2021/02/27 のログ
■ティアフェル > メロディライン自体はしっとりしていて陽気のカケラもなかった筈だが……すべて歌い手の問題なのだろう。残念だ。
それにしても、やらかしちまった、もうわたしに生きる価値などありゃしねえ。わたしのシェーラルーン(曲名)がっつり聞かれた。死にたい。
そんな風に一瞬で苦渋に満ち満ちて厭世感丸出しで走っていたが、
「きーべーんーんー!」
大人って汚い!てもう少し若ければ堂々と云い放ったかも知れない。でもそんなわたしも汚い大人にいつしかなっていたよという感じで、走りながら、ウェストポーチを開けて中から小瓶を取り出すと蓋を開け、きゅいと一気飲みした。
身体強化ポーションです。こっちにもそんなような技はあったりした。疲労を取り除いて一時的に身体能力の底上げを可能とします。ので、適用時間は長くないが、半ば意地で逃げ切りたくなってきて、韋駄天駆ける。
風になれ、ティアフェル!
そう自分を激励しながらだ、と勢いよく地を蹴り疾駆する速度が上昇した、が――、
「う、わ、わ!?」
急に飛び出してきた野良猫、蹴り飛ばしてしまいかけて慌てて急ブレーキと共に横に逸れようとした体勢ががくん!と大きく崩れ、そのままつんのめって、
ずざざざざー!
顔面から派手に転げた。鼻っ柱から真っ赤に擦り切れながら、地面に両手を挙げたバンザイのような姿勢で前のめりにうつ伏せで倒れた。
■ティエラ > 「あら、ありがとう、もっと、頑張るわね♡」
詭弁という、直球非難を受け止めて、しれっと返して見せましょう。
詭弁などを、使いこなして大人の一因だと、思うので、それを確かに行ってみましょう、走りながら。
彼女だって、判って居る筈だ、彼女もそんな大人の一員なのだし、だから、もっとがんばって――――。
「まあ。」
彼女が走りながら何かをしている、後ろからではよく見えなかったのだけど、何かを飲み込むようなのは、見えた。
それと同時に、彼女の速度が、上がり――――
「あっ。」
加速して、引き離そうとしたところ、にゃーん、と横切る可愛らしい子ネコ。
先を走る彼女が逸れに気が付いて、急ブレーキをするところが見えた。
子猫は驚いたのだろうけれど、ぴゃーっと、逃げ去っていく。
バランスを崩した彼女はそのままに、転んでしまった。
「ティアちゃん……!?」
大丈夫、等とは聞きません、女の子が顔面からというなら一大事。
治療の符を取り出し、自分の鞄から、顔を洗うための水の入った水袋を。
彼女も持っているとはわかってるけれど、流石に原因としては放置はできないので、駆け寄り、助け起こそうと手を伸ばした。
■ティアフェル > いや、がんばるって……、
「なーにーをォー?!」
もっと詭弁の技を磨くとでもいうのか!
政治家にでも転身するつもりか!意外と向いてるかもしれない!
全力疾走しながら喚く最中、振り切ってやろうと速度を上昇させたものの――その勢いが仇になってしまい、大惨事。
加速していた為転んだ時のダメージが激しい。歌は聞かれるわ、追いかけられるわ、しまいに無様に転ぶわ……今日は厄日です。
幸い猫には被害がなく、びっくりして走り去って行って今や影もない。
「………………。」
死。
ずさーとド派手に転んだ後は、しばらく、転倒した体勢のままシーンと静まり返っていた。
こうなった元凶は逃亡と猫にある。
誰を恨むわけではないが……とかく情けない。
さらなる恥ずかしさの余り、地面とキス状態で動けない。顔が上げられない。見ないで、こんなわたしを見ないで、という気持ちで、赤面が耳まで伝播して真っ赤にしてふるふると無言で起き上がりもしないまま小刻みに震えていた。
精神的に死にそう。
■ティエラ > 「………………。」
倒れたままピクリとしない、動かない、生きているのは何となくわかるけれど、動こうとしない。
うつぶせの儘だったら、治療も出来ない、出来るけれど……状態が判らないまま治療できる程のスキルは無い。
聖女様、とか高スキルヒーラーとか、伝説の人とかだったら、この状態でも怪我がなかったくらいに綺麗にできるのだろう。
私にはできないので、治療のためには患部を見る必要がある。
「うん、ティアちゃん、治療するから動かすわね。」
心理情況的に、どんな状態なのかは、判らなくもないのだ。
こう、新人の若い吟遊詩人とかに良くある、黒い過去的な、私にもある。
でも、それとこれとは別なので、彼女の腕をつかんでえいやっと、仰向けにしたいので、ひっくり返そうとする。
プルプル震える彼女が、それを拒否るかどうか、それによって、第二ラウンドが始まってしまう。
じゃれ合っているようにも見える、実際じゃれ合ってるのだろう。
でも、治療させてほしいので、仰向けにして、擦りむいた顔を見せて欲しい。
ちゃんと綺麗に、傷痕遺さずに、治療したい。
技術は、彼女ほどではないのだけど。
魔法は、手段は、有るのだから、と。
■ティアフェル > 一連の流れが走馬灯のように過って精神的に暗雲のように圧し掛かってくる。恥ずかしい、わたしはわたしが恥ずかしすぎて死にそうだ。
