2021/05/26 のログ
レン > 幾らかの時が経ち。
人の流れも落ち着いてきた頃。
林檎を齧りながら荷物を手に立ち上がる。
宿屋や飲食店の並ぶ通りへと歩を進め、人波にのまれるように消えていった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からレンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  道の途中には衣服をはぎ取られた女が横たわっていた。
 みぞおちに強い一撃を食らい昏倒させられた後、衣服を破り捨てられたその女のぼろぼろに裂けた布切れが周囲に散らばっている。
 けれど、それ以上のことをされた形跡がないのが奇妙と云えば奇妙。
 暴力を受け全裸に剥かれてしまってはいるが、その後凌辱に及ばれた痕跡もぼこぼこに殴られた傷もない。
 
 ――何故衣服を剥がれただけの状態で女が路地に放置されているのか。ことは一刻程前に遡る。
 数人がかりで一人の女を犯そうと街を物色していた男たちに眼をつけられ路地裏に引きずりこまれたのだが、その後が一筋縄ではいかないタイプの女だった。
 ヒーラーたる女は暴漢対策にとある技を習得していたのだ。
 それは、強制的に対象を不能にしてしまうというもの。湧き上がった性欲を根こそぎ消去してしまうかのように萎えさせてしまう。
 今夜もそんな技を駆使して襲い掛かって来た暴漢たちを一人残らず、まるで無垢な稚児のごとく不能にしてしてやったまでは、良かった。
 しかし、暴漢たちはことには及べなくなってしまったがせめてもの腹癒せに生意気な女を辱しめてやることにし、気絶させて衣服を破り取ったのだ。
 破った衣服は捨て置き、はぎ取った下着は戯れに持ち去り、剥き上げた女を路上に放置して立ち去って行ったという経緯。
 
 今、そんな一連のできごとに依る結果が転がっていた。
 
 「…………………」
 
 呻き声も立てず、浅い呼吸の繰り返される胸を上下させる以外は一切の動きもなくうつ伏せに力ない腕をだらりと伸ばした、ちょうどI字型に近い姿勢で昏倒している女が一人。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にヴィクトールさんが現れました。
ヴィクトール > 仕事帰りの近道に通りかかった路地、普段と変わらぬ光景だと思いながら歩いていた。
しかし、向かう先に何かが転がっているのが見えると……訝しげに首を傾げて近づいていく。
その先にあったのは、更に奇妙としか言えぬもので、全裸の手つかずの女が転がっていた。
珍しく金色の瞳を丸くしつつ、あんぐりと口を開きながらその様子を眺めてしまう程には驚いてしまう。

「何だこりゃ……」

辺りを見渡せば、散乱した服の破片らしきもの。
下着も千切られたのだろうかと思いつつも、念の為背中の剣に手を伸ばしながら周囲の気配を探る。
珍妙な撒き餌で注意をそらして不意打ちぐらいにしか浮かばないが、どうにも気配もない。
ますますわけがわからなくなりながら、小さくため息を零す。
ともかく、このまま放っておけば誰かに犯されるか、売り飛ばされるのは明白だろう。
改めてあたりを見渡すと、彼女の傍にしゃがみ込んでいく。
確りとした治癒の類は出来ないので、下手に動かすと良くなかろう。
そう思いつつも、彼女が目覚めるまで安全の確保に務めることにした。

「いい身体してんな」

小さい声で呟きつつ、遠慮なく彼女の裸体を眺める。
飛び込みの残業じみたことをさせられるのだから、これぐらいの褒美はあってよかろうと。
とはいえ、全裸にされた彼女を見下ろしているのは、黒装束の顔つきの悪い大柄の男。
護衛というよりは、品定めするかのような絵面になっているのもあるが、胸元から股座へ、そして顔の方へと遠慮なく視線を這わせていれば余計拍車も掛かる。

ティアフェル >  服だけ剥かれて手傷もうつ伏せ状態からでは負っているようには見えない。
 裏っ返してやればみぞおちに明らかに拳の痕といった痣ができあがっているが――今の状態では無傷な裸の女。
 まるで不要な人形をぽいっと路上に放り出したような態である。

 かなり急所に綺麗にキメられたのか、女は身動きもせずに夜風と石畳に冷やされていたが、身体が冷えたのがきっかけか、それともじろじろと眺めまわす視線に気づきでもしたのか……やがてぴくり、と瞼が震えた。

「………っふ……、」

 声とも云えず小さく息が抜ける音が唇から零れ。
 ヒュオ、と一瞬強く吹き抜けた宵の風に反応してぶるりと震え、

「っへ、っくし……ッ」

 くしゃみで覚醒して堅く閉じた眼をぼんやりと開かせ、

「さぶ……ぃたたた……」

 かなり過ごしやすい時期とはいえ夜中の路地裏に一糸まとわぬ姿で転がっていればそれは震え上がる。ふるふる身体を揺らしながら、覚醒とともに伴う腹部の痛みに眉をしかめ、直後、視線に気づいた。むしろそのすぐ傍に屈み込んでいる見知らぬ男性もばっちり認識し、

「え、なに、え?! わ、や、ぎゃあぁぁぁぁあー!!?」

 その際、衣服を何も纏ってないことにもようやく気付いて悲鳴を上げて胸元を両腕で覆うように隠し、咄嗟に蹲るように身体を丸めた。