ってから、何か新しい依頼でもないだろうか、と掲示板の方へと移動する男。
丁度いいのがあれば、引き受けていくのも良いな、と言う思考だった。)

イディオ > (しばしの間、掲示板を見ているモノの、特に目新しい情報などはない。とは言っても日夜困っている人が居るのは間違いなく、依頼自体は確かにある。
それらを確認しつつ、但し、グループでの参加―――パーティを組んでいる人用の依頼ばかりな事に、軽くため息を零して見せる。
ソロは矢張り、肩身が狭い。まあ、軽く考えるだけでもわかるのだ、パーティの有用性に関しては。
今更、と小さくつぶやいていれば、受付が戻ってきて査定が終わったと伝えてくれる。
今回の査定も、それなりに上々であり、報酬も少しばかり上乗せして貰えた。それを手にして、男は酒場に移動する。)

「まずは、腹ごしらえ、だよなぁ。」

(依頼をしていて、昼間は弁当を食うが、矢張り腹は減るものだ。酒と、飯。まずはここだ。
ギルドのは併設されている食堂があるから、報酬を貰ってすぐに此処に来る冒険者は多い。
飯はそれなりに美味しいし、冒険者価格だから安い、情報交換の場としても十分使える。
先にいる酒場の方の常連にも軽く手をあげて挨拶しつつ、奢れと言う集りにはふざけんな、と返して、席に付く。)

「今回のメニューは、と。」

(ギルドの料理人は日によって違う、副数人いるらしいので、メニューを見てから決めることが多い。ただ、常駐のメニューもあるが、まあ、それはそれだ。
毎回違うなら、毎回違う物を頼んだ方が楽しいし美味しいので、と。
暫しメニューを眺めてから、註文をしようか、とメニューから視線を外し、ウエイトレスとか看板娘とかを探す。
いない日もあるので、その時はマスターに直接、だ。)

ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にクリスティンさんが現れました。
クリスティン > 何時ものように仕事終わりや仕事前といった冒険者で混雑する酒場を駆け回る。
料理や酒を運び、空になった器を下げたりと忙しく。
その途中に酒の誘いがあれば断り、お尻を触られればその相手の顔面にジョッキを叩きつけて去ったりと。
そんなこんなを繰り返しトレイに空の器を載せてカウンターにと戻し視線を巡らせれば見知った顔を発見し。

「いらっしゃい、注文は決まってる?」

メニューを眺めていたようだが視線を外す様子に注文が決まったのだと考え声をかけ。
もうある意味見慣れたハイライトの旅だった瞳を見ては注文を取って。

イディオ > 「ああ、決まってるよ。
 今回も、酒はエール酒。食べ物は……この間有った、砂リザードの串焼きセットを。頼めるかな?」

(きょろきょろきょろりと探し回って居れば、そこには、馴染みのウエイトレスがやって来る。と言っても、いう程よく合う訳ではない。
向こうは、本来の酒場と此方の兼任、自分は、依頼でちょくちょく出るから。
それでも、名前と顔が一致する程度には、彼女の事は知っている。)

「お久しぶり、クリスティンさん。
 落ち着いてきたら、一杯だけ、如何だい?」

(にへら、と言う笑い方が一番合うのだろう、彼女に挨拶だけを。
酒場が落ち着いたなら、彼女に誘いをかける。彼女は、何時も一杯だけは奢らせてくれる。
その間だけでも、話し相手をしてくれるのが嬉しいのだ。)

クリスティン > 「エールに砂リザードの串焼き…うん、大丈夫。畏まりました」

告げられた注文を紙に走り書くと注文の品は大丈夫と笑みを向け。
それをカウンター越しにマスターに手渡すと相手を改めて向き直り。

「本当に久しぶり、元気そうでよかった。
これからピークになりそうだし、先に貰っちゃう事にするね」

挨拶を返してくれる相手に小さく手を振り、後ろから聞こえる先ほどジョッキを叩きつけた男の声はスルー。
一杯の誘いには少しだけ考え、まだ暇はできそうにないので先に貰おうと決め。
マスターを窺うように見れば黙って頷く姿にエールを追加で注文、隣の席にと腰を落ち着けて。

イディオ > 「有難う。」

(注文を受け取ってくれている彼女、マスターに通すのは、矢張り慣れている様子であって。向き直る彼女に軽く笑いを零す。
隣に腰を掛ける彼女、確かに、今時分は早めに戻ってこれたが、冒険者たちはこれからが一番多く成る時間帯だろう。)

「あらま、じゃあ、先にクリスティンさんをお借りしまーす。
 しかし、忙しかった、と言うのは言い訳になるかもだけど、会えなくて寂しかったよ。」

(さっき、良い音がしたなぁ、と思って居たのだけれども、男が喚いているのを見て理解する。成程、と。
周りの冒険者たちが物理的に宥めて居るので大丈夫だろう、その内、彼は良い睡眠をとる事が出来るだろう、馬小屋で目を覚ますことになるだろうが。)