今年イチ恥ずかしかった。恥の多い人生でした……とどこぞの文豪みたいなことを考え始めて現実逃避しかけていたが、そのまま倒れている訳にもそれはいかず。
むしろ放置しておいてはもらえず。
腕をつかんで仰向けに体位転換を図られれば、
「っぅ……」
擦り剝いて真っ赤、羞恥で真っ赤になったトマトみたいな顔を反射的に両手で覆い。
そのままぶつぶつと低く小さな声で詠唱を始めると、覆っていた両手の隙間から淡い光が零れて。ずる向けになった顔面を癒していき。
一応回復屋の端くれ。この程度で人の手を煩わせていてはさらに恥ずかしいという訳で。擦り傷を癒すと、
「…………こ、こないだは……ご馳走様でした……」
気まずそうに顔を反らしてついでに話題も反らしにかかった。
若干ふるふるしながら地べたにぺたこんと座り込んだまま。
■ティエラ > 「………ぁ。」
流石本職、というべき力、自分の顔に手を当てて、其のまま治療されていくのが見える。
一流の彼女を治療しようと言うのは、烏滸がましい、そう言うのが、良く判る一幕でもあった。
自分で自分を治療した後、ぺたんとした座り方で、地面に座る。
顔を逸らす彼女、話題は今さっきのそれを完全に避けた物だった。
「いえいえ、私でよければ、また、一緒に食べたいわ。」
彼女を追いまわし、怪我をさせてしまった、という負い目もある。
少し、調子に乗りすぎてしまったのかもしれないわ、と思う所もあるので、その話題逸らしに乗ることにした。
先程の唄に関しては、興味がない訳ではなかったけれど聞けるような雰囲気でもない。
「――――あぁ、カバンの件だけど、デザインとかで、聞きたい事も有ったの。」
だから、私も話題を変えることにした。
彼女の鞄を作る約束をしていたし、そのデザインや、機能など、どんなのがいいのか、と。
大体聞いているから、今更確認、という訳でもないけど、話題逸らしなら、こっちの方が良いかな、と思ったから。
■ティアフェル > 本業なのに、本業以外の人に治してもらうと情けなさ倍増。魔力が尽きている訳でもないのでここはご厚意だけちょうだいしておく所存で。
ささっと治してなかったことにした。わ、わたし転んだりしてませんけど……と強引にトボけにかかる態。ついでに歌ったりしてませんけど、とやっぱりトボける。
そして、そんな空気を読んでくれたらしく、逸れた話題に乗ってくれればほっとした。
「うん、またごはんしましょー。今日は仕事だったの? わたしもね、今日はね、午後から忙しくてね、こむら返りになっちゃったおじいさんがね、大騒ぎでね、騒ぎに驚いておばあさんも何故かギックリ腰になっちゃってね、面白…いや、てんやわんやだったわ!」
ぺらぺらと余計なことまでやたら喋りだすのはことさらに先ほどのことをなかったことにしようとする被せだ。
「え? あ、ああ、そうだ、かばん! 鞄ねー、そうだそうだ……えーと、あれってわたしが好きなのかって来ちゃえばいんだっけ??」
イイ感じですっかり色々なかったことになった――ような気がする。
かくりと首を傾げてアホ毛もひょこんと気を取り直したように立って小さく揺れた。
■ティエラ > こういう時は、素人……ではないけれど、黙っていることにする。
寧ろ、本業一直線の、プロのベテランの彼女だ、そっちの判断の方が正しいし、そもそも、彼女自身の怪我だ。
願われてないのに手を出すのは其れこそ、彼女のプライドとかいろいろかわいそうなことになるだろう。
其れよりも、凄い圧を感じる、今現状に触れると、また悲鳴を上げて逃げる……より酷い事が起こる気もする。
なので、敢えて、気にしないふりをする、罪悪感も手伝ってるのは間違いない。
「ええ、冒険者として依頼を、ね。一応、定期的に依頼は受けないといけないし、いい刺激にもなるから。
―――ふふ、凄くにぎやかな、お仕事だったのね、今日は。」
こむら返りとぎっくり腰の老人が面白い状態になったのだろうか、矢継ぎ早に話しかけてくる彼女の勢いに、成程、と静かに聞く姿勢。
とは言え、流石に石畳の上で座るのは、色々良くない気がするので。
「ええ、外側は好きに手に入れてきていいのよ、気に入ったのが無ければ、此方で見繕うけれど。
良かったら、今から一緒に外側だけ、買いに行く?」
其処に座ってないで、と、手を差し伸べる。
無かったことにしよう、それが、自分のため、彼女の為だと思う。
アホ毛ちゃんもそうだというように、ピーンと立ち上がるのが見えたので、これが正解なのね、と思う。
■ティアフェル > 速やかに手当ても完了し、全てが無かったことになった。ええ、なったんです。敢えて云う。
和やかに仕事の話なんかを始めて、大分精神的に落ち着きを取り戻した。ほじくり返してネタにしよう、なんて質の悪い人間では彼女は決してない。
「ああ、冒険者の仕事だったのね。どんな依頼だったの?
わたしは最近ヒーラーとして働くことが多いわ。やっぱりソロだとフィールドワークはかなり限られるから……。
そうそう、そうなの、可笑しくってうっかりしばらく眺めちゃって怒られた」
あはは、と失敬な感想も付け加えていやー、大変だったと笑いながら後頭部に手を当てて。
そんな仕事もお互い終わり、ショッピングに誘われて、うんうんと首肯し。
「行くー!
