2021/04/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」に黒須さんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」から黒須さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にリーアンさんが現れました。
リーアン > 朝まだき、酔い潰れて眠る酔漢程度しか見当たらない裏通りに、
いつから其処にそうして在るのか、一体今も見る者が居るのか、
朽ちかけた紙片ばかりが貼り付けられた、古びた掲示板。
いつも通りの異国の装束に身を包み、何気無い風を装って、
其の前に立ち止まって、暫し。
そうして今日も、無事、其れは見つかった。

異母妹の好きな故国の花を、片隅に意匠としてあしらった紙片。
そっと手を伸ばし、其の紙を剥がし取って―――、

「………初めから、こうすれば良かったんだわ。
 態々危険を冒して、顔を合わせなくても」

此れも、紙片を貼る、または剥がす現場を見咎められれば、
其れなりに面倒ではあるが。
剥がして、読んで、千切るか燃やすかしてしまえば良いのだから、
ずっと楽な筈だと独り言ちた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にトーラスさんが現れました。
トーラス > 王都の治安を守護する騎士団から受けた直々の依頼。
その内容は王都に蔓延る他国の密偵が、密書のやり取りをしている現場を押える事。
やり取りの場所や方法までは騎士達の捜査である程度の目星は付けたものの、
実際のやり取りがいつ行われるか迄は彼等の手では掴めず、
地道な張り込みが必要になった所で市井の冒険者まで依頼が降りてきた次第。

「騎士様は徹夜で張り込みなんてしたくはねぇもんなぁ……」

張り込みが一日で済まなかった事を現わすように、目の下に隈を作り、
不精髭を伸ばした中年男が裏通りの掲示板の前に立つ女の前へと姿を現わす。
ふぁ、と大欠伸をしながら、異国情緒な衣服に身を包む女を見遣れば、口端を弛め。

「お姉ちゃん、ちょいと聞きたい事があるから付き合ってくれるか?
 おっと、無駄な抵抗するなよ。一応、騎士団のお墨付きだ。」

懐から騎士団の印章が押された捜査委任状を引き出して、相手に掲げて見せながら、
不審な紙片を掲示板から剥ぎ取った少女へと声を掛けながら距離を詰めていく。

リーアン > 一応は人目を気にしていた心算だが、何しろ王都の地理には未だ明るくない。
何処かに隠れて見張られていれば、気付くことは難しかったろう。

とは言え、其れなりの警戒はしていたから。
声を掛けられ、其方へ振り返る挙措には、動揺らしきものは見せない。
表情に関しては、そもそも愛想に欠ける無表情であり。

「……失礼ながら、貴方はとても、騎士団の方には見えませんが。
 一体何の御用ですか、……わたしはそろそろ、仕事に戻らなければならないのですが」

手にした紙片を掌に丸め、長い袖口でさり気無く隠しながら。
距離を詰められた分ほどでは無いが、手の届く範囲を厭うよう、僅かに後退って。

トーラス > 「ははっ、慧眼だぜ、お姉ちゃん。こんな不真面目な騎士様はいないよなぁ。
 俺は冒険者のトーラスってもんだ。騎士団からの依頼で動いてるんだ」

女の表情に浮かぶのは動揺も浮かべぬ無表情。
その胆の据わりに感嘆して、囃し立てるような口笛を吹き鳴らすも、
彼女の態度は逆に、自身に善からぬ事があり、隠していると謳っているようなもの。
こんな早朝の裏通りにて、彼のような不審者めいた男に突然、声を掛けられたならば、
真っ当な年端もいかぬ少女であれば、動揺する方が自然であり。

「騎士団からは捜査の方法はお任せ、と一任されてるからな。
 女を痛め付けるのは俺の趣味じゃない。大人しくしてりゃ、五体満足を保証してやる。
 まぁ、今日の仕事はキャンセルして貰う事になるがな!」

後退る女に微笑みかけるように頬肉を弛めると、虚を突くようにして地面を蹴り、
一息に彼我の距離を詰め切ると相手の腕を掴んで自由を奪い取ろうと試みて。

リーアン > 「貴方が、不真面目かどうかは存じませんが」

溜め息交じりにそう返す、己の眼差しは相手の風体を、上から下までひとわたり眺め。

「少なくとも騎士様なら、見た目にはもっと、気を使っておられるかと」

続けたのは、もはや無礼としか言えぬ率直な指摘。
然し、―――だからこそ、警戒しなければならない相手だと、密かに身構え始める。
更に一歩、否、半歩ほど、後ろへ身を引こうとし、

「――――――ッ何を、………!」

不意、男との間の距離が一気に詰められ、紙片を握り込んでいる方の腕を引き掴まれる。
細い手首が軋む苦痛に眉を寄せながら、もう一方の手を咄嗟に伸ばし、
男の胸元を突き返そうとしながらに。

「離して下さい、わたしには、こんな扱いを受ける謂れは無い……っ」

睨み上げる視線は鋭い、けれども其れがまた、男の疑念を深めるかも知れない。
明らかに、市井の娘とは反応が違っていた。

トーラス > 彼女の言葉に双眸を瞬かせ、己の衣服を下まで見下ろして、
再び、彼女に視線を戻せば、さも愉快そうに破願して見せ。

「……確かに違いねぇ。
 でも、だがな。この見た目はあんたの所為なんだぜ?
 あんたが中々に現れないもんだから、此処数日、路上で寝泊まりよ」

周囲を行き交う街の人々から見れば、路上生活の浮浪者に間違えられたかも知れない。
だが、それもこれも、長時間の張り込みを強いられた所為で、その原因を相手に転嫁して嗤う。
身構える相手との距離を詰め、咄嗟に反撃しようとする相手の突きをいなすと、
掴んだ腕を捻るようにして、少女の背後へと廻り込んでいき。

「はっ、状況証拠だけでも十分有罪なんだけどな。
 公務執行妨害の現行犯もあるし、騎士団に引き渡す前にじっくりと調べさせてもらうぜ」

間近に捕えた女の姿を見下ろしながら、好色めいた視線を隠さずに向け。
其の侭、相手の身体を押しやりながら、裏路地を歩めば、近くの無人の家屋の扉を蹴飛ばして開く。
騎士団が張り込み捜査の為に徴収した詰め所代わりの家屋へと、其の侭、少女を連れ込もうとして――――。

リーアン > 「――――――は、?」

怪訝そうな顔、を作ってみせながら、頭は忙しく回転している。
目の前の男にとって、容疑はもはや確定であるらしい、と。
単に別の目的があって、因縁をつけているだけ、という可能性もあるが――――
何れにしても、突き飛ばせないどころか、掴まれた腕を捻り上げられてしまえば、
やや仰け反り気味に、半ば羽交い絞めにも近い格好で、逃走の術は断たれる。
其れどころか、先刻握り込んだ紙片が、痛みに負けて零れ落ちてしまった。
開いてみたところで、男にシェンヤンの言葉の造詣が無ければ読めもしない、が。

「離し、なさい、幾ら何でも、強引過ぎるでしょ、う、
 わたしが、何をした、と……今のは、正当防衛、ッ――――――」

苦しげに身を捩りながら抗おうと、男の腕を振り解く力は無い。
片方が異国の娘であろうと、女が男に連れ込まれる光景など、珍しくも無い界隈だ。
正義感に溢れる誰かが駆けつけてくることも無く、黒衣の娘は連れ去られ―――――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からリーアンさんが去りました。