「どう?元気だったかな?」

(見ればわかるところではある、彼女は記憶に残っているように、快活な様子なのは変わりなさそうだけど、実際に言葉として聞いてみたくなっていて。
エール酒が二つ来れば、乾杯、と軽くジョッキを持ち上げて見せる。)

クリスティン > お礼を言われるが、それは仕事なので何でもないというように笑顔を返し。
バイトの時間は丁度忙しくなる中ごろまでなのだがそれは口にはせず。

「その買うみたいな言い方はどうかと思うよ?
そういうお世辞はうまいよね。でも、私も元気そうなイディオを見れてよかったよ」

寂しかったという相手お世辞はと首を振り、冒険者である彼とバイトの自分ではどうしても会わない事が多くなっていて。
後ろからの声はだんだんと小さくなっていく。
おそらくはお仲間や周辺の冒険者たちに黙らされるのが大体のお決まり。

「それなりかな?いつも通りに過ごしてたよ」

ここでバイトをしたり狩人として狩りをしていたと告げて。
やがてエールが届けば手にし、乾杯と持ち上げられたジョッキに自分のジョッキを軽く合わせれば口を付け。
美味しそうに笑みを見せて笑い、串焼きも運ばれて来れば相手の方へと押しやって。

イディオ > (彼女の忙しい状況に関しては―――流石に良くは判らない、ただ、忙しそうだな、と言うのは前に訊いた仕事ぶりで感じていた。
なので、今も忙しいのだろう、そんな風に考える、それだけの状態であった。口にされないのであれば、悲しいかな理解しきれなかった。)

「済まないな、マスターに一寸言ってみたかった。
 はは、一応―――冒険者はある程度社交性も、な?でも、仲の良い友人に会えないと言うのは寂しいもんだぞ?」

(冒険者とは、友人が直ぐに死んでいなくなる職種だ、彼女は町の中にいるからそういう事は余り無いのだと思うが、知っている人と友人と会えない寂しさは良く知っているんだ、と、小さく苦い笑いを零して見せる。
男の中では、彼女は親しい友人のカテゴリに入れてはある、彼女が迷惑でなければの話であり、迷惑だと言うなら止めるが。
それと余談だが社交性云々言っていて、男は自身のゾンビのような眼でいろいろと台無しになって居る、判って居るけれど。
そして、痴漢男だが、可愛らしい女の子のお尻をなでたのだ、周りの冒険者たちからの、歓待は屹度、楽しい事になって居るのだろう。
彼女が離れたら、この冒険者イディオもどうなるか、それは彼らの酒の進み具合による。)

「そっか。ああ、もし鹿とか、猪とかそう言うのほしかったら……。
 あれ、前にも言ったかな?」

(確か、彼女がハンターをしているのは聞いたことがあり、その際に軽く売り込んでおいた。それを再度しようと思って、行ったことあるな?と首を傾ぐ男だった。
乾杯をして、一口、エールの冷たい感触に、ふはぁ、と息を吐き出して見せて。)

クリスティン > 「んー……まあいいかな。マスターが駄目って言ったら付き合えないし。
冒険者ってどうしてもあんなイメージがあるからね。
私も知った人が来なくなったら心配するし、友達なら猶更だよ」

相手の言葉に如何しても冒険者のイメージは後ろで可愛がられている男のようなイメージが強く。
それを思えば今話している彼は紳士的に思え、ただ慣れていない間はその瞳を見てはビビッていたりしたが。
そして会えないのはという言葉にはよくわかると何度も頷き、あなたは友達だからと軽く肩を叩いていき。

「そっちは本業だから手伝って貰ったら仕事がなくなっちゃうよ。
前にも言ってくれたよ。でも、それぐらいは自分で狩らないとね」

もし凶悪な魔獣などが狩場に現れるようになれば頼ることになるが今は大丈夫と。
むしろ全部頼っていれば自分で何もできなくなり、どうしても必要になればお願いすると笑って。
一口飲んだエールの冷たさは仕事中にはとても美味しく、少しずつではあるが二口三口と飲んでは美味しいねと笑いかけて。

イディオ > 「流石に、マスターの言う通りにはしないとな、大丈夫だから、こう言う風に休ませてくれてるんだろうし。
 間違いは、無いと思うよ?冒険者は、大半が普通の仕事に就くことの出来ない食いっぱぐれのアウトローといって良いだろうから。
 ははは、嬉しいよ友達と言ってくれるのは。」

(彼女の冒険者のイメージは間違っていない。普通の人は其れこそ、何某かの仕事をしている筈だ。商人なり、兵士なり。そう言ったものに慣れなかったりする焙れ者、其れを管理するのが冒険者ギルドと、考えて居る。
何せ、冒険者の殆どは、市民権を持ってないだろう、それが、証拠と言うかのように。