まだ開いてるお店あるかしら、急ご急ご」
差し出された手を取って立ち上がると裾を払い、気を取り直して、いざ。
人気のない裏道を抜けて商店の立ち並ぶ通りに向かう。
■ティエラ > 最初は、ネタにする気満々でしたごめんなさい、でも、罪悪感が勝り、落ち着きました。
ティエラは悪い子です、ティアちゃんに懺悔します。悪い子という年齢でもないのですけども。
「今回は、何時も、というか、ゴブリンの巣穴がある村の近くで発見されたので、その退治依頼。
一人ではないわ?即席だけどチームを組んで行ったのよ。声を掛けてくれるなら、何時でも一緒に行くのよ?
まあ、流石に、そういう状態を眺めてたら、怒られちゃうわよね、本人たちは痛いのだもの。」
情況が、何となく見える気がする、おじいさんおばあさんの剣幕と、正座させられているような、ティアちゃんの様子。
それは其れで失礼な想像かも知れないのだけども、と。
ただ、それで懲りてない様子なので、少し苦笑い。
「ええ、では、行きましょうか。ティアちゃんは、どんな物にめぼしを付けてるのかしら?」
立ち上がり、手をつなぐ彼女、引っ張られるように歩き始める。
どんなお店に行くのかしら、とワクワクしてしまうのは、ショッピング自体は楽しみだから。
商店の並ぶ通りを、一緒に歩き始めるのだった。
■ティアフェル > 告解されているが、そもそも元凶は自分でしかない。だけど、年一でぐらいは路上で歌ってもいいじゃないか、ド素人の歌を夜空に響かせてやってもいいじゃないかと思う。思うけど、起きたことは全部自己責任でしかない。
「おー。ゴブリンイジメー。わたし、それ趣味ー。
たまーにわたしもパーティで駆除に行くわ。前衛さんに怒られながら。
うん、ほんまサーセン、って感じでした。いやあ、余りにコントだったものでついつい」
態とやってる?みたいな感じで喜劇的一幕にしか見えなかったもので、鑑賞してしまった駄目なヒーラーはわたしです。悪いとは思うけど懺悔までしません。笑いは生理現象です。
でも気を付けなきゃ、と軽く笑い。
「んんー……今使ってるウェストバッグみたいなんがいーかなとは思う。やっぱ両手は自由で取り出しやすいのがいいから。
これも容量増しはしてあるんだけど……ちょっと使い込んでガタもきちゃってるし……小さめで沢山入るようにしたいかなと思うんだけど」
極力動きの邪魔にならないような、軽くて小さく手が塞がらないものが理想。持つとなると白衣を着ている時なのでそれにも合えば云うことないが。んー、と小首を捻り顎に指を上げて少し上方を見やるようにして重なる希望を零し。
鞄屋を探した。やはり店じまいとなているところが多いが、一軒だけまだ営業している店を見つけ覗きに入り。
■ティエラ > ホントはその歌を聞きたかった、そして問い詰めたかった。
自己責任の上での行動なので、問い詰めても良いのだけどそれを情況が許さない、残念。
「変わった趣味、ね……?まあ、ゴブリンは直ぐに増えるから、定期的に駆除しないといけない物ね。女を捕まえて孕ませて増えるし。
それに、私の所属は一定期間以上冒険してないと資格を剥奪されちゃうギルドだから、厳しめなのよね。
余り前衛さんを困らせてはいけないわ?彼らがいるから、心おきなく全力出せるのだし。
そういう風に言われると、見てみたくなるわね、コント」
彼女が、そんな風に言うまでのコント、見てみたいわね、と思う。どんな流れのどんなお約束が飛び出すコントだったのだろう。
興味があふれて止まりません。
ただ、冒険者として前衛に怒られるのはほどほどにね、と、自分を棚に上げて言う系後衛魔術師。
「それくらいの小さな感じ、もう少し小さい方が良いのかしら。
沢山入れる位なら、全然問題は無いから、後は、大きさ、かしら、後は、強度。」
冒険者だから、強度も重要ね、と呟きながら、彼女の持ってるウエストポーチを見せてもらう。
大きさというのは結構重要で、沢山入るとしても、入り口が小さければ入れたくても入れられないと言うのもある。
強度と、入れ物が入る分量、素材とかは何がいいかしらね、なんて。
一般的な革製の物を強化する積りではあるが、物によっては別のがいいかも、と。
「此処……ね。」
案内された店は、こじんまりとしていて、あまり広いイメージは沸かない。
ただ、様々なものがあり、そのどれもが、丁寧に作られているようだ、ふむ、ふむ、と女はカバンを見比べていく
■ティアフェル > 「んー…よく云われる。その趣味どうなの?とか。でも見かけたらブチ殺したくなるもんだからしょうがない。
そうなんだ、それは大変ねえ。わたしはそういうのないから気楽にやってるけど。その分仕事のあるなしはマチマチね。
はぁーい。耳にタコだよ……気をつけまぁす。
やってたら声かけるわ。ボケだけで成立してるコント」
そんな一瞬の現場に立ち会うのは難しいが。冗談めかしながらけらけら笑いながら付け加え。
それから、嫌になるほど云われる、正論には肩を竦めた。
「これより大きくなければいいかな。もう古いから、段々奥行きも狭くなってきちゃってるけど……。それに傷だらけ」
手入れはされているものの、やはり傷や汚れは目立ってきている。使い込まれ感のある、茶革のウェストバッグ。入口は大きくぱかっと開く。永続性がないらしく魔法の効果も薄まってきていて、入る量も徐々に減ってきていた。はい、とベルトを外し求めに応じてそちらへ手渡して。
「んーう。いい仕事だけどちょいお高めだな……でも安物で作ってもらう訳にもいかないし妥当なところかしら……。
あ、ウェストバッグ、探してるんですけど……へえ、特注もできるんですか……? んー……予算はえっと……」
仕入れて売っている訳ではなく工房が経営している店らしくオーダーも受け付けているらしい。声を掛けてきた店員にふんふんと相槌を打ちながら、フルオーダーとなれば希望の品が手に入るだろうがその分価格はやはり上がる。
せっかくだからそれもありかと思うが……術処理をしてもらう分も考えれば購入の日が遠ざかってしまうのは自明の理。
■ティエラ > 「如何なの、とは思わないわ?だって、ゴブリンは妖魔だし……素材にもなるし。趣味というのは珍しいけれど、見かけたら殺処分が一番いいと思うわ?ゴブリン。
厳しめな分、色々と補償とかはしてくれるから、私は納得して所属してられるわ。
ふふ、耳タコなの?私の声が、こびりついて離れない―――タコを作ってみましょうかしら。
ええ、楽しみにしてるわ。」
一瞬の現場と考えるなら、一緒に活動すればいいというだけだけれども、さて、一緒に冒険したいと言ったら連れてってくれるのかしら、とかんがえた。
序に、正論に肩を竦めるなら、そっとその肩に手を置いて、耳元にあまぁく、濡れた声で囁いて見せる。ふ、と耳に吐息もセットで。
「成程、でも、これ、良いものを使っているのね、大事にも使ってるのも判る。」
手渡されたウエストバックを手にしながら、じっと、それを眺める。魔力の残滓を確認して、ふむ、と考える。
値段の関係なのだろう、と、エンチャントの質を見て覚えて。
「納得の行くものを、と思うわ。
此処のお店の物は、どれもこれも、良い物、ね。丁寧な仕事してる。」
自分で作っているもの、職人の腕は良さそうだ、細かな所や小さなところも念入りに、集中して作られていて、どれもこれもが、良い。
買うまでの期間が遠のくことを気にしているようなので、先程預かったウエストポーチに、魔力を込めなおす。
流石に新品のようにきれいにはならないけれど、これで、買い替えるまでは問題は無いだろう。
仕えなくなるのを気にして、妥協をするのは本意ではない、其れなら、安心して最高の物を作りたい。
それは、職人としての本音でもあるので。
なので、魔力を込めなおし、元の広さに戻ったウエストポーチをはい、と返す。
■ティアフェル > 「そ? 少なくとも男ウケしないこと甚だしいんだけどねー。料理とレース編みと云っといた方が納得してもらえる。
だろうね、わたしはゆるゆるしてた方が楽でいいけど。
何故積極的にタコる…?! いいよ、もう、すでにできてるからタコ…!」
お小言の耳タコはもうたくさんだ。これ以上タコ作ってたら聴覚障害が。
オモロイ現場に出くわしたら見せてあげたいっていつも思うが、現実問題は難しい。けれど、楽しみ、と乗ってくれるもので、にこ、と笑って返して。
耳元で囁いて吐息で擽られると、ひゃあぁーと震えて肩を竦め。
「これもお金貯めて買ったからね。スタッフの次に買ったマジックアイテムだわ。まだ、もーちょいがんばってもらわなきゃだけど」
騙し騙し使っているところ。余り詰め過ぎない様に注意して用心して使っているが、どのくらい持つかは少々懸念事項。
「そうよねえ。いくつも買えないから……。冒険のお共だし、ケチれないところだわ。
んー……やっぱりそう思う? じゃあ、思い切ってオーダーしちゃおうかな。
ねえねえ、どんなのがいーかな? 魔獣の皮がやっぱり丈夫みたいで……あっ、ヘルハウンドとか…犬系のやつやめてください…ッ。
えーと、ジャイアントワームのとか……これは個性が強すぎるな。
ミノタウルス……上半身が人のは抵抗あるなあ。うーん。悩ましい」
あれこれと素材見本を持って来てくれて見せてくれる。色は渋めからパステルトーンまで各種希望に合わせてくれるそうで、それならミントグリーンなんてのもいいなと思案し。
色々目移りしている間に、ちゃちゃっと古びたウェストバッグのメンテナンスをしてくれた様子に、あら?と目を丸くして。
「あれ? メンテしてくれたの…?」
■ティエラ > 「そんな男は止めときなさいな?自分の趣味を押し付けるだけだもの。
料理とレース編みは……私も無理だし、私も結婚できないのかしら。
うーん、タコを作ると言うより、むしろ、私の声のマーキング?」
タコるという動詞は初めて聞いた気がする、何というかこう、おもろい夫婦を見るよりも彼女を見ていたほうがおもろい気もする。
言わないけれど。その代わり、色々な感情を込めて、声を忘れないでほしいわ、と言わんばかりに耳タコ攻撃。
肩を竦める様を、くすくす笑ってみてしまうのだった。
「マジックアイテム、というだけでも高い物だし、ね。なんとなくわかるわ、使い倒したくなるの。」
高い物だからこそ、元を取りたくなる庶民思考は、陶然ティエラも庶民だからわかる物、良いものを大事に長く使いたい。
ジプシーに居る時は物資が不足しがちだから、物を大事にすることは良く教えられているのもあるのだ、と。
「ええ、良いものをシッカリかって、ティアちゃんの様に大事に使うのが一番だと思うわ。
うーん、強度とかでいえば、ティアちゃんは苦手だろうけれど、その、ヘルハウンドとか、ケルベロスとか、火に強いのは良いと思うのよね……
あとは……グリズリーとかそう言うや、ボア系の魔獣は、普通に頑丈よね。
アラクネの糸とかは、艶やかでとても頑丈と聞くわ?」
変わり目でいえば、アラクネの糸は元が糸だから軽くなるし、柔軟性も有って良いかもしれないわね、と。それでおられた生地を見て。
色に関しては完全に彼女の好みだから、其処に口は出さないことに。
「ええ、だって、ティアちゃんのお仕事は人の命を助けるものだもの、ちゃんと使えるようにしておかないと。
乗り換える前に、使えなくなって、道具が運べなくなった、とかは、皆が不幸になるわ。
出来るまでの期間は気にしなくていいから、一番いいもので、選ぶと良いわ。」
予算の補填は出来なくても、期間の補填は出来るから、と、笑って、バッグを差し出した。
■ティアフェル > 「んー? そう? 別にやめとけとまでは云われないけど、女の子なんだから、とは云われちゃうよね。
胃袋をつかめば有利とは云うよね。レース編みは暇つぶしに打ってつけよ。かぎ針と糸さえあればどこでもできちゃうから、暇な待ち時間には手頃。
声のマーキングってどういう現象……? 幻聴……?」
匂いをつける訳でもなく声をくっつけるとか、形のないものをどうやって。不明だ。
ふと幻聴が響いてきてしまったらそれはいっそノイローゼ状態とは違うんだろうか。
様々な疑問が渦巻いて、アホ毛が?の形に曲がっていた。
「そうそう、でも、そろそろ寿命なのよねー。使い切ったと思うとそんなに惜しくないけど……」
マジックアイテムに限って高い癖に長持ちさせるのが難しい。恒久的に魔法を持続させたものは高過ぎてなかなか手が出せないし。
うんうんと首肯で同意を示して。
「うん、次のは今のよりもっと長く使うね!