正直に言えば、この目と、風格があるからか、友達がとても少ないので友達と言ってくれるのは、純粋にうれしく感じてしまう。
軽く肩を叩く相手に対しては、思わず笑ってしまうのだ。
こう言う気安い会話、関係が心地よく感じられて、男は酒を更に一口、煽るのだった。)


「まあ、だとしても、さ。例えば一人では足りなくなる場合、とかもあるだろうし?友人の指名なら喜んで手を貸すよ。
ああ、別に、狩りだけの話じゃないから。」

(何か困ったことがあれば、依頼があればいつでも呼んでくれよ、と。こういうのも、冒険者としての営業と考えて居る。
必要な時にお願いするという言葉には、頼むよ、と笑ってうなづいて見せて。
ちびり、ちびりと飲む姿を、何となく眺めて、小動物ぽいなぁ、と言う感想を一つ。美味しいねとの彼女の言葉に、同意の首肯しごくり、と酒を呷って見せる)

クリスティン > 「休ませてくれるのは私が良く臨時で入るからだよ。
アウトローって言ったら……この国の兵士も貴族も似たようなものじゃない?
イディオは色々と物知りだし話していて楽しいからね」

この国、街に住む身としてはむしろ冒険者の方が紳士的に見える時があり。
勿論ギルドに登録をしていない者は別として、登録しているなら最低限のマナーと礼儀はあるのだしと。
それほどに兵士や貴族にろくでもない者が多いのだがそれは公然の事……。
彼は見た目こそ最初は驚きがするが話せば悪い人ではないと判り、瞳も慣れてしまえばこういう物と思える程度。
そして一緒にいて楽しければ友達というのが自分の考え。

「指名料が格安ならお願いするかも……高いと大物を狩っても足が出ちゃうからね。
んー……でも他に頼むことってあったかな…」

天気や気分で本業の狩り、そして雨や人手不足のここでのバイトが主な稼ぎなので他に手伝ってもらう内容がうかばず。
思いついたときに頼めばいいかなと考えを先に延ばし、
美味しいという言葉の同意には笑みを見せ、小動物ぽいと聞けば頬を膨らませて串焼きを一本失敬して頬張って。

イディオ > 「それだけマスターにも頼りにされてるってことだよな。之から忙しくなるのだから、その前に英気を養って、という事でもあるのだしさ。
 ……兵士達や貴族は、アウトローと言うより、腐敗してるって言うべきな気もする。
 ま、一応それなりに冒険者を遣っているから……ね?」

(いい年して、未だに冒険者をしている、それなりの経験、知識はあると、思いたい。魔術師とかそういう人程ではないが。
冒険者が紳士なのは、食い扶持でもあるから、お客様を困らせてどうするという考えだと思う。
兵士、貴族はぶっちゃけて言えば、平民に何をしようとも痛くもかゆくもないから、なのではないだろうか、とか。
邪推かと、小さくお酒に酔った思考を首を振って振り払う)

「指名料、なんてものは、無いぞ?……と、このギルドには、無いぞ、が正しいか。
 他の冒険者ギルドは知らないけれど、此処のギルドに関しては、指名されるのはお得意様が出来たという名誉でもあるし。
 指名したから高く成る、はない。ただ、冒険に出ている最中なので、依頼を受けられる状態じゃない時とか、後に回ることがあるけれど。」

(流石に専属冒険者とかになれば、その人の依頼料は全部専属にした人が払うだろうし。冒険者にとっては、自分を頼ってくれる人が増えると言うのは喜ばしい。
だから、このギルドに関しては、依頼に関する指名料はないぞ、と笑って見せる。)

「あ!?」

(ぷく、と膨れた頬、次の瞬間消える串焼き、やられた、と、男は笑う。
取られた方が悪いので、此処は諦める事にした。)

「ケーキ一つ!」

(意趣返しか、甘くておいしい高級品を頼んで見せる。今、報酬をもらったばかりだから出来る暴挙)

クリスティン > 「そうだといいんだけど……これから忙しくなるけどイディオに会えたし今日はもう上がってもいいかも。
私はどっちでもいいかな、危ないって意味では変わらないし。
それでも物知りだと思うよ」

危ないという意味ではアウトローでも腐敗でも大して変わらず。
まだ冒険者の方が権力を振るわないだけマシに思えて。
それを思うとまだ冒険者の方がよく見えていると。

「そう?それなら困ったらお願いしようかな。報酬は獲物の一部でいい?
お得意様?指名が入る方が仕事にあぶれないんだよね、そういえば。
その辺りは判ってるから大丈夫だよ」

報酬が高くならないのなら頼むのも良いかなと考えるのだが…報酬は下手をすると現物支給になることを先に告げ。
指名料がないのなら友達である相手に頼もうと決めて。

串焼きを一つ美味しそうに頬張っていれば頼まれるケーキ。
そういうの頼むんだと目を丸くして。