無理。それは無理。いくら利点が多かろうとそんなもの持てない。
それなら火ネズミの奴にする……。
なるほど、そっちもアリね、皮、でなくとも毛織とか、織布とか……ついつい革が頑丈でよさそうかなと思うけど、それもいいな」
ふむ、と提案されたアラクネだの、むしろ頑丈な毛質の魔獣のものを織った生地とか、選択肢が広がり過ぎて絞り切れなくなってきた。
うむむむ、と眉間に皺を寄せて考え込んで。
「えー。うわー。助かるー! ありがとう、こんなことまでしてもらっちゃって……。
超優しいー。
うん、お蔭様で焦らなくてよくなったわ! 一番お気に入りのヤツにするわね!」
使用期限が迫っていたカバンの寿命を延ばしてもらえば顔を明るくして、ありがとうありがとう、と手を握って振って嬉しそうに繰り返し。そして、バッグを腰に巻きなおすとぽんぽん、と叩いてもう少しよろしくね、と呟いた。
■ティエラ > 「世間は何時でも、女に厳しいのよね……。
料理かぁ……料理……。確かに、聞くわ。もう少し、本腰、入れてみますか。
暇なら、私は魔法の方に走っちゃうし。
ほら、ふとした時に、思い出してもらえる、とか、その程度。
私としては、幻聴聞くぐらい思ってくれるなら、嬉しいわ?」
ただ単に、声をしっかり覚えて欲しい、その程度の事である、ノイローゼとかは良く知らない。
不思議そうな表情と?マークなアホ毛ちゃんに、軽く説明してみる、判ってもらえるだろうか。
「使うごとに、使い慣れて愛着がわくもの、なのよね……もっといい物があっても、今のがあるから、で我慢しちゃったり。」
使い捨てのマジックアイテムは、物凄いお金持ちな気分になるけれど、勿体ない、が多くなってしまうのが、女だった。
相手の同意を受けて、やっぱりそうよねーなんて笑って。
「ええ、大事に使ってもらえるなら、作り手としても、加工手としても、嬉しい物よ。
とは言え、筋金入りね、何が其処迄の決意を。
ああ、火ネズミ、確かにその素材は……ほかに火に強いとなると、岩系の魔物とか、ドラゴン?」
彼女は、素材でも犬とかはだめらしい、先程の会話から思い出して。何を其処迄言わせるのだろうかとか、ちょっと興味が沸く。
訊きたいけれど、それを聞くのはなんかパンドラの箱的な危険を感じた。
「ティアちゃんは、ヒーラーだしね、人の命を救うのだから、何時でも最高のパフォーマンスで、ね。
お気に入りで、良い性能ので、パワーアップ、してね。」
感激してもらえると嬉しくもなる。
それに、ポーションの一本によって、救える人が変わる可能性も有るのだから、と。
暖かなティアちゃんの掌に、目を見開いて。
自分の腰に鞄を戻している様子が貴くて、目を補足して、眺めるのだった
■ティアフェル > 「ま……得してるところもなくもないけど……。損してるなって思うことも多いよね。
やったらできるよ、料理なんて間違った味付けしなきゃどうにでもなるし。
わたしは回復魔法しか使えないからなあ。あれは暇つぶしには使えぬ…。
耳というかメンタルにマーキング……ほぼほぼ暗示ですな」
幻聴はなんかストーカーになったような気分に陥りそうでちょっとコワイ。
相手は魔女なので暗示程度あっさりかけられそうで本腰入ればこちらとしては打つ手なしだ。
「そうそう、新しいの買う時も結局前と同じようなのさがしちゃったりね」
だから同じような物ばっかりになってしまうけど。それがお気に入りというものだろう。
お金持ってそうだが、基本的に庶民感覚なのでなんだか主婦の井戸端会議状態で、ねえ、奥さんというように肯き合っていた。
「勿論、長ーく大事に愛用させていただきますとも! それにはやっぱり一番いいのにせねば。
……犬キライ。大ッキライ。
ドラゴンも……よそうかな……え? 混合もできる……? 火ネズミとアラクネを一緒に紡いだ糸を使って……なるほど、それなら耐火性もあって強度も高い……そしてお値段も高い、と……うぅ、先になりそうだけど、その生地でお願いしよう、かな……!」
そして、素材は大体見当をつけて、デザインや形の希望をざっくり出せば大まかな見積もりを算出してくれて、取り敢えず注文する前に予算だけ教えてもらえばあとはお金を貯めるだけだ。
今日購入は結局できそうもないので。予算だけ決定された。
「これで助かる人がいるとなると、おねーさまも人助けをしたことになるわ。
親切の輪! 善意のループって素敵!
よーし、明日からもがんばるぞー」
気合が入った。お仕事も目的があるとやっぱりやりがいが増す。
ただ物を入れるだけの鞄がそれだけではないものだと教えられたようで。
新しい鞄は、使い慣れた今のものと同じようなデザインでアップグレードした品質のものになるのだろう。
先は長くても楽しみで。稼ぐぞと決意も堅い。そして稼ぐ=治療となると助かる者も増えるだろうから、いい循環だ。
■ティエラ > 「結局のところ、損してるのか、得をしているのかは……本人の気分でしかない、のがね。
やればできるは、魔法の言葉、なんて聞いたこともあるけれど。間違った味付け、ね。
新しい技術の開発は、暇つぶし……なのは私だけなのね。
暗示も、使い方次第、ね。」
本気で暗示を掛けたいな、と思うならば、暗示ではなくて洗脳になるだろう魔女。
だからこそ、自重する、暗示や洗脳なしで、と、そんなプライドみたいな、こだわり、みたいな。
「使いやすい形、とか、機能、とかは、其れこそ、気分的な物も含めて煮ちゃうもの、だものね。」
うんうん、わかるー。
庶民がお金を持って、でも、成金趣味にならなければこんな感じである。というか。
お金が大事だから、あまり使わないし、だからこその、庶民感覚なのかもしれない。
「ふふ、なら、全力を込めて、新しい技術も其れまでに開発しないと。
うん、良く判った。犬嫌い、ね。
……思った以上に店主のスキルがすごかったわ。」
ドラゴンとか、素材の混合とか、嘘ホント?なんて言いたくなるくらいの言質。
ただ、その技術で出来るものは屹度良いものだ、其れで決めるなら、それが良いと頷くしかないのである。
「その考えはしたことなかったわ。
ふふ、じゃあ、それを言うならこれを忍ばせてしまおうかしら。
ええ、頑張って、稼いでね。」
善意のループという言葉、依然断られた、回復魔法の込めた一センチの長方形のプレート。使えば、中級の回復魔法を魔力なしで発動させるそれ。
魔力が切れたときに、使う?と、目の前でひらひらり、と。ミスリル銀がきらりと光る。
そ。と、隠すことなくウエストポーチに入れてしまおうと手を伸ばす。
■ティアフェル > 「そーね、普段はどっちが損か得かなんて、考えないけど。
それに空腹は最大の調味料。めっちゃ腹減った時に作ってみてはいかがでしょう。
魔法使いのサガかしら」
暗示も使い方次第と口にする言葉に小首を傾げて窺うような視線を向ける。
良く分からないなあ、とアホ毛も左右にゆらゆら揺れて。
「服の趣味とかもねえ。やっぱ癖や好みは引き継ぐもの……」
理解し合えると会話が非常にスムーズと感じる。出会った当初は共通点が圧倒的に少なくそんなに話の合うタイプでもないような気がしたが。お互いに慣れたというのもあるのだろうか。
「おお。それは期待大ですなあ。まさに世界にひとつだけの鞄ー。プライスレス。
きっとまだ、あなたはわたしの犬嫌いの本質を、判っていない……。
色んな素材があるもんだねえ……飛び込みで入ったけど、結構なお店だった……価格帯がかわいくないだけある……」
希望に応じた品を提供してくれるだけあって、微塵もかわいくない価格。品質を考えればお値打ちかも知れないが。我が侭にフルオーダーしてしまえば高級品だ。
「そういう考えもありかな、と。
え? ああ……うー…ん……ありがとう。でもやっぱりお気持ちだけにするね。
わたしは一応自分の術があるから……できればこれは、回復魔法が使えない、おねーさまが信頼できるような人がいたらあげて欲しいかも」
お気持ちはありがたいので、躊躇いがちに辞退するため首を振る。あるところに流すよりもないところに流すべき品だとやはり思う。そもそも、やはり自分の技があるものを人さまの品を使って行うのはもやっとする。彼女は自分がマスターしている紋章術と同じ効果のある別物を渡されたら受け取る方なのだろうか。
魔力補填できる品物ならば受け取ったかも知れないが、回復術を行使できる符は丁重に辞退した。
■ティエラ > 「気にすると、気になっちゃうのよね。
めっちゃお腹減った時に……、か。
……かも、ね?」
判らなくても良いわ、と、アホ毛ちゃんに軽く言って見せて。
お腹減った時に美味しいご飯と、考えると、脂肪と出てきてしまう悲しい思考。
「気が付くと、同じような服が……これじゃいけない、と思うのでもあるけれど。」
でも、使いやすい所に逃げてしまう、と。
初めて出会ったときに言っていたはずだ、私はそんなんじゃないわよ、と。
話の弾むときに、そんな事を、思い出して見せる。
「ふふ、だから、大事に使ってもらうために、確り選んでね。
うーん、それは、ちゃんとゆっくり聞かせてもらおう、かしら。
良いものは、それだけ高いし、技術の料金もかかると、ね。」
マジックアイテムとかもそうだ、良いものは高い、この世の心理である、と。
それを振るオーダーなのだから、可愛くない値段は仕方ないわねとかんがえて。
「そう、ちぇ。仕方ないわね。」
残念そうでもなく、残念という。
その辺りは、女は違うから、技術や道具は、使うために有る物で、同じ紋章術でも、使えるものは使う。
学べるものは学ぶ、だって、技術なんて、基本誰かが作ったものを使うのだから、それと何が違うのかしら?と。首を傾ぐ。
そんな、似た所、違う所を感じながら、今宵もきゃいきゃい買い物を楽しむだった―――
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にティエラさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からティエラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にファイネアさんが現れました。
■ファイネア > いい依頼ないわねぇ…と微かにため息を吐きだしながら、目の前のティーカップを手に取る。
出される茶は高級なものでもないし味も普通だが、特に気にした様子もない。
さすがにそれは高望みよね、と思いながら掲示板に目を向ける。
依頼書が特に増えた様子はない。
事務担当の者がその内整理して貼り出してはくれるだろうが。
もう少し待つか、今日は諦めて帰るか。どうしようかしらねぇ、と考える。
周囲を見れば、依頼をする者か、それを受ける者か。さもなくばギルドの関係者か。
そんな者ばかりだろう。
知り合いの受付嬢などが通ればハァイと会釈をするくらいには余裕はある。
切羽詰まってはいない。
…が、何もしないというのも高揚はないし沈んでいくだけだ。
帰るついでに誰か引っ掛けるにしても今の所目につく人物もいない。
まぁ、もう少し粘ろうかしら。そんな気分のまま、再び茶を啜る。
再び周囲に視線を向ける。
さて、目につく人物など、いるだろうか。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にジーゴさんが現れました。
■ジーゴ > 「やくそう…?これはとおいからムリだな…はいすいこうそうじ?はいすいこうって何?」
冒険者ギルドの一角。壁にたくさん貼られた依頼書を一枚一枚読んでいる少年。ぶつぶつと一単語ずつ読み上げていくからかなりの時間を必要としていて。
「400?400ゴルドならいいなぁ。」
周囲の冒険者が依頼書を読むのの数倍の時間をかけて、その場で立っているから周囲の冒険者が邪魔な視線を送ってくるが、文字に集中している少年がそれに気がつくことはなくて。まだぶつぶつと単語を呪文のように唱えている。
「そうこのごえい…?これは、あれでしょ?おそわれないように守るやつ。これはムリ…」
■ファイネア > 特に気になる人物もおらず、再び掲示板へと視線を向ける。
すると、そこにちょっと人が集まっていた。
掲示板を眺める少年と、それを鬱陶しそうにする冒険者達。
その少年はいつぞや邂逅をした少年であった…のだが。
(あの時の記憶は取っちゃったものね。)
精を吸う代わりに夢だと思い込ませるようにしたんだっけ、と
お茶を飲み干し席を立つ。
少年の元まで歩いていけば、とんとん、と肩を叩く。
「何か依頼を探してるの?」
と、フレンドリーに微笑みながら声をかけた。
■ジーゴ > 「え?依頼さがしてる。危なくなくて、まちの外にいかなくていいやつ。おかねは安くていい」
逆に冒険者ギルドで探すが難しいんじゃないか、というようなお手伝いかというような簡単な依頼を探している少年は振り返ると律儀に答えた。
取られた記憶は戻っては来ない。
きょとんとして相手の方を向いて首を傾げたまま。
同じくらいの背格好の相手を同じ年くらいかなと不躾にしげしげと眺めて。
■ファイネア > 「そ。まぁ、外は危ないものね。ん-……、これなんかどう?」
他に掲示板を眺めたい冒険者もいる。
ざっと見た感じで良さそうなものを選び、依頼書をぴっと剥がす。
それを少年に差し出すだろう。
内容は配達業。花屋からの依頼だろうか、鉢植や花束の配達が記載されている。
同時にちょいちょいと掲示板の前から離れるように促して。
少年の視線には、くすっと笑うくらいを返しておいた。
ただ見た目の年齢よりは少し上の、ちょっと艶やかさを感じる微笑みだったかもしれない。
■ジーゴ > 少女が小さくそれでも艶っぽく笑うから相手を見つめすぎてしまったと思って気まずそうに眼をそれした。
「そ、まちの外は一人ではいけないから」
相手の言葉にうんうん、と頷いた。ひとつ差し出された紙を受けとって。相手に促されるままに少し掲示板から離れたところでその紙を見つめる。
しばらくぱちぱちと目を瞬かせて見つめた後に、黙読はできなかったようで小さな声で音読をする。
「はいたつ…はなたば…はちうえ?はちうえって何?」
「400ゴルドだからやろっかなー。お前もなにかさがしているの?」
読み進めて報酬まで読み終わるときょとんと相手を見て首を傾げた。
■ファイネア > 目を逸らす少年を相変わらず可愛い事、と思いながら見つめる。
しげしげと依頼書を読む姿を見ながら、他の冒険者の溜飲は下がったかしらね、と後ろに視線をチラリ。
お節介をかけた少年は少し首を傾げたような風情。
「鉢植知らない? 壺みたいなのに植えられた草花ね。」
あれとか。ギルドの隅には大き目の鉢に植わった観葉植物も飾られている。
あんなに大きいモノは少ないと思うけれど、と付け加えておいた。
「私? 私はなるべく外の依頼を探していたんだけどね。」
イイのが無くて、と笑みを浮かべた。
もう少ししたら帰る所であったことも告げるだろう。
■ジーゴ > 物理的に邪魔にさえならなければ、依頼の取り合いの相手にもならないような少年には他の冒険者は目もくれない。
「あれが、はちうえね。覚えた。あれ運ぶくらいならできる」
依頼を受けることを決めたようでその依頼が書かれた紙を握りしめた。
「ふーん。外の依頼ってあぶなくない?マモノとかでるでしょ。外のほうがお金たかい?」
なにより奴隷はそう簡単に町の外には出られないからそもそも外に行く難易度は高いのだけれども。
■ファイネア > 「そうそう。まぁ、色々だけど。
荷物が多くても荷車くらいは借りられるでしょうし。」
運ぶ量は人を選んで与えるだろう。少年であればそこまで大荷物にはならないかも…しれない。
紙を握りしめる姿にちょっと微笑ましい物を感じる。依頼を受けるのだろう。
お小遣い、というには少し多い気がする。ひょっとしたら家や主人への稼ぎとか、かもしれない。
「もちろんある程度簡単なものから危ないモノまであるけれど。
魔物も出るから基本的には危ないかしら。身を守れない人は手を出さないわね。」
興味あるの?と少年に笑いかける。
連れて行くのは無理だが、少し話すくらいはいいだろうか。
「君、名前は?」
と訊いてみる。この間会った時は名前も聞かずに弄んでしまったし、と内心。
■ジーゴ > 「オレ、にくたいろーどーもできるから、全然だいじょぶ」
安価な奴隷として、色々な労働をした経験から荷運びぐらい大丈夫だろうと高をくくっていて。
ギルドの依頼は急遽値切られたりしないから安心できる仕事である。
「オレはね、いっぱいかせげる仕事がいい」
特に頼まれてもいないのにお金を貯めて主人に渡そうとしている少年は少しでも稼げる仕事をたくさんこなそうと考えていて。
「名前?ジーゴ。お前は?ね。外いくときってどれくらい強かったらいける?マモノは何倒せるくらい?」
外の話が気になって続けて尋ねた。
■ファイネア > 「ふふ。依頼主さんの話を良く聞いて頑張る事ね。」
ひょっとしたら鉢植えをいくつも、となるとそれなりの重量になるとは思う。
まぁ、それも勉強。社会勉強というやつだ。頑張るといいと思った。
「そうなの? うーん、それならやれる仕事を順番にこなす事ね。
続けてるとひょっとしたら貼りだしじゃない仕事紹介してくれる人も出てくるかもしれないし。」
そりゃお金はもらえた方がいいに決まっている。
なので特に考えもせずにそう言った。千里の道もなんとやらである。
すぐに稼げるとすればそれは何かしら技能があっての話になるだろう。
「私はファイネア。 お外? うーん、まぁ、色々だけど。
最低でもゴブリンとか、野犬とか。でもそれ以上にヤバいのも色々いるし、やっつけなくても地図が読めて逃げ足が早いければこなせる依頼もあると思う。」
配達の仕事をする人材などはそういう人物もいるだろう。
戦闘技術は最低限だけど、健脚でなおかつ方角や地理に精通している、など。
そういう話をかいつまんで教えてあげる。
別に戦闘技術だけが外で生きる術ではないのだ。
■ジーゴ > まだまだ体幹のしっかりしていない少年は、自分よりも背が高いような鉢植えを前に途方に暮れることになるのだけれどそれは別の話。
「そっか…しんよーがだいじね」
明らかに渋い顔をして獣の耳がピコンと立った。
仕事内容によってはとてもうまくこなす、ただしできないことでは大失敗してしまうことで有名になるつつある彼ではまだまだ時間がかかってしまうだろうか。
「オレこのギルドとか平民街とか裏路地をうろうろしてるからよろしく!」
てっきり初対面と思っている少年はにこやかに返事を返した。
「そっか…でも鼻いいから逃げられるかも」
ゴブリンも野犬も倒すにはまだ実力が足りないけれど、獣の嗅覚は比較的早く魔物を捉えられるから。確かに「討伐」のような仕事以外は受けられるかもしれない。
「あっ!オレこれ、うけてこないと。ファイネアはまだ仕事さがす?」
握りしめたままだった紙に気が付いて、再び耳がピコンと立った。
■ファイネア > 「そうそう。信用ね。
お金は大事、だから信用できる人には多く払える仕事を回してもらえるの。」
それがわかるのなら話は早い。
できるのかどうかは別として、だが。その内に報酬を増やしてもらえることもあるかもしれない。
「ふふ。そう。よろしくね。」
精気は良かった覚えがある。その内に『お相手』してあげてもいいかもしれない。
にこやかな挨拶を交わす裏で、そういう事も考えてしまうのがファイネアという女だった。
「魔物も鼻がいいのがいるわ。絶対に逃げ切れる自信がないとお外には出ないようにね。
じゃないととっても怖い思いしちゃうわ。」
最悪命を落とす事になる。あまり気軽に考えるのはよした方が良い。
気楽に考えているようであれば、ダメよ、と人差し指を唇に当てて止めてあげるだろう。
「ふふ。私は一度帰るわ。また明日、出て来た仕事を探そうと思うから。
…じゃあ、またねジーゴ。その内に。」
ぴこっと耳が立った様子を可愛らしく思い、くすっと笑えば踵を返す。
受付嬢に邪魔したわねと一声かけてから、手をひらひらとさせながらギルドを出ていくだろう。